その日、松本に着いたのが昼
どきだった。
山登りの前に、まずは腹ごし
らえ。
山登りといっても、せいぜい標
高2000㍍程の美ケ原高原。
立ち寄ったのが松本にある中
華料理店
「驪山」。
「松本に行けば、かならず「驪
山」の料理を口にしたい!!」
かねてからそう思っていた。
池波正太郎さんの
著書『むかしの味』でこの店を知った。
”とても旨いから寄ってみなさい!!”
信州・松本で中華料理とは?
およそ不似合いだとおもえたが・・・
この店の料理の旨さにおどろいた。
「この店には、むかしから日本人の舌になじんできたものの旨さがある」
池波正太郎は『むかしの味』の中で、そう紹介しています。
もっとも、現代のチャイニーズ・レストラン「驪山(REIZAN)」でなく、当時は「竹乃家」という名前で親しまれていました。
大正年間に中国広東省から日本に帰化した現在のシェフの祖父が、この松本に移り住んで、「竹乃屋」という中華料理店を開いたのが、はじまりだそうです。
その祖父が残した貴重なレシピを持って、いまの夫婦が、この地でチャイニーズ・レストランを開いた・・・というのがお店の由来なんです。
松本に住み暮らす人びとはもとより、たとえ1年でも松本にいた人ならば、まず「竹乃屋」を知らないはずがない。
およそ中華料理店らしくないモダンな店構え。
カウンター10席と5席ほどしかないテーブル席は、いつも満席の盛況。
さて、お料理ですが、あらかじめコース料理を予約しておきました。
<冷菜盛り合わせ・特選料理5品・お食事・デザート>のコースです。
■ 冷菜盛り合わせ ■
常時8種類以上のオートブルの盛り合わせ。
ヌーベル・キュイジーヌ・ソノワの盛り付けがすてきです。
ここでヱビスビールで乾杯
旅の無事を祈って・・・・。
なによりもうれしかったのは、食後のコーヒー
中華でさ、コーヒーを飲ませてくれるお店がほかにありますか?
あれは、東京・赤坂の有名な中華のお店でした。
コーヒーがなく、ホテルマンY君とベランダに出て水道水でガマンしたことがあります。
苦い思い出になりました。
それにしても、このお店の落ち着きはどうでしょう。
人の心と生活が・・・
まだ充分に潤い、余裕をたたえていたころ
そんなフンイキがただよっていました。