以下は月刊誌HANADA今月号に「中国は間違いなく政権崩壊する」と題して掲載された、E・ルトワック戦略国際問題研究所上級顧問、取材・構成奥山真司、からである。
アジアシフトの始まり
この半年間で世界は大きく動いた。米中対決がいよいよ始まったからだ。この対決は、中国のレジーム(体制)が変わるまで終わることはない。
その図式自体は、はるか以前から宣言されていたものだが、それが本格的に始まったということだ。
最初の宣言がなされたのは2012年。
いまから6年前、ヒラリー・クリントンの「アジアへの回帰(ピボット)」がそれだ。
ところが、アメリカはそれを忘れて他のことに目を逸らしてしまった。
たとえば、イラクの村の問題やアフガニスタンの部族の問題にかまけ、アメリカの大戦略は引きずられてしまった。
大戦略とは本来、グローバルなレベルの話だが、村レベルの問題に引きずられたのだ。
しかし、そのような状態は終わりを告げた。
原因は実に様々だが、一つにトランプ大統領の「中東には一切カネも兵士も使わない」という決断があることは明らかだ。
これには米軍も同意している。
軍は以前からアジアシフトを提案しており、いまや中東に居残ろうとしているのはマティス国防長官をはじめとする古い世代だけとなってしまった。
その他の軍人たちは、中東介入に何の価値も見出していない。
近代化も国家建設も意味がないとわかったからだ。
中東で何かヤバいことが起こったら援助するのではなく、爆撃だけしてしまえという考えになっている。
故マケイン上院議員のような米軍ロビーたちは、これまでイラクの村のような問題に目を奪われていた。
ところが、イスラム世界は決して平和になったり安定化することはない―米軍はようやくこの事実を理解したのだ。
よって軍事ロビーはいま中国に集中し始めている。
さらに、より重要なロビーがある。
テクノロジーロビーだ。
ごく最近まで、テクノロジー系企業のトップらがワシントンD・Cまで来て言ったことは、専ら「関税だけはやめてくれ」というお願いだった。
サプライチェーン(商品供給の流れ)を邪魔するからだ。
もちろん彼らは以前から関税を嫌っているのだが、以前と違うのはテクノロジー戦争において米政府に助けを求めていることだ。
アマゾンやフェイスブック、グーグルは、同じ土俵に立てば中国の同じようなサービスを持つ企業よりもはるかに優れている。
ところが問題は、彼らが中国でビジネス行為を締め出されているだけでなく、テクノロジーを盗まれていることだ。
知的財産権の侵害事案が相次いでいる。
盗み方は二つ。
一つは米国内で優秀な人間を雇うこと。
これは違法ではない。
しかし雇う時に、「もしいま働いている会社のハードドライブ、ラップトップ(ノートPC)、フラッシュメモリーなどにある機密情報を持ってきてくれたら、三倍の給料を出す」と言うのだ。
コンピュータの集積回路を作るには、大量の情報から成る設計図が必要となる。
その情報の抜き取りを北京政府の支援を受けた中国系のエンジニアが行うのだ。
米国のテクノロジー系企業にも問題があって、彼らは中国系の人間を警戒していたとしても、採用の際に断るわけにはいかない。
もし断ると「人種差別だ」と訴えられてしまうからだ。
テクノロジー流出に関するスパイのケースは、大半が中国系アメリカ人によって行われている。
にもかかわらず、防げないのである。
この稿続く。
*私は、NHK(朝日新聞は今は購読していないしテレビ朝日の報道ステーションやTBSは視聴していないので、その同類の事は全く分からないが)のwatch9が、ことさらに、米国の分断などと報道するのは、中国の工作下にあるからだと確信している。…そもそも米国は日本の様な単一民族国家ではない上に、銃の所有が認められている社会だから、昔から殺人事件等は、日本に比すれば圧倒的に多い国だったのである。*