ケンのブログ

日々の雑感や日記

どいての一言なぜ言えないの

2017年12月16日 | 日記
新聞の投書欄を読んでいたらざっとようやくすると
こんな投書が出ていた。
京都の紅葉で有名なお寺にいった。
ある場所でわたしの前の人が紅葉を撮影するために
立ち止まっていた。
私はその方を待つ形で立ち止まっていた。
するとわたしの後ろの年配の男性が
わたしの背後から肩をつかみ横に強く押して
前に進んでいった。
私が写真を撮影するために立ち止まっているのと
勘違いしたのだろうが、わたしは勘違いされたことよりも
体にさわられたことの方が不快でハラスメントのように
思えた。
どいてくださいの一言がいえないのか伝えようと思ったが
せっかくの旅が台無しになりそうでこらえた。

とざっと要約すると上のような女性からの投書があった。
文章だけではどのような感じに肩をつかんだのか
わからないのでいわゆるセクハラかどうかまでは
判断できないけれど、横に強く押して前に進む
というその行為全体はやはりハラスメントだと思う。

京都では紅葉の名所で通路などから身を乗り出して撮影すると
危険なのでしかるべき場所では写真撮影をしないようにと
注意喚起されることがある。
そう言う報道が出ると、写真撮影で立ち止まるなど
けしからん、という意識が人々の間に芽生えてしまう。
この女性を強く横に押した男性にもそういう意識があったのかも
しれない。
その意識がかっとなるきっかけになったのかもしれない。

僕もコンサートホールで金管楽器の音がフォルテで
なるたびに体に力が入りそのため椅子がギーッといったことがある。
楽章の切れ目で男の人がさっと僕の方に来て
「体で拍子をとりながら聴きたい気持ちはわかるんですけど
椅子から音がしていますので隣の空いている席に移ってください」と
言われたことがある。
「はい」と言って横の席に移ってそれからは音をたてないように
できるだけ注意したけれど、なんかあの男の人が
さっと出てきた瞬間のことはあまり思い出したくないなと思う。
その曲は一曲目で僕は一曲目と二曲目の休憩時間や
コンサートが終わったあとは僕に注意してきた男の人と
目を合わさないように注意した。
コンサートが終わると僕に注意してきた男の人は
カーテンコールも全くしないで即座に帰っていってしまわれた。
男の人が出ていくときも僕は下を向いて目を会わせないように
していた。
たぶんこういうことって結局、注意した方にも
された方にもよい思い出にはならないのだと思う。

そんな話をそれとなくコンサートホールの係員の方にしたら
「もう人と人とが同じ空間を共有する以上そういうことが
起きるというのは避けられません。
私たちもそういうときにはいずれか一方の肩をもつことは
よほど目に余る場合でないかぎりしていません。
そういうことなるべく避けるために一番端の席をとられる方もいます」
というようなことをそれとなく教えていただいた。
まあ、こういう知識はあっても悪くはないなと思う。




もし、あまりにも目にあまって注意するときでも。
「まことに恐れ入りますが○○していただけないでしょうか」
「○○していただけるとありがたいのですが」
というくらい下手にでてちょうどいい加減だと思う。

高速道路で駐車の仕方を注意したばっかりに逆ギレにあって
その結果命を失ってしまったかたもいらっしゃると記憶している。

僕はとても個人的に思うのだけれど
コンサートホールでは
咳をするときはハンカチを口におあてください。
のど飴は袋が意外と大きな音をたてますので演奏中は
袋を開かないでください。
傘は倒れると音が響きますので寝かせておいてください。
携帯電話はマナーモードにするかスイッチをお切りください。
補聴器をお使いの方は発信音がでることがありますので
正しく装着されているか今一度お確かめください。
という一連の注意喚起のアナウンスが演奏前に流れる。
こういうアナウンスが流れるのが習慣になってしまうと
演奏中に少しでも音をたてるのはいけないこと
という意識がみんなの間にめばえてしまって
演奏中のノイズを過度に気にしてしまう人を
注意喚起が逆に産み出しているような側面もあるような気がする。

思えば学生の時、カラヤン指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団の
コンサートに行ったときブラームスの交響曲第一番で
第一楽章のイントロダクションが終わるまで
横に座っていたおばさんが
「あら、カラヤン前回の来日の時よりも痩せたみたいね」とか
そんなことばかりずっと話をしていて
演奏に集中できなかった。
おばさんはイントロダクションがおわって主部に入ると
やっと話を終えられた。
結局カラヤン ベルリンフィルのコンサートでいまでも頭に
残っていることはそのことだけという感じになっている。
まあ初めて言ったベルリンフィルのコンサートで
具体的な思い出があるだけ幸せかなといまでは思っている。

もちろんいまでも演奏の間ずっとひそひそ話をしていて
映画で有名なメロディがでてくると
「ああ、これきいたことがあるなあ」と言って
急に演奏を聞き出すおばさんもいたりする。

なんか、最近はそういう方がいらっしゃることで
演奏への集中を妨げられるというのが
だんだん僕自身はなくなってきているなあと思う。

それだけ歳をとった証拠かもしれない。

なんだかとても話がそれてしまったけれど
肩を背後からつかまれて横に強く押された女性は
ほんとうに不愉快というところを通り越して
ショックだったと思う。
女の人は男に比べて体格と筋力では劣るから
こういうことがあるとなおのことだと思う。

しかし、その場で「なぜどいてって言えないんですか」とおとこの人に
詰め寄らなかったのは正解だと思う。

それで新聞に投書するきっかけになって
その文章が採用されたことをいい思い出にしていただければ
ととても個人的にはそう思う。