遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(462) 小説 いつか来た道  また行く道(22) 他 自在な心 知識

2023-08-27 13:09:49 | つぶやき
             自在な心(2023.2.21日作)


 人間 性善説
 人の善意を信じる
 他方 性悪説も存在する
 善と悪
 善を信じ 悪に備える
 この世は総て多面体
 前後 左右 裏表 上と下
 まさかーー
 甘い考え
 危機への道を辿るだけ
 備えは常に万全に
 囚われるな 心は柔軟自在
 常に 開いて置け


             知識


 アメリカの詩人の言葉
 
 読み書きしただけで得た知識は
 後ろ足で立つ犬と同じ
 長続きしない

  (体験 経験で得た知識こそが本当の知識)




          ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




          いつか来た道 また行く道(22)




 そうだ、中沢が身に付けていた服や靴も埋めてしまわなければーー。
 シャベルを地面に突き立てて家の中へ駆け戻った。
 脱衣所に脱ぎ捨ててあった中沢の衣服を一掴みにして玄関へ戻り、靴も手にした。
 よし、これで良し、他に埋める物は ?
 車に思い至ったが、まさか車を埋める訳にはゆかなかった。
 あとでなんとか処分の方法を考えよう。
 車庫の鍵はわたしが持っているので、その点では安心出来た。
 何もない事を確認すると外へ出た。
 そのまま先程の現場へ戻り掛けてふと、重大な事に気が付いた。
 中沢の車の運転免許証と住まいの鍵を手に入れる仕事が残っていた。
 今度の事には最初からそれが一つの目的として組み込まれていた。
 中沢の住所も住まいもわたしは知らなかった。
 中沢を殺害したあと、彼の住居へ忍び込み、保管されていると思われる写真やネガフイルムを取り戻す事が目的の一つだった。その為にも中沢の住所を記録した物が欲しかった。
 思い掛けない自分の失態に気が付いて急に不安になった。
 他に手抜かりはないか ?
 玄関へ戻って明かりを点け、中沢の上着のポケットを探り、財布を取り出して免許証を探した。
 財布の中には他にも二枚の一万円札と千円札一枚、百円を交えて幾つかの硬貨があった。
 それらを抜き取り、そばの靴入れの上に置いて更に別のポケットを探って鎖に繋がれた三つの合鍵を取り出した。
 総てのポケットが空になったのを確認すると、これで良し、と呟いて、中沢の衣服と靴を手に先程の現場へ急いだ。
 穴の傍へ戻るとそのまま暗い穴の底に横たわる中沢の動かなくなった白い裸体の上に衣服と靴を投げ入れた。
 よし、これで良し ! 更に呟いて立て掛けてあったシャベルを手に取り、すぐに積み上げられた落ち葉と共に今、掘り出したばかりの土を穴の中へ投げ込み始めた。
 掘り起こした土を投げ入れる作業は掘る作業に比べて格段に楽だった。落葉と共に投げ入れられた土はたちまち、先程苦労をして汗だくになりながら掘った穴を埋め尽くしていった。
 周囲の高さと変わりなく土が埋められると、落ち葉を搔き集めてその上に載せ、周囲の状態と変わりがない程に均していった。
 暗闇の中で一見、穴を掘った場所の見境がつかなくなると、これでいいだろう、一先ずの安心感と共に呟いて、シャベルを動かす手を止めた。
 またしても全身、汗だらけになっていた。
 それでも、大事な仕事を終えた後のトレーニングウエアの腕で拭う汗の感覚は心地良かった。
 思わず、傍にあった大きな樹の根元に身を寄せて座り込むと、体中を満たしている深い疲労感を癒す為に暫くは腑抜けのようになって何もせず、何も考えずに眼を開けたまま、白樺の木立の間に広がる闇の空間を見詰めていた。
 どれだけの時が過ぎたのか、時間の感覚は全く掴めなかった。ようやく体の中に湧き起こる気力を意識した時、初めて樹の根方を離れて立ち上がる気になった。  
 中沢を埋めた場所を再度確認すると、一目では全く周囲と見分けが付かない程に均されていた。その場所を見つめながら、これで誰にも気付かれる事はないだろう、と深い満足感と共に納得して、傍に突き刺してあったシャベルを手に取りその場を離れた。

 玄関へ戻る前にシャベルを元の場所に戻して立て掛け、傍にあった落ち葉でこびり付いた土をきれいに拭った。
 玄関先では衣服や髪に絡み付いているかも知れない落ち葉や泥を丁寧に払い落とした。
 泥まみれの長靴は玄関を汚さないように入る前に脱いで外へ置いた。
 広間に入ってからも汚れた服装でソファーに掛ける気にはなれず、すぐに浴室に向かった。
 浴室では総てが中沢を引きずり出した時のままになっていた。
 風呂の種火も付いたままになっていた。
 蓋の取られた浴槽からは湯気が立ち昇っていた。洗い場の隅にはシャンプーの泡までこびり着いていた。
 つい先程、何時間か前まではそこに居た中沢の姿が洗い場にポツンと置かれた椅子の上にない事が、奇妙な喪失感を伴って胸に迫って来た。
 思わず漏れそうになる嗚咽を必死に堪えた。
 あいつが悪いのだ ! 総て、あいつが悪いのだ !
 彼への激しい憎しみを込めてこみ上げる嗚咽の中で呟いていた。
 眼の前には綺麗に磨かれた大きな鏡が銀色の光りを放っていた。
 その光りに気付くと共に、等身大の自分の姿がそこに写し出されている事に気が付いてハッとした。
 普段、見馴れているわたし自身だった。だが、明らかに普段のわたしとは違った、見すぼらしく疲れ果ててやつれた顔をしたわたしだった。
 思わずその姿にギョッとした。
 普段、鏡の中で見馴れている艶(あで)やかなわたしの姿は何処にもなかった。
 まるで夢を見ている気がした。
 だが、夢ではなかった。明らかな現実だった。
 その現実に気付くとわたしは途端に自分が身に纏っている物の総てに不快感を覚えて夢中になって脱ぎ捨てていた。一刻も早く、見すぼらしく薄汚いた自分自身を葬り去ってしまいたかった。
 トレーニングウエア、靴下、下着、総てを次々とその場に脱ぎ去っていった。
 素裸になるとそのままシャワーを手に取り、汗で汚れて乱れたままの髪の頭の天辺から浴びせかけた。
 血だらけになっていた肉刺(マメ)の潰れた、シャワーを握った手が湯の熱気で沁みた。
 その痛みで改めて手を見ると、幾つもの肉刺が潰れている事は勿論、普段、わたしが大切にしている爪までが、先程の用心にも拘わらず、無残に割れていた。
 どうしょう ? こんなになってしまった。
 泣きたい思いだった。
 これでは人前に出せない !
 シャワーを止めると元の場所に戻し、改めて自分の両手を見詰めた。
 先程まで止まっていた肉刺の血が湯の熱気で温められたせいかまた滲み出て来た。
 足元に転がっていた下着を取って滲み出る血を拭った。
 血は拭っても拭っても滲み出た。




            ーーーーーーーーーーーーーーー



             takeziisan様              


              有難う御座います
             懐かしい曲 以前は当たり前にように耳にしていたものですが
            最近は余り聞く機会がありません
               聞かせてよ愛の言葉
             ルシエンヌ ボワイエ 初めて聞きました
             岸洋子の唄も懐かしいですね 早くに亡くなってしまいましたが 
             それから後は越路吹雪の唄で有名ですね
             郷愁ばかりではなく 昔の歌には情緒があります
             今のがなり立てるだけの歌とは違います
               奥白根山 あの絶壁に立つ快感 想像出来ます
             一度経験したら病み付きになるのでしょうね
             登山経験のないわたくしにも想像像出来ます
              雑草の逞しさには恐れ入りますが 朝食前の一仕事
             まだまだお元気 瑞々しい収穫物の為にも頑張って下さい
             8000歩を歩く気力があれば大丈夫 ウエストポーチ
             着けて歩く姿が眼に浮んで来て微笑ましく拝見しました
             「寄り合い家族」わたくしは平岩弓枝の本は読んでいませんので
             何とも言えませんが なんとなくその文章の匂いが感じられるような気がしています
             次回を楽しみにしています
              有難う御座いました





              桂蓮様
  

               コメント有難う御座います
              バレー 良い趣味を見付けられましたね
              手術の後の事 充分 注意をして御無理をなさいませんように
              舞台写真 拝見出来る日を楽しみにしております
               新作 拝見しました
              人間自分の意志次第でどうにかなるものですね
              心の持ちようが大切 それと努力 努力の出来ない人間は結局
              変わる事も出来ないのでしょうね
              桂連様も三回変わったという事 その柔軟性があれば何処に居ても
              生きてゆけます
                それにしても良いお方に巡り合えてお幸せです
              まめなお方のようでなんとなく暖かいお二方の日常が浮んで来ます
              いつも羨ましい気持ちで拝見しているそちらの自然環境 その中での生活
              自然環境の維持も大変でしょうが 日常 生きると言う事は
              そういう小さな事の積み重ねの上に成り立っているものなのでしょうね
              毎回 拝見するのが楽しみです
               有難う御座いました
















遺す言葉(461) 小説 いつか来た道 また行く道(21) 他 雑感六題

2023-08-20 12:51:48 | つぶやき
            雑感六題(2016~2020年作)


 Ⅰ 風に流れる 雲
   動かない 雲
   形は変えても
   雲は雲
   雲は雲である事に於いて 雲
   雲の本質は不変
   人間存在 かく在るべし  

 2  化粧を施し 
   衣装を纏った言葉で
   語るよりも 
   赤裸の言葉 言葉の本質
   言葉の芯だけで
   語りたい
   施した化粧は やがて
   剝げ落ち 纏った衣裳は やがて
   古びて ほころびるだろう
 
 3  詩は誰にでも書ける しかし
   他人に感動を与える詩を書くのは
   難しい
   一つのフレーズ 一つの言葉には
   その人の生きて来た人生
   その人の心 が
   投影される

 4  紫陽花の
     雨に濡れいて
     母の逝く

    5  母の逝った五月
     紫陽花の雨の中に
     母が居る




            ーーーーーーーーーーーーーーーーー




             いつか来た道 また行く道(21)



 
 
 疲れ切っていた。
 その場にへたり込んでしまいたかった。
 でも、そうしてはいられない !
 気持ちが焦った。
 一刻も早くこの仕事を片付けてしまわなければならないのだ。
 全身汗になっていた。息を切らしながら顔中を流れ落ちる汗を、トレイニングウエアーの腕で拭った。
 下着が肌に染み付いて耐え難い不快感をもたらした。
 その下着を指でつまんで引きはがしながら今来た道を引き返した。
 シャベルを取って来なければ・・・・。
 手の甲や腕のあちこちが焼けるような感覚で小さく痛んだ。
 木の枝や野茨などで傷付けたのに違いなかった。
 穴を掘る時には手袋をした方がいい。シャベルを使う為にもその方がいい。
 ひ弱なわたしの手ではたちまち皮膚が破けてしまうだろう。
 トレーニングルームへ戻ると手袋を探した。
 何処かに軍手があるはずだ。
 運動器具の手入れや、家の周囲の掃除をする時などに使っていた。
 安売り店で一束十組幾らで買った軍手が見付かった。
 一組を抜き取って片方を左手にはめてみた。
 延ばした爪が邪魔だった。
 これでは爪が折れてしまう。
 その前に軍手が破けてしまうかも知れない。
 それでも素手でシャベルを握るわけにはゆかない。軍手を使うには爪を切るしかない。
 決心は揺るがなかった。小さな道具箱から爪切りを探し出して、その場で薄紅のマニキュアを塗った爪を大胆に切り落として整えた。
 準備はそれで出来た。二組の軍手を手にするとそのまますぐに玄関へ向かい、先程の長靴を履いて玄関を出て小走りに先程用意して置いたシャベルのある場所へ向かった。
 シャベルを手にすると中沢の死体が置いてある場所へ急いだ。
 
 穴を掘る作業にどれだけの時間を費やしたのか ? その事にだけ集中していて時間の感覚が全く掴めなかった。
 土は落ち葉の体積で出来ているだけに思いのほか柔らかかった。
 それでも縦横に張り巡らされた樹々の根がしばしば仕事の邪魔をした。わたしの体力では大きな根は切断出来ずに、しばしば位置をずらして作業を続けた。途中で何度も投げ出したくなった。
 何とか作業を続ける事が出来たのはただ、わたしがわたし自身として生きる為にはなんとしても、この仕事をやり遂げてしまわなければならないのだーーその思いからのみだった。
 わたしのひ弱な手は思った通りにたちまち幾つものマメを作っていた。
 軍手を嵌めた効果もなかった。
 やがて、そのマメがつぶれて血が滲んで来た。
 手袋の濡れた不快感で分かった。
 腕も脚も腰も疲れを感じ始めると、少しの休息ではなんの役にも立たずにすぐにシャベルを放り出してまた座り込み、傍にある樹に身を寄せ掛けて身体を休めた。
 汗はトレーニングウエアにまで染み込んで絞れる程になっていた。
 その汗を気にする気力もなかった。
 荒い息が収まると普段のわたしからは、もう動く事も無理だと思われるような状態の中で、それでも気力を振り絞り、シャベルに縋って立ち上がった。
 血に濡れた軍手の不快感が気になって、潰れたマメの痛さを気にしながらその軍手を外すと穴の中へ投げ捨てた。
 傍にある大型の木の葉で血だらけの手を拭って新しい軍手を嵌めた。
 さあ、もう一息だ、最後の仕上げをしてしまおう・・・・自分を励ました。
 闇はまだ深かった。夜明けは遠いに違いない。
 それでも闇に馴れた眼は周囲の状況をはっきりと把握していた。
 
 中沢の死体は既に硬直の兆しを見せているのだろうか ?
 どうにか、これで良しと思える穴を掘り終わって傍へ戻り、その両手を掴んだ時、何故かそんな気がした。
 死体と穴との距離は二メートル程かと思われた。
 あちこち、掘りやすい場所を探した結果だった。
 この死体を穴の傍へ運んで行って落とし入れるのだ。
 両腕を取って少し運んだ時、足を持った方が運び易そうだと気が付いた。
 すぐに足元に向かい、両足を掴んで死体の位置を変えて運ぼうとした瞬間、思わぬ不快感を覚えて思わず吐きそうになり、咽喉を鳴らした。
 死んだ肉体の裸のまま動かなくなった不気味さが突如として、わたしの意識を捉えていた。
 暫くは握った足も放り出して吐き気の収まるのを待っていた。
 ようやく気分が収まると、さあ、早くやってしまおう、ぐずぐずしている暇はない、自分に言い聞かせ、励まして再び行動に移った。
 ようやく穴の傍へ死体を運び終えるといったん、手を放して穴の中を覗き込んだ。
 一メートルの深さ、とまではゆかなくても死体を覆い隠すには充分な深さがあった。
 闇に馴れた眼はこの時、夜行動物の眼でもあるかのように思わぬ能力を発揮していた。いちいちの行動を確認するのに、なんの不足も不便も感じなかった。
 先程、運んで来て雑草の上に放り出して置いた中沢の死体の傍へ戻ると、そのまま転がす様にして穴に近付け、転げ落とした。
 闇の中でもほの白く見える中沢の肉体は間違いなく、周囲の落葉や雑草などを巻き込みながら転落して穴の中に納まった。
 その様子を確認すると、これで良し ! と呟いた。
 罪悪感も後悔も、感傷もなかった。仕事を完遂した時の気分に似て満足感のみが心を満たしていた。
 さあ、後は土を掛けるだけだ。
 一気に気力を取り戻し、再びシャベルを手に取った。




           ーーーーーーーーーーーーーーーーー



 
           桂蓮様

          
          体調不良の中 御眼をお通し戴き有難う御座います 
           知識の力動 先週 読ませて戴きました
          AIの知識 分かるという事は自身の肉体に染み込むという事ですね
          分かったような気分と分かるという事の間には大きな落差があります
          物を読んだり見たりして知った事は分かったという事ではないのですね
          知ったというだけの事にしか過ぎません
           今話題のAIも知る事は出来ても分かったという部分には踏み込めないのでは
          ないでしょうか
          知識を寄せ集めて結論を出す事は出来てもそれから先の考えない事は出来ない
          考えないで考える そうです 禅の世界です
          データーの寄せ集めのAIには禅の世界へ到達する事は出来ないでしょう
          核心を突いた御文章 深い共感と共に拝見しました
          星四つ 満点です
           ところで 御身体の具合いは如何ですか くれぐれも御無理をなさらず
          何時までもこのブログを続けて下さい 楽しみにしておりますので  
           有難う御座いました




            takeziisan様

           今週も楽しませて戴きました
           「寄り合い家族」
           良いですね 文章に無駄がありません
           話しの運びにも遊びが無くて一気に引き込まれます
           次回 拝見させて戴くのが楽しみです
           作文とは違います 見事に小説 物語が語られています
           遣っ付け仕事では出来ません 以前 何か関係されていたのでしょうか
           あるいは様々な作家の作品に数多く眼を通されているからこその
           この力量ないのか お見事です
            民謡を訪ねて 懐かしいですね いい番組でした
           わたくしの母も民謡愛好家で全国大会などでも何度も優勝 入賞をしています
           母のカップやトロフィ専用の棚が今でもそのまま残っていて
           ホコリ払いが大変です
            越中おわら 江差追分 良いですね その外 各地にそれぞれ良い歌がありますが
           中でも九州の 刈り干し切り唄 東北の 南部牛追い唄などが特に好きです
           ちょっと思い浮びませんが その他にも佐渡や四国をはじめ
           様々なよい民謡があります 大事にして欲しいものです
            空襲 終戦の日 以前にも書いているので改めて書きませんが
           写真の光景は実際にわたくし自身 身を置いた光景です
            冬の正月 夏の盆 少年時代の懐かしい思い出が蘇ります
            ジャム 贅沢三昧 羨ましい限りです イノシシ出現
           迷惑この上ない事ですが それだけ自然が豊か 恵まれた環境という事ではないのでしょうか 
            帯状疱疹 わたくしは二十代の頃 この病気に罹りました
            身体の右半分に疱疹が出て激しく神経が刺激され
            たまらなく痛い病気です 治ってからも二十年ぐらいは後遺症で皮膚の感覚がありませんでした
            二度と罹りたくない病気です もっとも一度罹れば耐性が出来るという事ですが
            お気を付け下さい
            今週も美しい花々 楽しませて戴きました
           有難う御座います
















遺す言葉(460) 小説 いつか来た道 また行く道(20) 他 プロの道

2023-08-13 12:19:28 | つぶやき
            プロの道(2023.8.1日作)



 物事には それぞれ
 その道の プロの道がある
 はた目には何気ない 小さな事が
 プロの眼から見た時には 容易に
 許容 し 難いものとなる
 その道には その道の定め 掟がある
 その定め 掟を会得し得た者のみが
 真のプロ
 あらゆる物 総ては 知識ではない
 自身の身に付いた 習性
 その道のプロとは
 その習性を身に付けた人
 考えるより先に 身体が動く
 手足が動く
 感覚は 知識を上まわる  




           ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 
            
            いつか来た道 また行く道(20)




 

 中沢の体がソファーの中でどうにか安定すると、そのままにして置いて玄関へ向かった。
 玄関ではゴムの長靴を取り出して、すぐに履けるようにした。
 更にはドアを開けた。 
 明かりは点けなかった。
 遠目にでも人の居る気配を感じさせては拙い !
 居間に戻るとすぐに中沢の死体を担ぎ出す作業に取り掛かった。
 一旦、力の抜けた死体をソファーの背もたれに寄せかけて正常な姿勢に戻してから背負う事にした。
 動かなくなった中沢の足元に背中を向けてひざまずき、うしろ向きのままで中沢の両手を探って自分の肩にもたせ掛けた。
 それで中沢を背負う形になった。
 立ち上がるのが一苦労だった。
 彼はわたしより背が高い上に、いくら麻薬中毒者とはいえ男性だった。わたしよりはやっぱり体重があった。
 彼を背負ったままで前屈みになり、立ち上がろうとしたが何かの支えがなければ無理だった。
 中沢を背負ったまま眼の前のテーブルににじり寄り両手を付いて、どうにか立ち上がる事が出来た。
 中沢の足首より先は、床の上を引きずられる形になったが、それは仕方がなかった。
 中沢を背負って運ぶ作業は重量が肩や背中に掛かったとはいえ,思いの外、支障が無くて済んだ。仕事は順調に進んだ。
 玄関に辿り着くと靴入れに掴まり、中沢を背負ったままで長靴に足を入れた。
 どうにか長靴を履き終わるとすぐにドアが開け放しになっている玄関を出た。
 辺りは星明りの他は何も無い闇だったが、建物の裏側を目指して歩き始めた。
 普段から見馴れている勝手知った別荘の敷地内だった。闇の中でも方角は分かった。
 裸のままでわたしに背負われている中沢の足首が落ち葉を掻き分ける音がした。
 長時間の力仕事をした事のないわたしに取っては、動かなくなった中沢を背負って歩く仕事は思いの外の重労働だった。早くも身体中に汗の滲み出ているのが意識された。
 それでもわたしは休まなかった。今夜中に終わらせてしまうのだ !
 自分に向かって何度も何度も言い聞かせるようにして呟いていた。
 おおよそ五十メートルか六十メートルだろうか、建物と屋敷内に茂る白樺の樹々との間の小道を辿るとやがて、ようやく闇に馴れて来た眼に建物の裏手にある白樺の林の樹々の一本一本が映るようになって来た。
 あと少しだ ! 
 林の全体像は見えなくても、その姿は想像出来た。
 ようやく半分の行程に辿り着いた、という思いだった。
 いったい、時間はどれ程経っているんだろう ?
  時間の感覚は全く掴めなかったが、それでも夜が明けるにはまだ充分な時が残されている事だけは分かって安心感を誘った。
 
 白樺の林の中は思いの外、明るかった。白い木肌が闇に映えるせいなのか ?
 樹々の梢の間からは一面に散りばめたように蒼空に瞬く星の輝きが眼に映った。わたしがこの地に来て、何時も感動する夜空の星明りだった。
 その明かりを眼にした時、何故かわたしは幸せとも言えるような気分に包まれた。気力の充実感を意識した。
 さあ、一刻も早くこの仕事をやり遂げてしまおう。
 不安な思いはなかった。仕事の完遂への自信が漲った。
 なおも中沢の死体を背負ったまま白樺の樹々の間を縫って奥へ奥へと進んだ。
 別荘地と隣接する雑木林とも言える山林との間を仕切る境界線までは、やはり四、五十メートル程の距離があった。その一番奥へ向かって進んだ。
 境界線はコンクリートの土台の上に四段に張り巡らした太い棘を持った針金で仕切られていた。外側からも内側からもその針金を潜り抜けて行き来する事は、それなりの用具を備えなければ一見、不可能に思えた。
 その境界線のコンクリートの元には風に吹き寄せられた落ち葉が一段高く積もっているのが、夜目にも判別出来た。
 すぐにその場所が仕事の場所としては最適だと、判断した。
 既に、わたしの全身は汗だらけになっていた。額から頬を伝わって汗が流れ落ちた。 
 その汗を拭う事もせずにひたすら、中沢の裸体を背負って自分の仕事の完遂の為に白樺の樹々の間を進み続けた。
 目的の場所まで来た時には、境界線との間は二メートル程になっていた。
 その距離を悟った時、思わず安堵感に捉われて、よし、此処でよし ! と呟いていた。全身からは一気に力が抜けて背負った中沢の裸体を放り出していた。と同時に今まで全身体に掛かっていた中沢の体重から一気に解放された、その解放感と共に全身からも力が抜けて思わずよろめき、危うく傍にあった一本の木に掴まって転倒するのを防いでいた。





            ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




             takeziisan様

             
              白山 二週間だか三週間だか前にNHKで放送していました
              普段 あまりテレビを観る事がなく 民法 NHK  合わせても週に定期的に観る番組は
               三 四本しかありませんが その中の一つの番組で放送していました
              咲き誇る野草の数々 美しいと思って観ていました
              あの環境の中に身を置く 身も心も洗われ 巷の灰塵も拭い去られるのでは 
              という気がします
              美しいだけではなく 豪快な風景 こうして見ていますと
              自分自身もその環境に身を置いたような気分になって来ます
              その実際の旅 いい思い出ですね
                長崎の鐘    
              当時 藤山一郎も心を込めて歌っていたように思い
              その歌が一層、身に沁みた記憶があります
              それにしても戦争を仕掛ける人間のおろかさ 話しにもなりません
               ブト わたくしの地方では ブヨ でした
              近年 この猛暑のせいかブヨは勿論 蚊もいないように思います
              蚊取り線香も 昔懐かしい蚊帳も不用です
              雨 恵みの雨 実感出来ます
              それにしても畑へ行けば どうする どうする ?
               持てる者の贅沢な悩み  その新鮮さと共に羨ましい限りです  
              体操 年齢と共に肉体も衰える一方です タンパク質系の食事と運動              
              年齢と共に欠かせないもののような気がします
              わたしは毎朝 一時間半程の全身体操を行っていますが
              その前に朝 起きた布団の上で猫体操と共に 正座して
              その上に両手を突き ボートを漕ぐ時のように体を前後させて            
              腰の運動もしています その結果かどうか 腰痛もありません
              以前は神経痛などもあったのですが 今は消えました
              ただ 年齢と共の筋肉の衰えはどうする事も出来ず
              重い物を運んだ時にはすぐに腰が痛くなります
              それもひと時休めばすぐに治りますが
              いずれにしても時の流れは速い 人の肉体は衰えるだけ
              それが実感です
              どうぞ 御無理をなさらず 何時までもお元気で
              この記事が末永く続いてゆかれるよう願っております             
               楽しいひと時を有り難う御座いました





遺す言葉(459) 小説 いつか来た道 また行く道(19) 他 責任

2023-08-06 12:28:09 | つぶやき
             
  
           責任(2023.7.30日作)


 
 
 人にはそれぞれ
 その立場に於ける 責任 というものがある その
 責任を全うし得た時 人は
 人としての役割り 務めを果たし得た
 尊敬に値する人 となる
 地位 職業 職種 等によって
 人の価値 名誉は 決定されるものではない
 世俗的に高い地位 職種にあっても その
 役割り 務め 責任を全う出来ない人間は
 世俗的に低いと見られている職種 地位の  
 責任を全うし得た人より 人としての価値 評価は
 劣るものとなる
 何気ない事柄 仕事に於ける責任の全う
 人に於いては最も大切 重要な事




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           いつか来た道 また行く道(19)

  

 

 わたしは中沢の手からシャワーの器具を取ると、すぐに彼の髪に水の細い糸を浴びせ掛けた。
 中沢は耳を押さえ、前屈みになったままで不平も言わなかった。
「眼をつぶっていてよ」
 わたしは中沢と戯れでもするかのように弾んだ声で言って、すぐにシャンプーをふり掛けた。
 そのまま髪に指を入れ、力を込めて洗い始めた。
 わざと大量にふり撒いたシャンプーはたちまち泡立って中沢の頬を流れ落ちた。
「なんだ、そんなにいい匂いでもないよ」
 中沢はうつむいた姿勢のままで期待に反したかのように言った。
「これで洗ってリンスをするといい匂いがするのよ。だから珍しいのよ」
 わたしは言って委細かまわず、なおも中沢の髪を洗いながらわたしの行為実行の機会を探った。
 シャンプーの泡はさらに中沢の頭から盛り上がって、顔の側面を流れ落ちた。
 中沢はそれが眼に入ったのか、手で拭った。瞬間、この機会だ、とわたしは思った。
「ちっょと待って。そのままでいてよ。今、乾いたタオルを持って来るから」 
 わたしは中沢のうつむいた姿勢を見守りながら素早く立ち上がった。
 急いで浴室の入口に戻り、先程、用意して置いたタオルにくるんだ鉄亜鈴を手にした。
 中沢を振り返るとそのままの姿勢でいた。
 わたしは声も掛けなかった。中沢の背後に忍び寄るとタオルにくるんだままの鉄亜鈴を両手で握り、そのまま一気にうつむいたままでいる中沢の後頭部めがけて振り下ろした。
 狙いは違(たが)わなかった。両手に伝わる感触は鈍かったが、それでもタオルに包まれたままの鉄亜鈴は芯に堅さを残していて、その重さが中沢の頭部に決定的な打撃を与えていた。
 中沢は声を上げる事もなかった。僅かに息を呑むようなうめき声を上げただけで一瞬、体を硬直させ手足を小さく震わせたが、次の瞬間には腰掛けていた台を跳ね飛ばしてタイルの上に崩れ落ちていった。
 崩れ落ちた後は身をもがく事もなかった。
 わたしはそんな中沢を見つめたまま、呆然と立っていた。
 自分が何をしたのかさえ、その瞬間には分かっていないようだった。
 やがて、浴室のタイルにうつむいた姿勢で横たわり、もはや身動き一つしなくなった中沢の首の辺りから少しずつ、白いタイルを伝わって広がって来る血の色がわたしの眼に飛び込んで来た。
 その血の鮮明な赤色(せきしょく)を認識した時、わたしは初めて我に返って自分のした事の重大さに思い至った。
 だが、わたしに後悔への思いはなかった。これは、わたしが綿密に計算し、計画した事だ、この後の始末をどうするのか、これからまだ、大切な仕事が残っている。
 自分に言い聞かせてすぐに次の行動に移った。
 まず、タイルの上に顔を横に向けて白目を剥き出し、横たわっている中沢の口元に手のひらをかざして呼吸を確かめた。
 呼吸はなかった。
 微かな満足感 さえ覚えて、これで良し ! と呟いた。
 そのままタオルに包まれた鉄亜鈴を持ってトレーニングルームへ行った。
 タオルから鉄亜鈴を取り出すと元の場所に戻した。
 タオルは証拠品となるのが怖いので、中沢と一緒に埋めてしまおう。
 浴室に戻ると改めて横たわる中沢の傍に立ち、わたしより五センチ近くも背の高いこの肉体をどうして運び出したらいいんだろう ? と思案にくれた。
 取り敢えず、裸のまま引きずって広間へ運び出す事を考えた。
 それから後は ?
 どうやってこの広い敷地の中の人目に付かない白樺の林の一番奥まで運んで行くのだ !
 長い思案の果てにソファーに座らせ、それから中沢の肉体を背負い、運び出そうと考えた。
 中沢の口から流れ出した鮮血はもう止まっていた。
 横たわった中沢の体を少しずらし、シャワーで血の跡を流した。
 乾き切っていなかった血はそれで流れ落ちた。
 次に横たわる死体の両足首を持って広間のソファーへ運んで行く・・・・その時わたしは、大きめのバスタオルを敷いてその上に中沢を載せる事を考え付いた。
 裸の肉体を運ぶよりは幾分でも床の上を滑りやすくなるのでは。
 それに床自体も汚さなくて済む。
 わたしは更衣室へ戻ると大型のタオルを一枚引き出した。
 それを手に浴室へ戻ると入口にタオルを敷いて早速、仕事に掛かった。
 一メートル七十センチを少し超える中沢の肉体は思いの外、重量感を感じさせなかった。
 もともとやせ型だった上に、なお、やせたように思えるのは麻薬のせいかなのだろうか ?
 皮膚にも肉体にもわたしが知り合った当初よりは大分、衰えが見えるような気がした。
 タオルに載せて引きずった肉体を居間にある一番近くのソファーまで運ぶ仕事は順調に進んだ。
 次にはこの血の通わない肉体をソファーに座らせる作業だった。
 まだ、柔らかさも暖かみも残しているとは言え、死んだ人間を直に自分の胸に抱え込む作業には少しのためらいを覚えた。
 でも、ためらってなどいられる場合ではない、と自分に言った。夜が明けるまでには一切の仕事を片付けてしまはなければならないのだ。
 気持ちを奮い立たせて横たわる中沢の死体を抱え起こし、そのまま抱き上げた。 
 よろめきながらもどうにかソファーに座らせる事が出来た。
 座らせると同時に中沢の肉体は力なく片側へ崩れてソファーの肘掛けで支えられた。




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               takeziisan様


                有難う御座います
               美しい自然の数々 今回も満喫させて戴きました
               それにしても山の写真 随分 撮っていますね
               富良野の自然 うっとりしながら拝見していました
               日本のこの狭い国土の中 こんな場所もある
               まるで外国の景色を見ているようですが やはりそれでも何処か違う
               あの広大な国土の国 アメリカ辺りの景色とも違う
               日本独特の潤いを帯びた景色ですね 富良野美瑛は           
               最も訪れてみたい場所の一つですが それも今では夢の中の事です
               百日草は前回も拝見しましたが懐かしい花です 
               子供の頃 友達と種を分け合って栽培した
               最初の思い出の花です 丈夫で 栽培し易いですよね  
                朝食前の収穫 その気力に感嘆です 
               まだまだこれからだ これから峠の七曲り という唄がありますが
               この暑さの中 熱中症には御注意下さい
               それにしても扇風機で涼を取る  当地では無理です
               まるで蒸し風呂の中です 気持ちが悪くなってきます
               やはり 自然が豊かなんですね 雑木林の公園 蝉の声
               当地では蝉の声も聞こえなくなりました 大きな道路一つ隔てて           
               それなりの公園もあるのですが 蝉の声も聞こえませんし
               ツバメの姿を見る事も無くなりました 以前は
               それなりに見たり 聞いたりしたものですが
                この暑さの中 どうぞお体にお気をつけ下さい
               有難う御座いました 楽しいひと時でした