すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

出される気持ち

2011-06-20 21:49:58 | ひとりごと
 以前にも書いた事が少しあるが、在宅介護をしていると、訪問先でお茶などを出される事が多い。基本、いただけない事になっているのでお断りするのだが、必要以上にお断りするのも失礼なので、結局いただく事が多い。
 しかし、出されるものは「遠慮すべき」ものだけではなく、「遠慮したい」物もあるのも事実だ。
 入社したての頃、ヘルパー主任と訪問した家で1キロ1万円もする上茶を出された。素晴らしいお茶なのだが、残念ながら湯呑みがものすごい状態だったので、その家を訪問すると何を差し置いても洗い物から始めるのだと教えられた。遠慮しても、出してくれるので先手を打つのだ。
 ある時はデイサービスにお婆ちゃんを介護している青年が、手作りのクッキーを持参してくれた。彼は少し障害があったのだが、寝たきりのお婆ちゃんを一人で介護している優しい青年だった。ただ、いつも爪は伸びていて手も真っ黒で、その手で作ったというクッキーはかなり衝撃的だった。
 満面の笑顔で差し出されたそれを、デイサービスの先輩は
 「すごいなあ。うまそ~!いただきま~す!」
と口に放り込んだ。そっか、そりゃ食べなきゃ失礼だ。火が通ってるんだし、大丈夫!と私も続いた。しかし、先輩はマジシャンのように上手に気づかれずに吐き出していたという。
 「お前はバカじゃなあ。」
 その言葉を聴きながら、その技術を習得するのは無理だな・・・と思った。
 中にはものすごく上手にお断りする先輩もいたが、手作りのお饅頭でデイサービススタッフの3分の1がお腹を壊した事もある。
 訪問先ともなるとますます断るのは難しい。悪気は無くただ本当に遠慮しただけでも
 「そうじゃわなあ、こんな汚い家で、婆ちゃんの入れた御茶や飲めんはなあ。」
などと悲しそうに言われる事もある。だから、基本私は遠慮できない場合はいただく。
 そういえば、入れてくれたコーヒーを匙でかき混ぜながら歩いてきて、途中で味見をして、その匙をもう一回突っ込んでかき混ぜたものを出された事もある。これはもう、笑い話である。
 在宅介護支援のちょっと裏話。


にほんブログ村 介護ブログ 介護職へここをクリックしてお立ち寄りください
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする