逆転現象(2021.12.10日作)
威を張るな
肩を怒(いか)らすな
自分を大きく見せようとすればするほど
他者の眼には その人物
人間像が 底の浅い
小さなものに見えて来る
謙遜 謙虚 自分を常に
低位置に置く時 他者の眼にはその人
人間像が大きく見えて来る
世の中 世間では しばしば
逆転現象が起こるものだ
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私は居ない(6)
翌日、私は三光町の伯父の家を訪ねた。
伯父はわたしの話しを聞くと、白くなった眉毛を寄せて難しい顔をしながら、
「死んだお母さんの言う事は本当だ。お前は東陽町に居た〆香という芸者の子だ」
と言った。
私はそこで改めて、川万の元女将という女性を訪ねた事、昨日、〆香と名乗る女が現れた事を伯父に話した。すると伯父は、
「そんな事はない。それは何かの間違いだ。その二人に会って話してみれば分かるだろう」
と、強い口調で言った。
「伯父さんは川万の女将と〆香を御存知ですか」
「ああ、知ってる。現在の川万の女将も〆香も知らないが、当時の女将や〆香なら知っているから会えば分かるはずだ。何しろ、お前を引き取るに当たっては、事が面倒にならないように俺が中へ入ったんだから」
私は始めに〆香と名乗る女に会って貰った。
伯父を訪ねた翌日、女に電話をして、名刺に書かれた住所を訪ねて行った。
事の詳細を話し、伯父に会って貰えるかと尋ねると女は別段、逃げる様子も見せずに、
「結構です。お会いしても宜しいです」
と言った。
「伯父はその時、あなたに会っているという事ですが、あなたは伯父を御存知ありませんか ?」
私はなおも女の真実を確かめたくて探りを入れるように聞いてみた。
「伯父様と申しますと・・・?」
女は軽く首をひねるようにして聞き返した。
「三光町に居る経済学者の川名登です」
「川名様 ? さあ、ちょっと記憶が御座いませんが」
女の表情には困惑にも似た気配が浮んでいた。
私はこの時になって初めて、女が偽者か、別の〆香に違いないと確信するようになっていた。
女は三日後の日曜日が都合がよいと言った。
「宜しかったら、伯父の家へ来て貰いたいと思うんですが」
「結構で御座います」
伯父は事情を話すと快く承知をしてくれた。
その日曜日、私は十時過ぎに家を出ると車で築地の女のアパートへ行き、そこからと女と共に伯父の家に向かった。
私達はすぐに応接間に通されたが、既にそこに居た伯父は女の顔を見ると即座に、
「やあ、珍しい人のお出ましただね。いらっしゃい」
と、屈託のない笑顔で言って女を迎えた。
「ああ・・・・」
女も、伯父の顔を見て驚いたように声を上げた。
「先生でしたか。先生だったんですか」
何故か、懐かしそうに言った。
「御存知ですか」
私は女に聞いた。
「はい、存じております。昔、よくお世話になりました」
女のそう言った声には弾むような響きさえがこもっていた。
「この人は〆香だよ。間違いなく昔の芸者の〆香だよ」
伯父も何故か、嬉しそうに言った。
「その節はいろいろお世話になりました。大変御無沙汰致しております」
女は改めて丁寧なお辞儀をして挨拶した。
「いやいや、こちらこそ、いろいろ迷惑を掛けてしまって。まあ、とにかく、掛けて下さい」
伯父は女にソファーを勧めた。
お茶が運ばれて来た。
一通りの手はずが済んで座が落ち着くと伯父は、
「その後、どうしたのかね。いっこうにあなたの噂を聞かなくなったが。横川が死んでから間もなくだったね」
と、女に語り掛けた。
「はい。社長さんが亡くなってから、わたくしも川万を辞めて郷里の銚子へ帰ったのです。でも、そこも二年程居るとなんとなく居辛くなり、また、東京へ出て来た訳なんです。それからはずっと東京で」
「今は何処に ?」
「築地におります」
「結婚はしなかっちたの ?」
「いいえ、二度しましたけれど、一度は一年程した時に、思わぬ交通事故で亡くなってしまったんです。二度目の結婚は三年程で別れてしまいました。それからはずっと一人で」
「そう。で、今は保険会社とか・・・」
「いいえ、二度しましたけれど、一度は一年程した時に、思わぬ交通事故で亡くなってしまったんです。二度目の結婚は三年程で別れてしまいました。それからはずっと一人で」
「そう。で、今は保険会社とか・・・」
「はい。なんとか、細々と生きています」
女は軽い笑顔を見せて言った。
私は伯父が何時、肝心の話しを切り出してくれるのかと待っていたが、伯父自身も心得ていたようで、軽い世間話が済むとすぐにその話しに取り掛かった。
「実は外でもないが、この人がね、母親が死の間際になって、お前はわたしが産んだ子ではないと言って死んだ、って言うんで大分、気にしているんですよ。それで、わたしの所へ来て、真実を教えろと言う訳なんです。だからわたしは、母親の言った事は本当だって言ったんだけど、母親が言った〆香と言う人に会ったらその人は、この人を産んではいないと言うし、その〆香がいた川万という置屋の元女将に会っても、元女将は〆香は死んでしまって,子供も死んでるっていう訳なんです。そんなこんなで話しがこんぐらがってしまって、それで今日、わざわざ来て戴いたんだけど、なあに、今更、あなたに迷惑を掛ける心算はないので、どうか、本当の事を話してやってくれませんか」
女は真剣な面持ちで伯父の話しを聞いていたが、すぐに伯父の言葉に応えて言った。
「はい。その事は若旦那様からも伺っております。若旦那様が〆香と名乗った芸者を探しているという事で、わたくしの方から伺ったような訳でして。でも、若旦那様はわたくしの子供では御座いません。わたくしも〆香と名乗った以上、その事はわたくしが一番良く知っています」
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takeziisan様
今回もブログ 堪能させて戴きました
都々逸 面白く拝見しました あの映像 良く見付けましたね
充分 楽しませて戴きました 踊りは踊るな
さすが熟練の芸妓さん 自然です 身に付いた踊りです
観ていても自然に気持ちが引き込まれます 硬さがありません
楽しませて戴きました
最近はNHKはラジオではどうか知りませんが テレビで邦楽を放送する事は滅多にありません
子供の頃 ラジオで頻繁に放送していて夏の夜など
庭で花火をしながら耳にしていたものですが 久し振りの都々逸
当時を思い出しておりました
アームストロング いいですね トランペットのあの高音 しゃがれ声
二度とあのような人は出ないでしょうね
七つの水仙 知りませんでした
七里ヶ浜哀歌 何回か前の日テレ こころの唄 でも放送していました
この放送では昔の名歌をしっかりと基礎の出来た歌い手たちが歌いますので
今ではわたくしに取っては唯一のテレビで観る音楽番組になっています
カポック 時々 見かけます 名前は知りませんでした
今回も美しい写真の数々共々 いろいろ楽しませて戴きました
有難う御座いました
桂蓮様
なんだか お身体の具合い 最低の御様子
どうか大事にして下さい 一つでも痛い所があると
なかなか普段通りの生活が出来ません どうぞ
無理をなさらないようにして下さい
バレーの事など気懸りもあるでしょうが 身体第一にして
焦らないように
そちらは暖冬のようですが でも神経痛など 季節の要因も絡んでいるのでは
ないでしょうか
他人事ながら人様の苦痛の御様子を見聞きするのは
嬉しいものではありません
一日も早い御快復を願いながら 嬉しいお知らせの早く
拝見出来ます事を願っております
苦しい状態の中でわざわざ愚にも付かない文章にお眼をお通し戴き
コメントまでお寄せ戴く事に改めて御礼申し上げます
有難う御座います