遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(474)  小説  いつか来た道 また行く道 (34) 他 人生の価値

2023-11-19 12:11:25 | 小説
             人生の価値(2023.11.2日作)



 自身の人生 必ずしも 
 望んだ道ではなかった それでも
 誠実 真摯に 人が人としての
 人の道を 精一杯 生きた
 わが人生に悔いなし
 真摯に生きる
 虚名 虚飾に惑わされるな
 たとえ 見えない場所 隠れた
 陽の当らない場所 日々 平凡
 人の眼に触れる事のない人生
 その中でなお 人が人としての
 人の道を誠実 真摯に生きる
 これに勝る人の生き方
 人生の価値はない
 虚名 虚飾 十年 二十年
 過ぎ逝く時の中で やがて
 朽ち果て 忘れられてゆく
  虚名 虚飾に惑わされるな



              
                          
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              いつか来た道 また行く道(34)




 
 男はわたしの突然の異常な行動に狼狽した。
 明らかに怯えていた。
 わたしはそんな男に更に復讐心をたぎらせながら再び、乱暴に車を発進させた。
「おい、大丈夫かよお。事故なんか起こして警察なんかに関わりたくねえからなあ」
 男は真顔で心配した。
 わたしの気持ちの中にはそんな男を嘲笑うものはあっても、躊躇うものはなかった。復讐心だけが更に増幅し、気分を昂揚させていた。男の言葉には答えず、わざと乱暴に車を左右に揺り動かしながら猛烈な速度で走り続けた。
 男は心底、心配気な様子で吊革を強く握り締め、走り去る車窓の外のあちこちに不安気な眼差しを送っていた。
 どれだけの時間と距離を走ったのか、自覚はなかった。そんな中で次第に収まって来る感情の昂ぶりを意識しながらわたしは、自分自身、如何にも危険な走行だったと改めて思い直して正常な運転へと切り替えた。
 車は既に都心を離れて周囲に穏やかな景色の広がる郊外に入っていた。
 週半ばの道路は空いていた。
 いけない、これでは余りに早く別荘に着いてしまう。
 気が付いて一層、車の速度を落とした。
 一軒のコンビニエンスストアが見えて来た。
 車を寄せて停車した。
「ちよっと、今夜の食べ物を買って来るわ。あなたは何が食べたいの ?」
 ハンドルを握ったまま男に聞いた。
 わたしが静かな運転へと戻るのと共に男も気持ちを落ち着かせたようで、後部席で煙草を口にしていた。
「食い物なんて要らねえよ」
 男は不機嫌に言った。
「要らないって言ったって、向こうへ行っても食べる物なんて何も無いわよ」
 男の不機嫌な口調が癇に障ってわたしは強い口調で言い返した。
「大体、こんな遠くまで来んのに、なんでもっと早く出なかったんだよう。朝早く出れば、明るいうちに着いただろう」
 男は不貞腐れたまま言った。
「何を今ごろ、下らない事を言ってるのよ。わたしには仕事があるのよ。あなたみたいに年中ふわふわしている人間とは違うわ。今日だって漸く時間を作って抜け出して来たんじゃない。明日の仕事だって犠牲にしているのよ」
「勝手にすればいいだろう。俺には関係ねえよ。疲れちゃったよ」
 男は不貞腐れたまま言って煙草をもみ消すと、座席の背もたれに身体を預けて両手を首の後ろに廻わし、上を向いて眼を閉じた。
 わたしは腹立ち紛れに車を降りて店に向かった。
 店内では菓子パン五個とカツの入った弁当を一つ買った。
 店の外では自販機で缶コーヒーを四本買い車に戻った。
 男は両手を頭の後ろに組んで上を向いて眼をつ閉じたままでいた。
 わたしは男には言葉も掛けずに車を出した。
 男は依然、そのままの姿勢だった。
 時刻は三時を少し過ぎていた。
 太陽は早くも西に傾き始めていた。
 男は後部席で動いたらしかった。
 何時の間にか、車内ミラーには映らなくなっていた。
  眠っているらしかった。
 まあ、たっぷり眠りなさい、そうやって穏やかな眠りを貪(むさぼ)る事も間もなく出来なくなるから。
 あるいは、狸寝入りかも知れないと思いながらもわたしは心の中で呟いていた。
 今度もまた、部落の中は通らなかった。
 この前と同じ道に乗り入れた。
 この前と違って今度は雪があった。
 道はぬかるんでいた。
 何度か車輪が空転してハンドルを取られそうになった。
 暖冬で雪が少ないとテレビでは言っていたが、雪に慣れないわたしはそれでも苦戦した。
 車が動けなくなってしまう程に積雪のなかった事がせめてもの救いだった。
 周囲は何時の間にか完全な闇に包まれていた。
 激しい振動で眼を開けた男は、道も分からない場所を車が走っている事に猜疑心を募らせた。
「こんな所を通らなくちゃ行けねえのかよお」
 暗闇の車外に視線を向けたまま批難をする口調で言った。
「当たり前でしょう。山の中にある別荘が都会の真ん中にあるような訳にはゆかないわよ」
 わたしは暗闇の中で車を走らせる事だけに気を取られていて、男などにはかまっていられなかった。以前、通った道である事だけがせめてもの救いだった。
「別荘って、何処の別荘だよ。中沢はそこに居るのか ?」
 男は不審気に言った。
「そうじゃないわよ。あの人は施設に入っているって言ったでしょう」
 暗闇を見詰めたままわたしは言った。
「じゃあ、なんで別荘なんかへ行くんだよ。いいかい、変な真似はしねえでくれよ」
 男は訳が分からない様子で警戒心を滲ませた強い口調で言った。
「まあ、黙って見ていなさいよ。臆病者のあなたにも安心出来るようにしてあげるから」
 わたしは男を見下すように軽い口調で言った。
 男はそれでもまだ、安心出来ない様子だった。しきりに暗闇に視線を向けてあちこち探っていた。
 車はそれから三十分程して、ようやく別荘の正面に通じる道に出る事が出来た。
 雪は別荘の敷地内にも積もっていた。
 雪の白さと白樺の一層白さを増した木肌が闇の中でも浮かび出て見えた。
 車は車庫へは入れなかった。
 中沢の車に気付かれるのを怖れた。
 玄関に通じる正面の道の片側に寄せて置いた。
 無論、雪はそこにも積もっていた。
 春から秋にかけての季節、週に一度は顔を出す管理人夫婦も冬の間は月に一度程になっていて、雪は積もったままになっていた。
 その雪の上にくっきりと記されタイヤの跡を見て、わたしは思わぬ不安に捉われた。
 もし、これが管理人夫婦の眼に留まったら ?
 普段、東京の街中で生きている人間には気付き得ない事だった。
 でも、仕方がない。このタイヤの跡を消すぐらいに雪が降ってくれればいいが、もし、管理人が気付いたらスキーで行ったので、とでも言っておこう。
 車を降りると真っ直ぐに玄関へ向かった。
 男は黙ってわたしの後に従って行動していたが、別荘の建物を間近に見て驚愕の表情を浮かべた。
「凄(すげ)えなあ。これ、あんたの別荘かい ?」
 と言った。
「そうよ」
 わたしは事も無げに答えた。
「へえ、若いのに大したもんだなあ。さすが、<美和>の社長だなあ」
 わたしは男の言葉には答えなかった。
「おおっ、寒いなあー」
 薄着の男は音を上げて言って両腕を組み肩を震わせた。
「だから、大丈夫かって言ったでしょ」
 男は答えなかった。
 わたしは先に立って玄関へ向かった。
「これ、あんた一代で手に入れたのかい」
 男はわたしの後に従いながら、妙に馴れ馴れしい口調で聞いて来た。
「そうよ」
 わたしは突っ慳貪に答えた。
「凄えなあ。若いけど凄腕なんだなあ」
 感心しきりの様子だった。
「その凄腕が墓穴を掘ったって言う訳なの」
 わたしは自嘲を込めて言った。
「今度の事かい ?」
 男は含み笑いと共に言った。
「そうよ。あんたや中沢との事」
「男遊びも、程々にって事だな」
  男は他人(ひと)事のように言った。
「でも、もう大丈夫よ。中沢が更生して、あんたが警察に捕まればそれで総て決まりが着くわ。わたしの悪夢も、もうお終い」
「そうなるといいけどなあ」
 男は軽く笑って言った。




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             takeziisan様


              冬到来 やれやれ
            実感です 比較的寒さには強い身だったのですが
            年齢と共に苦痛を覚えるようになって来ました
            暑い 暑いと言いながらも まだ夏の方が・・・・と思うような今日この頃です
            それにしても季節の移り変わりは速い アッと言う間に過ぎて逝きます
            年齢と共に一年一年の過ぎ去りに喜びよりも悲哀の方を多く感じる様になりました
            残された人生への悲哀でしょうか
             干し柿作り 楽しみですね 昔 わが家にも柿の木が何本かあり
            中の一本が渋柿でした
            干し柿を作った記憶が懐かしさと共に甦ります
            つくづく贅沢な趣味 ?  だと思います
             足 攣る わたくしはこの頃 夜中によく攣る様になりました
            やはり 年齢のせいでしょうか 防止の為に風呂から出た後
            寝る前にコップ一杯か一杯半ぐらいの湯冷ましを飲んで寝ます
            すると攣る事が無いようになりました
            冷や水は胃腸が弱い為 真夏でも口にしません
             それにしても八十代の女性 スイマー? まだまだ元気ですね
            この頃は年々自覚する衰えと共に テレビなどに映る八十代 九十代の方々と
            自身を比べて まだまだ負けては居られないと自分を励ましているところです
            女性スイマーに負けませんよう 頑張って下さい
            気力さえあれば大丈夫 気力を失くしたら人間 何事に於いても
            終わりですものね 
             何時も有難う御座います