さよなら 東京巨人軍(2004.6.24日作)
なぜ、こんなに野球に興味がなくなってしまったのだろう。あるいは、巨人ジャイアンツに対する興味、と言ってもいいのかも知れない。試合中継を見る気も起らない。ジャイアンツが勝っても負けてもなんの感興も起らない。遠い世界の出来事のようにテレビのスポーツニュースを見たり、新聞記事を見たりしている。それらも眼に入るから見ているだけの事だ。
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去年まではそれでも多少の関心を持っていた。二軍で一生懸命努力をしている若手を育てようとする現場の首脳陣の姿勢が見えて、どんな若手が育ち、将来の巨人軍を背負ってゆく人材になるのか、などと興味をふくらませていた。飛び切り足の速い選手、ようやく才能を開花させるか、と期待を抱かせる選手、思いがけず新鮮な才能を見せ付ける選手、とまだ無名に近くても、それぞれに個性を持った選手達が一軍の壁に跳ね返されながらも、精一杯に動いている姿が新鮮に見えて好感が持てた。
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今年はだが、そんな芽も潰されてしまっているのではーー、そんな気がしている。もっとも、試合を見ていないので分かったような口は利けないのだが。いずれにしても、何処かの球団で看板を張った選手を集めて来て、これがジャイアンツだ、などと言われても、はい、そうですか、とは言えない。いろいろな色が混じり合って何処の球団なのかと戸惑う混成チーム、雑多煮集団でしかない。
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だが、こんな事は巨人に於いては今に始まった事ではないのも、また確かだ。今は亡き別所投手の時代からそうだった。
当時、毎年のように優勝を争っていた南海ホークスのエース、別所剛(のちに毅彦と改名)を引き抜いて、世間をアッと言わせたものだった。
以来、長嶋茂雄、江川卓、などとそれぞれの入団に関しては芳しくない噂が付きまとっている。そして、清原の指名問題・・・・。一位指名の約束をいとも簡単に反故にして桑田を指名し、清原の心を傷付け、悔し涙を流させている。
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結局、そんな事のために、長年の巨人ファンが離れてゆくのも珍しくはなかった。あの某、あの人も、元は巨人ファンだった。それからあの人も、と数え上げたら、おそらくきりがないだろう・・・・。
それでもわたし自身、ずっと巨人ファンでいたのは、中島治康、藤本英雄、呉昌征、そして既に伝説化していた沢村栄治などの、終戦直後の名選手達の記憶と共に、やがて第一期黄金時代を築き上げた三原や水原などの監督(三原が水原に代わる時にも、ある経緯があったのだが)川上、千葉、青田、内堀、白石、平山、などと言った名選手達に寄せた子供時代の熱い思いが支えになっていたからに外ならなかった。
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それから第二期黄金時代の長嶋、王、藤田、広岡などの活躍がオーナーの正力松太郎の名と共におそらく、巨人ブランドを確実なものにしたに違いなかったーー。
しかし、そんな栄光に輝く時代も決して永遠であるはずがない。正力松太郎氏の死や息子の享氏の引退と共に、次第に色褪せたものになって来た。特に現オーナーの傍若無人、唯我独尊と言ったような物言いには、長年の巨人ファンであっても腹立たしさを覚えずにはいられない。
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いったい、松太郎氏や享氏はオーナーの時に、こんなに喧しく現場に口出しをしていただろうか? 選手や監督の心を傷付けても平気なオーナーの言動に嫌気が差して、藤田元司元監督は、現オーナーがオーナーでいる限り、監督はやらない、と言ったそうだが、その心情も分かるというものだ。現オーナーがどんなに偉い人物なのかは知らないが、その姿勢には、なんでも勝手に出来るといったような成り上がり者に似た嫌らしさ、横暴さが付きまとう。
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今年も巨人は健闘している、と言っていいのだろうか、それとも、あれだけの戦力を備えて何をやっているのか、と言うへきなのか? チームに何が不足していて、何を補うべきかも考えず、手当たり次第、金ぴかの廃棄物選手を集めて来て、現状を取り繕うやり方には、過去の遺産を食い潰すだけの、経営理念を持たない社長の会社経営を見る思いがする。社員が腰を据え、希望を持って働けないような会社に明日はないのと同じで、若手がどんなに努力をしても、横合いから出来上がりを引っ張って来て、若手のやる気を奪っているとしか思えないような球団経営の在り方には、明日があるとは思えない。やがて遺産を食い潰した時には巨人というチームも、並みのチームになって人気も離散してゆくのだろう。事実、テレビの視聴率がそれを表し始めているではないか。そしてわたし自身、いつか巨人といチームへの関心を引き戻され、心を躍らせ、期待を持ってその試合を観る時が来るのだろうか?
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今、わたしの心の中ではかつての東京巨人軍が夢のように遠くなってゆく。そして読売ジャイアンツが嫌味なオーナーの存在と共にわたしの心の中で違和感を持ち始めている。---さよなら、東京巨人軍、今はただ、そんな心境だ。