
草紅葉縁側のすぐざらざらに 波多野爽波
縁側は、こまめに掃除せず放っておくと、頻繁に上がってくる人のこぼした砂や土埃で、すぐ、汚れてしまう。そのさまを、「ざらざらに」という触覚性リアルな言葉で表現した。日常の光景から、実存の深みまで感じさせてしまうのが、爽波俳句の特色である。荒涼とした手触りの世界の外界には、色づいた秋の草が生々しいまでに、その色彩を訴えかけてくる。『骰子』(1986)所収。(中岡毅雄)
【草紅葉】 くさもみじ(・・ヂ)
◇「草の紅葉」 ◇「草の錦」 ◇「色づく草」
秋の千草の紅葉。田の畦や土手の上などに美しく色づいてくる。樹木とは異なった足元の紅葉をあらわしている。
例句 作者
たのしさや草の錦といふ言葉 星野立子
鹿の足よろめき細し草紅葉 西山泊雲
一雨に濡れたる草の紅葉かな 日野草城
家なくてたゞに垣根や草紅葉 松瀬青々
堂塔の正しき影や草紅葉 関 圭草
草紅葉焦土のたつき隣り合ふ 幸治燕居
帰る家あるが淋しき草紅葉 永井東門居