誰にでも忘れ得ぬ味があるものである。
道頓堀に「中座」という芝居小屋があった頃、火野葦平の『女挟一代』の芝居がかかった。
清川虹子の座長芝居だった。 ♪泣きはしません つらくとも いつか中座の華になる・・・そんな演歌の歌詞もあったっけ。
それくらい当時の中座の芝居には熱狂的なファンが多かった。
その頃はまた、中座を観劇したあと、仲間ときまって法善寺横丁の飲み屋街へくりだすのが常だった。
たしか「本湖月」とかいう飲み屋だった。
そのお店で付きだしに出た「赤貝とワケギのぬたあえ」の味が、いまも忘れられない。
このぬたあえのまあるい酸っぱさ、口の中でふわっとほどけていく。
白味噌のふくよかな甘みと、お酢のツーンとしないまろやかさ。
この調味料のなんとも云えないハーモ二―がたまらない。
7年前、中座の火事で店は全焼したが、お客の声に励まされて再建されたと風の便りにきいた。
「本湖月」のホームページはコチラ→http://r.gnavi.co.jp/kb6h500/
「 赤貝とわけぎのぬた和え」のわたし流のレシピ
決め手になるのは赤貝。デパ地下で地元産(明石)の赤貝をゲット。最近は韓国、中国産ばかり出まわり国内産の赤貝はごくまれだそうです。
当時を思い出しながら、自分流に調理しました。
① 赤貝200㌘、酒40㏄、砂糖15㌘、卵黄1個をボールでしっかり混ぜ合わせてから火にかけ、弱火で焦さないように15分程度練ります。
② ワケギは塩少々を入れて湯がき、冷めてから2㌢ほどに切っておきます。
③ 赤貝を食べやすい大きさに切る(わたしは魚屋さんにしてもらいました)。
④ ①で作った玉味噌に千鳥酢45㏄、練り辛子15㌘を入れ、ワケギと赤貝を加えて和えると上掲の画像のように出来上がりです.。
この一品はやはり日本酒に合いそうです。
ことに福井県の辛口「黒龍」をぬる燗で。あなたにステキな時間を演出してくれると思いますよ。是非ご賞味を。