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映画作りの糧とすべく劇場鑑賞作品中心にネタバレ徹底分析
映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

おとうと [1960年 監督:市川崑]

2008-02-14 18:20:05 | ビデオ・DVD・テレビ放映での鑑賞
個人的評価:■■■■□□ (最高:■■■■■■、最低:■□□□□□)

市川崑追悼のため、昔、友からもらった膨大なビデオライブラリをひっくり返して発見した1960年度キネ旬1位作品。(もらってから何年もずっと今まで観てなかった・・・)

簡単にくくっちゃうと、昨今でも流行りの「難病・死にオチ映画」である。
昨今のと違うのは、
・死ぬのが男である
・恋愛は基本からまず、姉と弟の話に焦点がしぼられている
・家族とか社会とか余計な要素も極力排除されている

で、恋愛はないとは書いたけど、縁談も断り生活の大半を弟の世話焼きに費やす姉と、遊びほうけ退学になり借金つくりついには病気になるダメ弟が姉のことをバカにしながらも甘えてしまう姿には、「男女のにおい」を感じないでもない。
終盤、リボンでお互いの腕を結び合って眠るところなど、姉弟の設定がなければバカな女子高生が泣き出しそうな純愛シチュエーションである。
どころか逆に、いつかこの二人が血縁関係を超えて男女の関係になってしまうのでは・・・という不安と期待までも抱かせるほどに、姉と弟の生活を濃密に描く。
姉が弟の願いで艶やかな着物姿で現れるところなど、精神的には男女の仲に達していたのでは。
弟は伝染を極端に恐れていたから、姉に手を出すことはなかったろうが、もし手を出しても姉は拒まなかったかもしれない。
そんな妄想を抱かせるのは、こちらの深読みか?作り手の狙いか?
ラスト、目覚めた姉が、病院内であることを忘れエプロンを巻き、家事を始めようとするところに、ダメ父、病弱継母、バカ弟のため女盛りの年頃を家事と介護に奪われた女の悲しさを感じた。

しかし、それほどの名作かなあ・・・というのも率直な感想。
1960年のキネ旬ベストテンを観ると
3位 黒澤明「悪い奴ほどよく眠る」
4位 木下惠介「笛吹川」
5位 小津安二郎「秋日和」
6位 新藤兼人「裸の島」
8位 今村昌平「豚と軍艦」
10位 大島渚「日本の夜と霧」
2008年現在においては「おとうと」より上記の6作品の方がはるかに高く評価されているように思う。
1960年当時は、今村、大島はまだ評価が定まってなく、新藤は当時も今もややマニアック、小津、木下、黒澤はマンネリで、若くして文芸作品をそつなくまとめた市川に年配評論家の票が集まったというところだろうか。

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