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シンガポール今昔物語

2023年01月31日 | 全般・イベント

こんにちは。駿台シンガポール校です。

 今回は「シンガポール今昔物語」と題しまして、かつてのシンガポールがどんな姿だったのかをご紹介します。

 とは言え、歴史的なことなんかはインターネットや、旅行ガイドに詳しく書かれているので、今更ここで書く必要はありません。そこでここでは100年以上前、つまり明治時代の日本人がシンガポールをどう見ていたのかを主眼として、少しご紹介したいと思います。

 今回それを調べるために私が利用したのは「国立国会図書館デジタルコレクション」というウェブサイトです。(国立国会図書館デジタルコレクション (ndl.go.jp)

 国立国会図書館とは日本国内で刊行された出版物がすべて納められている、言わずと知れた日本最大の図書館です。その蔵書の中ですでに著作権切れとなっている書物をデジタル化し、インターネット上で誰でも閲覧できるようになっているのが本コレクションです。蔵書検索は非常に簡単で、検索欄にキーワードを入れるだけで、それに関する明治期以降の出版物のリストが表示されます。さらに全文検索が可能なので、本のタイトルでなくても、調べたい事柄を入力するだけで、それが書かれている本や雑誌が自動的にリストアップされます。しかも、プリントアウトできますので学校の自由研究などでも役立つと思います。特に海外にいて、文献に乏しい状況にある人にはかなり便利なサイトでしょう。

 さて、今回はこのウェブサイトを利用し「シンガポール」を検索した中で特に面白かった記事をご紹介します、

 まずは『世界旅行 万国名所図絵』(嵩山堂 青木恒三郎編)です。

 この本は明治18年(1885年)に出版されたもので、海外旅行がまだ一般的でなかった頃、日本にいながらにして世界各国の様子を知ることができるということを目的に編纂されたものです。この中に「シンガポール港ノ記」(62・63頁)という章があり、そこに当時のシンガポールの様子がうかがい知れる記述があります。

 それによると当時人口は約155300人で内約10万人が中国人で、その他はマレー人やインド人、西欧人と書かれてあることから他民族都市であったことは今と同じです。しかし、現在と大きく異なる姿も記述されており、中でも、「民は稲を耕作し椰子や砂糖等を植へ丁香生姜胡椒等よく豊生せり而して此農業は専ら志那人の作る所とす」(一部表記改)とあり、当時は一定の規模で農業が行われていたことがわかります。

 現在、シンガポールは食料自給率10%未満で農地などは一切なく、所せましと公営住宅やコンドミニアムが立ち並んでいますが、当時はタイやベトナムのような田園風景があったかと思うと、その後シンガポールが歩んだ歴史も重なり感慨深いものがあります。

 次にご紹介するのは『馬来(マレー)半島事情』(二宮峰男著 内外出版協会)です。

 この本は明治31年(1898年)に出版されたもので、上記の本と違い、著者が実際に見聞・調査した内容が書かれてあるようです。そういうこともあって内容は主に著者の主観であってある意味生々しい当時の様子が記述されています。

 例えば、市街地中央にあるフォートカニングからタンジョンパガー(海浜部)に至るまで多くの会社や商店、ホテルや劇場が立ち並び、往来は辮髪の中国人、西洋人、インド人、マレー人、日本人などが行き交い、海沿いには多くの船舶が停泊している様子がリアルな筆致で書かれ、筆者はそれらの様子を「夫れ獅子街の奇観」(獅子街…筆者はシンガポールのことをその名の由来からそう呼んでいる)と評しています。現在でもシンガポールの他民族な様は訪れた者の目を引きますが、100年以上前の日本人には相当異様に映ったことは想像に難くありません。

 また、筆者はそんな市街地に「街道所見の人種中老人の稀なるは如何」と老人の姿が殆ど見えないことを疑問に思っています。そして「獅子街の住民多くは永住的ならずして、(中略)敢えて巣を営まんとはせず、壮者来り、老年去る。(中略)彼等の耳目は常に営利的にして、その生活は旅支度ならずんばあらず」と、老人が少ないのはこの地に永住する目的ではなく金儲けに来ている者が多いからだと考えています。加えて、こういう営利的な社会は「人情浮薄ならざるを得んや。人我を信せず。我亦彼を信せず」と人情に欠ける側面を持つと嘆いています。その傍証として頻繁に裁判沙汰があり、賄賂が横行し、また、神に祈る時でさえも自らの金銭的な成功を祈願する有様だと記しています。

 現在のシンガポールは多種多様な民族の老若男女が生活しており、それらが一様に非人情的ではありませんが、東南アジア随一の経済・金融都市国家へと発展したその根底には、100年前に著者が見たシンガポールの姿の名残りがあるのかもしれません。

 いかがだったでしょうか。

 今回は「国立国会図書館デジタルコレクション」を利用してかつてのシンガポールの姿を垣間見てみました。その内容がすべて真実だとは言えませんが、100年以上前の日本人がこの地をどう見ていたかを知る一つの例として興味深い内容だったかと思います。また、教科書に記された大きな流れとしての歴史とは一味違った歴史を、こういった資料で見ることは大変有意義なことだと思います。

 みなさんも、今いる国や気になっていることなんかを、このHPで検索してみてください。もしかすると多くの人が知らない、その意外な姿を知ることができるかもしれませんよ。

 

シンガポール校 M.K

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