乳房掠める北から流れてきた鰯 金子兜太
難解な句で鑑賞のしようもないと思っていたが
下記の鑑賞を発見した
俳句の一つの分け方として次ぎのようなものがあるかもしれない。
1)最初のインパクトが強いが読んでいるうちにだんだん何も無くなっていってしまうもの。
2)最初のインパクトは弱いが読んでいるうちにだんだん何かが現れてくるもの。
この句などは1)に属するのではないか。「乳房」と「北から流れてきた鰯」との遭遇ということには新鮮な驚きがある。感覚的に新鮮なのである。しかしその状況、例えば、海に入っている男性(作者)の乳房を鰯が掠めていったというような状況、を考えている内に、何だか只事のような気がしてくるのである。逆に昨日の句などは最初のインパクトはこの句ほどは無いが、読んでいるうちにとても気持ちのよい状況が開けてくる。
(小林たけし)
【鰯】 いわし
◇「真鰯」 ◇「鰯干す」 ◇「鰯引く」 ◇「鰯網」
真鰯、潤目鰯、片口鰯の総称。日本沿岸に棲息し回遊している。秋が旬で最も味がよい。九十九里浜など各地で地引網による鰯引が行われる。
例句 作者
鰯汲む夜は妻子も脛ぬらす 佐藤鬼房
絶叫の形に鰯干されけり 梅原昭男
十方に無私の鰯を供えけり 曾根毅
銀舎利に載せて一本干鰯 吉原波路
鰯の目いびつなものを探すかな 平塚波星
鰯干すスカートの裾八重に咲き 久保田慶子
鰯汲む夜は妻子も脛ぬらす 佐藤鬼房
絶叫の形に鰯干されけり 梅原昭男
十方に無私の鰯を供えけり 曾根毅
銀舎利に載せて一本干鰯 吉原波路
鰯の目いびつなものを探すかな 平塚波星
鰯干すスカートの裾八重に咲き 久保田慶子