雑感五題(2023~2024年)
1 人の心は水面に映る
月の様にありたい
水面に映る月は 波に揺れ
縦横無尽に形を変える それでも
月は 月として その存在を
少しも失くしてない
月は月として 常にそこにある
2 「一念起これば魔界に落ちる」
固定観念で物を見るーー
真の姿が見えて来ない
無の心 真っ新(さら)な心
その心で見る時 初めて
物事の真実
その姿が見えて来る
3 主義が何んであろうと構わない だが
個人が個人として生きられない世の中
そんな世界は異常だ
個人 一人一人の存在は
世界を包む
4 人間は自由な存在
その自由は
野放図な自由ではない
他者の存在に束縛される
他者の存在を束縛する自由は
自身の自由も束縛される
人は人としての輪
人と人との関係の中でしか
生きられない
5 人の世は
束の間の夢 幻
現実はただ 今
此処に在るだけ
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<青い館>の女(14)
わたしが妻と出会ったのは、長野県にあるわたしの実家から左程遠くないスキー場での事であった。
当時、上京していたわたしは、逼迫した生活の中で大学に通っていた。
彼女と同じ大学ではなかったが、冬の間、雪国に育った者の特権を活かして彼女のスキー指導をする事になった。
わたしが三年の時で、妻はその冬、五、六人の男子学生と三人か四人の女子学生と一緒に来ていた。
無論、彼女は其処でも女王の様に振舞っていた。
女子学生には金銭面で、男子学生には金銭面は無論の事、その美貌に依って。
わたしもまた、その美貌と金銭面に魅了された一人だった。
眼を見張る美貌、今では肥満度を増したその容姿の中に昔の面影を見る程度になっていたが、当時の妻にはその言葉が最も相応しかった。
すれ違って彼女を振り返らない男性はまず居なかった。
目鼻立ちの明確な、何処か日本人離れのした輪郭の中に純日本的な柔らかさが備わっていて、思わず人を振り返えらせるだけの美貌が形造られていた。
初めて彼女を見た時、わたしは息を呑んだ事を今でもはっきりと覚えている。
同時に自身の容姿への劣等感で顔を赤くしていた。
妻はそれを見ていた。
一体、妻は何故、数多く居る取り巻きの中からそんなわたしを選んでいたのだろう ?
確かに当時のわたしは、卑屈とも言える程に彼女に傅(かしず)いていた。
彼女の住む世界がわたしの眼には、別世界の様に見えていたものだった。
彼女がわたしの住む東京の下宿の近くにある<スーパーマキモト>の娘である事はすぐに知れた。
学生の身でありながら、最新型のベンツを乗り廻している事も取り巻き達の会話から知れた。
一方、わたしの家は、山間の小さな村で季節の移り変わりと共に、自然に寄り添って生きている様な質素な家庭だった。
わたしが東京へ出てからも、思い出として浮かんで来るのは何時も土まみれになって働いていた、今はこの世には居ない父母の姿と共に五人の兄姉が一塊になって寝起きしていた、茅葺屋根の古い佇まいの家だった。
そこから兄や姉達は高校へ進学する事も無く、家を継いだ長兄を残してそれぞれが都会へ出て行った。
一番下のわたしだけが、四人兄姉の援助を受けて高校への進学が出来た。
大学へは自らの希望と努力で進学した。
費用は総て、兄姉達からの借用という形を取っていた。
その頃のわたしは多分、飢えた犬の様に浅ましかったに違いない。
豊かな餌に有り付く為に尻尾を振って擦り寄って行く浅ましさ。
今でもわたしは、やがて妻になる女に腰を低くして機嫌を取っていた当時の自分を、何かの折りにふと思い出して激しい嫌悪の感情と羞恥の心に捉われる。
勝手知ったスキー場でわたしは、他の取り巻き達の誰よりも得意になって彼女の為に働いていたのだ。
妻はそれが総てでわたしと結婚したのだろうか ?
いや、そんな事は無い。
自尊心から、そう答えたい。
それが総てで妻はわたしと結婚した訳では無いのだ !
当時、わたしはスキーの技術に於いて中学生時代から、大学生にも引けを取らないと言われていた。
事実、わたしはいろいろな競技会に出ては常に人目を引く成績を残していて、各方面からも注目されていた。
大学進学に当たっては、スキーに依る特待生という話しもあったが、諸々の事情が絡んで不可能になっていた。
それと共に大学へ進んでからのわたしは、次第に競技からも遠ざかり、日々の生活に追われるままにアルバイトの中でのみ、その技術を活かす様になっていた。
わたしの滑りはそれでもなお、健在だった。
たまたま、スキー場で知り合った妻がわたしの滑りに魅せられて、わたしがアルバイトの学生指導員だと知ると、
「来年もこのスキー場に居る ?」
と聞いた。
スキーの季節も終わる頃だった。
わたしはだが、その日暮らしの生活の中で即答出来なかった。
卒業を控えて就職活動もしなければならなかった。
「ちょっと、分かりません。来年は就職活動もあるんで」
わたしは答えた。
「どんなお仕事をするの ?」
彼女は言った。
「まだ、何も決まって無いんで、いろいろ当たってみてから決めようと思ってます」
わたしは言った。
「そうなの。もし、うちの仕事でも良かったら、父に聞いてみて上げるわよ」
彼女は軽い口調の何気ない様子で言った。
わたしが下宿近くのマキモトを利用している事は彼女も知っていた。
その時わたしは、そんな言葉も軽い印象の口調と共に単なる社交辞令の様に受け取って、さして気にも留めないままでいた。
その言葉がわたしの心の中で重みを持つ様になったのは、スキー場の季節も終わって彼女に会えなくなってからだった。
類い稀な美貌を誇る「牧本由美子」の姿がわたしの脳裡から消えなくなっていた。
しばしばわたしは、街中(まちなか)の人込みに後ろ姿の似た人を見ては後を追掛けた。
新しい学年を迎えて学生生活も残り少なくなると急に、その生活の終わりと共に牧本由美子に会う機会も失われてしまうのかという思いに捉われて、居た堪れない焦燥感に捉われた。
就職してしまえば、スキー場でのアルバイトも出来なくなるだろう。
だからと言って、直接、彼女に自分の思いを打ち明ける勇気など無論、湧いて来なかった。
彼女とわたしとの間には、余りに大きな生活環境の相違があった。
わたしに取って彼女の生活は高嶺の花の生活と言えた。
それでもなお、わたしの彼女に対する思いは収まる事が無かった。
日を増す毎に彼女とスキー場で一緒に過ごした日々の記憶が大きく甦って来てわたしを苦しめた。
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takeziisan様
ちょっと寒くなりました
早いものです 暑い暑いとこぼしていた日々が昨日の様な感じの中
早 師走も間近 少しずつ寒さが身に沁みて来る様な季節に
なってしまいました
並木の紅葉 今年も色付きましたね
こちらではまだ 紅葉らしい紅葉は見られません
シャコバサボテンもまだです
野菜の生育 それなりに農家の方々の手間も大変なんだなあと
教えられます でも こうして画面を拝見しますと
なんとなく 羨ましい景色に見えて来ます
今年の野菜の値段の高さ 驚きと共に野菜を多く使用する身に取っては
大変な負担感を覚えます
その点でも このような画を拝見しますと羨ましさを覚えます
何より その新鮮さは最大の魅力ではないでしょうか
以前にも書きましたが 本当の豊かさとは何か
つくづく考えさせられます
総てが自分の思いのまま実践 実行出来る
この農業という職業の素晴らしさ これ程 魅力的な仕事は
そう多くは無いのではないでしょうか
改めて考えたりしています
農業 とても魅力的な仕事だと思います
奥様 リハビリ お二人揃っていればこその幸せ
どうか お大事になさって下さい
有難う御座いました