Dream Gate ( 中野 浚次のブログ )   

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大地真央、今井翼の「ガブリエル・シャネル」  -大阪松竹座ー

2010-03-31 | 演劇



『椿姫』、『マリー・アントワネット』、『紫式部ものがたり』に次いで大地真央主演シリーズ4作目。
今回の舞台は、かの「シャネル」の創業者、ガブリエル・シャネルの生涯の物語です。

「シャネル」といえば、実は「香水」しか知らなかった。それもシャネルの5番。
「モードの女王」の呼称をほしいままにしたガブリエル・シャネル。
数々の伝説に彩られ、数奇な、しかも波乱に満ちた人生を歩んだ女性だとは、ほとんど知りませんでした。

正直に云おう。
今回の『ガブリエル・シャネル』は、基本的にストレートプレイなのか、それともミュージカルなのか?
中途半端もはなはだしい。

というのは、新橋演舞場の初演で8曲だった音楽が、今回の再演で11曲になった。
これでは、もうミュージカルだ!

「大地真央さん、今井翼さんという歌と踊りのチームだから、振り幅を広げた」
演出の宮田慶子さんはいう。
なんだかよく判らない理屈である。


 



ガブリエル・シャネルの生きた時代は、まさに19世紀から20世紀へと、世界が大きく変動した時期。
女性が「自分らしさ」を求めることなど許されなかった時代に、彼女は「自分らしさ」を追い続けた。
つまり彼女の生き方と作り出した多くのスタイルがいかに斬新であったかは、その証しであった。

今回の舞台は、「不屈の女王」とよばれたガブリエル・シャネルの人生を追いかけただけ。
13着用意したという大地の衣装を、次から次へと披露しただけだった。
歌あり、踊りあり、ラブロマンスからコミカルな芝居と、盛りだくさん。
すべてとは云わないが、それが「絵空ごと」になってしまっている。
作品の「主題」が至極あいまい。
舞台が未消化だからである。





ラブロマンスといえば、ガブリエル(大地真央)とアーサー(今井翼)は強い絆で結ばれて、潮騒に包まれて愛を語り合う・・・・
ドーヴェルの海岸をバックに大地と翼のジュエット。

韓流ドラマと変らない安っぽいメロドラマになってしまっている。
商業演劇の伝統的な世界をきわめて上質なレベルで再構築する方法に進んで欲しかった。


酷評ばかりしてきたが、感心した場面もいくつかある。
大地真央が12歳のときのハジけっぷりや、年老いてからの演技は思い切りがよい。
大地の華やかさと陽気さが光った。
それと、シャネルのトレードマークともいえる”くわえ煙草”がサマになっていた。





相手役の今井翼はアーサー・カペルをかっこよく演じていたが、大地真央とはかなりの温度差。

助演の高橋恵子、青年座の那須佐代子はさすがに存在感がある。
篠塚勝、戸井勝海も手堅く舞台を引きしめている。

アールヌーボーやアールーデコのデザインをうまく取り入れた舞台美術の妹尾河童は秀逸。
衣装の名倉加代子も際立った。

カーテンコールではドレス姿の大地真央が後を向いた瞬間に、香水のかおりが客席まで匂った。
もちろんシャネルの香りでした。

                                  (2010年3月25日 大阪松竹座所見)

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