すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

ブレない女、キヨちゃん

2015-03-07 21:00:00 | うちのキヨちゃん
 うちのキヨちゃんは、あまり食べ物の好き嫌いはないが「好きなもの」ははっきりしている。例えばケーキなどは、決まってイチゴのショートケーキである。そのくせ、イチゴは酸っぱいからと食べない。ではイチゴのショートケーキの意味がないではないか・・・となるのである。
 おそらく他のケーキでもいいのだが、間違いない一品だからかもしれない。だから「これなら」と思う物を選んであげると食べられる。自分で選ぶとイチゴ~になるのだ。
 先日くりりんがキヨちゃんと出掛けた時、戻ってから笑い話の報告があった。お昼に一緒に店に入ったのだが、キヨちゃんは「親子丼」が食べたいと思っていた。
 オーダーを取りに来た店員さんが、
 「すいません。今日は定食だけになっています。お刺身定食と、ショウガ焼き定食と・・・・。」
と出せるものを説明してくれたと言う。一通り説明し終わった所でキヨちゃんは一言。
 「親子丼。」
 「・・・・!」
くりりんは、
 「店でなかったら『え~!』言うて転んどるところやわ。」
と思いだし笑いした。
 「すいません。出来るか聞いてきます。」
 店員さんは気の毒に、厨房に確認に走ってくれ、結果やってない「親子丼」を出してくれたのだそうだ。
 まあ、この場合キヨちゃんは耳も遠いので、店員さんの説明が聞こえてなかった可能性はある。もし店員さんが気を回さず、
 「すいません、さっきも言いましたが、今日は定食しか出来ません。」
と言っていれば、そこをごねるキヨちゃんではないはずだ。
 さて、今日はキヨちゃんは美容院だった。私はここ数日あちこち痛いのでメンテナンスに出掛けた。雨降りだったので、店まで送り迎えし、お昼はとりあえず入れる所に決めた。
 店に入る時、キヨちゃんに前もって忠告した。
 「母ちゃん親子丼食べたいだろうけど、ここのは普通のと違うけん、イメージ違うよ。」
 「不味いんか?」
 「う~ん、不味くはないけど、卵がふわとろではなくて、あんましなんよ。」
そうなのだ。決して悪くはないのだが、私たちがイメージするふんわり卵に鶏肉やたまねぎが入っているのと違い、白身も黄身も存在感ばっちり、卵をどかんと落としました的な丼なのだ。以前伯母が初めて食べた時に、
 「卵二つもいらへんけん、溶いたものでとじてほしい。」
と言っていた。そう卵の数が分かるような状態なのだ。だから、いつもの親子丼を想像すると違うのだ。
 そして、テーブルに着いたキヨちゃん。メニューをしっかりと確認し注文した。
 「親子丼。」
・・・・。だよね・・・。キヨちゃんはいつだってブレない。

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コメント (3)
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