★序 章★
夜の星はやがて 聖なる瞬間(とき)を知り
真白な雪になって落ちる
君の華奢な肩を 抱きしめたいけれど
ロマンスが溶けてしまいそうさ
車のハザードが急かすように
無口な人を照らしてる
I'll kiss you in the holy night
yes, 熱い想い
このときめきを忘れないで
I'll kiss you in the holy night
yes, 愛の力
この江の島で素敵に・・・
メリークリスマス
KAT-TUNが歌った『江の島のクリスマス』です。
赤西仁のソロがしびれます。
凍るような・・・
透きとおるような・・・
精巧なガラス細工のような・・ と言いましょうか・・。
それに歌詞がとても切なく、心に沁みてきます。
セピアカラーのクールな光景が泛んできます。
クリスマスにぴったりのラブソングです。
クリスマスの江の島はファンタジー。
鮮やかなイルミネェーションで飾られ、島全体が宝石箱のようだ!
そして、なぜか人びとを詩人にしてくれます。
きっと、あなたのハートに・・・
メリークリスマス・・・・
★第二章★
デジカメだけを持って、七里ヶ浜のホテルを出たのは昏れどきだった。
江の島の弁天橋を渡り、ヨットハーバーへと向うつもりだが、時間に空きが出来たので、その一本奥まった場所にある『カフェーマル』で少憩することにした。
店内はアンティークな机やイスが竝び、各テーブル上には古びた西歐風の置時計がカチカチと時を刻んでいた。
手作りのケーキとファイヤーキングのカップで供されるコーヒーが驚くほどに美味。
コーヒーを啜りながら、わたしは、ついさっきから窓際の席で、しきりに携帯電話をかけている女性をみかけた。
彼女は何度となく電話をかけるが、相手が電話に出ないらしい。
呼び出し音だけが鳴っている。
彼女は大きく息を吐いてから、ポイと携帯をテーブル上へ投げ出した。
ほんの数分しか経たないのに、また携帯をとって電話をかけはじめた。
やはり相手は出ないようだった。
「二度出ないのは三度かけても同じでしょ!!」
そう言ってやりたかった。
今夜のクリスマスイブに、男とデートの約束でもしているのだろうか・・・。
だとすると、約束の時刻をとおに過ぎているのに男はあらわれそうにない。
携帯電話という便利なおもちゃを手にすると、知らぬ間に時間をつぶせるものである。
彼女はそのおもちゃを弄ぶように、また電話をする。こんどはどうやら行きつけの美容院らしい。
「この間かけたデジタルパーマがうまくかかっていないので、もう一度かけ直してほしい」
ずいぶんと高飛車な物言いである。
約束の時刻に来ない男への苛立ちと、怒りをふくんだ声であった。
ついては自分は忙しいので、来週の××日しか空いていないから、その日に予約を入れて欲しいと主張していた。
棘のある口調だった。
決局、わたしと携帯を離さない女性だけが店に残った。
わたしが店を出るまで相手の男はついに姿を見せなかった・・・・。
★終 章★
島の上ばかりが江の島の魅力ではない
時にはヨットハーバーまで足を延ばすのもいいだろう
湘南港のイルミネーションは ひと味異なる
霧が靄って 紗をかけた舞台はエトランゼ
ヨット60艇ほどあろうか 無数の光の帆が澯き
海面(みなも)に映して 光の乱舞がはじまる
海上自衛隊の掃海艇『のどじま』(画像・中央)も
みなとを一人占めするかのように
暗澹と横たわっていた
少し風が出たのだろうか・・・
夜目にも處々白い波頭だった
ひゅーと夜風が 面を打ってきた
もう二度とこの江の島を訪ねることもなかろうかと
ふりかえれば
波の音が背に迫っていた