遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(385) 小説 再び 故郷に帰れず(4) 他 熊

2022-02-27 12:58:41 | つぶやき
          熊(2010.10.10日作)
            この文章は2014年八月十七日(7回)に
             掲載したものですが 今回 ロシアのウクライナ
             侵攻に際し 改めて再度 掲載します
              熊はロシアを形容しています
 

 この熊は北の大地に棲息する凶暴な生き物だ
 こいつは機を見るに敏で
 獲物が少しでも弱みを見せると
 その弱みに乗じて途端に動き出し
 巨体からは想像も出来ない敏捷さで
 相手を窮地に追い込み
 剛毛に覆われた巨大な足で踏み潰してゆく

 こいつには 森に於ける棲み分け 縄張りも
 有って無きが如しで 道理が通用しない 常に
 あっちを見廻し こっちを見廻し 獲物を探して
 うろうろしている
 時には甘い声で相手に擦り寄る気配を見せたりもするが
 その心根には絶えず我欲があって
 何事に於いても 我欲を満たす事ばかりを優先する
 道徳心 繊細な心などこいつには 微塵もない
 強圧的 暴力的な支配力だけを
 剛毛に被われた肉体の奥に抱え込んでいる

 おそらく広い森の中でも
 巨大なこいつに好意を抱く生き物は
 数多くないのに違いない
 表面的には誰もが笑顔で接していても
 心の奥では警戒心怠りなくて
 狡猾さにかけては天下一品のこいつに
 気を許してはいないのだ

 煮ても焼いても食えない奴
 腹黒 獰猛 嫌われ者
 それがこいつ 北の大地に棲息する
 この生き物 熊だ





          ーーーーーーーーーーーーーーーー





          再び 故郷にむ帰れず(4)



 その孫太郎は何時も研ぎ澄まされ、鋭く光るナイフをポットに忍ばせていた。小さな生き物を見ると決まってそのナイフで小さく切り刻んでしまわずにはおかなかった。雀、モグラ、蛇、蛙、ネズミ、猫の子等々。
 彼はまず、自由に動き廻る小動物を如何にも巧みに捕まえて、手の中に握り締めると、「いいが、見でろよ、見でろよ」と言って、たちまち首根っこを捻りつぶして窒息死させた。それからが彼の独断場だった。
 口から血を吐いたり、粘液性の泡を吹いたして事切れた小動物の皮を剥ぎ、丸裸にすると決まって、喉元から下腹部にかけて一直線に切り裂いて、内臓を取り出した。それを如何にも得意気に広げて見せると、
「これが心臓、これが胃だな。そっで、これが腸だ。腸ってこんなに長げえんだなあ」
 などと言いながら、さらにそれ等を小さく切り刻んでいった。
 傍で見ている方はその残忍さに吐き気を催すほどだったが、彼は顔色一つ変えなかった。いかにも楽し気で、観客を欺いて得意気な手品師のようにさえ見えた。
 そうして内臓の処理が終わると今度はその生き物の体の分解に取り掛かった。まず初めに手と足、それから首を切り落とす。手足をもがれ、首を切り落とされて丸裸になった肉体を今度は上下にナイフを走らせて、左右に二つに切り分ける。切り分けられた肉体はそれから後、次々に小さく刻まれていった。
そして最後は総てが同じような肉の微塵切りの状態になって、孫太郎の手の中で丸められた。その丸められた肉団子を彼は小さく解きほぐすと指の先でつまんで空に向かって投げ捨てた。
 何度も何度もそうして投げ捨てられる肉の固まりはやがて彼の手の中には無くなって、彼は真っ赤な血に塗れた両手を叩き合わせると、
「ほら、あんにもなぐなってしまった」
 とまた、手品師のような得意気な顔で言って、笑ってみせた。
 無論、わたしはその時、何故、孫太郎がそんな残忍な事をするのか分からなかったが、あるいは孫太郎はその時、自分がそうする事の意味を理解していたのかも知れなかった。そして今になってわたしは、その時の孫太郎が行った事の意味が分かるような気がして来るのだった。総ての生き物の命は消えて無くなる。後には空虚な無が残るだけだ。
 藁屋根の家はなかった。わたしの眼の前には二階建ての瀟洒な瓦屋根の家が建っていた。槙の木の塀に囲まれた広い庭にはイチジクの木も井戸もなかった。無論、鍬や鋤、リャカーや牛車などもなくて、ガラス戸を閉ざした家の玄関口は劇場の入口でも思わせるような豪華な構えを見せていた。
 わたしはその構えの立派さに戸惑いながら、少々の気おくれと共に、あの豪華な藁屋根の孫太郎の家はどうなってしまったのだろう ? 或いは、事に依るとここは孫太郎の家ではないのかも知れない。しばらく自分の生まれた故郷を後にしていたせいで、何か、勘違いをしてしまっているのかも知れないと思いながらも、ガラスの扉を開け、奥に向かって声を掛けていた。
「御免下さい。ーー御免下さい」 
 家の中から返事はなかった。
 わたしは再び、奥に向かってさっきよりは大きな声で声を掛けた。
「御免下さい、御免下さい」
 家の中は静かだったが、相変わらず返事はなかった。
 わたしが諦めて、その玄関口を離れようとした時、突然、廊下の奥の暗がりから一人の男が姿を現して上がり框に立ち、わたしを見ると、          
「あんだ、おめえ。いず帰(けえ)って来ただ」
 と言った。
 男はフグ提灯のように丸っこい大きな体をしていた。
 その膨れ上がった腹のせいで黒い上着のボタンが掛からなかった。
 襟には幾つもの金ぴかの勲章のようなものが着けられていて、これも金ぴかのベルトにはサーベルのようなものが括り付けられていた。
 男は如何にも親し気に話し掛けて来たが、無論、わたしには見覚えのない人間だった。
「あのう、失礼ですが・・・・」
 わたしは思わず言っていた。
「あに、おめえ、バガな事ば言うだ。おめえ、悟だっぺえ。[ながみぢ]のさとるだっぺえ。おらあ、孫だよ。孫太郎だよ」
 男は満面崩れるような笑顔で言った。
「孫 ! おまえ、孫太郎 ?」
 わたしも思わず大きな声で叫んでいた。
「そうだよ。孫太郎だよ」
 わたしは唖然とした。
 昔の素朴で垢抜けない孫太郎の面影は何処にもなかった。かと言って、歳を取り、世の中の酸いも甘いも嚙み分けた、洗練された人としての面影もまた見られなかった。何処かに成り上がり者の雰囲気をさえが感じられてわたしは戸惑った。
 だが、久し振りに会った孫太郎のわたしに対する歓迎ぶりは、わたしの気持ちをもほぐしてくれた。わたしは一気に昔の自分に立ち返ったような感情の中に引き込まれていた。
 孫太郎は久し振りだからと言って、わたしを奥の座敷へ通してくれた。





          ーーーーーーーーーーーーーーーー



          桂蓮様

          有難う御座います
          新作 文章に無駄がなく すっきりと拝見出来       
          ました 出来る出来ないは判断しない ただ
          行う 考えずに出来るようになる これこそが
          本物です 世の中の一流の技術を持った職人さんは
          いちいち 考えてはいません 総て体で覚えた事で
          自然に手足や頭が働くのではないでしょうか
           絵画 無論 理論は大切です 印象派 点描
          シュールレアリスム 理論を知る事で理解は一層
          深まります ピカソにしても持って生まれた天才の上に   
          理論によって得られた知識が加味され より一層の深み
          のあるものが生まれたのではないでしょうか 何時か記
          事の中でも書いた事がありますが ピカソが ある人に 
          あたなはちよっと筆を走らせただけで 高額な報酬が
          得られていいですねと言った時 ピカソはそれに答えて  
          自分が満足の出来る一本の線を描くのに二十年もの歳月 
          を費やしたのだと答えたそうです この話などは
          理論だけでは絵の描けないという事を如実に物語ってい
          るのではないでしょうか
           物を作るという事は結局 そのものの本質を掴み取る
          という事で いくら理論や理屈を理解していても その
          方面の感性のない人には出来る事ではないと思うのです 
          桂蓮様にしても お姉さまが画家の道をお勧めになった
          という事は桂連様のうちにその感性を読み取り 
          お認めになった という事ではないのでしょうか 
          子供の桂蓮様が理論的に優れたものを持っていたから    
          という事ではないと思うのです 
           以前 この国に山下清という知的障害を持った放浪癖
          のある貼り画家が居ました 当時 一世を風靡したもの
          ですが無論 この人が理論を学び 理解していたとは
          思えません ただ感性のままに貼り絵をして作品を創る
          それが見る人を感動させる 結局 感性のない 理論
          だけの作品は無味乾燥になります 美術学校で理論を
          学ぶ 評論家的には必要な事かも知れませんが 創作者
          としては 感性の次に位置するものではないのでしょう
          か 感性の上に理論を積み上げ自分の芸術に深みを
          加える 印象派にしてモネ ルノアールなどが自身の
          感性によって表現したものが今までにない新しい 
          表現方法だと評価されて命名されたもので 初めから
          印象派などと言う理論があった訳ではないと思うのです
           音楽などもそうです 音感のない人間がいくら
          カラオケで歌を勉強しても 結局は音感の優れた
          子供の足元にも及ばないものです 
           以上 いろいろ理屈を並べて来ましたが 
          わたくしの芸術 世の中に対する見方 そんなものを
          明らかにしてみたいと思いました
           今回もコメント 楽しく読ませて戴きました        
          コメントの御文章にはなんの気負いもなく 自然な
          感情が綴られていて 読む側も楽しくなります
          何時も声に出して笑ってしまいます
           楽しい記事 有難う御座います



          takeziisan様

          有難う御座います
          今回も 様々な花々 楽しく拝見させて戴きました
          小さな花でも こうしてじっくり見ると 限りない
          美しさを秘めているものですね 感動的です
           故郷の言葉 雪の写真 ラッセル車 雪の少ない
          地方で育った人間でありながら なぜ これ程までに
          これ等の景色に懐かしさを感じるのか 不思議な気が
          します それにしても雪国の方々は大変ですね
          余計な仕事がまた増えて・・・・
           捗る 使いました 同じですね この言葉は既に
          一般的になっているのではないでしょうか
           雑草の山 これ全部雑草 !?
          今年は寒さが応えます 年齢のせいか 或いは今年が
          寒いのか・・・
           長塚節 中学生の頃 「土」を読んで感動した事を
          今でも覚えています 主人公に同情して泣いていました
          ちなみにわたくしの居た部落は「長塚」という部落です
           それにしてもよく これ等の花々をお探しですね
          敬服です 名も知らぬ花々が多いです
           何時も 楽しく拝見させて戴いてります
          有難う御座いました 
  

遺す言葉(384) 小説 再び 故郷に帰れず(3) 他 ピカソ ゲルニカ

2022-02-20 12:19:46 | つぶやき
         ピカソ ゲルニカ(2022.1.10日作)


 芸術は感性だ
 理論 理屈ではない
 ピカソの大作 「ゲルニカ」
 あの作品の複雑な構成にしても
 計算して描かれたものではない
 ピカソが画家として養って来た感性が
 自ずとあの作品の あのような構成 技法に辿り着き
 凝縮して表れた結果に 外 ならない
 頭で考え 理論を積み重ねた上での
 創作ではない
 現実に直面した画家 ピカソの感性が
 そのまま あの作品の
 あの場面に凝縮し 表されている
 芸術は感性だ
 理論 理屈ではない
 





          ーーーーーーーーーーーーーーーーー





          再び 故郷に帰れず(3)



 空にはひばりが鳴いていた。麦の穂が畑一面に波打って金色のざわめきを見せていた。 
 わたしは通りすがりの牛車に乗せてもらと、しぱらくは夢見心地のうちに揺られていた。
 牛車は二又の道へ来ると右へ曲がって行った。
 わたしはまた、自分の足で歩き始めた。
 陽はいよいよ高くなっていた。肩に担いだ袋の中のガラクタが重荷になって来て度々、それらを捨てながら歩いた。ジュースの空き缶、破れた下着、古ぼけたマンガの一頁、また、一頁。
 途中で片方の靴の紐が切れると、それを脱ぎ捨てて歩いた。そしてまた、一方の靴の底が破けるとそれも脱ぎ捨てた。遂には裸足になっていた。
 無論、流れる汗のために次々に、着ていたシャツも脱ぎ捨てていた。
 大きな袋の中には糸の切れたギターや、目覚まし時計の壊れたのなどが、押し込められていた。それらも道々、捨てた。それでもなお、袋の中身は重かった。
 いったい、これ以上何が入ってるんだ !
 わたしは腹立ち紛れに呟かずにはいられなかった。
 喉が渇いた。
 わたしは袋の中に手を入れ、中を搔き廻してジュースの缶を取り出すと蓋を開け、中身を口の中に流し込んだ。
 冷たい流れが喉の奥を通って、胃の中に流れ込み、それがやがて腸の壁を伝わって全身に染み渡るのが、透明なガラス管を見ている時のような感覚で、手に取るように分かった。わたしは再び、元気を取り戻し、四十二キロの道程を黙々と走り続けるマラソンランナーのように一筋の道を歩き続けた。何時の間にかランニングシャツとパンツ一枚になっていた。そして、それはわたしを快適な気分へと誘った。
 もう少しだ !
 わたしは自分に言い聞かせた。
 肩に担いだ袋の中身さえ軽くなったようだった。
 何処かで正午の鐘が鳴っていた。その音は柔らかく、五月の太陽の光りの粒子で膨れ上がった空気を震わせ、長閑な田園の広がる空間をゆっくりと棚引きながら、やがて何処かへと、微かな余韻を残して消えていった。
 道は遥かに続いていた。わたしは幸福だった。わたしの前には広々として、何物にも制約されない世界が広がっていた。かつてのわたしは、こんな幸福な世界に棲息していたのだ。そして、その時のわたしは総てを明確に認識していた。この光りに膨れ上がった空間が、あらゆる世界の隅々までも行き渡り、総てを至福の色で包み込んで、透明に輝かせていると。明日は、紛れもない明日であり、今日という日の確かな繋がりの中に開けている、という事を。
 わたしはふと、眼を凝らした。
 遠い地点に散在する森の中の一つに、見覚えのある古い藁屋根の家が見えて来た。
 わたしは思わず呟いた。
 あれは孫太郎の家だ !
 何時の間にか、こんな所まで来ていてしまったのか !
 驚きの気持ちと共に、懐かしさと喜びの感情が湧いて来た。
 急かれる気持ちで自ずと足の運びが速くなっていた。
 孫太郎は家に居るだろうか ?
 そう思うと期待の気持ちが膨らんだ。
 わたしはそこでようやく、自分の帰る場所を見出し得たような思いに捉われていた。

 黒塗りの門を入ると正面に、藁屋根の、軒の低い佇まいを見せた母屋があった。
 右手には母屋とは直角に納屋が別の棟を作っていた。
 母屋の左手はそのまま広い庭になっていた。無数の鶏が放し飼いにされていた。
 広い庭のあちこちには、蜜柑や柿、その他、様々な木の植え込みがあって、いたる所にリヤカーや、牛の繋がれていない牛車、鍬や鋤などの農機具が放り出されてあった。
 母屋の中には人の気配がなくて、ひっそりとした座敷が暗い空間をつくっていた。誰か居ないだろうか ? そう思いながら暗い座敷の中を覗いていると、背後で突然、何かの木の揺れる音がした。慌てて振り返って見ると、孫太郎が槇の木で作られた塀の近くにある釣る瓶井戸の上で、被さるように伸びているイチジクの木に登り、何かをしていた。
「いったい、何をしてるんだ ! 孫、孫、危ないぞ」
 わたしは思わず叫んでいた。
「大丈夫、大丈夫。楽ちん、楽ちん」
 孫太郎はイチジクの木をゆさゆさ揺らしながら、しきりに枝から枝へと渡り歩いていた。
「いったい、何をしてるんだ。よせ、よせ ! 危ないじゃないか」
 わたしは怒鳴った。 
「平気、平気。平気のへいざ」
 そう言いながらなおも孫太郎は、枝から枝へと渡り歩いていた。
 だが、わたしの危惧は危惧にとどまらなかった。一瞬、孫太郎の体の重みで一つの枝が大きく揺れ曲がったと思った時には、孫太郎はその枝から放り出されるようにして、井戸の中へ落ちていった。と共に次の瞬間には、早くも孫太郎の体が水を打つ音が聞こえて来た。
 わたしは慌てて井戸の傍へ駆け寄ると、中を覗いて見た。 
 井戸の深さはかなりのものだった。その中で孫太郎は手をバタつかせながら、しきりに藻掻いていた。
「孫 ! 孫 ! 大丈夫か」
 わたしはその孫太郎に向かって大きな声で呼び掛けた。
「大丈夫かもあにもねえよ。水が冷たくてしょうがねえや。早くその釣る瓶ば降ろせよ。あに、愚図愚図ばしてっだ、このバガが」
 孫太郎はわたしの呼び掛けに腹を立てて怒鳴った。
 孫太郎が夏になると行く近くの川で泳ぎを覚えていた事が幸いした。手をバタつかせながらも溺れる事はなかった。
 わたしは井戸の傍に掛けられてあった釣る瓶をはずすと、手早く井戸の中に降ろしていった。
 空の釣る瓶は反対側に大きな石を括り付けてあっただけに重かったが、それでも間もなく、井戸の底に届いて、懸命に立ち泳ぎをしている孫太郎の頭にぶつかった。
「痛えなあ、気ば付けろ。バガ助が」
 孫太郎は怒って怒鳴った。
「いいから、さっさとその桶に掴まれよ。何、マゴマゴしてるんだ。このデレ助 !」
 わたしは怒鳴り返した。
 孫太郎がトンボのように釣る瓶の竿に掴まるとわたしは釣る瓶を引き上げにかかった。
「ああ、楽ちん、楽ちん」
 わたしの重い釣る瓶を引き上げる苦労も顧みずに、孫太郎は暢気なものだった。
 それでも釣る瓶は重い石の作用でどうにか、孫太郎を引き上げる事が出来た。だが、孫太郎がようやく井戸の縁に手を掛けて井戸から抜け出た時にはわたしは、息を切らして地面にへたり込んで、
「このバカ野郎 !」
 わたしは真剣に怒鳴っていた。





          ーーーーーーーーーーーーーーーー



          桂蓮様

          有難う御座います
         新作 拝見しました
         苦痛は正しく理解すれば・・・・
         正しく理解すれば 良い言葉です この言葉
         諸事全般に言い得る言葉ではないでしょうか
         何事も中途半端 これが一番危ない事です
          それにしても 脂肪 厄介者にされがちですが
         無ければ無いでまた重大な影響を及ぼします
         癌手術で入院した時 病院でひどく油っぼい食事を
         出すので、家に居る時にも こんな食事はしていなかった  
         と言いました すると女性の栄養士さんでしたが 
         油分も必要なのだ 言いました 事実 平常の生活に
         戻って昔通りの食事をしてましたら 年齢のせいか
         なんとなく体がギシギシした感じになって来て ふと
         栄養士さんの言葉を思い出し 油分を採るよう心掛けまし 
         た オレイン酸がオリーブオイルより豊富で 
         コレステロールもないという椿油ですが今では快調な日々
         を過ごしています
          ロシアバレー 良いですね 羨ましいです
         一度 実際の舞台を見たいとは思うのですが この頃  
         外出自体が億劫になってしまって もう 観に行く事も
         ないでしょう
          コメント下さる御文章 褒めすぎどころか 真実 良い
         御文章です 何も小難しい事を小難しく書くのが 良い
         文章とは限りません 得てして 学者の文章などには
         やたらに小難しく書かれたものがありますが そんなのは
         駄文です 難しい事を優しく書く そんな文章こそが
         最上の文章と言えるのではないでしょうか 実際に
         物事を深く理解した人はその物の本質をズバリえぐる
         事が出来ますから 難しい言葉を書き並べる必要は
         ないのです どうか ここに書かれる御文章 卑下
         なさらないで下さい 自然な気持ちが自然なままに伝わり
         気持ちよく拝見出来ます 良い御文章です
          ちょっと 御主人様に失礼ではないですか
         その分 お二人の関係の仲睦まじさが直に伝わって来て
         気持ちが良いのですが 
          今回も思わず吹き出しながら拝見しました
         有難う御座いました



         takeziisan様

          毎回 御支援有難う御座います
         ブログ 今回も懐かしく楽しく拝見させて戴きました
          カワセミ 水のきれいな川にしか住まないとの事です
         多分 環境がよいのでしょうね 子供の頃 カワセミの
         巣があるというので川岸の土手を掘り返した事が
         ありました 結局 巣はなかったのですが 当時 水も   
         きれいな川でもめったにその姿を見る事は
         ありませんでした ですからカワセミは今でも 雉 同様
         憧れの鳥です
          マント ヴァー二 ポール モーリア 相変わらず
         いい響きです ダスティ スプリングフィールド 初めて
         聞きました 良いですね
          古い写真の整理 捗りません つい手が止まって
         しまって見る事にだけ没頭してしまいます 誰もが同じ
         事ですね
          織井茂子 歌唱力抜群でした 確か童謡歌手だったと
         思いますが 君の名は にしても説得力が違います
          わたくしも前歯二本が欠けています でも下の歯は
         左奥歯一本がないだけであとはどうにか健在です
         欠けた歯は何度治療してもすぐに駄目になってしまうので
         最近では根負けして 放置したままです 見た目は別にし  
         て それで困る事もないものですから 現在二十五本以上  
         残っていると思います 昔から歯が弱くて困っていたので
         すが 最近では 毎日キシリトールガムを噛んでいます 
         そのせいか歯茎はしょっちゅう腫れたりしますが  歯痛
         はなくて 困るという事はありません   
          腰痛 太腿痛 いずこも同じ歳のせい でしょうか
         それにしても八十歳を過ぎてからの年毎の体力衰え その
         顕著な事には昔は想像も出来ませんでした 衰えの度合い
          の強さに驚いています どうかこれからも御無理を
         なさらず このブログを続けて下さいませ
          何時も有難う御座います
          
         
            

 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
 

遺す言葉(383) 小説 再び 故郷に帰れず(2) 他 変わるもの 変わらぬもの 他

2022-02-13 11:59:03 | つぶやき
          変わるもの 変わらぬもの(2022.2.2日作)


 人の肉体
 姿 形 は 生まれながらのもの
 変える事は 出来ない
 人の心は 自身が育むもの
 いつでも 変える事が出来る
 変える事の出来るものを
 変えないのは その人の
 怠慢


 人は 皆
 それぞれ 重荷 背負い
 生き

        
          言論に関して(2022.1.26日作)


 言論の自由とは
 何を言っても良い という事ではない
 言論の自由は制限の中でのみ許される
 自己主張に自由は許されるが
 他者を傷付け 貶めるための言論に自由は許されない
 一切の制約を取り払った野放図な自由は自由ではない


 一人の人間の存在
 自己を主張するのを束縛するのは悪であるが
 他者の存在 他者を貶めるための悪意ある主張を束縛するのは
 悪ではない





          ーーーーーーーーーーーーーーー





          再び 故郷に帰れず(2)


「ほら、これさ。これだよ。これを見れば昔の俺を思い出してくれるだろう」
 わたしは夢見子の前にその写真を突き出した。
 夢見子は恐る恐る右手を伸ばして一辺が十五センチ程の四角い額縁に入った写真を受け取った。
 その額縁を両手で持つと公園の外灯の明かりの下で顔をうつむけ、額縁の中の写真に視線を落とした。
 夢見子はしばらくそうして写真に視線を落としていたが、やがて、額縁を右に傾けたり、左に傾けたりして、一層くわしく映っているものを確かめようとしていた。それからふと、諦めたように顔を上げると、
「この写真には何も写っていないわ」
 と言って、わたしの顔に視線を戻すと写真を返して寄越した。
「写っていない ?」
 わたしは何をバカげた事を、というような口振りで言うと、夢見子の手から額縁を受け取った。
 写真に視線を落とすと、だが、夢見子の言った事はバカな事でも、嘘でもなかった。
 額縁の中にある写真はただ、白一色の何も写っていない写真だった。
「あれ ! おかしいな、これじゃあなかったのかなあ」
 わたしは慌てて、再び、袋の中を探った。ガラクタのびっしりと詰め込まれた袋の中にはだが、その他に写真らしい物は何も見つからなかった。
「ないなあ。一体、どうしちゃったんだろう」
 わたしは何故か深い失望感に捉われ、泣きたい気持ちで言った。
「多分、あなた、何か勘違いしているのよ」
 夢見子は大した事ではないというように軽い口調で言った。
「勘違いなんかじゃないさ。確かにこの額縁には俺の小さい頃の写真が入っていたんだ。それが消えてしまうなんて」
 わたしはおろおろした口調で言った。
「あなたの子供の頃の古い写真でしょう。だからきっと、もう、ボヤケて消えてしまったのよ」
「そんな事、ありようはずがないさ。百年も二百年もっていう昔ならともかく、たった二十年か三十年の間の事だよ。消えて無くなってしまうなんておかしいよ」
 わたしは夢見子を責めるように言った。
「あなた、きっと、疲れているのよ。だから何か勘違いをしているのよ。少し、ゆっくりと体と心を休めた方がいいわよ。ここは、ちょうどこんなに静かだし、誰もいなくて、邪魔される事もないから。ほら、花の香りが沸き立つように漂って来るのが分かる ? ジャスミン ? 沈丁花 ? バラかしら ? コクテールっていうバラの匂い、あなた知ってる ? それはそれはいい匂いなんだから。うっとりと、夢の中に誘われるようよ」
 わたしは何時の間にか、ベンチの上で両膝に肘を付き、頭を抱え込んで泣いていた。自然に涙が溢れて来るのを止める事が出来なかった。
「あなた、遠い所から旅をして来たの ? 疲れているみたいよ」
 夢見子は優しく言った。
「いや、そんな事はない。疲れてなんかいないさ」
 わたしは顔を上げ、夢見子を見つめるときっぱりと言った。
「そう、じゃあ、わたしと寝る ? もう、女の人には随分、御無沙汰なんでしょう。そんな風に見えるわ。わたしには商売だけど、勿論、お金なんかいらないわ。こんな素敵な夜の中でわたしも一人、あなたも一人、だから、お互い、孤独を慰め合うのも悪くはないと思うのよ」
 夢見子は言った。
「いや、沢山だ。女なんて沢山だ。ただ俺には、自分が生きて来たこれまでの人生が我楽多のように思えて仕方がないんだ。だから、俺は巷の埃にまみれて無我夢中で生きて来たこれまでの一切とはおさらばして、もう一度、昔の純粋だった自分に戻って、総てをやり直したいんだ」
「そう、御免なさい。余計な事を言ったりして。あなたは真面目な人なのね、きっと。自分の人生を真剣に考えてるなんてーー。ともすれば、惰性に流されがちになってしまうものだけど」
 夢見子は穏やかに言って静かな微笑みを見せた。自分の申し出を無下に断ったわたしに対して悪感情を見せる事もなかった。
「わたし、もう少しここに、こうして居たいの。こんな静かな夜だし。わたしが居ても邪魔にならないでしょう」
 夢見子はわたしと同じベンチに並んで腰を下ろすと言った。
「うん、構わないさ」
 わたしは言った。
 だが、わたしに取ってはそんな夢見子も今では何故か、遠い存在としか思えなかった。幼い頃の夢見子との間に通い合っていた親しみのあの感情が、もはや完全に消え失せていて、虚しさだけがわたしの心の総てを覆いつくしていた。



          二



 わたしは公園のベンチに腰掛けたまま、うとうとしていたようだった。
 目覚めた時には公園には夜明けが来ていた。
 爽やかな空気の流れと、葉裏の一枚一枚までもが洗い清められたように鮮やかな樹々の緑が、鮮烈にわたしの視線を捉えて来た。太陽の昇った気配はまだなかった。
 小鳥たちが騒々しい声で木々の間で鳴き交わしていた。
 女の姿はなかった。
 わたしは一人だった。
 わたしは少しの肌寒さで目覚めたようだった。
 依然として公園には、誰も人の姿はなかった。
 わたしは何故か重く感じられる腰を上げると、また、大きな袋を肩に担いで歩き始めた。
 公園を出るとわたしの前にはまたしても、細い一筋の道が続いていた。
 わたしはその道をひたすらに歩いた。歩いて行くより外なかった。
 太陽が昇って来た。
 朝の新鮮な太陽の光りだったが、時間が経つのと共に次第に暑さが増して来た。
 体の中から溢れるような熱気が湧き上がって来て、わたしは息を切らしながら歩いた。
 肌をじめつかせる汗を感じるとわたしは、上に来ていた大きなポケットの幾つも付いた厚い上着の一枚を脱ぎ捨てて、歩いて行く道の上に投げ捨てた。
 幾分それで、熱気に火照った体が冷やされるように感じられた       
 わたしが歩いて行く道筋には、まだ若々しい緑の葉と、赤い茎を蓄えたスカンポの群れが自生し、通りを埋めていた。その自然な眺めがわたしに微かな慰めをもたらしてくれた。わたしは幼い頃に還ったような気分と共に一茎のスカンポを折り取ると、口にくわえ、歯の間で嚙み潰した。その酸っぱい茎汁がふと、わたしに幼い日々への追憶をもたらした。わたしは夢に包まれるような気分と共に、早くも熱気を感じさせて来る陽射しの中で、それでも意気揚々と歩を運ぶ事が出来た。わたしの新しい人生がここからまた始まるかのような、溌溂とした気分に包まれていた。
 わたしは歩いた。





          ーーーーーーーーーーーーーーー




          桂蓮様

          有難う御座います
          コメント 何時も楽しく拝見させて戴いております
          それにしても このような文章をここだけに留めて
          置くのは いつも書くようですが 勿体ないです
          とても楽しくお読み出来ます バレー なんだか悩み   
          落ち込んでいるお姿が彷彿として来て 思わず
          声にして笑っています 幼い子供たちのようだ と心が
          ほのぼのとして来ます
           それにしても このように打ち込む事の出来るものを
          お持ちの桂蓮様はお幸せです 歳を取るのも忘れる事が
          出来ますものね 心は青春 お元気の源です
           今回も 御理解のある御主人様 良い方ですね と
          申し上げたいです どうぞ御主人様にお伝え下さい
           雪の月曜日 初めての拝見かと思います
          こちらでも珍しく十日の夜には雪が降り 少し
          積もりました 積もったと言っても雪国から見れば
          霜のようなものでしょうが 馴れないこの辺りでは
          ちよっとの仕事になります
           坐禅 持てないですね 禅は古いものと思う人が
          多いのではないでしょうか 人が生きる上での基本
          根本が禅には詰まっています 決して古いものでは
          ないのですがーー どうか諦めずにこつこつ説得して
          下さい
           冒頭の写真 毎回 楽しく見させて戴いております
          生活感が溢れ 地方の状況が読み取れて
          とても楽しいです
           何時もお眼をお通し戴き 有難う御座います 




          takeziisan様

          有難うございます
          いろいろ 懐かしい曲 記憶に甦ります
          それにしても月日の経つのは早いです
          これ等の曲の総てがもう 遠い昔のものに
          なってしまいました ドリス デイ 
          ミレーユ マチュウ パープル シャドウズ
          アームストロングは勿論 でも 「夜毎八時」
          こんなミュージカルのあるのは知りませんでした
           おえる わたくしの方でも使いました 手にマメ
          その おえる はなかったですね
           人間の矛盾 面白いです 昔も今も人間は
          そんなに変わってはいませんね          
           ジュ二ヒトエ 花はよく眼にしますが 名前は
          知りませんでした
           バン と オオバン 違うのですね
          田圃を守るから バン なるほど 至って簡単な理由  
          から命名されるものなんですね
           今回も写真 楽しく拝見致しました
          有難う御座いました     
  
 

 
 
 

遺す言葉(382) 小説 再び 故郷に帰れず(1) 他 限りなき果て

2022-02-06 12:48:53 | つぶやき
         

           限りなき果て(2020.9.16日作)



 わたしは逝くだろう
 霧の中へ

 霧は
 わたしを包むだろう
  
 霧は
 影も形もなく
 わたしを消し去るだろう

 逝く者

 そしてまた 生まれ

 来る者

 限りなき
 その果て



          ーーーーーーーーーーーーーー





           再び 故郷に帰れず(1)
              カフカ風(超現実的 シュール)に   

                過ぎ行く時の再び 戻る事はない
                 人の生の今は
                 一瞬の幻 還り来ぬ 夢

 
           一

 
  気が付くとわたしは、連日、自分の身丈に合わせて墓穴を掘っていた。辺りには重い雫を湛えた灰色の霧状のものが一面に垂れ込めていて、先を見通す事さえ出来なかった。
 わたしは深い絶望感に捉われた。
 毎日、こうして自分の墓穴ばかりを掘っていて俺はいったい、どうなるんだろう ?
 生きる気力さえ失われてゆくようで、重い病を患った重症患者のように喘いでいた。すると突然、見も知らぬ者達に担架に乗せられ、重い鉄の扉を持った門の外へ放り出された。
「とっとと消え失せろ、この意気地なしめが ! おまえのような役立たずに用はない !」
 そんな声が聞こえると重い鉄の扉は閉ざされた。
 呆然として佇むわたしの前にはそれが、まるで命をつなぐ一筋の糸でもあるかのように細い道が開けていた。わたしは、取り敢えずは、この道を歩いて行くより外ないのかと思うと、重い足を引き摺りながら歩き始めた。
 道が何処に続くのかは、皆目、見当も付かなかった。
 わたしの肩には重い南京袋にも似た袋が掛かっていた。中にはわたしが今日まで生きて来た証しの様々な物が雑多に詰め込まれていた。
 わたしは歩き続けた。果てし無く続くように思えるその一本の道は、歩いて行くに従って、まるで自分の記憶を手繰り寄せてゆくかのような感覚をわたしにもたらした。
 わたしは歩き続けた。すると突然、眼の前に大きな公園が現れた。
 公園は豊かな樹木の緑に覆われていた。鬱陶しい程に分厚く重なり合うそれらの樹木の緑は、煌々と明かりを灯す真夜中の外灯に照らし出されて生き生きと輝いて見えた。
 公園には誰も人の姿は見えなかった。
 鬱蒼とした緑に覆われた広場のその中程には、大きな噴水があった。その噴水の飛沫を浴びて大理石の白い裸体の女神像が建っていた。噴水を囲む周囲には、赤や紫、黄色や白、青と、様々な色彩の花々が咲き乱れていた。
 わたしは取り敢えず、この夜の中を歩いて来た疲れを癒すために、噴水を囲んで置かれている木製のベンチへ行くと腰を下ろした。
 なぜが、安堵感と共に深い安らぎがわたしの心を満たした。
 わたしは心地良い疲れに身を委ねるようにベンチの背もたれに体を寄せて顔を夜の空に向けて眼をつぶった。
 深い幸福感で身も心も溶けてゆくようだった。
 突然、女性の声がした。
「こんな所で何してるの ?」
 驚いて眼を開けると若い女が微笑みながら立っていた。
「ああ、びっくりした」
 わたしは言った。
「突然、驚かせちゃって御免なさい」
 女は言った。
「いや、いいんだ。ただ、あまりに突然なんでびっくりしたのさ。この公園には誰もいないと思っていたから」
 わたしは言った。
「わたしも誰もいないと思っていたら、あなたが此処にいたので、突然だけど声をかけてみたの」
 女は相変わらず柔らかい微笑みを浮かべた顔で言った。
 女の眼はひどく澄んでいた。
 その眼の縁には色濃いアイシャドーが施されていた。唇のルージュは毒毒しい程の鮮やかさで彩られていた。一目でその方面の女性と判別出来た。
「君は娼婦かい ?」
 わたしは聞いた。
「ええ、そうよ。だけど、今夜はあぶれちゃった」
 女は悪びれる様子もなく言った。
「そうか、そういう訳か。でも、毎日は楽しいかい ?」
 わたしは聞いた。
「ええ、楽しいわ。若いうちこそ華ですもの、楽しまなくちゃ」
 女は嬉々とした様子で言った。
「そうだね。ところで君の名前は、夢見子って言うんじゃないかい ?」
「ええ、そうよ。どうしてわたしの名前を知ってるの ?」
 女は驚いた風に言った。
「だって俺は "おさない(幼い悟)さとる" さ」
 わたしは言った。
「おさない さとる ?」
 女は眉を寄せて訝しげに聞き返した。
「そうだよ。ほら、何時も一緒に遊んでいたじゃないか」
 わたしは幼馴染に突然出会った思いで意気込んで言った。
「知らないわ、そんな人」
 女は突き放すように言った。
「ほら、古田の里でさあ」
「知らないわ」
 女はやはり、チンプンカンプンというように言った。
「だって君は、美 夢見子だろう」
「そうよ」
 女は言った。
「俺は古田の里の おさない さとる だよ」
「あなた、何か思い違いをしているのよ。きっと」
「そんな事ないさ。君こそ、どうにかしてるんだよ。もう、昔の事は忘れてしまったのかい ? 十歳から十一歳の頃、一緒に遊んだじゃないか」
「わたし知らないわ」
 女は困惑したように言った。
 わざとらしい様子はなかった。真剣に思い出そうとして悩んでいるふうでさえあった。
 わたしは失望した。
 美 夢見子は紛れもなく、右の唇下に小さなホクロがあった。そして、この夜の女にもまた、全く同じようにホクロがあった。二重瞼の豊かなその瞳、左頬の微かな笑窪、それらは紛れもなく幼い頃の夢見子を彷彿させた。
 背丈は違っていた。それは仕方のない事だった。あの当時から既に、何年が経過しているのだろう ? また、あの当時から美しかった顔に毒毒しい化粧が施されている、それも夜の街で通りすがりの男達の眼を引くためには仕方のない事に違いなかった。そんな夢見子に対する失望感はなかった。ただ、この違和感、紛れもない夢見子と認めた上での二人の間に差し挟まるこの違和感だけは如何としても拭い去る事が出来なかった。
 わたしはほとんど絶望的な思いで眼を閉じた。眼の前にいるこの女が、その間に何処かえ消えてしまってくれればいいと思った。
 わたしは再び、重い心のままに眼を開けた。
 すると、まだ眼の前にいた女は、
「あなた、古田の里の さとるさん なの ?」
 と言った。
 美しい声だった。
「そうさ」
 わたしは言った。
 しかし、もはや、さっき程の大きな喜びに包まれる事はなくて、わたしの声は沈んでいた。
「さとる さん とはよく、裏の山へ茱萸(ぐみ)を採りに行ったり、嵐や大風の後にお寺の庭にいっぱいに落ちた銀杏を拾いに行ったりした事があるわ」
 女は懐かしそうな口調で言った。
「俺はその さとる さ」
 わたしは急に心の中に灯が点った思いで意気込んで言った。
 だが、夢見子の顔にはその時、一瞬の驚きと戸惑いの入り混じった微妙な表情が表れて、わたしを見つめる眼差しが険しくなった。
「でも、あなたは違うわ。さとる さんじゃないわ。おさない さとる さんはあなたのような人ではなかったわ」
 女は強い口調で言った。
「じゃあ、どんな人だった ?」
 わたしは言った。
「どんな人って、あなたとは全然違うわ。あなたには さとる さんの面影もないわ」
「それは俺が歳を取ったせいさ。歳を取れば人間、誰でも変わるだろう。昔のままでいるはずがないよ。そうだ、俺の子供の頃の写真があるから、それを見せよう。それを見れば俺が昔の さとる だって事は分かって貰えるだろうから」
 わたしは急いで自分の足元に置いた大きな袋の口を開いて中を探り、額縁に入った一枚の写真を取り出した。





           ーーーーーーーーーーーーーーーーー

          takeziisan様

           コメント 有難う御座います
          ここから一編のストーリーが生まれそうですね 
                                    推理小説ではここからが始まり となります 
          名探偵の活躍 今 NHK BS3チャンネルで水曜
          午後九時から シャーロック ホームズの冒険 という
          番組を放送していますが ここでは正しく この死体   
          が発見されたような場面からドラマが始まります
          名探偵の活躍というわけです でも わたくしが
          目指した物語では テーマが現実社会の中に於ける 
          不条理 という事で普段 真面目に正直に生きている
          人間が思いもかけない 理不尽な出来事に巻き込まれる
          ーー桂蓮様へのお礼の中でも書きましたが 現実に
          例の医師殺人事件など 正常な感覚では理解出来ない
          事が起こっています 事件はわたくしがこの物語を書き 
          始めた後に起こりましたが わたくしの書いた物語も
          全くの絵空事ではないと思うのですーーそんな様子を書
          いてみたかったものですから ここで完結としました 
          後の事件解明を追う過程を書くとテーマから外れた
          枝葉末節になってしまうと思ったからです 
          この後 警察は動くのか 事実とは食い違いを見せる
          証言の裏にあるものが 解明されるのか この事は
          お読み戴く方の御想像にお任せしたいと思うのです 
           いつも退屈な物語にお付き合い下さいまして
          御礼申し上げます
           今回も ブログ 楽しませて戴きました
          灰田勝彦 懐かしいですね あの軽やかな歌い方
          思い出します 
           遠い山なみの景色 何故か このような景色を見ると
          郷愁に誘われます 故郷に山なみなど皆無だったのに
          不思議に懐かしさを覚えます
           ラ ノビア セントルイス ブルース
          サッチモがいいですね あのような個性はもう二度と
          出ないでしょうね 懐かしさを覚えます 約九分が
          アッという間でした 待つ時間の九分は長いのに
           川柳 相変わらず楽しませて戴きました
          今後も御期待しております
           数多くの鳥 豊かな自然が感じ取れます
           何時も 応援 有難う御座います
           それにしても連日の一万歩近く お元気の源で
          しょうか
 
         


          桂蓮様

           有難う御座います
          拙作 正確にお読み戴き 有難う御座います
          世の中 現実には 全く想像も出来ないような事が
          突如として起こります 最近でも日本で
          死んだ母親の蘇生施術を断った医師が射殺された
          理不尽な事件がありました その他 ナイフで全く
          関係のない人を刺したり (このような出来事はこの
          欄で依然 ナイフ という物語で書きましたが 
          実際に全く同じような事件が現実に起きています)今回
          の拙作でも平凡な日常に突然降りかかって来る 
          それそこそ不条理な現実を書いてみたいと思ったのです  
          世の中 実際には何が起こるか分らない それが真実
          ではないでしょうか
           今回の新作 拝見しました
          生き生きとして 御様子が伝わってきます
          良い御文章ですね 心の中の記憶もこのように整理が
          出来ると良いのですが なかなかそれが出来ない
          辛いところです 人間はその辛さから逃れる為に
          神や仏などを持ち出し それにすがろうとしたのでしょ
          うね
           禅などもその迷いから逃れる為の 一つの方法として
          編み出されたものではないのでしょうか いずれにして      
          も人の世は 一筋縄ではゆかない 不条理に満ち満ちた   
          世界ではないでしょうか
           冒頭の滝の写真 見事な流れ 美しいです
          眼の保養になります
           何時もお眼をお通し戴き コメントして下さいまして
          有難う御座います 御礼申し上げます