雑感十二題(2020~2022年作)
Ⅰ 人 間の品性は 精神(こころ)が生み出すものだ
貧富には関係ない
2 恥は誇りの上に成り立つ
誇りのない人間に恥じ入る心はない
3 世間への尊敬 畏怖を失った者は滅びる
4 内面の充実している人間は比較的 欲望は少ないものだ
内面の空っぽな人間が際限のない欲望に走る
5 人はそれぞれ 各自の人生に於いて選ばれた存在だ
人 それぞれの人生
6 人は一瞬一瞬を自分の力で選択して生きている
その生を豊かにする為に人は 学び 考えなければなならない
7 眼からの刺激は脳によって咀嚼されなければ
花開くことはない
8 言葉を自分の中に取り込み 飲み込んで咀嚼する
相手を説得出来るのは 噛み砕かれ
自身の血肉と化した言葉と論理だ
9 理念を語る事は肝要だ しかし
現実に裏打ちされない理念は空論だ
10 われわれが会話や見聞の中で理解したと思っているものは
自分自身の中に存在しているものへの納得に外ならない
11 極めて優れたものには作為は無論 そこに在る事さえも感じさせない
自然さが備わっていて 自ずとこちら側の心に寄り添って来る
⒓ 他人の称賛は半分に聞け
他人の𠮟責は二倍に受け止めよ
書生論ではなく 真実だ
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華やかな嘘(1)
川野幸二が息を吞んで三島明子を見つめていると、明子もまた、凍り付いたような眼差しで川野を見た。
二人が別れてからすでに十五年に近い歳月が流れていた。
川野幸二は四十四歳になっていた。
三島明子は三十八歳になっているはずだ。
その明子には別れた当時から比べると明らかに、年齢にふさわしい女としての成熟度が感じ取れた。
川野にしてみれば好ましく思える印象だった。
あるいは川野は、明子が気付かなかったら、そのまま、何事もないようにやり過ごしていたかも知れなかった。
だが、二人の視線はホテルのロビーの人込みの中で出合っていた。
それでも川野は、もし、明子が不快感をあらわに視線を背けていたら、声を掛けなかったに違いない。
明子との別れには川野の方に弱みがあった。
その明子は、ロビーの椅子に掛けたまま、川野に向けた視線をそらさなかった。
あるいは、偶然の出会いに驚き、眼を疑い、我を失っていたのかも知れなかった。表情に過去を懐かしむ気色はなかった。
川野はそんな明子の奇妙な視線に吸い寄せられるように近付いていった。そしてそのまま、いささかバツの悪そうな笑顔を浮かべて軽く頭を下げると、
「しばらく」
と、挨拶した。
「しばらくでした」
言葉を返した明子の表情は堅かったが、よどみのない返事が返って来た。
「こんな所で会うなんて、思い掛けないですね」
なんとはない居心地の悪さを抱きながら川野は、ぎごちない笑顔で言った。それから、そのぎごちなさを包み隠すような思いで続けて、
「今日は ?」
と聞いた。
明子には連れのない様子だった。
黒いベルベットのスーツに濃い藤色のブラウスを着て、耳には銀色に輝く小さな鎖のイヤリングが光っていた。
胸の二重のネックレスも同質のものだった。
「ええ、ちょっと」
明子は微かな笑みと共に言葉を濁して言った。
膝の上にある艶を帯びた黒革のハンドバッグは一見して、高価な物でることが見て取れた。
かつての明子には見られなかった華やかさだった。
「どなたか、いらっしゃるんですか ?」
明子の隣りの空いたソファを見ながら川野は聞いた。
言葉が自ずと他人行儀になっていた。
十五年という空白の歳月のせいかも知れなかったが、明子のどことなく洗練された雰囲気に吞み込まれてもいた。
十五年前のあの時、二年に及ぶ同棲生活が明子の妊娠と共に終わりを迎えていた。
あれから十五年、総ては遠い記憶の彼方の事で、蘇る感情も親しさとは縁遠いものになっていた。
「いいえ」
明子は何故か、一瞬、慌てたように言って恥じらうような表情を見せ、そのソファーを勧めるかのような仕草を見せた。
「お邪魔しても、かまいませんか ?」
川野は聞いた。
「はい、どうぞ」
特別に迷惑そうな表情も見せずに明子は言った。
川野は明子の斜め向かいに座を占めた。
半分、明子と向き合う形になった川野は、何故か、居心地の悪さを覚えた。
自分の過去に向き合わされているかのような感覚を覚えて落ち着けなかった。
慌ててポケットから煙草を取り出すと一本を唇に挟んでから気が付いて、明子に差し出した。
「いいえ」
と明子は言った。
かつて、川野と一緒に面白がって煙りを吹かしていた明子だった。今では勧めるポールモールに関心もないような明子に川野は、堅実な中年女性の落ち着いた姿を見る思いがして、何故か、自分に寂しさを覚えた。
川野は煙草をポケットに戻すと、入れ替わりにライターを取り出して口に咥えた一本に火を付けた。ロンソンの高級ライターだった。
今時、百円ライターが横行する中で、川野が高級ライターに拘るのは、不如意な日々を余儀なくされている自分への見栄からだった。ポールモールも見栄えのする外箱を見せびらかすような意味合いを込めての愛用だった。
今の川野は世間に対して虚勢を張って生きていた。
未だに川野は、昔のままの売れない作詞家だった。
その弱みを虚勢によって誤魔化して来た。
そんな川野に取っては、かつて自分が捨てたとも言える女の、何処か華やかさを感じさせる落ち着いた雰囲気は、自身の寂しさを一層、倍増させるものでしかないように思えた。
川野はその寂しさを紛らわすように大きく口に含んだ煙りを吐き出した。それかおもむろに口を開いて聞いた。
「今は何処に ?」
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takeziisan様
今回も楽しいひと時を過ごさせて戴きました
有難う御座います
カライトソウ 見た記憶がありますが 高山地帯に自生との事
あるいは違う花なのかとも思っています
方言 「こぐ」 わたくしの地方でも使っていました
遠く離れているようで 案外 近いものですね
立派な大根 大根は少し安くなったようです
ですが いずれにしても 欲しいと思えばすぐに
新鮮なものを手に出来る
御苦労はあると思いますが これに勝る贅沢はないのでは
と思ったりしています
コタツ 寒さ一気にという感じ それにしても
今時 クンシラン 写真のせいか 色が薄いように感じられますが ?
ユウゲショウ 見た記憶のない花です
プラタナスの並木 わたくしは常々 落ち葉は
ゴミではないと思っていますが 落ち葉の絨毯
かつて 新宿の街は銀座と共に本拠地としていたような感覚の街ですが
新宿御苑には何故かいち度も足を運んでいません
ですから写真で見る景色しか知りません
いずれにしても こんな景色は末永く残して欲しいものです
出来る範囲で生きる
人それぞれ それに勝るものはないと思います
無理をすればいずれ 付けが来る
気張らず 余裕を持ってお互い 長くはないと思われる人生を
歩んで行こうではありませんか
美しい写真 今回も楽しませて戴きました
有難う御座いました