恵比寿の東京都写真美術館にて鑑賞。
写真家ソール・ライターへのインタビューを主としたドキュメンタリー映画
ソール・ライターをあまり知らない人が見ても面白くないかもしれない。
ソール・ライターの写真展なり、写真集買うなりした上で見ると、彼の写真がまた違った魅力を発揮してくる。
私は今年(2017)の4月に渋谷のBunkamuraのソール・ライター展に行き、初めて知った
この写真の左側の赤い傘の写真にガーンと衝撃をうけた。
50年代、多くの写真家がカラー写真を下に見ていたころ、彼はカラー写真を積極的に撮った。ほぼ真っ白のモノクロの世界の中に異物のように、しかしものすごい主張をもって混入される鮮やかな赤。
他の写真も色が鮮やかで、当時のニューヨークを生き生きと映し出す。
ところが、こんな素晴らしい写真を何十年も放置していた。発表する気も有名になる気もなく。それをドイツの出版社がたまたま発見して、これすげーじゃないすか、発表しましょうよ!みたいなことになってついに日の目を見たという。
50年代はオシャレファッション雑誌で有名モデルのオシャレ写真を撮っていたソール・ライター。そのころの商業写真もまたものすごくかっこいいのだけど、急に姿を消して、っていうか仕事しなくなってニューヨークからほとんど出ずにその辺ぶらぶらしながら写真を撮るか絵を描く生活をしていたのだという。彼が言うには有名人を撮るより雨に濡れた窓ガラスを撮る方がはるかに興味深いのだという。
そのくらいの知識をもって見ると、映像から色んなことが想起される。
まず彼の部屋。物が多い。整理されてない。助手の女性が部屋を整理しようとしても、これは捨てたくないとか言う。
そして全く整理されてないネガの山。中には傷ついたり日焼けしたものもあるらしい。多分、未発表のネガが沢山あるのだろう。そして傷や日焼けで永遠に失われた傑作もあるのだろう。でもソール・ライターは、混沌が良いんだよ、とケロリとして言う。
彼と長く付き合っていたモデルで芸術家の女性にソームズという人がいて、彼女が亡くなってから彼女の部屋には入ってなかったというが、映画の中でソームズの部屋に入る場面がある。ソームズはソール・ライターからのプレゼントの包装紙を大事にとっていた。作品だと思ってたらしい。似た者の二人だったんだな、と思う。
フィルムにこだわる写真家が多い中で、映画の中のソール・ライターは街ブラ写真撮り散歩でデジタルカメラを使っていた。モノクロじやなきゃ芸術じゃないと言われねいた時代にカラーで撮ってた人らしい。まあでもデジタル化によってネガが失われることは無くなっていいかもしれないけど、逆に無秩序無整理がもっと酷くなるんではと不安にもなる。
写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと
監督・撮影 トーマス・リーチ