こんにちは。駿台シンガポール校です。
今回は高校入試や模擬試験ですぐに使える古文実践テクニックについてお話しします。
高校入試や模擬試験の古文問題の出題内容はある意味パターン化されていると言えますが、その中でも最も出題頻度が高いのはいわゆる「主語特定問題」です。古文は現代文と違い主語が明示されないことも多く、古文に慣れていない人は正しく主語を追うのが難しいという人も多いでしょう。
そこで今回は主語特定に絞ってお話しします。
ポイントは、ずばり「助詞」です。
その助詞によって主語を特定しようというのが今回の狙いです。
ますは以下の古文の本文を見てください。
その際、傍線部⑴~⑻の主語が誰かも考えながら読んでみてください。
因みに主語は「粟田殿」「福足殿」「中関白殿」「周りの人々」および「筆者」のいずれかになります。
この粟田殿の御男君達ぞ三人おはせしが、太郎君は福足君と申しし【を】、幼き人はさのみこそはと⑴思へ【ど】、いとあさましう、まさなう、⑵悪しくぞおはせし。東三条殿の御賀に、この君、舞をせさせたてまつらむとて、⑶習はせ給ふほど【も】、⑷あやにくがりすまひ給へ【ど】、よろづにをこつり、祈りをさへして、⑸教へ聞こえさする【に】、その日になりて、⑹いみじうしたてたてまつり給へる【に】、舞台の上にのぼり給ひて、ものの音調子吹き出づるほどに、「わざはひかな。あれは舞はじ」とて、鬢頰引き乱り、御装束はらはらと⑺引き破り給ふ【に】、粟田殿、御色真青にならせ給ひて、あれかにもあらぬ御気色なり。ありとある人、「さ思ひつることよ」と見給へど、すべきやうもなきに、御舅の中関白殿のおりて、舞台にのぼらせ給へ【ば】、「いひをこつらせ給ふべきか、また憎さにえ耐へず、追ひおろさせ給ふべきか」と、かたがた見侍りし【に】、この君を御腰のほどに引きつけさせ給ひて、御手づからいみじう⑻舞はせ給ひたりしこそ、楽もまさりおもしろく、かの君の御恥もかくれ、その日の興もことのほかにまさりたりけれ。祖父殿もうれしと思したりけり。
以上は『大鏡』からの引用ですが、太字は登場人物、【 】は助詞です。
みなさんは傍線部⑴~⑻の主語がわかりましたか?
それでは、次に【 】の助詞を以下の現代語訳にも同じ箇所に示してみます(その際、例えば「ど」は逆説なので現代語では「が」になっています)。また、明示されていない主語も(太字)で示します。
この粟田殿のご子息たちは三人いらっしゃったが、ご長男は福足君と申し上げた【が】、(筆者は)幼い人はみんなそのようなものだと⑴思う【が】、(福足君は)たいそうひどく、みっともなく、⑵始末が悪くていらっしゃった。(祖父である)東三条殿の(六十の)祝賀で、この君に、舞をおさせ申し上げようということで、(粟田殿は福足君に舞を)⑶習わせなさる時に【も】、(福足君は)⑷だだをこねて抵抗なさる【が】、(周りが)いろいろと機嫌をとり、祈禱までもして、⑸お教え申し上げるうち【に】、その日になって、(粟田殿は福足君に)⑹たいそうすばらしく装束をお着せ申し上げなさった( 【ところ】、(福足君は)舞台の上に上りなさって、楽器の音調子を吹き出すころに、「ああいやだ。ぼくは舞わないぞ」と言って、結った髪を引き乱し、御装束をびりびりと⑺引き破りなさった【ところ】、(父の)粟田殿は、お顔色が真っ青になられて、茫然としたご様子である。(その場にいた)すべての人は、「そう思っていたことよ」とご覧になるが、すべき方法もないところ、御おじの中関白殿が(御殿の席を)下り、舞台にお上りになった【ので】、「なだめて機嫌をおとりになるのだろうか、また憎らしさに耐えられず、(福足君を舞台から)下ろしなさるだろうか」と(周囲の)人々が見ていました【ところ】、(中関白殿は)この君を(ご自分の)御腰の辺りに引きつけなさって、ご自分自身で(一緒に)⑻すばらしく舞いなさったことで、楽もさらにおもしろく、あの君の御恥も隠れて、その日の興も格別に増したそうだ。
いかがですか?
一応⑴~⑻の正解を示すと、
⑴筆者⑵福足君⑶粟田殿⑷福足君⑸周りの人々⑹粟田殿⑺福足君⑻中関白殿
となります。
その特定の際、ひとつの大きな目安として□で囲った接続助詞「を」「に」「ば」「ど」がくることで主語が変わっているのがわかるかと思います。
例えば傍線⑴で「思った」のは「筆者」ですが、「ど」がくることによって、それ以降主語が「福足君」に変わるといった具合です。
試験では主に主語が明示されていない⑴~⑻のような部分で「主語は誰か」と問われる傾向にあります。主語変化が起こる助詞は「を」「に」「ば」「ど」以外にも「が」「ども」などでも起こりやすいので、普段から古文を読む際にはこれらの助詞に注意して読むことをお勧めします(100%ではありませんので、必ず文脈判断は必要です)。
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シンガポール校 MK