新聞を見るとプロ野球の開幕は6月になりそうと書いてある。この時期に野球がないというのもやはりちょっと異常な気がする。
コロナが流行しだしてから電車で咳をするときはなるべく注意を払うように心がけるようになった。クラシックのコンサートで長大な曲を聞いているときのような気持ちで咳に注意を払おうというのが僕のモットーになっている。
なるべく周りの人を咳で刺激することがないように。
咳をするときはマスクが鼻にかかるように入念にして、さらに いないいないばあのときの いないいないのように手で顔を覆う、それでも不十分かと思いその顔が膝の真上に来るところまで身をかがめて咳をする。これなら口をマスクと手で十分に覆った上で、顔も真下に向けでせきをすることになるので飛沫感染の可能性が最も少ないのではないだろうかと自分で考えた。
この咳の仕方を考案してからは向かいに座っている女性に逃げられることもなくなった。
自分ながらよく考えたものだと思う。
そんな感じでマスクをした顔を手で覆い、その顔を膝の上に来るまで上体をおりたたんで咳を遠慮がちにおほ おほんとか細くしていたら、上の方から「大丈夫ですか?」という声が聞こえた。
何やろうと思って顔を上げると車掌さんが僕の方を心配そうな顔をして見ていた。
僕もなぜ車掌さん僕のこと心配そうに見てるんだろうと思って車掌さんの方を見てしまった。
「前かがみで咳をしておられたので、具合が良くないのかと思いました。大丈夫ですか」と車掌さんは言った。
僕は、「はい、大丈夫です」と言った。
車掌さんはそのまま去っていかれた。
こういうときっていろんな思いが心をよぎる。
前かがみになっているだけで車掌さんに大丈夫ですかと言われるなんて、よほど僕がしんどそうに見えたのだろうか。
それとも車掌さんもコロナで神経質になっておられるのだろうか。
あるいは僕が咳の仕方に慎重になりすぎるあまりちょっとゼスチャーがオーバーすぎたのだろうか。
確かに顔を膝のところまでかがめて咳をする男って僕もあまり見たことがない。やはりやりすぎであったか?
考えてしまうときりがないけれど
結局は、車掌さん声をかけていただいてありがとうございます、ということにつきるのだとおもう。
こういうコロナとうことを機会にお互いに声を掛け合う気持ちが生まれるといいなと思う。