迫り来る春の気配を、敏感にはらんで見せてくれるのは、やはり庭に咲く草花ではないでしょうか・・・。
とりわけ「あしび」(画像/左)と「沈丁花(じんちょうげ)」(画像/右)が、いま、わが家の庭を彩っています。
「あせび」とよぶ人がいますが、「あしび」と読むのがより文学的な響きがあります。
花はすずらん、どうだんに似て、薄紅色の小さな壺状で房をなして咲き競っております。
あしびを漢字で『馬酔木』と書きますが、字の表記のとおり、馬が喰べると酔って足が萎えることから「足癈(あしじひ)」と呼ばれ、それが変化して「あしび」になり、漢字もその由来によるものなんです。
ワタクシも足がしびれて感覚がなくなった苦い経験があります。
「あしび」を口にした訳ではありません。
それはヨコハマの某酒場で、「スクリュードライバー」というカクテルを悪友に勧められて飲んだときです。
足をとられて、立つことすら出来ませんでした。
それにしても、「あしび」は有毒植物とも思われぬ可憐な花です。
「沈丁花」は8年程前に植木市で買ってきて、勝手口あたりの空き地に植え込んだ苗木ですが、こんなに成長しました(画像/右)。
その香りが沈香(じんこう)にも丁子(ちょうじ)にも似ているので「沈丁花(じんちょうげ)」と名付けられたのだそうです。
安物の香水ほどその匂いは強烈だと云います。
沈丁花の香りは、鼻にしみるような強い芳香を放ちますが、高貴で、けなげな”香り”なんですね。
そのけなげな静けさに、胸のとどろくあやしさを覚えるのです。