以下は今日発売された週刊新潮の掉尾を飾る高山正之の連載コラムからである。
本論文も彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであることを証明している。
朝日の隠しごと
エジソンは直流電流で電気事業を立ち上げた。
部下の二コラ・テスラは交流がいいと主張し続けてクビにされた。
テスラはライバル企業のウェスティングハウス(WH)に移って交流の事業化を進めた。
彼はセルビアが生んだ天才で、今、150㌔しか走らない電気自動車も、彼の名に因んだものだ。
エジソンは直流のシンプルさがいいと信じ、交流は「危ない殺人電気だ」とネガティブ・キャンペーンでテスラを虐めた。
実際、犬や馬を交流電気で感電死させるイベントをあちこちで開いた。
死刑に交流電気椅子を使えばとも勧めた。
米国人はグロだから、面白い、それでいこうとなった。
最初に電気椅子に座ったのは斧で妻をぶち殺した30歳のドイツ人だった。
しかし処刑は馬ほどうまくゆかず、二度目の長い通電で死刑囚は黒焦げになって焼け死んだ。
それでも交流のよさは打ち消せず、エジソンは一敗地に塗れた。
エジソンのGE社は以後、テスラのWH社を相手に何件も訴訟を起こすが、テスラの知恵は別格だった。
両社の戦いは戦後も続き最後の勝負は発電用軽水炉で争われた。
GEは電気のときと同じにシンプルな沸騰水型を持ち出し、対してWHは複雑だが安全性の高い加圧水型を世に出した。
勝負はすぐついた。
米海軍は潜水艦搭載にWHの加圧水型を選んだ。
炉の周りで働く将兵の命を託するに値するのはWH製と判断したからだ。
土光敏夫もエネルギー資源を持たない日本には原発しかないと思った。
視察した結論はWH製だった。
土光はまた石川島播磨、東芝、日立に自前の原子炉技術を開発させた。
土光の見立て通り、九電力は軽水炉を導入していったが、ただWH製だけではなくGE製も東電が入れた。
米国の圧力があったと思われる。
土光は直ちにGEの介助に子飼いの石播と東芝を充てた。
何かあった時に備えたものだ。
実際、GEはエジソンと同じだった。
ふんぞり返って日本側にノウハウは教えず、格納容器も見せなかった。
すべて完成し、スイッナを入れるだけのターンキー方式だった。
日本を未開発国並みに扱かった。
いいものならそれでいいが、いざキーを回したらあちこち故障だらけだった。
放射線漏れや腐食割れもあって、運転効率はたったの16%という有り様だ。
石播、東芝がそこで動いた。
心臓部の材質も変えて、GE社も見違えるほど安全な炉に生まれ変わった。
GE製は安全性も疎かだった。
万が一のとき、格納容器から高圧ガスを抜くベントすらなかった。
事故が起きれば即チェルノブイリだった。
日本側はベントを新たに付けた。
公表しなかったのはGE社への配慮もあるが、もう一つ、馬鹿な朝日新聞が「昨日まで暴走原子炉だったんだ」とか騒ぐからだ。
3・11もGEの「低地に作れ」設計があだになった。
ただ福島をチェルノブイリにしなかったのは日本側の自立保守のおかげだった。
そして10年。
朝日がまた原発糾弾を展開した。
ベントに欠陥と無知な批難を浴びせ、電源は「地震で落ちたから地震大国に原発は危険」とも主張した。
溜まった使用済み燃料からは「6千発の核爆弾ができる」と繰り返して人々にあらぬ期待を持たせた。
「再び事故があれば日本は終わり」だから「脱原発の決意を」と提言する。
日本を憂え、再生エネで綺麗に暮らそう風に聞こえるが、朝日が並べた脱原発の理由は吉田清治の話と同じ、悉く嘘だ。
電源喪失は津波であって地震は関係なかった。
軽水炉の使用済み燃料では核爆弾は作れない。
だいたい炉も欠陥もみなGE製なのに、朝日はそれを隠し続けた。
10年、そんな嘘を並べては支那製の風力発電と韓国製の太陽光パネルを勧めた。
朝日は大幅経常赤だ。それで宣伝費でももらったか