たままま生活

子育ての間にこっそりおでかけ・手作り・韓国語・・・。
多趣味な毎日を紹介します。

『夜は歌う』キム・ヨンス著

2013-02-26 21:26:04 | 韓国文学

某先輩が
「これ、まだ読んでないの?すごくいいから読んでみて。
 たまさんが訳さないなら僕が訳すよ。」
と鼻息荒く大絶賛してくれたキム・ヨンスの김연수 ,『夜は歌う』 "밤은 노래하다"を読みました。



舞台は1930年代の満州、中国共産党に所属する朝鮮人コミュニストたちが疑心暗鬼のなかでお互い殺しあったという民生団事件を扱っています。

主人公は朝鮮半島南部のジンナムで生まれ、ソウルの工業高校で新式の教育を受け植民地という状況を受け入れて満州鉄道で技師として働いています。
満州で出会った美しい恋人がナゾの死を遂げ、ショックからアヘン中毒になった彼は
とある写真館に拾われます。
写真館の小間使いとして働く、間島(満州・現在の中国朝鮮族自治区)生まれの少女と恋をし、立ち直った彼は恩師の勧めでソウルに戻り就職することを考えます。

(ちなみに、同級生で総督府に務めてるキム君が肺病でやめることになったから、その後釜に、という話。これ李箱を意識してます。)

ソウルに行く前に少女のお姉さんの婚礼に、近くの村に向った彼はそこで日本軍の大討伐に遭い、多くの人の死を目にします。少女は脚と家族を失います。
ひとりだけ生き残り取り調べを受けた彼は、そこから中国共産党に加入し、地下での抗日活動に加担することになります。

当時は一つの国で、一つの共産党というルールがあったらしく、満州の朝鮮人はみんな中国共産党扱いなんですね。その中で、「中国革命が先か、朝鮮革命が先か」みたいなやりとりがあったよう。

抗日勢力というと、私たちには漠然としてしまいますが、
日本に対する反発があり、一方でそもそも地主階級に反発して元の朝鮮王朝も否定する共産主義の勢力も強かったようです。

たとえば、尹東柱は間島の裕福な名家の出身ですが、共産主義が盛んな土地柄でどうも一家そろって土地を追われてしまったようです。

また、主人公のキム・ヘヨンは朝鮮半島の生まれですが、抗日活動を通して出会い、後から同じ女性を愛していたとわかる4人の男たちはみんな新式の中学の同級生という設定になっています。

その女性には本当に愛されていたんだろうか、私を愛さないで、というのはどういう意味だったんだろうか。

もちろん、キム・ヨンスですから恋愛ネタを絡めてくるんですけどね、

あらすじ読んで難しいでしょ~?
わたしもずっと眉間にしわを寄せて読んでました。正直苦しかった。

ちょうど読み終わった日に話ができた波田野先生、渡辺先生ともこの本の話をしたのですが、
波田野先生も私同様ちょっと辛めの点数で、政治的な主題があまりにも男性向けの話ではないか、という結論になりました。
渡辺先生は間島の乾いた空気感をよく描いているという評価でした。
その乾いた空気感を書くために、主人公の김해연 は半島の、中でも南の海辺の出身でなくてはならなかったんだなあ、と感じました。


読んでいる間に立教大で尹東柱に関連して、初期の間島開拓と当時の新式中学の話を聞き、日曜の夜には連合赤軍事件で恋人を殺めてしまったという男性のドキュメンタリーを見てなんだかつながっているなぁ、と思ったところです。

ホネのある力強い話を読みたい男性、
満州や間島の歴史に興味のある人、
한홍구先生のファンの方にお勧めです。




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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ちんぷんかんぷん(-ω-) ()
2013-02-27 16:42:21
しかも重い(-ω-)…
日本語で読んでても眉間にしわ寄ります
そして、こんなの読み切っちゃえるたまさんのスタミナがまたスゴイ
あやかりたいわ~
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だって (たま)
2013-02-27 18:40:40
作家がイケメンだから。
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Unknown ()
2013-02-27 18:50:27
う、うん…そ、そ、そ、そうだね
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Unknown (ippoyo)
2013-02-27 19:00:39
爆!!!

イケメンだからという理由でこんな難しそうな本を読めるたまさんが好きだわ
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ふふ。 (たま)
2013-02-27 22:08:40
だって、キム作家私に会いたがってくれてるみたいだし。

最初のイメージ写真がひどかったんで、最近は渋くなったなぁ、って思っていて、
この本の著者近影もいい感じでした。

ま、顔ではなく好きな作家だし、
オススメしてくれた先輩も全面的に信頼しているので。

でもね~、眉間にしわを寄せてひと月以上かかったんですよ~。苦しかったです。

あ、イケメンって海さんにイケメン返しだからね。
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Unknown (ippoyo)
2013-02-28 08:34:14
あ~なるほど~
海さんのブログみて納得^^
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でしょ? (たま)
2013-02-28 08:43:10
作家ラブ。もあるけど、

この本いいよ、とかアドバイスしてくれる仲間が集まっているのが自慢なの。

http://www.facebook.com/home.php#!/groups/195036737199363/

オープンなグループなので、ちょっと覗いていてください。
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