芸能界きっての読書家、女優小泉今日子さんの「小泉今日子書評集」
2005年から10年間、 読書委員の書評97冊をまとめたものであ
る。
この書評が独特なもので自らのエピソードを交えさりげない文章で
読み手を惹きつける手法は秀逸である。
そこで4冊の書評の冒頭部分を紹介したいと思う。
■穂高明「これからの誕生日」
見ず知らずの人の人生を想像してみることがある、この世にはたく
さんの人が生きていてそれぞれの毎日がある、私の陳腐な想像を超
える幸福や悲しみがきっとある。
■辻村深月 「ツナグ」
死んでしまった人に一度だけ会えるチャンスがあるとしたら私はど
うするだろうか?
■益田ミリ 「ほしいものはなんですか?」
とりあえず今を生きるために必要なものを十分に手に入れてしまっ
た私にはほしいものなんてないのかもしれない、でも心のどこかで
自分の人生には確かになにか足りないと感じてしまう日々である。
■桐江キミコ 「お月さん」
この世の中では生きにくそうな人達が悲しくなるくらい、はかなく
小さな夢を見ながら生きている、それでもいいから生きたいんだ!
という切実な思いが伝わってくるからぎゅっと抱きしめてあげたく
なるほどみんな愛おしい。
このように本の中身についての評論に入る前に、冒頭の一行で読み
手を惹きつける、自分が考えていること、感じていること、懐かし
い記憶など小泉今日子という一人の女性の本音が聞こえてくるとこ
ろが魅力である。
特に「別れ」について言及した次のフレーズが私が最も気に入ってる
書評のひとつである。
「生きている私はサヨナラを言った人たちのことを時々思いだす、求
められれば思い出を語る、そうすれば私は死ぬまでその人たちは私の
なかで一緒に生きているような気がして頼もしい気持ちになる」