遺す言葉

つぶやき日記

遺す言 (325 )川の流れの中の子猫(3) 他 地獄と極楽

2020-12-20 11:42:57 | 日記
          地獄と極楽(2020.11.25日作)

   日頃 人が口にする
   極楽とは 何か
   地獄とは 何か
   人が死に瀕した折りに浮かび来る
   過去 追憶 その過去が
   良き思いに満ちた 人生だったか
   極悪 陰険 非道の 人生だったか
   良き思いに満ちた人生は
   人が 死の床に横たわる その時
   心 安らかな追憶 思い出で
   最期の時を 満たしてくれるだろう
   それが極楽
   極悪 陰険 非道の 人生は
   苦渋 苦痛に満ちた追憶 思い出で 
   最期の時を塗り潰すだろう
   それが地獄
   極楽 地獄
   人の死後 その世界を言う  言葉
   ではない
   人が最期の時 死の床に横たわる その時に
   向き合う言葉 極楽 地獄
   人は死すれば 無になる 無 絶対的 無
   虚無の世界 闇 闇 闇
   久遠の闇 死の世界は
   虚無 真っ暗闇
   地獄も 極楽も
   そこには ない



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          川の流れの中の子猫(3)


「あなた、風邪の具合がはっきりしないんなら、一度、よく診て貰ったらいいんじゃない ? 」
 母は京子の陰にこもりがちな様子を見かねて言った。
 父は単純に思春期の娘達にありがちな心の病気なのだと思い込んでいる風で、自ら道化の役を演じて、京子の気持ちを引こうとしていた。
 京子はそんな母にも父にも深い嫌悪感を抱いた。特に父の道化の役を演じるその行為の奥に、離れてゆく恋人の心を繋ぎ止めようとする男の浅ましさにもに似た姿を見る思いがして、一層の不快感に囚われた。
 京子はこのころ、ようやく得た知識によって、幼かった自分に対する父の愛の中には何かしら尋常ではない、不純な動機が込められていたのではないか、と思うようになっていた。まだ何も分からない京子を力いっぱい抱き締め、執拗に髪をまさぐり、唇で唇を愛撫する父の行為の中に、本能的に不潔な匂いを感じ取った。そして、そんな時の父の恍惚感に酔った顔が眼に浮かぶと京子は居たたまれない気持ちになって、手当たり次第、自分の傍にある物を取り上げては幻の父の顔めがけて投げ付けた。
 今でも時折り京子は、自分を見詰める父の眼の中に何かしら、狂おしい影のようなものが走るのが見えるように思った。そして父と母、叔母の三人の関係の中にも京子は、自分には知り得ない、何処かしら異常性を感じさせるもののある事をも感じ取っていた。
 そんな京子は何時しか、自分でも意識しないままに、執拗に性の知識を探るような少女になっていた。日頃、自分の意識している事が世間並みの常識を外れた、自分独自の特有な思い込みなのか、あるいはやはり、自分の家の環境が異常性を帯びているものなのか、無論、まだ少女の京子に判断の下せる事ではなかった。
 京子は夜、布団の中入るとしきりに父と母の寝室での姿を想像するようになった。今夜も父と母は、たまたま京子が覗いたあの夜と同じようにしているのだろうか ? そしたてそれは、何処の家のお父さんやお母さんでもしている事なのだろうか ?
 だが、京子は、再び、父母の寝室を覗いてみようとはしなかった。あの夜眼にした様子を想像するだけで、嫌悪感とおぞましさだけが沸き立って来て、京子は苛立った。怒りと憎悪を抱き締めたまま京子は、布団の中で体を強ばらせ、怒りと憎悪に耐えていた。
 
 京子は何時の頃からか、母がしきりに自分の部屋へ入って来るようになった事に気付いた。
「京子ちゃん、あなた少し、窓を開けたらどう ? 何時も締め切ったままでは体に毒よ。しかも御丁寧にカーテンまで引いて。鬱陶しいでしょうに」
 母は京子の存在を無視したまま、自らカーテンを開けようとした。
 京子はそんな母に食って掛かった。
「ほっといてよ。わたしが好きでやってるんだから、余計なお節介をしないでよ」
「だって、体に毒じゃない」
 母もむきになって言い返した。
「毒だってなんだっていいじゃない。わたしの事なんだから」
「まあ、あなた、なんて言う事を言うの。よくもお母さんにそんなに事が言えるわね」
「お母さんが何よ ! あっちへ行ってよ。わたしはわたしで忙しいんだから」
 母は頬を紅潮させ、怒りに体を震わせたが、それ以上は言わずに、そのまま部屋を出て行った。
 母がこの時、京子の態度に何を感じ取ったのか、京子には知る術もなかった。日頃、穏やかな母だったが、それでもやはり京子の心の裡には、そんな母を許せない思いが渦巻いていた。そしてそれは総て母自身の責任なんだ。
 父は、そんな京子の前で、うろうろするばかりだった。恐らく、その出来事は母から聞かされていたに違いなかったが、その事に付いて父が何かを言う事はなかった。ただ、京子の前で物分りのいい父親を演じようとしているらしい事だけが明瞭に読み取れた。
 京子はその日以来、父母を拒否し続けた。自分の部屋には内側からも外側からも鍵を掛けた。当然、母の非難を受けた。京子はだが、譲らなかった。
「一つ家の中に居て、なぜ鍵などを掛けなければならないの。そんなに、お母さんやお父さんに見せたくないものがあるの ?」
 母は言った。
「わたしの事なんだから、どうでもいいでしょう」
 京子は冷たく言い放った。
 既にこの時、京子の心は父からも母からも離れていた。時折り姿を見せる叔母に対しては疎ましさだけを覚えて、避ける事ばかりを考えていた。そしてそれらの総ては、たった一度、偶然に眼にしたあの夜の父と母の姿が、その因をなしているのだという事も京子には分かっていた。分かっていながらも京子には、自分自身の心がどうにも出来なかった。無意識裡の父母への憎悪と嫌悪感だけが京子を動かしていた。
 このころ、京子はしきりに学校での仲の良い友達、樺島花江の家に遊びに行くようになっていた。小学校一年生の時からの友達で、最も気心の知れた友達だった。花江の母は昔、小学校の先生をしていたとい事だったが、今では県庁に勤める花江の父との家庭を守って専業主婦になっていた。大柄な、人当たりの柔らかな人で、京子が行くと何時でも暖かく迎えてくれた。
 一方、花江はほとんど京子の家には来なかった。京子の家があまりに広くて、いかにも旧家という家のたたずまいが花江には何か怖いように感じられて息苦しいと言った。その上、京子の母も花江の母のように明るくざっくばらんという感じではなくて、花江に取ってはそれもまた、気持ちの負担になるようだった。
 京子はそんな花江との二人の時間の中である時、何気ない様子で両親の関係について聞いてみた事があった。花江の家の家庭の図柄が自分の家の図柄と比べてどういうものなのか ?
 だが、花江の答えは京子を失望させるものでしかなかった。勿論、花江は両親の寝室など覗いた事はなくて、京子の質問に、
「ねえねえ、京子、覗いた事があるの ?」
 幼い性への好奇心と共に花江は秘密めかして言った。
「あるわけ無いでしょう」
 京子ははぐらかさざるを得なかった。



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          桂蓮様

          有り難う御座います
          御趣味の多彩な事にびっくりします
          それにしても、御無理をなさらない様に
          「難しさと易しさの境目」
          再読させて戴きました
          おっしゃる通りです 本当に理解している人は
          小難しい言葉を並べたりなどしません
          何よりも辞書を引きながらの英文との比較で 
          読みますので捗りません でも これが
          面白いのです
          追い追い いろいろ読ませて戴きます
          広いアメリカ 広ければ広いだけにいろいろ
          複雑な問題も起こってくるようですね
          日本も先週は雪の季節となって東北北陸などでは
          大雪に見舞われ 数多くの車が立ち往生など   
          しています この頃の季節は極端から極端に
          走るようです
          何時も有難う御座います



          takeziisan様

          有難う御座います
          今週もブログ 楽しませて戴きました
          立派な白菜 昨日スーパーではズシリと重い
          大きなものが九十八円で売っていました
          これでは農家さんも大変だなあ と思っていました
          消費する側に採っては有り難いのですが
          「トウミ」「トウシャバン」懐かしいです   
          わたくしも実際に使った事があります
          「会議は踊る」この映画はまだ観ていません
          観たい映画の一つなんですが
          「シーハイルの歌」初めて聞きました
          歌っている方の声もいいですね
          傑作揃い川柳 楽しいです 笑えます
          俳句にはない川柳の良いところですね
          今回もいろいろお写真 楽しませて戴きました
          若い頃の写真を見るのもいいのですが
          今更ながらに現在の老いを実感させられます
          有難う御座いました