Dream Gate ( 中野 浚次のブログ )   

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ことしも”京の顔見世”観てきました!!

2011-12-18 | 演劇


今年の「京の顔見世」は、昼の部はどれも江戸が舞台の演目が並んでいる。

京の顔見世で江戸の芝居を見る!!

おかしな話だが、それも東西合同歌舞伎と銘打ってはいるが、東京勢は菊五郎、三津五郎、左団次、時蔵ら幹部クラスの役者は4人だけ。

どうしても藤十郎をはじめ上方役者が大勢を占めている。


江戸が舞台といえば、『勧進帳』に次いでよく上演される『寿曽我対面』。その舞台となった工藤祐経の館は鎌倉の材木座。

続く川口松太郎の『お江戸みやげ』は、天保初年の梅香る湯島天神の境内が舞台。

所作事で清元の『隅田川』はいうまでもない。

歌川広重「江戸百景」でもお馴染である。

最後の演目の『与話情浮名横櫛(切られ与三)』は木更津の見染と源氏店の二場。

「いやさ、お富・・・・」で有名な「源氏店」は、東京・日本橋人形町の一角。

このあたりは幕府のお抱え医者が多く住んでいたらしい(←松竹歌舞伎検定二級の設問にありました)。


● お江戸みやげ

 川口松太郎が歌舞伎に書いて評判をとった肩のこらない喜劇。
結城紬の行商に来たお辻(三津五郎)とおゆう(翫雀)は、人の情けという「みやげ」を貰って江戸から帰って行く心温まる人情ばなしである。
さらりとした芝居だが、芸も気心も互いに知りつくした腕のある役者同志でないと、この芝居の面白さが充分に生かされない。
東京・歌舞伎座で観たときはお辻に芝翫、おゆうに富十郎だった。
どちらも故人になってしまった。


今回は三津五郎のお辻に翫雀(←画像/上)のおゆうという若返った配役。
感心したのはおゆうの翫雀のうまさ。まさしく富十郎ばりである。観客も爆笑の渦。
三津五郎のお辻はこの女のケチなところ、一筋の純情をうまく引き出していた。

お辻はたまたま湯島境内にかかっていた宮地芝居を見て、栄紫(愛之助)という役者に一目惚れする。
栄紫の愛之助はどう見ても江戸の役者に見えない。
なよなよとした上方役者になってしまっている。
その恋仲になるお紺の梅枝は一本調子。もう少しツンツンしたところがあってもよい。 

 

       

 
お紺の養母である常磐津の師匠文字辰には竹三郎(←画像/右)。
川口作品特有のチャキチャキ江戸っ子役には、このひとの芸風からして不向きなことは分かっている。
それはこの人のガラでしかたがない。
今回はどちらかというと悪親分の姐御に見える。
それだけに腹黒いところが出ていたのはさすが。

一座の女形紋吉吉弥(←画像/左)も、チョイ役とはいえ重要な役どころ。
酒を飲まないと舞台が務められないというのんべーの女形役者。
かんじんの酒の飲みっぷりがよくない。
この役は歌江が実にうまかった。うだつの上がらない役者の味を見せていた。

茶店のお長(右之助)、鳶頭の権十郎、角兵衛獅子の満太郎がそれらしく演じていた。 

 


● 寿曽我対面

我当(←画像/右)の工藤は、芝居が丁寧で苦味走った悪の影の濃いのがよい。
愛之助初役の五郎は、たしかに勢いはあるが、ただの力だけ。
これでは荒事の芸とは言えない。
勢いをイキに見せてこそホンモノの芸。
対する兄十郎は江戸和事の代表格だ。孝太郎の十郎は全体的に柔らかな味が足りないのである。
秀太郎(←画像/左)の舞鶴が精一杯の力演であろうが、この役にはもっと洒落っ気が欲しい。

「対面」は祝祭劇ともいわれ、ドラマがなく、役者の持ち味だけで見せる芝居。
その持ち味がないと、面白くももおかしくもない芝居になる。
どうしたわけか間ばかりが目立った今回の「対面」であった。


 

● 清元「隅田川」

坂田藤十郎(←画像/上)の名では初めてとなる今回の「隅田川」。
そもそも出典は”能”だが、能よりも登場人物も少なく、シンプルに仕上げながら、歌舞伎味がしっとり滲み出ている。
今回は幕切れの照明に一工夫こらし、余韻を漂わせた。
舟長の翫雀も初役ながらこまかな情にあふれた舟長であった。


● 与話情浮名横櫛 (切られ与三) 

ごちそう役でもなかろうが、今回の『切られ与』では蝙蝠安を菊五郎がやる。
歌舞伎座でさえ考えられそうにないキャスチング。もちろん初役である。
これが昼の部の大目玉か。
一見どうやっても出来るように見えるが、これがなかなかイキをつかむにも型がある。
軽妙で、間もよく、それでいてさり気ないところが絵になっている。
いい蝙蝠安である。

時蔵のお富は色気が少なく、冷たさだけが目につく。
与三郎は仁左衛門、藤八は松之助

                                        (2011年12月13日  京都・南座昼の部所見)

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