芸術雑感八題(2018~2019)
Ⅰ 自分を高みに置いて
物事を見下すような視点で書かれた文章には
品性を見い出す事が出来ない
俗物(スノッブ)根性が透けて見えるだけだ
某女流作家や某評論家の文章に品性がないのは
その為だ
2 芸術という言葉ほど胡散臭く 無責任なものはない
アマチュアという言葉ほど 精神の弛緩を感じさせるものはない
芸術の名の下に意味不明な 訳の分からないものが罷り通る
アマチュアという名の下に 不備不全が許される
3 芸術は過ぎて逝く時の中で刻々と姿を変え 消えて逝くものの
真の姿を捉え それに形を与えるものだ
4 隠されたものの意味を探り出し 提示する
それが芸術の存在意義に違いない
5 批評家には二通りある
印象批評家と創造的批評家だ
例外として 追従批評家 あるいは
太鼓持ち批評家というのがある
6 巨匠とは 世間 マスコミが創り出す虚名
作品の質とはなんの関係もない
7 芸術家や芸能人は
一部の極めて稀な謙虚な人の例を除いて多くは
大家や先生などと言われ始めると
作品そのものはつまらなくなる
精神の弛緩がもたらす結果だ
8 カリスマが
虚像に乗って
今日も行く
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サーカスの女(2)
高志の音頭取りで衆議一決、金毘羅神社行きが決まった。
「おらあ去年、親類のえ(家)のもん(者)に連れてっで貰ったけっどよお、凄がったど、ガマの油売りがよお、日本刀でこう、腕ばスパッと切っちゃうだ。そっで、ガマの油ば塗っどよお、あっつう間に血が止まっちゃあだ。凄(すげ)えよ」
忠助がデキモノ跡の後頭部の禿を掻きながら言った。彼も春男と同じ五年生だった。
「ああ、おれも見だよ。あらあ凄えよなあ。痛ぐねえのがなあ」
高志もその場の情景を思い出し、興奮して来るようだった。
信吉はなお一人、ポケットから芋を取り出しては口を動かしながら聞いていた。
信吉にもその場の情景が眼に浮かぶように思えて来て興味をそそられた。
「なん時ごろ行くだあ ?」
信吉は聞いた。
「朝、早ぐ行ぐべえよ。横芝までは歩いで一時間以上は掛がっぺえ。八時に出発しても向ごうさ着いだら九時半ぐれえにはなっちゃあもんな。それがらいろんな物ば見っど、すぐに時間が経っちまあど」
高志が言った。
「弁当ば持ってぐのがあ」
信吉と同じ四年生でもクラスの違う義雄が言った。
「弁当なんかいんねえよ。食うもん売ってべえよお」
高志が遣り込めるように言った。
「あにか、かっぱらっちゃあべえよ」
春男がわくわくした様子で言った。
「うん、うん」
高志が熱気を込めてすぐに応じた。
彼等はみんなが浮き浮きした気持ちになっていた。明日が待たれるような様子を見せていた。
その後、彼等は釘打ちをして遊んだ。五寸釘を地面に投げ刺して、相手の進路を阻む遊びだった。出口が塞がれれば負けになる。
高志と忠助の勝負は高志が勝った。
「どれ、おれに貸してみせよ」
春男が名乗り出た。
その時、義雄が、
「中里の桶屋の柿ば盗みに行くべえよ。あっご(あそこ)の裏の畑ん中によお、こんなでっけえ柿がいっぺえ生(な)ってっだあ」
と、両手で実の大きさを表しながら言った。
「ああ、あそごの柿は凄えよなあ。二十本ぐれえ木があっぺえ、そっさ、鈴なりだもんな」
忠助が言った。
「だげっど、あすこの親父はおっかねえど。天秤棒持って追っかけで来(く)っど。おらあ、追っかけられだ事あっだがらあ」
春男が言った。
春男の話しには、何処か間の抜けたところがあった。
「逃げちゃえばいいでねえが。捕めえられるもんがよお」
高志がベルトのゆるんだズボンを引きずり上げながら言った。
高志はやせてひょろひょろと背ばかりが高く、既製のベルトの穴では間に合わないのだ。
「ところが、あすこの親父はさあ、ものすごぐ足が速えだよ。おらあ、はあ、ちょっとのとごろで天秤棒食らうとごろだったよ」
春男はなお、警戒を呼び掛けた。
「大丈夫だよ。みんなで一緒に行げば、誰ば取っ捕めえでいいが分がんねぐなっちゃあだよ」
義雄が言った。
「行ってんべえ、行ってんべえ」
高志が言った。
忠助も続けて言って同意した。
2
「信吉、にしゃあ(おまえは)、どご、ふらっこふらっこ遊んでっだよお。婆ちゃん、手伝えに来(こ)うって言わながったが。このくそ忙しいのによお」
座敷には電燈が灯っていた。その灯の色がほっと暖かかった。
夕闇が広い庭を薄墨色に染めていた。
母は裸足のまま、夕飯の支度をしていた。釣瓶で水を汲み、野菜を洗う。
姉の道代は風呂場の火と、めしを炊く竈の火の両方をみていた。
父は牛車に積んだ稲を肩に担いで納屋に運び込んでいた。
信吉の姿を見ると、怒気を含んだ小言がまず、口をついて出た。
「聞がねえよ、おらあ」
信吉は言った。
父は殴る事はなかったが、それでも信吉は怒りを避けるように身構えた。
「デマ言うな。聞がねえ事(こど)があっがよお」
「聞がねえよ。ほんとだよお」
信吉は怒ったように怒鳴り返した。
「いいがら、さっさと手伝え。手がたんねえのが分がんねえのがよお」
父は小言の合間にも仕事の手を止めなかった。
信吉はようやく、父が納屋に向かった後で、牛車から稲を引き摺り下ろして小脇に抱えた。
「ちゃんと積んで置げよ。いい加減にやっど、あどで崩れちっまあがんな」
父は信吉の様子を見て言った。
後継者を育成する厳しい眼差しだった。
信吉は暫く手伝った。父と一緒に汗を流すのが嬉しかった。
父が信吉の一生懸命に働く姿を眼にして満足しているらしいのが、無言の内にも分かった。父はだが、世辞などは言った試しがない。
「ほら、そんな風に持ったら、束がぐずくずになっちまうでねえがよお」
相変わらずの小言だった。
「父ちゃん、まだ仕事が終わんねえのがい。風呂が沸いただよ」
道代が風呂場から姿を見せて言った。
「ああ、はあ(もう)少しだ。婆ちゃんば先(さぎ)に入れちゃえ」
道代は裸足で野良着のままだった。座敷に向かうと、
「婆ちゃん、先に風呂に入(へ)えれって」
声を掛けた。
「はあ ? 父ちゃんはまだ入えれえのが ?」
婆ちゃんは障子の陰から顔だけ覗かせて言った。
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takeziisan様
有難う御座います
今回 市丸の唄 懐かしいですね
勝太郎 市丸 赤坂小梅
遠い思い出です
その他懐かしいジャズ
いいですね
若かりし頃が蘇ります
お写真 相変わらず堪能致しました