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「ラプンツェル」(その2)

2011年01月10日 | 音楽・映画レビュー
 映画とグリム童話の話は少し違うし、グリム童話でも初版とその後の版では話が一部書き直されている。異なっている主な部分は以下のとおり。

  ラプンツェルを幽閉したのは、初版では「妖精」だが、その後の版では「魔法使いの女」になっている。
  また、妖精(魔法使いの女)がラプンツェルと王子の仲を知ったのは、初版ではラプンツェルが「洋服がきつくなった」と妊娠をほのめかしたためだが、その後の版ではラプンツェルが「お婆さんは王子様より重い」と漏らしたためになっている(王子様との関係は「王子の手の上に自分の手を重ねた」という表現で暗示している)。

 ラプンツェルは、映画では18年間塔の中に閉じ込められていたことになっているが、グリム童話では12歳までは太陽の下で過ごし、幽閉されたのは12歳の時になっている(王子様と会ったのは幽閉されてから2、3年後と書かれているので、14歳か15歳で妊娠したことになる)。
 ついでながら、グリム童話の白雪姫はなんと7歳だった。

「ラプンツェル」

2011年01月10日 | 音楽・映画レビュー
 ディズニーのアニメ映画「塔の上のラプンツェル」の公開が春に予定されている。グリム童話の「野ぢしゃ」(KHM12)が原作。「ラプンツェル」は、主人公の名前で、植物の名前(野ぢしゃ)でもある。お話のあらすじはウィキペディアを読んでいただくとして、単なるアニメ映画だけでなくグリム童話も知っているともう少しだけ面白い。

 ラプンツェルは12歳の時に「魔法使いの女」に塔に閉じ込められてしまうのだが、グリム童話ではちゃんと魔法使いの「女」と書かれているところがミソ。童話に出てくる「魔法使いの女」は、この年齢の女の子にとっての「母親」を意味する。
 また、「長い髪の毛」も小さな女の子にとっては、洗ってもらったり編んでもらったりする「母親とのつながり」の象徴だろう。ラプンツェルが長い髪を垂らすと「魔法使いの女」がそれを伝ってラプンツェルのところに来るのである。

 長く長く母親から離れず依存してきたラプンツェルが「長い髪の毛」を「魔法使いの女」(母親)に切られ荒れ野に放逐されるのは「成長」を意味する。「ヘンゼルとグレーテル」では魔法使いのお婆さんをパン焼きかまどで焼き殺すし、「白雪姫」では継母に真っ赤に焼けた靴を履かせて死ぬまで踊らせる(話がそれるが、グリム童話の初版本では、継母ではなくて実の母が白雪姫に殺される)。母親との精神的な決別(独立)が「成長」に必要だというのがグリム童話の大きな柱になっている。

 私が松本零士作のSFマンガ「銀河鉄道999」をなんとなく好きなのはそういった童話性がある作品だからだ。謎の美女メーテルは母親を象徴し、主人公の鉄郎はいつまでも銀河鉄道に乗っている訳にはいかないのだ。