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コン太:オ~イ、大変だ!大変だ!ものすごく怖い話を聞いてきちゃったよ。
ポン吉:どうしたの。そんなに息を切らして。あわてないで、ゆっくり話してごらんよ。
ミミ :そうよ。順序立ててゆっくり話してね。
コン太:うん。今日、僕はお母さんに頼まれて裏山にたきぎを集めに行ったんだ。
途中で下から人間がやってきたので木の陰に隠れていたらね、人間の話し声
が聞こえてきたんだ。
この山にはゆうれいタケという不気味で、なんだか怖い花があるんだって。
ポン吉:「ゆうれいタケ」って何だ。お化けキノコなのか?でも、今、花って言ったよ
な。
ミミ :ねえ、最後まで聞きましょうよ。
コン太:人間の話では、花の形は龍の顔にそっくりで、花なのに全体が真っ白なんだっ
て。
ミミ :真っ白って、白い花ならいくらでもあるじゃないの。
ポン吉:まだ話は終わってないよ。最後まで聞こう。
コン太:あのね、茎も葉も花もぜ~んぶがろうそくのように真っ白で、しかも透き通った
感じなんだって。それが真っ直ぐに立って、こっちをにらんでいるらしいよ。
それも一つや二つではないらしい。あの人間が怖そうに話していたから、ゆう
れいタケを見たら目が見えなくなるとか、毒を吹き出すのかもしれないと思っ
たんだ。だから早く皆に知らせようと、大急ぎで走ってきたんだよ。
ミミ :どれくらいの大きさなのかな?龍の顔に見える花というから、大きいんだろう
な。5メートルくらいはあるのかしら?
コン太:龍の顔をしているんだから、きっと大きいと思うよ。
ミミ :どんな場所に咲いているのか話してた?
コン太:ビックリしてすぐに走りだしたから、途中までしか話を聞けなかったんだ。
ポン吉:なんだ、最後まで聞かなかったのか。でも花なら動き回るわけじゃないから、
そんなに怖がらなくてもいいと思うけど。
コン太:でも、でも、何かが起きてからじゃ手遅れだろ?村の皆に早く知らせようよ。
ミミ :ちょっと待って。今までお父さんからもお母さんからも、そんな話は聞いた
ことが無いわ。その話が本当なら、他の人も知っていて注意の知らせがあ
るはずよ。
ポン吉:確かにそうだ。ねえ、長老に相談しようよ。長老は山のことなら、なんでも
知っているから。
コン太:分かった。これからみんなで長老の所へいこう。
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ポン吉:長老、こんにちわ!恐ろしい「ゆうれいタケ」のことで相談に来たんだ。
長老 :おっ、仲良し3人組だね。「ゆうれいタケ」だって!誰に聞いたのかな?
コン太:やっぱり。「ゆうれいタケ」のことを知っているんだ。見たら目が潰れちゃう
の?
長老 :ハッハッハ。しっかりお聞き。ゆうれいタケは「銀竜草」という花の別名じゃ
よ。花が咲いている場所を知っているから、連れて行ってあげよう。実物を見
るのが一番じゃ。ついておいで。
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長老 :おお、ここじゃここじゃ、見つけたぞ!
どうだ、ちょっと変わっているが、よく見るとかわいい花じゃろうが。
ポン吉:エッ、これがゆうれいタケなの?だれだ、5メートルなんて言ったのは。
コン太:なんだ、こんなに小さいの?でも花は龍の顔に似ているし、なんだか真っ白な
着物を着たゆうれいみたいだね。人間の言っていることは間違いなかったよ。
でも毒をまき散らすんじゃないの?
長老 :大丈夫。毒は無いし、目も潰れないよ。大きなものでも15センチぐらいじゃな。
一目見ただけだと花には見えず、キノコのようだし、暗い森の片隅で、おぼ
ろげに白い色が浮かび上がるその姿は、まさに「ゆうれいタケ」の名前通り
じゃろ。
銀色の龍のようだから銀竜草というのもピッタリの名前じゃ。両方の名前を
ちゃんと覚えておくんじゃよ。
ミミ :でも、どうして他の花と違って全体が真っ白なの?
長老 :銀竜草は腐生植物の仲間でな。土の中の菌から栄養をとって成長して花を咲か
せるから、普通の花が持っている葉緑素がないんじゃ。それで全体が白いん
じゃよ。
コン太:勉強になったな。でもこんなに小さくて、可愛い花なのに人間はなぜ怖そうに
話していたんだろう?
長老 :ホントに怖そうだったのかい?「ゆうれい」とか「龍」とかって聞いて、コン太
が勝手にイメージを膨らませたんじゃないのかな?
ミミ :そうよ。人間が怖がっていたんじゃなくて、ただコン太が早とちりしただけでし
ょ。
長老 :危険な花だと思ったのはコン太の早とちりだが、皆を危険から守ろうとしたその
気持ちは大切じゃな。えらいぞ、コン太。
ポン吉:長老のところに来て良かったね。長老に話す前に皆に知らせてたら、村中がパ
ニックになっていたかもしれないじゃないか。
コン太:ヘッヘッ!みんなごめんね。僕の早とちりだったんだ。お蔭で村の皆に迷惑をか
けたり、叱られたりしないですんだよ。あ~、よかった!
ミミ :だけど、こんなに不思議で珍しい花を見ることができたのはコン太のお蔭よね。
ポン吉:そうだね。今日は褒めておくことにしよう。