[60点]
スターウォーズの歴史はジョージという神の手によってCGという歴史修正、いや捏造が施された。俺が大好きだったハン・ソロは賞金稼ぎが撃つ前に不意撃ちで殺すクールなならず者だった。そんな彼を神はCG修正により撃たれてから撃つ優しいけどマヌケで運がいいだけの奴に変わった。あの時ハン・ソロはもう死んでいた。
うちのVHSにはまだハン・ソロがいる。けれど去年買い直したエピソード4~6パックのDVDにはいない。きっとパン・ゾロとかそんな奴に変わったんだ。
だから「フォースの覚醒」でハン・ソロがどう扱われようがもはや怒りも哀しみもわかなかった。
「I'm your father」の場面をめちゃめちゃ意識した、既視感のあるシチュエーションやカット割のファンサービスを普通に楽しんだのだった。
いつもいつもJJエイブラムズなる監督の悪口をよくたたいてきたが、今回は新レギュラーを差し置いて見せ場奪いまくりのハン・ソロとか、ファンを喜ばせることに全神経集中してオリジナリティ薄いおかげで(まあスタートレックもミッションインポッシブルもそんな感じだったけど)ファンとしてイベントを楽しむことはできた。
でもやっぱり浅~い監督だと思う。こんな奴がアカデミー賞監督賞のプレゼンターになるなんて(アカデミー賞候補になったこともないのに)ハリウッドの人材不足も深刻である。
だいたいね、カイロ・レンが弱すぎ青すぎバカすぎでしょ
フォースも使えないライトセーバー歴数日のフィンになに苦戦してんだよ
すぐキレるワメくのガキっぽさとてんぱってる感半端なさに悪役としてすごく不安だよ。君の憧れのダースベーダーさんはもっとしっかりしていたよ!
もしかすると三部作かけてカイロ・レン君が悪役として成熟していく話になったらある意味青春映画で楽しいかも。レイちゃんとか暗黒面に引き入れちゃってさ、ファーストオーダーの下剋上達成だよ
SF的な描写としてはどうか。
もちろん科学的な正しさなんか求めちゃいないけど、あのファーストオーダーの新兵器。デススターみたいにえっちらおっちら敵の星のそばまで飛んでいかなくても、惑星を破壊できるというのは圧制者たちにとっては非常に便利な武器だ。
何十何百光年と離れた惑星を一瞬でぶっ飛ばすことについては、ハイパースペースありきの世界で突っ込む気はしない。
ただ問題なのは惑星の爆発の光景をレイアやハン・ソロたちが別の星から肉眼で見ていることだ。
レジスタンス軍基地の星と共和国本星って同じ恒星系にあるんじゃないでしょう?(もし同じ恒星系ならなんで一緒にぶっ飛ばさなかったのか理解できない)
で、恒星と恒星の間なんて相当近くても数十光年は離れているわけで、惑星破壊ショーを別の星の空で見えるまでには当然数十年はかかるわけで
あ、もしかして、映画では編集してたけど実際レイアたちがあの光景を見たのは数十年後だったのか?
で、あればその間にフィンがメチャメチャ修行して強くなったと考えれば、カイロ・レンが彼に苦戦したのは説明がつく!
などなど突っ込みどころ満載だけど、だからダメなんだと思ったわけじゃなくむしろそういうところもひゃっはっはっと笑って楽しんだ感があります。
エピソード1、2の悲惨すぎるつまんなさと比べたら、娯楽として見ていられるレベルまで引き戻してくれたことに関してはJJさんの力を認めてもいいかもしれない。
でも、結局のところ「フォースの覚醒」の面白い部分は、最初の三部作のレガシー部分なんだよ。あ、ファルコン号だ、お、タイファイターだ、やっぱXウィングかっこいいなぁ、とか、レイア年取ったなあ、もうジャバに捕まえてもらえないなあ、とか、さっきも言ったけど明らさまに帝国の逆襲のあの場面のアレンジとか、デススターっぽい兵器とか、ファルコン号の機銃の照準装置が77年公開時と同レベルのしょぼい表示にあえてしているところとか…
新三部作が辛かったのはファルコン号とかAT-ATとかああいうかっこいいメカが設定上全く出てこないところで、過去の遺産を活用しづらかったところなのかな。
その点今度の三部作は4~6のメカもキャラも出し放題、ただしその反面でオリジナリティはなく、はじめっからそれが狙いなのはわかるけどファンムービーなんだな。
ところであれから30年たつのにまだXウィングが主力戦闘機なのか。ガンダムは6年でモデルチェンジしたのになぁ。あ、でもF14やF15も30年くらいは主力だったからまあいいのか
それにしても、ハンがああなってもさして気にもしてないレイアの冷たさ…いいね。
もしかしてランド・カルリシアンがあの下で待ち構えていて落ちてきたハンをキャッチしてたんじゃないかとちょっとだけ期待
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さて、音楽だ。
スピルバーグの新作は体調を理由に断ったジョン・ウィリアムズ、ジョーズもスーパーマンもジュラシックもハリポタも2作くらいやってから後は若い奴らに任せてきたジョン・ウィリアムズだが、スターウォーズは別格らしい。
ここ最近は1作品ワンテーマでシンプルな曲作りが多かったのだが、「リンカーン」とこの「フォースの覚醒」は80年代の頃のように1作品にテーマをいっぱい作る。彼のスターウォーズに対する熱意がよくわかる。
レイのテーマのどこかのどかな響き、レジスタンスのマーチは魂を熱くする戦闘曲だし、悪のテーマにちょいパンチが足りないのはカイロ・レンが未熟だからだろうか、戦闘シーンの曲は全般的にバシバシ響いて昔のウィリアムズに戻ったようだ。エピソード1~3の時のコーラス使いすぎ感より全然ワクワクする冒険映画音楽に仕上がっていて、当然のアカデミー賞ノミネート。
一つだけ残念なのは演奏がロンドン交響楽団じゃないことだ。前6作はすべてロンドン交響楽団だった。80年代のウィリアムズはロンドン交響楽団とともにその名を轟かせた。80年代後半くらいからロンドンでの録音が無くなったがスターウォーズエピソード1の時に、スターウォーズだけはロンドン交響楽団じゃなきゃダメなんだと言ってわざわざロンドンまで行って録音したのだ。
まあ、いまのお年を考えるとロンドンまで出かけるなんて心配だから仕方ないけど
でも、例のメインテーマやエンドクレジットでの金管の滑らかさはこれまでになく華やかさがあった。(もしかすると指揮者が変わったからだったりして)
そんなまだまだ巨匠感半端ないジョン・ウィリアムズの指揮するコンサートを聴きにゴールデンウィークはアメリカに行きます。レジスタンスのマーチ生演奏が今から楽しみだ
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2016年1月1日上田市アリオのTOHOシネマズにて3Dで鑑賞しちゃった
「スター・ウォーズ フォースの覚醒」
監督 JJエイブラムズ
脚本 ローレンス・カスダン
音楽 ジョン・ウィリアムズ
出演 ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー、デイジー・リドリー(かわいい)