ささやかな誇り(2015.10.15日作)
テロで倒れた米国人
キング牧師はかつて言った
「わたしには夢がある」
わたしは今 牧師の言葉を真似て言う
「わたしには ささやかな誇りがある」
わたしは既に過半を生きた わたしの人生上で
自慢の出来るどんな仕事の成果も 業績も残していない
市井に ただ 人としての日常を生きて来た
それだけの人間だ その上 これからのわたしにも
期待の出来る社会的業績 成果はなにもない
平々凡々 それだけが取り柄のわたしの人生
その中で わたしに残された時間は少ない 日々
眼の前に見えて来るのは 人生の最終章 結末 今は
その準備に追われている それでも
わたしの心は穏やかだ 極めて安らかだ
満足感で充たされている これでよかった
幼い日 わたしが夢見た未来 希望の日々は
遂に わたしに訪れる事はなかった 夢は
夢のままに終わった それでも
わたしの心は満足感で充たされている
わたしの人生 誰のものでもない わたしの人生
わたしはその道を歩んで来た 市井に生きる人の中で
人が人として生きる道の その道筋に沿い
人の人としての本道を踏み外す事もなく
誰に後ろ指を差される事もなく
誰に非難される事もなく
路上の小石の一つの役割り 務めを担い 確実に
この人生の途上でその役割りを成し遂げ 全うして来た 今
わたしには 見るべき大きな夢はない
幼き日 若き日に夢見た夢 その夢は
路上の小石の日常を生きる途上で 遠く去り逝き
消えて行った すべては夢の中の夢 還り来る事はもうない
それでも
それでも わたしの心は充足感に満ちている
これでよかった これがわたしの人生 悔いのない
わたしの人生
誰をも哀しませる事もなく
誰をも苦しめる事もなく
誰とも争う事もなく
人を人として敬い 大きく傷付ける事もなく
生きて来た 今はただ 静かに
人の世の最終章 わたしに残された時間 日々を生き
やがて来る終末への支度 その準備を進めながら
この小さな人の道を歩み得た満足感の中で わたしは
わたしの人生に ささやかな誇りを抱くのだ
「わたしには ささやかな誇りがある」