以下は前章の続きである。
*以下は私。
舞台は飛んで大阪。
卒業式における国歌、君が代の起立斉唱を拒んだ大阪府立高校教員に対する減給の懲戒処分の取消しならびに慰謝料二百万円を府に求めた裁判の判決があった。
その請求は棄却と。
すなわち敗訴である(朝日新聞、二十七年十二月二十二日)。 その記事中、原告の奥野某はこう言う。
起立斉唱を拒んだのはクリスチャンとしての信仰が第一原因と。
その詳細はこの記事では分らないが、府立高校教員中、クリスチャンは彼一人ではない。
すると、彼からすれば、彼以外のクリスチャン教員はすべて背教徒と言うのか。
しかし、おそらく彼は、AKB48流にこう答えるだろう、他のクリスチャン教員とは戦わない、自分には〈愛があるから〉。
結構な話ですね。
なら、ついでにこう言ったらどうか、自分を処分した大阪府とは戦わない、自分には〈愛があるから〉と。
「汝の敵を愛せよ」ね。
この御都合主義的クリスチャン教員は第一原因としてこう言う、「起立の強制は国民を戦争に駆り立てた戦前の教育につながる」と。
爆笑ものの小理屈。
これは飲み屋での小話に使える。
もし彼がそれで老生に文句をつけてきたとしたら、こう答えよう。
あなたとは戦いません。
私にはあなたに対する〈愛があるから〉と。
こうした空理空論の大人版が出てきた。
加藤典洋著『戦後入門』をめぐっての著者インタビュー(毎日新聞、27年12月21日)に拠れば「国の交戦権は、これを国連に移譲する」と来た。
愚かさも極まった空理空論。
国連安保理事会における大国理事の〈拒否権〉をどのようにしてなくすことができるのか。
絶対にできない。
国連軍出動が特定国家の拒否権で左右されている現実に対する具体案がなくて何を言っている。
そうか、こう言えばいいか、日本自衛隊を国連に捧げます。愛があるからと。
古人曰く「〔自分は〕耕やす能はずして、黍粱を欲す。織る能はずして、采裳を喜ぶ」と。
朝四暮三
*因みに、このコラムの筆者は京都大学卒業、大阪大学名誉教授の加地 伸行さんらしい。