

森本薫の『華々しき一族』を観てきました。
若尾文子が主演しているせいか、観客の8割がオバサマなんです(←若尾さんいつまでも綺麗!!の連呼)。
『華々しき一族』が発表されたのは昭和12年。
会話のウイット、テンポの良さ、いままで日本ではあまり馴染みがなかっただけに、「日本サロン劇の傑作」と賞賛を浴びた。いわゆるこの「風俗喜劇」が大いにもてはやされたのです。
しかも、主人公の「諏訪」を演じた杉村春子がこの芝居の当り役となり、のちに、杉村主演で繰り返し上演され、文学座の財産演目にもなった。
今回は「諏訪」役には、若尾文子である。
初演からすでに半世紀をこえて、時代は大きく変わって二十一世紀にはいった。
このたびの上演では、原作のプロットだけをかりて、新装版の『華々しき一族』を創りあげた。
そもそも、大まかに分けて、"動"と“静”の芝居がある。とすれば、このお芝居は後者である。
家族構成が少し複雑ではあるが、裕福で、穏やかな家族のなかに、須貝(松村雄基)という下宿人、つまりは他人が同居しているがゆえに”さざ波”が立つ程度であろうか。
ストーリーよりも、人間心理の機敏を、機知とユーモアに溢れる軽妙な会話が、本作品の身上なのだが、さすが脚本の大藪郁子さんは、現代には不向きな古風さを感じさせることなく、しかも、それぞれの役者の個性をうまく生かして書き上げた。
見事にリメイクされた『華々しき一族』であった。
若尾文子は、おめず臆せず自分なりの、新しい「諏訪」像をつくりあげた。須貝役の松村雄基は、手馴れた役作り。前回は『大川わたり』で新三郎という”色悪”を好演したが、今回は仕事ひと筋の青年役。来年は名古屋の御園座で、坂本龍馬に挑むらしい。
昌充役の徳重聰は、舞台初出演ながら若さと熱情をぶっつけて力演。
ほかに、藤谷美紀、吉野紗香、西郷輝彦らが共演。