遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(334) 小説 蜃気楼 他 人が生きる時

2021-02-28 13:02:07 | つぶやき
          人が生きる時(2021.2.22日作)

 人は 自分の他に
 心を寄せる事の出来る 存在がある時
 強く 生きられる それが
 親や 兄弟であったり 恋人
 夫婦であったり 或いは
 芸能 芸術 スポーツ で あったり・・・・
 人間 最も恐れる事は 心の孤独
 何も 心の支えとなる 糧を
 見い出し得ない時 人は
 孤独の中で 最悪の事態 を
 考える 人は
 人 無くして 生きられない 人間存在
 だが その存在は 絶対的 弧の存在
 究極 人間 人は 自身に還る 自身の他
 自身を支え得る 存在は 無い
 自身の心 それが総て 総てを
 支配する 自身の心 人の心 その 心を
 如何に 繋ぎ得るか 人が
 生きる上での 根本命題
 人は 人の中で 生きる
 人の中でこそ 生きられる
 人 無くして 人は
 生きられない 



          ----------------



          蜃気楼(1)

 五島明子が柚木正信と出会ったのは、短大卒業後、三塚レーヨンに入社して三年目を迎え、服飾デザイナー、滝川裕子のアシスタントのような仕事をするようになってからだった。当時、滝川裕子は三塚レーヨンの契約デザイナーの立場にいて、四半期毎に銀座のMデパートで三塚レーヨン素材による、女性物の作品発表会を開いていた。柚木正信はそのMデパート側の担当責任者だった。明子より八歳年上だった。
 滝川裕子が行う四半期毎の作品発表会は一つの季節が終わるとすぐに、次の季節の準備に取り掛からなければない慌しさだった。素材選びから色柄の選定、スタイルの決定など、打ち合わせが頻繁に行われた。
 その滝川裕子は五十歳代半ばで、デザイナー教室も経営していた。多忙な毎日を過ごしていた関係上、打ち合わせはいつも東京、赤坂にある滝川事務所で行われた。明子は滝川裕子の使い走りのような役割が多かったが、日本橋室町にある三塚レーヨン本社との行き来には仕事を急ぐ関係上、タクシーを利用する事が多かった。そして、そんな折りにはしばしば、Mデパートへの行き帰りの柚木正信と乗り合わせになる事も多々あった。
 柚木正信は独身だった。癖のない人柄で、誰にも好感を持たれるような人当たりの柔らかさを持っていて、巧みな話術と共に人の気を逸らせるような所がなかった。明子はその柚木と同じタクシーに乗る事に苦痛を抱く事もなかった。
 そんな二人が始めて夜の赤坂へ足を向けたのは、秋に発表する作品の打ち合わせが終わって、ホッと、肩の荷をを下ろした日の事だった。その日、明子は仕事が遅くなる事を前提に、帰りの支度をして会社を出ていた。打ち合わせが済んで、みんなが帰ったあと、滝川裕子に託された事務所の鍵を掛けて外へ出ると、帰路に着くため地下鉄の駅へ向かって歩いて行った。その時、不意に後ろから声を掛けられた。
「五島さん、何処まで帰るの ?」
 不意の声に驚いて明子が振り返ると、傍に柚木正信が立っていた。
「ああ、誰かと思ってびっくりした」
 明子はいつもの見馴れた柚木の姿に思わず安堵して、笑顔で言っていた。
「今、ちょっとお腹が空いたんで、何か食べてから帰ろうと思ってうろうろしていたら、五島さんの姿が見えたんで追い掛けて来たんです」
 柚木は笑顔と共に言った。
「そうなんですか」
 明子は納得して言った。
「何処まで帰るんですか ?」
 柚木はまた言った。
「中野坂上です」
「地下鉄で ?」
「ええ、そうです」
「僕は小岩なんだけど、食事は済みました ? まず、腹ごしらえ、と思っていたところなんで、よかったら一緒に食べにゆきませんか ? 僕が奢りますよ」
 柚木はなんの拘りもなく楽しげに言った。
 明子自身もその時、これから帰っての夕食の支度をと思うと、ふと、億劫な思いになって来て、なんの拘りもない柚木の言い方に引き込食まれるように気持ちが傾いていた。
 二人は近くの路地を入った所にある、ありふれたレストランに入った。
 食事を済ませ、レストランを出た時には時計は、九時を過ぎた所を指していた。
 柚木は明子とのなんの屈託も無い夕食のひと時にすっかり寛いでいる風で、これまでの時間をそのまま引き継ぐように、
「この近くに、以前、滝川先生に連れて行って貰ったバーがあるから行ってみない ?」
 と言った。
 明子はこの時、さすがに一瞬、ためらった。
「ええ、でも」
 と言った。
「大丈夫、大丈夫。まだ九時を過ぎたばかりだもの。遅くなったら、僕が責任を持って送りますよ」
 柚木は相変わらず親しい友達に対する時のように屈託なく言った。

 バー「蜃気楼」は一ツ木通りにあった。
 柚木正信は相当に飲める口らしかった。オン、ザ、ロックのグラスを幾ら重ねても少しも崩れる様子を見せなかった。頬を少し赤くして、さすがに少し饒舌にはなっていた。
 だが、柚木の口にする話題は普段の人柄そのままに楽しかった。明子もその柚木に引き込まれるようにグラスを重ね、常にはない程のグラスを重ねていた。それでも、その雰囲気の楽しさの崩れる事はなかった。
 バーを出た時には十一時半を過ぎていた。
「こんなに遅くなっちゃった。引き止めたりして御免なさい」
 と柚木は言った。
「いいえ、わたしも楽しかったです」
 明子は素直な気持ちを言った。
「中野でしたね。地下鉄では大変だから、タクシーで送りましょうか ?」
 柚木は言った。
「いいえ、大丈夫です。地下鉄もまだ動いていると思いますから、地下鉄の駅までタクシーで行って」
 明子は言った。
「そう、じゃあ、気を付けて」
 そう言っている所へタクシーが来た。
 柚木はその場に立ったままタクシーに乗った明子を見送った。

 明子は滝川裕子が冬物の製作に取り掛かっている間、頻繁に滝川事務所には足を運んだ。
 柚木正信とはあの夜以来、顔を合わせる機会がなかった。
 だが、そうしている間にも、明子の気持ちは次第に深く滝川裕子の仕事に魅せられいって、柚木正信と会う機会のない事を苦痛に思う事もなく、会う機会のない柚木に思いを馳せる事もなかった。そして明子は何時か、自分もデザイナーに、という思いを抱くようになっていた。



          -----------------



          桂蓮様

          いつも貴重な御意見 有難う御座います
          桂蓮様にも お若い頃には大変な御苦労が
          お有りだったのですね でも 苦労は人間を育てます
          自分の経験した苦労を 苦労した分だけ
          他人に押し付けるのではなく 思い遣りとして育てる
          事が出来ましたら どんなに素晴らしい事でしょう
          桂蓮様もかつての御苦労をどうぞ御主人様や
          周囲の方々に思い遣りとしてお分け与え下さいませ
          これからも一層 桂蓮様がお幸せであられますよう
          願っております
           「痛みが拓くドア」今回は辞書を引きながらの
          英文と共に拝読しました いろいろ貴重な御体験
          参考になります 病は気から と申します
          気持ちが萎えてしまえば 治るものも治らなく
          なります わたくしも薬には頼らない主義です
          食事 身体を動かす それに睡眠 これが  
          とても大事な事だと 今になってつくづく
          実感しています と共に 実行もしています
          五年程前に大腸に癌が見つかり、切除しましたが
          今は至って健康です 何処も悪い処はありません
           それにしても冒頭のお写真 あの煙り
          あれは自然のものですか それとも
          加工されたものですか まるでバレーダンサーです
          わたくしもバレーはオペラよりも好きで
          テレビ放映がある限り見ています
           アメリカのコロナ 改めて大変な事を実感致しました
          これもトランプ氏の残した負の遺産でしょうか
          日本でも一向に治まる気配がありません その中での
          オリンピック問題 愚かだと思います 選手諸君には
          気の毒だとは思いますが 今は全力で世界の人間の
          命の救済に向かうべきではないのでしょうか
           私の居る地区は川一つ隔てただけで東京に隣接 
          していますが 幸い大きな広がりはありません
          お気遣い 有難う御座います


          takeziisan様

          有難う御座います
          今回もいろいろ楽しく拝見させて戴きました
          懐かしい事ばかりです
          あの頃 何処でも同じようなものだったんだなあ
          と思い出しています 予防注射
          「オールド ブラック ジョー」「夜のタンゴ」  
          懐かしいですね 終戦後間もなく タンゴが一時
          ブームでしたね 
         「早川真平とオルケスタ・ティピカ東京」そして藤沢蘭子         
          日比谷公会堂で公演があった時 まだ学生服だった
          菅原洋一が 藤沢蘭子に
          これからデビューする新人です 
          と言って紹介された事を今でも覚えています 
          ですが その菅原洋一もすっかり歳を取ってしまい 
          何時だったかのテレビで
          倍賞千恵子と「わすれな草をあなたに」を
          唄った時 音程がまるで外れてしまっていて
          ビックリした事がありました その時は
          当時を思い出して ああ菅原洋一も歳を取ったなあ
          と思ったものでした
          時の過ぎ行くのは速いものです
          M男さんの日記 貴重な資料です
          どうぞこれからも御大切にして下さい
          いつも有難う御座います
          

      
 
         



             
            
          
 
 

 
 
 
 

 
 
 

遺す言葉(333) 小説 雪の降る街を(完) 他 それが 幸せ

2021-02-21 12:44:50 | つぶやき
          それが 幸せ(2021.2.12日作)


 喜びの中で 言葉は生まれる
 悲しみの中に 言葉は生まれる
 無味 無感動 乾いた心に
 言葉は 生まれない
 生きる 生きる
 心 豊かに 今を生きる
 迫り来る老い 迫り来る
 人生の終わりの時 死
 辿り行く道に 逃れ得る
 術はない 人の持つ 宿命
 せめて
 命ある 今日 という日 一日を
 心豊かに 自身の胸の中に
 喜び 哀しみ 溢れる
 感情の花を咲かせ 感謝の言葉を
 誰か あなたに 君に
 伝える事が出来たら
 それが
 幸せ



          ----------------



          雪の降る街を(完)

 一時間目の授業が終わって、休憩時間になった時にも雪子は、普段と変わらなかった。再び、活発な屈託の無い一人の女子生徒になっていた。光男との事など、何もなかったかのようにケロリとしていた。光男は安堵するのと共に、少しの不満も意識した。自分だけが余りに拘ったのだろうか ?
 その謎は解けなかった。以後も雪子はこれまでと少しも変わりのない雪子であり、光男は元の余り目立たない光男に返っていた。ただ光男は時折り、懐かしく、雪子との一瞬の間のあの出来事を思い出したりしていた。

 北国の長い冬も中学生生活最後のものとなると、春を待ちわびるいとまもなく過ぎていった。卒業への期待感と共に、中学生生活を終わる事へのなんとはない寂しさと、社会へ出る不安が光男の心を昂揚させ、落ち着かなくさせた。三学期に入ると生徒達の進路はほぼ決定していて、雪子も就職組だった。郡山市に居る親戚の伝手で、市内のデパートの店員になる事が決まっているという話しだった。雪子の家が貧しいわけではなかた。雪子自身が希望した結果だという事だった。
 そんな雪子が光男の心に決定的な影を残したのは、ある雨の日の朝の事だった。 
 その朝、光男は掃除当番だった。少し早めに学校へ行き、二人の仲間と掃除を済ませ、最後に汚れた水と雑巾の入ったバケツを持って、校舎のはずれにある水汲み場へ行った。その頃にはほとんどの生徒達も教室に入っていて、光男の仕事もバケツの中の汚れた水を捨ててきれいな水で雑巾をすすげば終わりだった。
 雨はその頃にも静かに降り続いていた。運動場に面した水汲み場には小さな屋根があったが、その日の斜めに降りかかる雨は屋根の下にまで入り込んで来て光男の身体を濡らした。光男がそんな雨を避けながら急いで水を汲んでいる時に、背後で突然、声がした。
「光男君、お掃除当番 ?」
 振り返ると雪子が立っていた。
 光男は思いかげない雪子との出会いに驚いて、
「ああ」とだけ言った。
「ほら、こんなに背中が濡れて」
 雪子はそう言うと光男の背中に傘を差し掛けてくれた。
「大丈夫だよ」
 光男はそれだけを言った。
「わたしが傘をさしてるから、早く汲んじゃいなよ」
 雪子は光男に寄り添うように身体を近付けて光男が雨に濡れるのを防いだ。
「今、来たのか ?」
「うん、遅くなっちゃった」
「みんな、来てるよ」
「授業、始まった ?」
「まだだ」
「よかった」
「でも、じき始まるぞ。早く行った方がいいよ」
「大丈夫よ。終わるまで差しててやるから、早く洗っちゃいなよ」
 雪子は言った。
「悪りいな」
「ううん、いいよ」
 あの雪の日以来、それまでの雪子と全く同じように特別な感情を見せる事も無かった雪子が急に身近に感じられて光男の胸は昂揚した。
 雪子は光男が何枚もの雑巾をすすぎ終わるまで待っていてくれた。
 それが終わると二人は一緒に校舎に入った。
 雪子は傘を畳み、赤いレインコートを脱いだ。
 赤いレインコートが雪子の白い肌によく似合って光男は、きれいだと思った。
 光男は雪子がレインコートを脱ぎ、長靴を脱いで靴入れに入れるのを待って、二人で廊下を教室へ向かった。
 教室の傍まで来ると光男は足を急がせ、雪子の先に立って歩いた。
 二人は別々に教室に入った。他の生徒達の視線を気にしての事だった。
 雪子がその事を意識していたのかどうかは光男には分からなかった。ただ、光男の胸の内ではその日以来、なお一層、雪子が近しいものになっていて、学校へ行く一日一日が限りなく楽しいものになっていた。
 だが、日々は確実に過ぎていった。卒業までの二週間という日数は心をときめかせる日々の中では瞬く間の、一瞬の出来事のようにも思えた。
 遂に訪れた卒業式の日、光男に取っては総てが終わりを告げる日のように思えた。地方の山村に育った純朴な少年の心には、幼い恋の心を伝える術も持ち得なかった。ただ、過ぎ行く時間のままに身をゆだね、そこで煩悶するよりほか出来なかった。
 卒業式は何時もの通り、厳かに行われた。名前が呼び上げられ、卒業証書が手渡された。校長の訓示、送別の辞、答辞。
 だが、それらの行事の一切が光男の心にはなんらの感動ももたらさなかった。光男はただ、今日から以降、ふたたび、あの教室で雪子に会う事は出来なくなるのだと考えると、思わず涙があふれ来て、その涙と共に込み上げる嗚咽の中で " 仰げば尊し " を唄っていた。

 卒業以来、光男は雪子には一度も会っていなかった。卒業後、最初の同窓会には光男も出席したが、雪子は姿を見せなかった。
 光男はその席で、雪子の芳しからぬ噂を耳にした。
 雪子が厚化粧をして、見違える程に派手な装いをしているという噂だった。
 早くも恋人がいて、かなり深い関係にあるとの事もそこに居た同級生達の誰もが、意味深長な様子で話し合っていた。
 光男はその話題の中には素直に入ってゆけなかった。が、同時に心の中では、その噂話と共に雪子が限りなく遠くへ旅立ってしまったような存在に思えて来て、寂しさと共に深い哀しみの心に沈んでいた。
 光男はそれ以来、再び、同窓会に出席する事はなかった。かつては兄弟同士のように親しく思えた級友達の誰もが、卒業と同時に、一年程しか経たないうちに、早くも小利口な、大人びた人間に変わってしまっているような気がして、素直に親しみの感情を抱く事が出来なかった。
 変わっているのは雪子ばかりではない、と光男は思った。自分一人だけが、東京という馴れない場所で昔のままの自分でいて、四苦八苦しているだけだ、みんなが変わってしまっている、と光男は思わずにはいられなかったーーー。

 雪はなお、降り続いていた。軽食喫茶店のガラス戸越しにその、降り続く雪に気付いて光男は、ふと、我に返ると、雪の中に甦る追憶と共に思わぬ長い時間をこの軽食喫茶の店で過ごしてしまった事に改めて気付いた。
 既に、ますます激しくなるこの雪の中では、新たに店に入って来る客もいなくなっていて、店員達はまだ九時前だというのに、早くも閉店準備に取り掛かっていた。
「さっき、何処かで電車が止まったって言ってたよ」
「早く帰らないと、帰れなくなってしまうかもね」
 店員達は口々にそんな事を言い合った。
 客席には光男の他に二人の男の客がいた。客達は店員達と親しく言葉を交わしていて、馴染みか知り合いのようにも思えた。
 光男は自分だけがここでも場違いな存在に思えて来て早々に席を立つと、レジに向かった。
 店の外へ出ると、雪は一時間程の間に思わぬ積雪を見せていた。吹き溜まりでは既に、膝までが埋まる程になっていて、タクシーの走る影も途絶えていた。
 光男はその雪の中を濡れしきった靴を履いた足を運びながら歩いた。街灯の明かりに浮かび上がる雪に埋もれた街の光景が何処か、外国にでもいるような雰囲気を醸し出していた。
 光男はなお降りかかる雪に首をすくめると、ジャンパーの襟を引き上げ、ポケットに両手を入れて首を縮めて歩いた。
 最早、何処へも行く場所はなかった。明かりもない、冷たい自分の部屋へ帰って眠るより仕方がないようだった。


          雪の降る町を 雪の降る町を
          思い出だけが 通り過ぎてゆく
          雪の降る町を ーーーーーーー
          -------------
          ------------- 
          -------------

          雪の降る町を 雪の降る町を
          息吹と共に こみあげてくる
          雪の降る町を 誰もわからぬわが心
          このむなしさを このむなしさを
          いつの日にかーーーーーー
          -----------

          


               内村直也
 
 
  
                完



          ------------------

          takeziisan様

          有難う御座いました
          故郷での生活を思い出されたとの事
          誰にもある幼い日の今となっては我々には
          懐かしい感情ですね
          何しろ海辺で育った人間 山里の生活は
          想像で書くより仕方がありません
          実際にそこで育った人から見ると
          なんといい加減な出鱈目を と
          お思いになられる点が数多くあるものと思います
          例えば言葉遣い 方言が分かりませんのでーー
          まあ それも単なる創作物だとお思い
          大目に見て戴けたらと思います それから
          ふと気付いたのですが M男さん
          「光男」のローマ字表示の頭文字と一緒です
          あるいはお読み戴いている間にこんな
          愚にも付かない物語の中で一緒にされたようで
          嫌な思いをされたのではないでしょうか
          もし そうであった時にはお詫び申し上げます
          わたくしとしては 雪の雪子に対して
          光りの子 光男として表現してみたかったのです
           今回もブログとても楽しく拝見させて戴きました
          河津桜の見事な色彩 メジロの美しい姿
          畑に一本転がった大根の なんと愛らしい姿
          まるで生きている動物のように見えました
          それにしても雑草の生命力の旺盛さ
          感歎するばかりです 人間もそうありたいものです
           巷に雨のーーー
          やはり堀口大学ですね
           いつも有難う御座います

 
 
 
 
 
 
 
 
 

遺す言葉(332) 小説 雪の降る街を(5) 他 永遠と今 時は待たず

2021-02-14 12:54:47 | つぶやき
         永遠と今(2021.1.20日作)


 夢見たものは幻
 現実 得た果実は 
 手の中から こぼれ落ちてゆく
 総ては
 真夏の陽差しの中の
 逃げ水
 命の宿した時間の終わりは・・・・・
 無

 今は永遠
 永遠は今
 生は空
 今を生きる
 生き切る

          


          時は待たず

 時は待たず
 遠い彼方へと
 今を運び
 記憶の奥の深い闇へ
 連れ去って逝く
 
 この世の総ては
 夢幻 逃げ水
 蜃気楼



          -----------------


           雪の降る街を(5)

 成り行きは分からなかった。その時、光男はもう一人の仲間と雪子を追っていた。
 男勝りの雪子は手強い相手だった。それでも男二人の共同戦線には、さすがの雪子も抗し切れずに背中を見せて逃走した。
 積雪は早くも膝下を埋める程になっていた。
 その時、不意に何処からか、雪子の援軍が現れた。三人の援軍は光男の後になった仲間を取り押さえると、寄ってたかって雪の中に押し倒した。だが、必死になって逃げる雪子はその出来事には気付かなかった。光男だけが知っていた。その、三人の女性軍団から逃れためにも光男は、なおも夢中で雪子を追った。
 雪子は更に逃げた。光男は追った。激しい行動に興奮した神経は、二人の行動を極限にまで高めているようだった。遂には疲労困憊した雪子が足を止めた。と同時に雪子は居直ったように振り向くと、両手に一杯の雪を掻き集め、光男に向かって投げ掛けて来た。
 光男も持っていた雪の玉を雪子に投げ付けた。
 雪子は息を切らし、笑い声と共によろけながら身を避けた。
 逃走に全力を使い果たした雪子は力が半減しているはずだったが、それでもなお、気丈だった。光男が一人だと知ると敢然と立ち向かって来た。
 だが結局は、男と女の体力の差と共に、逃走による疲労が雪子の力を奪っていた。雪子は再び、背中を見せて逃げ始めた。そして今度は、息が続かず、逃げ遂せないと知ると障害物を盾にしようとした。校庭の隅の野球用バックネットの裏に逃げ込んだ。
 光男はなおもそこまでも雪子を追い掛けた。興奮した神経が光男の行動を駆り立てていた。
 その時だった。不意に光男は何かに足を取られて、雪の中に顔からのめり込んだ。アッと思う間もなかった。一瞬の出来事だった。バックネットを支える雪の中に埋まった支柱に、足を取られていた。
 それを見ていた雪子は手を叩き、甲高い笑い声を上げるのと共に咄嗟に逆襲に出て来た。両手に一杯、雪を抱え込むと光男に近付き、横たわった身体の上に滅茶苦茶に掛けて来た。更に手で杓い上げながら休む暇もなく掛け続けて来た。
 光男は雪に埋もれそうになって、必死に身をよじりながら逃れ、なおも雪を掛け続けて来る雪子を取り押さえようした。
 しばらくそうして揉み合っているうちにとうとう光男が雪子の手を捉えた。
 雪子は笑いながらのうちにも、必死にもがいてなお、その手を振り解こうとした。
 そうして二人が揉み合っているうちに思いがけず、雪子が何かのはずみで身体の均衡を失った。途端に雪子は光男の上に倒れ込んで来て二人の身体は降りしきる雪の中、積もった雪の上で重なり合った。
 幼い二人はだが、それでもなお、互いの攻防に余念がなかった。縺れ合い、争い合っているうちに、今度は急に雪子が動かなくなった。光男にもそれはすぐに分かって、急に静かになった雪子に不審を抱きながら雪子を見た。
 何があったのか ?
 雪子を見つめる光男の顔のすぐ側には雪子の顔があった。
 雪子はその光男の顔を見つめ返した。
 二人の視線が重なり合った体と共に一つになった。
 同時に光男はその時、自分の身体の上に重なり合っている雪子の肉体の柔らかな感触を自分の肉体の上に感じ取っていた。雪子の柔らかな乳房の感触、腹部の息遣い、それを意識するのと共に光男は、息を呑む思いで身体を堅くしていた。
 無論、動かなくなった雪子もそれを意識していたに違いなかった。
 雪子はそれでもなお、光男の体の上に身体を重ね、光男を見詰めたままで動かなかった。その眼が光男に何かを語り掛けて来ているようにも思えた。
 しかし、それもまた、突然だった。雪子は一瞬の呼吸の間のあと、不意に思い付いたように光男の身体の上から自分の身体を引き離すと、そのまま物も言わずに背中を見せて走り去って行ってしまった。
 後に残された光男には総てが一瞬の間の出来事でただ、呆然としているだけだった。暫くは降りしきる雪の中で雪の上に横たわったままでいた。
 
 光男が教室に戻った時には、みんなは既に戻っていた。
 そのみんなは雪に濡れた顔や頭、手足を拭きながら頬を紅潮させ、盛んに互いの様子を真似して笑い合っていた。
 光男は雪子との思わぬ出来事に胸をドキドキさせながらひっそりと、仲間の一隅に紛れ込んだ。話しに夢中になている誰もが光男を気に掛ける事はしなかった。暫く経って安江が突然、
「あれ、雪ちゃんは ?」
 と言った。
「雪子 ? 知んねえ」
 男子生徒の一人が言った。
「帰ったんじゃないの ?」
 女子生徒の一人が言った。
「だってえ・・・・」
 普段、雪子と一緒にいる事の多い安江には納得し兼ねる事だった。
 光男は雪子がそこに居ない事にもそれまで気付かなかった。
 安江が雪子の机を調べると雪子の鞄はなかった。
「雪ちゃん、帰ったんだあ」
 安江が言った。
「何時、帰ったのかねえ。ついさっきまで、雪合戦してたのに」
 一人の女生徒が言った。
「うん」
 安江も言った。
 光男はみんなからは少し離れた場所にいて、胸の動悸を速めながら無言で小さくなっていた。
 光男には雪子が誰と顔を合わせる事もなく、一人でそっと帰ってしまった事の理由と意味が分かるような気がした。普段の人付き合いの良い雪子にしては考えられない事だった。

 翌朝、光男は教室へ入って雪子と顔を合わせるのが不安だった。雪子がどのような反応を見せて来るのか ?
 光男は何故か自分が、雪子という人間の深い所まで知ってしまったような気がしていて落ち着かなかった。
 光男が教室に入った時、雪子は既に来ていた。何時もと変わらない様子で机に向かっていて、光男が教室に入って行った事にも気付かなかった。



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          takeziisan様

          有難う御座います
          今回もブログ 楽しく 懐かしく
          拝見させて戴きました
          昭和三十年代 何処の地方に於いても
          余り変わりませんね 仰る事の総てが
          わたくしの居た地方にも当てはまります
          深い共感と共に拝見させて戴きました
           汽車の時間 一時間に一本 良い方です
          わたくしの方では二時間に一本でした しかも
          駅まで行くのに一時間は掛かりました
          それが終戦後まだ年月も経たない あの頃の
          世の中の状況だったのではないでしょうか
          「アセクラシクテ」面白い言葉ですね
          初めて知りました
          昔 わたくしの居た地方でもメジロを
          飼うのが流行りまして 夢中になった事もあります
           相変わらずの雑木林などの美しいお写真
          堪能させて戴きました
           有難う御座いました



          桂蓮様

          有難う御座います
          今回 新作が見えませんでしたので
          改めて過去のお作を再読させて戴きました
           「いじめなのか 拒絶なのか」
          世の中には人の心の読めない人間が
          多すぎます 政治家然り 経済界人然り
          あるいは教師 諸々の指導者 
          自分は偉いと思っている
          名前ばかりの人間が多すぎます
           余り世間の噂に惑わされない方が良いようです
          それには自分をしっかり 確立する事ですが
          これにはまた、余程の努力を必要とします でも
          自分を生きる為には 仕方のない事では
          ないのでしょうか
           人は人 我は我 日々 わたしはわたしを生きる
          わたしを生きる しかし わたくしはそんな中でも
          最低 人の心と命は傷つけないよう その事を常に 
          心がけているのですが 現実はどうか ?
           いずれにしても桂蓮様も 心無い中傷などには
          惑わされず 御自身の道をお進み下さい
          陰ながら応援しております

      
          
 



          
          
  
 
 
 
 
 





























 
 
 
 
 

 



遺す言葉(331) 小説 雪の降る街を(4) 他 雑感 八題

2021-02-07 12:27:40 | つぶやき
          雑感八題(2012~2020年作)
           (この中には既に掲載済みのものも
            幾つかあるかも知れません)

 1  自我としての人間は一代で終わる
   しかし 命から見る人間は
   人間の連鎖の中にいる
   すなわち 命は永遠だ

 2  人生を賭けても 望むもの 希望が
   必ずしも達成されるとは限らない
   人はその時 どう対処するか ?
   この世界は仮相 虚無と見れば
   希望が達成されなくても嘆く事はない
   自分の思いを生きる事 
   それのみが真に大切
   あれも人生 これも人生 
   総て良し

 3 人生に見返りを期待しない方がいい
   期待すればする程 絶望が大きくなるだけだ
   人生は 日々が充実の中にあれば
   それで充分だ

 4 人は生きている限りに於いて
   この世の多様性を形造っている

 5 人間はどんな人間にも確実に
   後世に残せるものが一つある
   心だ 生前の行いによって人は
   自分以外の人の記憶に自分の姿 心を残す事が出来る
   人は その為に努力すべきだ

 6 気の充実がなければ
   物事は達成出来ない
   同じ才能を持った人間が
   最後に結果を分けるのは
   気の充実度の差によるものだ
   人生もまた 然り
   充実した気力で日々を生きる人間は長く
   賢明な人生を全う出来るだろう

 7  愚かな人間が権力の座に着くと
   自分の力を誇示したくて何事にも
   やたらに口を出したがる
   そして しばしば
   愚かな人間が権力の座に着きたがる

 8  腹を立てるな
   他人の誰もが あなた程
   聡明だとは限らない   
   そう 思えば 他人の  
   意のない行為 行動にも
   腹を立てずに 済む
   愚かな人間の行動に いちいち
   腹を立てていたのでは
   自身の身が持たない
   
   
   



          ------------------



          雪の降る街を(4)

 程なくして、親子丼が運ばれて来た。暖かい湯気の立つ匂いが光男の空腹を刺激する。
 ウエイトレスが去ると光男は、暖かな匂いの刺激に誘われるままに丼を手に取り、搔き込むようにして御飯を口に運んだ。乏しい給料の中で節約に節約を重ねる光男に取っては滅多にない御馳走であり、贅沢だった。食パンと卵、ソーセージだけが普段の夕食だった。
 光男はその丼飯を搔き込みながら、ふと、故郷の母の姿を思い描いた。
 母の作ってくれた親子丼の味を思い出した。
 故郷のあの村でも今頃は雪が降っているのだろうか ? 父はどうしているのだろう ? 
 毎日、雪かきに励んでいるのだろうか ? ---
 その時、四、五人の男女の学生らしい一団が賑やかなざわめきと共に入って来た。
 一団は入り口のすぐ傍の席を陣取ると、相変わらず賑やかなさざめきと共に口々に勝手な事を言っては笑い合っていた。静かだった店内が一瞬にして活気に溢れた騒々しい場所に変わっていた。ウエイトレスが注文を取りに来るとそれぞれが、
「俺、コーヒー」「わたしは紅茶」「わたしはアイスクリーム」「アイスクリーム」「俺はコーヒー」
 合唱するように言い合った。
 光男は彼等のそんなざわめきとはしゃぎ振りを見ると途端に、居心地の悪さを覚えて苛立った。自分の静かで満ち足りていた空間が一気に破壊され、攪乱されてしまってような気がして、彼等を憎んだ。
 うるさい奴らだ !
 ウエイトレスが去ると彼等はなお、口々に、
「先輩、これが最後の冬休みですね。せいぜい、最期の学生生活を楽しんだ方がいいですよ」
「そうですよ。就職すれば、今までのような勝手気ままはできないですから」
「銀行ですって ? 何処の銀行ですか」
「XX銀行さ。そうですよね」
「あらそう。じゃあ、一流銀行員っていう訳すね」
「そう、一流銀行員。だから今夜は先輩の奢りっていう事にしましょう」
「よせよ、おい。まだ、給料を貰っている訳じゃないんだぜ」
 彼等はそれでまた、声を上げて笑った。
 そうして彼等はひとしきり騒いでいたが、光男が食事を終わって間もなくするとまた、慌しく店内を出て行った。
 光男は彼等が出て行った後の店内の静けさにホッとしたが、なんとなく、心の内に込み上げて来る寂しさもあった。彼等の、雪の夜の寒さも気にする様子もないように、はしゃぎながら出て行った後姿が光男の眼には羨望の心と共に焼き付いていた。
 " あんな彼等だって社会へ出れば、暢気にはしゃいで、笑ってばかりはいられないさ "
 反感と共に思ったが、増して来る寂しさの感情には押さえ難いものがあって、思わず涙ぐんだ。ふるさとの雪の景色が再び、思い出された。家族や村の人々の間にあった温もり。決して豊かとは言い難かった村の暖かさ。光男の心が帰ってゆく故郷はやはり、あの村以外になかった。あの村での幸福な日々の数々。あの日々の中で光男は自分がこの村に生まれた事の不幸を考えた事は一度もなかった。総ての日々が幸福に輝き、満ち溢れる光りに彩られた日々だった。雪に埋もれた道を何時間も掛けて通った隣り町にあった中学校。そこでの思い出の数々。どれ一つ取っても今では光男に取っては心の中に輝く宝石となっていた。この、東京という街の、見せ掛けの華やかな光りと煌めきにはない本物、真実の輝きがあった。ーーふと、光男は我に返った。
 我に返った光男の眼に映って来たのは、店内のガラス戸越しに見える雪に埋まる街の姿だった。
 雪はいよいよ、激しく降り募って来ていた。車道も舗道も既に相当量の積雪になっていた。
 車がタイヤを空転させながらゆっくりと走って行く。人々の差す傘には雪が積もっていた。店内にも人の数はいつの間にか疎らになっていて、光男の他に四人の男の客が居るだけだった。
 光男はそれでもなお、食事の終わった後のテーブルに向かったまま、座っていて動こうとはしなかった。この仮の温もりではあっても、身体を温めてくれる温もりが今の光男に取っては救いになっていた。寒い雪の中に出て行くには少しの努力と決心を必要とした。
 そんな雪は、光男が座った窓際のテーブルの側の窓ガラスにもしきりに降り掛かって来た。その雪を見つめながら光男は、こうして見ていると今にも自分が雪に埋もれてしまいそうだ、と思った。すると突然、一つの記憶が蘇って来て、光男の意識の全部をたちまち覆い尽くし、光男を過去の世界に引き戻していた。
 雪子、懐かしい名前だった。後藤雪子。ちょっとやんちゃで、活発、男勝りでありながら、憎めない、小柄で愛くるしい顔立ちの同級生だった。頭も適度に切れ、何処と無く増せて見えた。光男がその雪子を知ったのは、町の中学校へ通うようになり、同じクラスになってからだった。無論、素朴な光男がそんな雪子に恋心を抱くというような事もなくて、三年間はただの同級生にしか過ぎなかった。そんな光男が殊更、雪子を意識するようになったのは、中学校生活も間もなく終わろうという年の十二月初めの事だった。そして、その日も雪が降っていた。その年、最初の雪だった。雪は午前九時頃から降り始め、たちまち校庭全体を覆い尽くし、当然ながらに周囲の景色をも雪の景色一色に染め始めていた。
 その日、放課後の外での課外活動は総て中止になった。時間を持て余した生徒達は激しく降りしきり雪にも係わらず、その年初めて大雪に興奮し、はしゃぎながら各々が勝手に外に飛び出した。その中には無論、光男もいたし、雪子もいた。おおよそ十二三人の男女だった。初めはみんなが雪だるまを造ったり、雪を掛け合ったりして遊んでいたが、いつの間にかそれが男女に分かれての雪合戦となっていた。



          ----------------



          桂蓮様

          有難う御座います
          基本コンセプト 面白いですね
          人間 生まれ 人種 国籍 年齢
          関係ないようです 基本は
          考え方ですね 物事に対する考え方
          これが違ってはどの国の者であっても
          どの年代の者であっても
          どうする事も出来ません ましてや
          一瞬の間に世界が繋がる今の時代
          国籍 民族 人種に係わりなく
          思想を同じくする者同士が固く手を取り合って
          行く事が大切になるのではないでしょうか
          正に今 世界は一つの時代です
          どうぞこれからも貴重な御意見
          発信し続けて下さいませ
           感覚に訴えるものは強烈
          お言葉通りです 感覚で理解したものは
          真に自分の経験として身に付きます 
          書物などで得た知識などとは比較になりません
          書物などから得た知識は借り物です
          禅の世界では この体験という事を
          最も重視していますね
           それにしても桂蓮様に取っては他国
          この日本での御苦労は並大抵のものでは
          なかったのではないでしょうか しかし
          その分 今の 御主人様との仲睦まじく
          拝見出来る日々が得られたと思えば
          その御苦労も一つの慰めとなるのでは   
          ないでしょうか
           英語に付いての御説明 有難う御座います
          これで納得して映画を楽しむ事が出来ます