江戸時代の武家社会では表立ってキュウリを食するのが憚られた。
キュウリを切ったときの断面が三つ葉葵に似ているからだ。
しかし、キュウリは暑い夏場に冷やしたキュウリはとてもおいしい。
それに成長の早いキュウリは安い。
その辺の事情もあったのだろう。厳密に守られていなかったようだ。
実際、キュウリを食べて切腹とか、閉門などに処せられた例は聞かない。
武士は、キュウリを公の場では食べないという、いわばマナーに属する問題だったのであろう。
宮越松子氏の「幕末のさる大名家の御献立」は、江戸に参勤交代に来ていた小大名の献立を一年に亘って分析した労作だ。
この研究によると、まったく食卓に上らなかった野菜は、ネギ、ニラ、ラッキョウの類である。
一年を通じてこれらの野菜は一回も食されていない。
公務をこなす大名という立場上、臭いの強い野菜は敬遠されたのであろう。
普通の武士がネギ、ニラ、ラッキョウの類を食べなかったかどうかは分からないが、現在のような歯磨きも口臭防止スプレーもなかった時代、大名という重職にある武士から敬遠されたのは十分にうなずける。
不思議なのはニンニクで、祝い膳の際に使われている。どのような料理に使われたのかは分からない。たった一回ではあるが、臭いの点ではネギやニラ、ラッキョウよりも強いニンニクが使われたのは不思議でもある。ニンニクは薬用として用いられたのかも知れない。
江戸時代は野菜の数よりも魚の種類が豊富であったが、魚でも武家には食されなかったものがある。
コノシロである。
コノシロは出世魚でシンコ、コハダ、コノシロとなる。今では寿司ネタのコハダが有名かも知れない。
コノシロは、「この城」を連想させる。
「この城」を焼くのは憚られたのである。
また、切腹の時に添えられた魚であるともいう。
そこから、武家社会では嫌われ食べられなかったようであるが、これはマナーというより、縁起が悪いといった嫌われ方だった。
禁止と言う点では、武家社会では忌日や精進日などが設けられた。
忌日や精進日には、魚や卵を含め、生き物を口にすることができず、野菜や豆腐などの植物性加工品のみとなった。
これは武家社会だけかというと、江戸の小噺に精進日に初鰹を貰って困っている男の話があるから、案外、庶民も守っていたようである。
そのほか、武家献立のなかには、「ご主人塩断ち」などという日もあり、塩分までも規制された。
なんとも不自由なようであるが、飽食の現代と違ってある意味では健康的な食生活であったようにも思える。
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キュウリを切ったときの断面が三つ葉葵に似ているからだ。
しかし、キュウリは暑い夏場に冷やしたキュウリはとてもおいしい。
それに成長の早いキュウリは安い。
その辺の事情もあったのだろう。厳密に守られていなかったようだ。
実際、キュウリを食べて切腹とか、閉門などに処せられた例は聞かない。
武士は、キュウリを公の場では食べないという、いわばマナーに属する問題だったのであろう。
宮越松子氏の「幕末のさる大名家の御献立」は、江戸に参勤交代に来ていた小大名の献立を一年に亘って分析した労作だ。
この研究によると、まったく食卓に上らなかった野菜は、ネギ、ニラ、ラッキョウの類である。
一年を通じてこれらの野菜は一回も食されていない。
公務をこなす大名という立場上、臭いの強い野菜は敬遠されたのであろう。
普通の武士がネギ、ニラ、ラッキョウの類を食べなかったかどうかは分からないが、現在のような歯磨きも口臭防止スプレーもなかった時代、大名という重職にある武士から敬遠されたのは十分にうなずける。
不思議なのはニンニクで、祝い膳の際に使われている。どのような料理に使われたのかは分からない。たった一回ではあるが、臭いの点ではネギやニラ、ラッキョウよりも強いニンニクが使われたのは不思議でもある。ニンニクは薬用として用いられたのかも知れない。
江戸時代は野菜の数よりも魚の種類が豊富であったが、魚でも武家には食されなかったものがある。
コノシロである。
コノシロは出世魚でシンコ、コハダ、コノシロとなる。今では寿司ネタのコハダが有名かも知れない。
コノシロは、「この城」を連想させる。
「この城」を焼くのは憚られたのである。
また、切腹の時に添えられた魚であるともいう。
そこから、武家社会では嫌われ食べられなかったようであるが、これはマナーというより、縁起が悪いといった嫌われ方だった。
禁止と言う点では、武家社会では忌日や精進日などが設けられた。
忌日や精進日には、魚や卵を含め、生き物を口にすることができず、野菜や豆腐などの植物性加工品のみとなった。
これは武家社会だけかというと、江戸の小噺に精進日に初鰹を貰って困っている男の話があるから、案外、庶民も守っていたようである。
そのほか、武家献立のなかには、「ご主人塩断ち」などという日もあり、塩分までも規制された。
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