遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(479) 小説 希望(3) 他 時の終わり―プール

2023-12-24 11:50:36 | 小説
            時の終わり―プール(2023.12.17日作)


 
 満々と水を湛えたプールが今日も
 静かな佇まいを見せている
 朝の光りに輝く水
 真昼の白光を照り返し
 光りと波の交響曲を奏でる水
 夕陽に静かな眠り 夜の支度を急ぎ
 闇へと沈みゆく水
 春夏秋冬一年四季
 様々な思いを宿し
 延々とそこにあり続け 生き続け
 人の世の喜び悲しみ 怒りと嘆き
 笑いの声を受け止めながら
 今日まで生き続け 生きて来て今はただ
 さざ波一つ立てずに 訪れる人もなく
 孤影の下(もと) 今日もそこにあり続ける
 一つのプール やがて そのプールも最終
 終わりの時を迎えて
 枯れゆく水と共に 終幕
 命の終わりの幕を降ろす時が来る
 ーー人の命はプール




            ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




              希望(3)



 
 店はまだ開けていなかった。
 駅前へ戻って繁華街をさ迷い歩いた。
 ゲームセンターが眼に入ると引き込まれて入っていった。
 気が付いた時には午後三時を過ぎていた。
 夢中になって昼食も忘れ、一万円以上の金を使っていた。
 急に心細くなった。
 ナイフを買えなくなってしまったのでは・・・・・
 それでもナイフを見るために金物店の店先に足を運んだ。
 途中で鞄の中の金を数えてみると三万二千円と少しの硬貨が残っていた。
 でも、全部使ってしまう訳にはゆかない。
 店の人がナイフを安くしてくれるといいんだけど・・・・
 ナイフは昨日と全く同じようにショーウインドーの中で見事な輝きを見せていた。
 改めて値札を見て溜息を付いた。
 店内を覗いて店の人と交渉してみようと考えた。
 入って行くと土間の中央に大きな台があって、鍋や薬缶などの金属製品が並べられてあった。
 両側の壁には棚があって、包丁などの刃物の他、様々な鍵や鎖りなどの金属製品が並べられてあった。
 店内は幾分、薄暗かった。
 客の姿はなかった。
 雑然とした店内を恐る恐る進んでゆくと、正面、突き当りに男の人が座っているのが見えた。
 小さな台を前にして何かの仕事をしていた。
 修二の気配にも気付かなかった。
 七十歳位かと思われた。
 相手が年寄りだと思うと気が緩んで更に進んで行った。
 相手が顔を上げる前に修二の方から声を掛けていた。
「すいません、表に飾ってあるナイフを見せてくれませんか ?」
 男が顔を上げた。
 度の強い眼鏡越しに怪訝そうな顔で修二を見詰めた。
 如何にも老人じみて見えた。
「ナイフ ?」
 老人は訝し気に問い返した。
 修二の服装は昨日のままだった。
 着古したジャンパー姿で薄汚れた布鞄を小脇に抱えていた。
 店の者が不審を抱くのも無理はなかった。
「はい」
 修二はそれでも臆せず答えた。 
 店の老人は更に修二の身元を探るかのように、執拗な眼差しで修二を見詰めまわしてからようやく、
「あれは高いよ」 
 と、無愛想に言った。
 修二など相手にする気もないような言い方だった。
 修二はその言い方に思わず腹を立てて、
「分かってんだけど、昨日、見たのでお金を持って来たんです」
 と言っていた。
 老人はその言葉に、改めて修二を見直すように見詰めてから、
「幾ら持って来たの ? あれ、三万円もするんだよ」
 と言った。
 やはり、お前には無理だと言うような、軽蔑的な響きのこもった言い方だった。
 老人のその言い方に修二はまたしても反発して、
「五万円です」
 と、叩き付けるよう言っていた。
 老人は思い掛けない事を聞いた、というような表情でひと時、無言でいたが、
「何しろ、あれは外国製の最高の品物だからねえ」
 と、今度は機嫌を取るかのように穏やかな口調で言った。
「分かってたんで、お金を持って来たんです」
 と、修二も老人の気持ちに寄り添うように穏やかに言った。
 老人はそれでようやく仕事の手を止めて前掛けのチリを払い、腰を上げた。
 引き出しから合鍵を取り出してショーウインドーへ向かった。
 修二は老人の後に従った。
 老人はショウインドーの鍵を開け、ガラス戸を開くと手を差し込んで三本のナイフの内の一本を取り出した。
 取り出したナイフを手に老人は修二の方に向き直ると、そのまま眼の前で黒いボタンを押して見せた。
 ナイフの柄からはビシュッという小さな小気味よい音を立てて瞬時に、幽かな蒼味を帯びて鮮やかな白銀の刃が飛び出した。
 修二が老人の手による思いも掛けない出来事に驚いていると老人は如何にも自慢気に、
「このボタン一つで、自由に刃の出し入れが出来るんだ」
 と言ってそのまま、また、ボタンを押した。
 白銀の刃は再び見る間もなく柄に納まった。
 修二がその見事さに言葉も忘れて黙っていると老人は、
「いいナイフだろう」
 と、また、如何にも自慢気に言った。
 それで修二も我に返って、
「いいナイフだけど、もう少し安くしてくれませんか」
 と言った。
 老人は修二の言葉を聞いても全く取り合おうとはしなかった。
「いや、駄目だよ。何しろ最高のナイフなんだからこれ以上、安くは出来ないよ」
 と言って、そのままナイフを元の場所に戻そうとした。
 修二は慌てて、
「お金は五万円あるんだけど、キャンプに行くので、他にも買いたい物があるんですよ」
 と言った。
「キャンプに行くの ? キャンプに行くんなら、こんなにいいナイフは要らないよ。待ってな、キャンプ用のいいナイフがあるから、今、持って来てやるよ」
 老人はそう言うと手にしていたナイフを元の場所に戻してガラス戸を閉め、店の奥へ向かった。
 修二は取り残され、その場所に立ったままでいたがその間、老人が閉めたガラス戸が鍵も掛けられずに、その上、僅かに隙間さえ開いているのを目敏く眼にしていた。
 修二は咄嗟に店の奥へ向かう老人の背中に眼をやった。
 老人は振り向く様子も見せなかった。
 今だ ! 咄嗟に判断した。
 老人の背中に視線を向けたまま僅かに隙間を見せているガラス戸に手を掛けて静かに開けた。
 その手で腕を伸ばし、先程、老人が手にしていたナイフを握った。
 後の動作は素早かった。
 ナイフを握った手をガラス戸から引き出すとそのまま、後も見ずに街の人込みの中に逃げ込んだーーー

 北川はマスターの、北川じゃあ、あるめえし、という言葉には答えなかった。
 手の中のナイフに魅了されたままの様子で、再び黒い石のボタンを押した。
 ナイフは老人が修二の眼の前で見せた時と同じ音を立てて柄に納まった。
「今度の走りにはこいつを借りて行こう」
 昂揚した気分そのままに北川は声をはずませて言った。
「ああ、そうだ。忘れていたよ」
 マスターが言った。
「おとといだったかな、クロが来て、今度の走りには出られねえかも知れねえから、そう言っておいてくれって言われたんだ」
「クロちゃんが ?」
 北川は驚いた様子で聞き返した。





           ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




             桂連様


              有難う御座います
             夜中の三時 没頭する時間は瞬く間に過ぎる
             でも 今の自分には無理です 若い時代はほとんど睡眠時間四時間でした
            それでも平気だったのは若さの故でしょうね
            今は無理をせず眠くなれば椅子に掛けている時でも
            腕を組んで居眠りをしてしまいます
            時を忘れて没頭出来るものが有るという事は幸せな事だと思います
             アメリカで八年 その地に住めばその地に同化しなければ
            生きて行けない 生き辛い 自然に物の考え方も変わって来るのでしょうか
            アメリカ人にはなれなくてもアメリカの国民になったという事でしょうね 
             考え方も自然にアメリカ風になっている
            その地に根を下ろしたという事でしょうか でも
            どうなんでしょう その人自身の根本は変わる事はないと思うのですが      
            たとえ 考え方 思想に影響は受けてもその人自身の人間性の
            変わる事はないと思うのですが
             面白い記事を大変 興味深く拝見致しました
            御無理をせず 時折りでも また お書き下さい
            有難う御座いました
             なお 次回は休載しますので 改めて今回 いろいろ楽しませて戴いた事
            お励ましを戴いた事に対して御礼申し上げます
            有難う御座いました
            どうぞ 良いお年をお迎え下さいませ

             

              


              takeziisan様
        
              有難う御座います
             当地も漸く冬らしい寒さになって来ました。
             鉢植えの花々も屋内に取り込み始めました でも
             当地はやはりそちらと比べると暖かい様です 氷の張る寒さはありません
             テレビでは連日 大雪を放送していますが何処か
             他人事のような思いがあって実感のないまま 雪国の人達は大変だなあ
             などと暢気に思っています
              山茶花の赤 田舎に居た頃の山椿の赤を思い出しました
             冬でも葉を落とさない木々の暗い緑の中に何気なく咲いている冬椿の質素な佇まい
             好きな花の一つです 赤い山茶花を見てふと昔を思い出しました 
              チッタア わたくし共もよく使います 方言であって方言を超えた言葉のような気もします
              納めの川柳 敢えて選ぶとすれば 「年の功」と「親の顔」でしょうか
             無論 他も楽しく拝見しましたが あくまでも 敢えて という事です
              泳ぎ納め 計り知れない効果ですね とにかく身体 頭脳
             使わなければ錆び付きます 三十年来 よく続いたものと驚嘆ですが
             最早 日常の一部という事でしょうか わたくしも朝は必ず自己流の体操で
             身体をほぐしていますが やはり一日でも抜けると何か気分が落ち着きません
             一つの習慣を身に付けるという事は何気ない事のようであっても           
             大切な事なのだと思っています
              今年も楽しい記事 いろいろ有難う御座いました
             次回は休載しますので今回 一年の御礼を申し上げます
              有難う御座いました
             どうぞ 良いお年をお迎え下さいませ



             ーーーーーーーーーーー


              次回は休載します
             今年一年を通して拙文にお眼をお通し戴いた方々
             また このページを管理して下さった
             スタッフの皆様に改めて御礼申し上げます
             有難う御座いました
             来年もまた 宜しくお願い致します
              どうぞ皆様 良いお年をお迎え下さいませ




遺す言葉(478) 小説 希望(2) 他 政治家 戦争 

2023-12-17 11:38:14 | 小説
            政治家 戦争(23.10.5日作)


 
 政治家
 虚名と権力の囚われ人
 凡俗の存在
 真にある事 一つの事を
 成し遂げようとする者は
 それぞれが それぞれに適合
 似合う形で型を組み 何が
 最良 最善かを計りながら 事を
 進めてゆく
 権力 虚名 思惑の外
 関わっている暇など無い
 下らぬ事 虚飾に煩わす労力など
 持ち合わせてはいない それに比し
 政治家 ただ 権力と虚名 その獲得のみに           
 明け暮れる 口先だけの存在
 
            

        戦争


 
 平和とは 人々が
 幸福であるという事
 戦争は
 どのような形であっても
 平和とは言えない しかし
 平和を守り 取り返す為の戦争は
 否定出来ない
 あり得る事




            ーーーーーーーーーーーーーーーーーー             



       
              希望(2)
 

 

 ラーメンと丼物の品書きが正面の高い壁いっぱいに並んでいた。
 十三、四席のカウンターの向こうには中肉中背の男が蛍光灯の明かりの下に立っていた。
 四十歳過ぎかと思われた。
 店の名前の入った白い仕事着に前掛け姿だった。
 一見、何処にでも居る飯屋の親父風に見えた。
 だが、五分刈りの頭と共に鋭い目つきが明らかに修二の心に何かを訴えて来た。
 修二は男の存在感に委縮した。
 修二を案内した男はこの店には馴れているらしかった。目つきの鋭い店主に小さく会釈してから、
「今晩わ」
 と言った。
 店主の男は腕を組んだまま、指先で短くなっていた煙草を口元に運んで小さく頷いた。
 言葉はなかった。
「おい、坐れよ」
 修二を案内した男は、入口で立ち竦んだように動けなくなっている修二に言った。
 自分も一つの椅子に掛けた。
 店主の後ろ側、左手の隅では調理台に向かって二人の女性が背中を見せていた。三十代後半と二十歳前後かと思われた。修二達の気配にも振り向かなかった。
「おい、坐れよ」
 修二を案内した男は振り向いてまた言ってから、店主に向かって、
「マスター、こい奴に何か食わせてやって下さいよ。家出をして来て駅前通りの<金正>でナイフをかっぱらったんですよ」
 と言った。
「おい、ナイフを見せてみな」
 店先で硬直したまま立っている修二に向かって言ってから男は、なお動かない修二に向かって、
「大丈夫だ、取りやしねえよ」
 と薄笑いを交えて言った。
「坊や、大丈夫だよ、坐んな」
 マスターと呼ばれた男が初めて口を開いた。
 鋭い目つきに似合わず穏やかな口調だった。
 修二はその言葉で堅さがほぐれて眼の前のカウンターに近付いた。
「ここに座れよ」
 修二を案内した男は自分の左隣りの椅子を修二に勧めた。
 修二は鞄を抱えたまま椅子に腰を下ろした。
「ナイフを出してみな」
 修二を案内した男が言った。
 修二は薄いジャンパーのポケットからナイフを取り出した。
「おお、良いナイフだ」
 マスターが腕組みをしたまま、修二が取り出したナイフを見て笑顔と共に言った。
 ナイフは蛍光灯の明かりを受けて象牙色に輝いた。
 二匹の蛇が牙をむき出して絡み合う見事な浮き彫りが柄の両側を飾っていた。
 全長十五センチ程だった。
 柄と刃の接点にナイフを握った手を包み込むように、滑り止めのガードが上下に張り出していた。
 金色のその輝きが精密な柄の浮き彫りと相まって、ひと際高い気品をナイフに与えていた。
 柄を握る手の親指辺りには絡み合う蛇の眼を思わせて、冷たく光る黒い石のボタンが象嵌されていた。
 ナイフは飛び出しナイフだった。
 ズシリとした重みが改めて修二の心に沁みた
「飛び出しナイフじゃねえかよお」
 修二を案内した男が脇から手を延ばしてナイフを取りながら言った。
 男は自分の身体の前でナイフのボタンを押した。
 鋭く空気を引き裂く音を立てて刃が飛び出した。
 刃渡り十二、三センチかと思われた。
 幽かな青味を滲ませた白銀が鮮やかだった。
 波型模様を描いた鋼(はがね)の部分が一段と濃い蒼色で、不気味な感覚をナイフに添えていた。
 刃先に向かって微かに膨らむ刃(やいば)の形態は柄に浮き彫りされた毒蛇の頭の形を思わせた。
「いいナイフだなあ」
 ナイフを手にした男は感嘆の声を上げた。
「こいつは、二匹の蛇が牙を剝きだして威嚇し合っているところだなあ」
  柄の浮き彫りを仔細に見詰めていた男は独り言を呟いた。
「坊や、そんなもの、何すんだ ?」
 マスターが口元に笑みを湛えて穏やかに聞いた。
 修二には答えられなかった。
 昨日、街を歩いていて偶然、眼にしたナイフだった。
 母親の下を逃げ出し、ディーゼルカーに乗って終点駅で降りたのが県庁所在地の享栄市だった。
 街の何も分からないままに歩いているうちに、思いがけず眼に留まったのがこのナイフだった。
 ナイフはショーウインドーの中でひと際鮮やかにその存在感を誇示しながら、まるで修二を誘うかの様に見事な輝きを見せていた。
 その見事さと共に修二は息を呑む思いでナイフに吸い寄せられていった。
 暫くは息を呑んだまま見詰めていたが、ふと、眼に留まった値段を見て仰天した。三万円の値札が付いていた。
 えっ、三万円 ? 
 それでも暫くは魅入られたように見詰めていた。
 ようやく気分が収まると、チェッ、てんで手が出ねえや、と呟いてショーウインドーを離れた。
 街は既に夜の華やぎの中にあった。行く当てもないままに夜の街を歩き続けた。
 ハンバーガ店が眼に入ると途端に空腹を覚えて三つのハンバーガーを買った。
 それを口にしながら駅の方へ戻った。
 近くに公園があるのを知って中へ入ると、今夜はここで過ごそうと考えた。
 ハンバーガを食べ終わって鞄を枕に木の長椅子に横たわると再び、ナイフの見事な輝きと共に、堅固で優美なその形態が眼に浮かんで来て心を酔わせた。
 どうしても、あのナイフが欲しい、と思った。
 明日、もう一度、行ってみよう。値切れば幾らか安くしてくれるかも知れない・・・・。
「強盗やんだよなあ」
 修二がマスターの問い掛けに答えられないでいると、脇から男が言った。
「北川じゃあ、あるめえし」
 マスターが鼻先で笑うように言った。
 修二自身、ナイフを何に使うのかは分かっていなかった。
 公園で眼を醒ました修二は昨日のハンバーガ店へ行ってハンバーガーとポテトチップスを買って、食べながらナイフのあった店へ向かった。





             ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



             
              takeziisan様     


               もう一年の終わり 早いものです
              足腰 大丈夫 一年を無事に越す事が一大行事になってしまいます
              九十代 百歳近くを元気で生きる方々の姿を拝見すると
              まだまだ老け込んではいられないと思いながらも
              年毎に増す身体の劣化 つい先々への不安が頭を過ぎります
              年老いる 人に限らず生あるものの宿命 静かに受け止めるより仕方がないのでしょうかね
               川柳 今年の総決算 でも流石にサラリーマン川柳
              トップ作品の選出だけに一番楽しく拝見しました
              好いですね 川柳の声高ではなく 何気ない皮肉
              大いに皮肉って貰いたいものです 特にこの国の
              愚かな政治家達へ向けての辛口の皮肉を期待したいものです
               レーモン・ルフェーブル 懐かしい響きです 心が洗われます
               暖冬 ?  でも 今日あたり 北国では大雪だとか・・・
              儘ならないのは人の心とお天気ですかね
              そう言えば昨日のニュースでかって子供時代を過ごした地区が
              26度の最高気温を記録したと報じていました
              高齢の身体自体には暖冬も楽でいいのですがどのようなものでしょう
               シャコバサボテン 今年は余り良くありません
              何しろ手入れ不足なものですから
              ブログ上で美しい花を拝見させて戴いております
                いろいろ有難う御座いました























遺す言葉(477) 小説 希望 他 惑わされるな 

2023-12-10 12:04:01 | 小説
            惑わされるな(2023.12.2日作)


 この世に存在し得ない 空虚な
 神という名の下 人間は
 どれだけの悪事 蛮行を繰り返し
 行って来た事か !
 神は 神 それを先導する者達の
 豪華 煌びやかな虚偽に満ちた
 衣装にしか過ぎない
 神が 苦悩 苦難に直接的
 救いの手を差し延べる事など
 あり得ない
 神の言葉 この虚偽 欺瞞に満ちた妄言に
 惑わされるな
 神はあなたが あなたの心の中で
 自身を律する糧として 秘かに
 育めばいい
 神は あなたの心の中に
 他者の妄言 繰り言 美辞麗句に
 惑わされるな


 
           
            ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




            
              希望
                        
               見えたぞ 何が ?


               
              Ⅰ



 修二は店の人達の隙を見て、素早く棚のナイフを手にすると周囲を振り返った。
 誰も修二の行動を見ていなかった。
 修二はそのままショーウインドーを離れた。
 店の人達が追い掛けて来そうな気がして、夢中で人込みに紛れ込んだ。
 暫くは誰も追い掛けて来なかった。
 ようやく安心した。
 思わずポケットの中のナイフを握った手の中で弾ませた。
 自分が急に力を得た気がした。
 勝手知らないこの街で唯一、自分の力になってくれる物が出来たように思った。
 昨日、修二はこの街に来た。
 家は火事で焼けた。
 母親を焼き殺す心算で修二が火を点けたのだった。
 母親はだが、死ななかった。
 修二は母親の下を逃れ、家を飛び出した。
 持ち物は中学生時代に使っていた、白地が汚れて変色した薄汚い布地の肩掛け鞄一つだった。
 中には父と祖母が相次いで亡くなった時の香典、四万円余りとアイドル歌手、高木ナナに貰ったサイン入り色紙とポスター写真、それにサインを貰った時に買ったCDが入っていた。
「兄貴よう、見ちゃったぜ。なかなか好い腕してんじゃねえかよう」
 不意に背後から修二の肩をたたく者がいた。
 息を呑んで振り返った修二の側には、身体をすり寄せるようにして付いて来る男の姿があった。
 二十五、六歳の男だった。
 一見して、この街のワル(悪)らしい様子が見て取れた。
 十七歳の修二には男の態度も年齢も充分、威圧的だった。
 修二は男の言葉も無視して歩いた。
 息が詰まって身体が硬直した。
 男は修二の速度に合わせて付いて来た。
「兄貴のポケットに入ってんのはナイフだろう。あの店でかっぱらうのを見て たんだ。見事な腕前だったよ」
 男は修二をいたぶるのを楽しむかのように薄笑いを浮かべながら言った。
 修二はなお黙ったまま自分の足元に視線を落として足早に歩いた。
 きつく結んだ口元が修二の意地の強さを示していた。
「この辺りじゃあ、見ねえ顔だけどどっから来たんだ」
「うッせえな !」
 修二は突然、男に向き直って言った。
 襲い掛かるような言い方だった。
 男は修二の逆襲に驚いて咄嗟に身構えた。
 修二は立ち止まった男を残したまま歩き続けた。
 男はすぐに気を取り直して付いて来た。
「いい度胸してるよ。大したもんだ」
 男は薄笑いを浮かべてからかうように言った。
 修二はなお、男を無視して歩き続けた。
 小さく折りたたんだ鞄を小脇に抱えていた。
「だけど、お前よお、あんまり粋がってばっかりもいらねえぜ。俺が警察に訴えればお前なんか、たちまちブタ箱行きだよ。それでもいのかい」
 修二の身体に恐怖が走った。
 警察という言葉が心に突き刺さった。
 火事の後、修二は母親と一緒に警察の取り調べを受けた。
 幸い、物的証拠が無くて逮捕はされずに済んだ。
 母親自身が修二の企みに気付いていなかった。
 だが、修二の心の中ではその事実の払拭される事は無かった。
 警察への拒否反応は当然だった。
 修二はそれでもなお、たじろぐ気配を見せなかった。
 無言のまま歩き続けた。
「お前、何処へ行くんだ。行く所はあんのか ?」
 街は既に夕暮れの気配に包まれていた。
 ネオンサインの輝きが目映く眼に映った。
 修二には行き先の当てなど無かった。
「もし、行く所が無ければ、今夜、泊まる所を紹介してやってもいいよ。金なんか要んねえから、心配えしねくても大丈夫だ」
 修二は答えなかった。
「お前、家出をして来たんだろう。働く所が欲しければそれも紹介してやるよ。ちょうど、店員を欲しがってる店があっからよお」
 何時の間にか、街の裏通りに足を踏み入れていた。
 狭い通りを挟んで両側に様々な商店が雑多に軒を並べていた。
 
 間口、四間程の店の入口に、紺地に白く<味楽亭>と染め抜いた暖簾が掛かっていた。




            ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



              takeziisan様


               秋の風景 花々 眼に染みます 
              それぞれが美しく毎年 テレビ画面などでも
              眼にしている光景ですが見飽きません 見る度に感 動します
              日本が誇れる自然の美しさだと思います
              当地の公園では既に冬の選定が行われ樹々は裸状態です
              もう少し四季の移り変わりの模様を見てみたいと思うのですが
              何か味気ない感じだけが残ります
              それにしても今年の冬のなんという暖かさ 自身の身体には楽でいいのですが
               16トン フランク永井の歌が耳に残っています
               小坂一也も確か亡くなりましたね みんな昔の思い出になってしまいました              
               川柳 やっばりtakezii川柳の方が面白い     
               同じように文字を並べているのですが そこに差が生じて来る
               この違いは何処から出て来るのか 物事の本質を深い所で捉える
               結局 その差なんでしょうね 浅い作品は面白いと思っても
               心に響いて来るものが薄い 力が弱いのですね
               入選作と読み比べいろいろ考えさせられました
               どうぞこれからも面白い川柳で 世相を皮肉りまくって下さい
                楽しみにしております
                何時も有難う御座います






遺す言葉(476) 小説 いつか来た道 また行く道(完) 他 愚かな生き物

2023-12-03 11:59:25 | 小説
            愚かな生き物(2023.11.13日作)



 人が人として
 命の尊さを尊重し合えば
 この世に 醜い 人の殺し合いは起きない
 だが 人間は自我と欲望を持つ生き物
 その自我と欲望が 人を動かし この世に
 二つと無い 尊い人の命を いとも簡単 無雑作に
 奪い取る
 人類 人の歴史始まって以降
 変わる事のない愚行 蛮行 人間
 人としての性根は今も変わらない
 愚かな生き物 人間




            
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             いつか来た道 また行く道(完)          



 
 
 まず二枚の厚手の冬用セーターを戸棚から出してガウンも用意した。
 この時、ふと、閃くものがあった。
 そうだ、わざわざ、夜中を待つ必要はない。機会さえあればいつ遣ってしまってもいいのだ。そうすれば後の仕事も早く済む。要は、好機はいつなのかという事だ !
 わたしの胸は途端に緊張感に包まれた。
 その緊張感を抱いたままわたしは、早速、支度に取り掛かった。
 この前と同じように鉄亜鈴を取り出した。それをタオルで包んでガウンの中に隠した。
 行為に対する不安は当然、消えなかった。
 でも、 別の機会を待っても結果は同じだ、と自分に言い聞かせた。
 最初、わたしは男を酒に酔わせ、熟睡した真夜中に突然、大きな声で叫んで、男が何事かと酔いの醒めない寝ぼけ眼(まなこ)で寝室を出て来た瞬間を狙って、背後から鉄亜鈴を振り下ろす計画を立てていた。一メートル六十五センチのわたしより幾分、背の低い、小太りな男に対して決して無謀な計画だとは思っていなかった。
 だが、男は酒は飲まないと言う。計画は練り直しを迫られた。
 たとえ、練り直しはしないまでも、成功の確率は数段低下するように思えて不安は増した。
 それでも遣らないわ訳にはゆかなかった。いずれにしても、いつ遣っても何処で遣っても、不安の消える事はないのだ、と自分に言い聞かせて、二枚のセーターとタオルで包んだ鉄亜鈴を隠したガウンを持って広間へ戻った。
 男はパンも食べ終えたらしく、ソファーの背もたれに頭を寄せ掛けたまま、上を向いて眼をつぶっていた。
「はい、これを持って来たから寝るまで着ていなさい。それで寒かったらガウンもあるわ」
 わたしは二枚のセーターを男の前のテーブルに置いて言った。
 男は体を起こすとその一枚を手に取った。
 スキーに行く時などに着用する頭から被るタートルネックの、厚手のゆったりした黒のセーターだった。
「ああ、これなら好いや。暖ったかそうだ。なんにしろ、寒くてかなわねえよ」
 男はセーターを広げて満足そうに言った。
「とにかくそれを着ていなさい。それで寒かったら、ガウンもあるから。寝る時には毛布も持って来て上げるわよ」
 わたしは腕に抱えたガウンの中でタオルに包んだ鉄亜鈴を握り締めながら穏やかな口調で言った。
  男には警戒する様子が全く見られなかった。今まで人気のなかった大広間の寒さに耐え切れなくなったように早速、手にしたセーターに腕を通し始めた。
「どう、着られるでしょう」
 わたしは言いながら男の横に立った位置から少しずつ体を男の後方へと移動させて、その時のチャンスを待った。
  心臓の鼓動が自ずと速くなるのが自分でも分かった。
 それでも決意は揺るがなかった。
「うん、大丈夫だ」
 男は言いながら腕を通した後、頭を入れた。
 男には何も見えなくなった。
 今だ !
 わたしは急いで男の背後に廻わり、タオルに包んだままの鉄亜鈴をガウンから取り出してその瞬間に備えた。
 男の頭がセーターの中から現れた。
 わたしに迷いはなかった。一気に男の後頭部めがけて鉄亜鈴を振り下ろしていた。
 男は中沢の時と同じように小さなうめき声を上げて身体を硬直させると、次の瞬間には前のめりになってテーブルに伏せるようにして倒れ込んだ。
 男がパンを食べた後に飲んだコーヒーの缶が転がり、僅かな残りがテーブルの上に流れ出た。
 男は即死だった。頭部から血が流れ出ていた。
 わたしは慌てて残されたセーターを頭の下に敷いて、傷口にタオルを押し当てた。
 出血は幸い少なくて済んだ。 
 頭蓋骨が大きく陥没していた。
 水を含んだような感触が指先に伝わって来た。
 男もまた白目を露出させていた。
 口を開け、半分、舌を突き出していた。
 そんな男の形相にわたしは始めて恐怖と寒気を覚えて身体が震えた。
 震えは抑えようとしても抑えられなかった。
 身体中から力が抜けていた。
 足が床に着いていない感触だった。
 そんな自分に気付くとわたしは、  " 何を怯えているんだ、しっかりしなくちゃ駄目だ 。これからはもっと大事な仕事が待っているんだぞ ! " と自身を叱咤した。
  改めて気を取り直すとわたしは小走りに運動室へ走った。
 手早く運動着に着替えて玄関へ向かった。
 靴入れから長靴を取り出して履いた。
 さあ、男を埋めるのだ。それも中沢の時と同じく、今夜のうちに遣ってしまわなければならない。
 外へ出ると一面雪で覆われた景色が新たな感覚で眼に飛び込んで来て思わぬ不安に捉われた。
 この雪で、中沢の時と同じ様に旨く地面が掘れるだろうか ?
 もし、凍っていたらどうしよう ?
 不安は大きくなった。
 でも、何れにしても遣ってしまわなければならない。わたしが、わたしとして生きる為には、何としても、どんな事があっても、遣ってしまわなければならないのだ !
 自分に言い聞かせるとそのまま、この前と同じ様にスコップが置いてある物置へ走った。
 いずれにしても、いつか来た道だ、手順は分かっている。たとえ、この道が、また行く道であったにしても、遣らなければならないのだ。
 わたしは胸の中で呟いていた。





            完




           
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            桂蓮様
 
           
             久し振りに新作 拝見しました
            一年の速さ 驚異的です 文字通り アッという間です
            年齢を重ねるに連れ速くなる 以前 ブログ内にも書きましたが
            人生幼い頃 若い頃は一日も早く大人になって自由になりたい
            そんな気持ちの為 日々がなかなか過ぎて行かない
            言わば上りの坂を歩いているのと同じ事 それに比して大人になった自分には
            総てが自分の意志一つで決定される 峠の頂上に達したという事
            後は下りの道があるだけ 上りの道はきつい道 早く終わればいいと思いながら
            その道がなかなか終わらない
            一方 下りの道は体を自然に任せるだけで無意識裡に下って行く 
            楽な時間で楽な時間は時の長さを意識しない 故に気が付いた時には
            何時の間にか時が過ぎていた
            それと同じ事だと思います 何れにしても 保ちたい時間は無情に過ぎて
            人を老いの道へと運んで行きます 結局人は今という時間を 自分という存在の今を 
            自分が望んでいる事 考えている事 その実現に向けて精一杯生きる という事より他には
            出来ないのだと思います
             新作 改めて人が生きるという事を考えさせられました
              冒頭の写真 日本の鮨かと思いました
             韓国と日本 文化は近いのだと改めて認識させられました
              有難う御座いました




               takeziisan様

                秋満喫 楽しませて戴きました
               有難う御座います
                クンシラン 今咲く ?
               既に実が赤くなる季節 わが家のラン まだ実が青い
               季節感が全くなくなってしまいました ちょっと寂しい気がします
                懐かしのメロディー マッチ箱集め 思い出します
               小松菜そろそろ終わり・・・わが家の屋上栽培では
               ホウレンソウの収穫がありました
               歯ざわりが違います 収穫の喜びですね
               干し柿作りと共に羨ましい気持ちで拝見しています
                サザンカの季節 見事な花ですね 知らず知らずに名曲
               さざんかの宿 が意識の中を駆け抜けていました
               銀杏並木の美しい事・・・・画面から秋が匂って来ます               
               と言いながらも もう冬 一年の終わり 年々衰える体力の自覚の寂しさ
               正に人生 秋から冬へかけての道を歩んでいます
                親睦会 わたくし共も同窓会がコロナの前に年齢を考慮して
               これが最後という事で終わりました やはり寂しいものです
                菊香る 墓石に映る 鰯雲
               一番 心に響きました 勿論 他の作品もその通り
               ほくそ笑みながら楽しく拝見させて戴きました
                何時もながら 楽しい時が過ごせました 有難う御座います