遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(338) 小説 蜃気楼(5) 他 遠い宇宙 時は待たず

2021-03-28 13:20:39 | つぶやき
        遠い宇宙(2021.3.9日作)

 僕の前に道はない
 僕の後に道は出来る

 詩人が歌っていた

 それがどんな道であれ
 一度刻まれた
 道の消える事はない

 それでも時はいつか 
 忘却の遠い彼方へと
 すべてを運び去り 押し流し
 そして また明日も
 新たな道が 
 刻まれてゆく

 やがて それは
 何処へ行くのだろう

 人の世の
 果て 
 遠い宇宙


        時は待たず(2021.3.11日作)

 時は待たず
 遠い彼方へと
 今を運び
 記憶の奥の深い闇へ
 連れ去ってゆく

 この世のすべては
 夢幻 逃げ水 蜉蝣
 蜃気楼



          ---------------



          蜃気楼(5)


 明子の心は決まっていた。どのような時期を見計らって処置をすればいいのか、それだけが問題だった。今はまだ、秋物の準備に向けて忙しく、すぐにという訳にはゆかなかった。
 その準備や打ち合わせが終わったのは六月中旬だった。明子にも少しの時間の余裕が出来たが、その時になっても気持ちに変化はなかった。明子は意を決して再び、産婦人科医院の門をくぐった。
 柚木正信とは顔を合わせるような仕事はなかったが、それでも明子は個人的な関係の深まっている今を思って、警戒のために柚木には電話をした。
「ちょっと急な用事が出来て、実家へ行かなければならなくなったので」
 と言った。
「実家 ? 長いの ?」
 柚木は意表を突かれたかのように言った。
「ううん、そんなに長くはないと思うんだけど。母が腰を痛めたというものだから。それに、こちらの仕事も残っているし、帰ったらすぐにまた電話をします」
 明子はそう言って受話器を置いた。
 手術は格別なトラブルもなくて無事、済んだ。体調を思って会社も三日の休暇を取った。
 失われた命への哀惜はなかった。奇妙に醒めた感覚の中で、仕方がなかったのだ、とだけ思った。自分の未来へ向けて自分の行為を正当化していた。
 七月に入るとすぐに滝川裕子から秋物ブラウスのデザインが何点か送られて来た。
 製品化を前に翌々日には滝川事務所で最終的な話し合いが持たれた。
 明子は一週間ほど前に柚木には帰った事の電話をしていた。
「ああ、帰ったの ? 早かったね。お母さん、大丈夫 ?」
 柚木は何も疑わずに言った。
 だが、その時、明子の気持ちの中では何かが変わっていた。柚木に電話をする事自体が重荷に感じらていて、受話器の向こうに柚木の何時も通りの優しさに満ちた言葉遣いを聞いた時には、それがささくれ立ったようになっていた明子の神経に障った。
「ええ、何とか」
 と答えた声には、いつの間にか思わぬ刺々しさが込められていて、それに気付いた明子はハッとした。
「そう、それは良かった」
 柚木は言ったが、今は秋物発表会に向けての下準備に忙しいらしかった。
 滝川事務所での打ち合わせの日、明子の気持ちはやはり晴れなかった。柚木と顔を合わせる事に苦痛を感じた。彼の存在がなんとはなく重く圧し掛かって来て自分を縛るような感覚に囚われていて、出来れば彼の前に身をさらしたくないと思った。
 滝川事務所での打ち合わせは何時も通りに行われた。無論、滝川裕子は知らない事だったが、明子は常の自分と変わらないように努める事に苦労した。ともすれば知らず知らずに普段とは異なる柚木に対する冷ややかな態度に気付いて、慌てて身を正した。幸い、デパート側の責任者の立場にある柚木は、仕事そのものに気を取られていて明子の態度にまで気を配る余裕はないようだった。
 その日、午前十時に始まった打ち合わせは昼食時間を挟んで午後七時近くまで掛かった。明子は会社の上司と共に帰りのタクシーに乗った。
 柚木もまた、部下三人と別のタクシーに乗った。その時、柚木は何時ものように仕事上の話しのように明子に話し掛けて来て、今度の土曜日に会いたいと小声で言った。重要な仕事も終わっていて、明子の気持ちも多少は和んでいたが、出来れば暫くは二人だけでは会いたくないという気持ちは強かった。だが、その時の明子には咄嗟に、柚木のその誘いを断るだけの言葉が思い付かなかった。同じような事はこれまでにも幾度かあってその度に、明子はその言葉を受け入れて来ていた。
 約束の土曜日、明子は会社を出ると同僚と別れて一人で銀座へ向かった。
 四丁目へ来ると近くにある書店に入って二階に上がり、様々なファッション雑誌などを手に取り、柚木との約束の時間までを過ごした。
 約束当初はなんとなく重荷に感じていた、柚木と二人だけで会う事にもいつか気持ちの馴れと共に、次第に負担を感じなくなっていたようで、目新しいファッションの数々に触れているうちに明子は我を忘れ、ひと時、テフッァションデザイナーとしての自分の将来への夢だけを膨らませていた。
 明子が約束の時間に気付いて慌てて書店を出て、約束の場所まで行った時、柚木はまだ来ていなかった。五分程遅れて彼は来た。
「ごめん、ごめん。遅くなっちゃった」
 二人はそのまま、何時も通りの行動で五丁目の裏通りにあるレストランへ足を向けた。
 その夜、明子はレストランで柚木と向き合っている時にも、先日、滝川事務所で顔を合わせた時のような苛立ちを覚える事がなかった。食事の間の言葉の遣り取りにもしばしば笑顔がこぼれた。あとの、これまで通りの行動過程にも変化はなくて、あの、柚木の知らない出来事以来、初めてとなった夜にも明子は、今までにない感情の昂ぶりを見せてその行為の中に溺れていた。
 
 柚木正信との愛はそれ以降も続いていた。それは一つの習慣にしか過ぎない愛にも似ていた。明子が柚木に求めるものはそれ以外になかった。柚木と顔を合わせている時、明子は孤独を感じないで済んだ。
 柚木は明子の身体の変化には気付いていなかった。明子に取って、それは救いだった。明子は以前のままの明子でいる事が出来た。
 ファッションデザイナーへの夢、その夢はその間にも明子の胸の内で大きく膨らんでいた。将来は一人のデザイナーとして自立する。
 充実した日々が続いていた。このまま総てが順調に進んで行く。それを乱し、掻き廻すものは何もないように思えた。
 柚木が思い掛けない言葉を口にしたのは、そんな日々の中での事だった。顔を合わせた途端に柚木は心の動揺を抑えきれないように言った。
「おれ、転勤になっちゃった。札幌へ行かなければならないんだ」
 その声は沈んでいた。



          ----------------



          桂蓮様

          コメント 有難う御座います
          わたくしが何気なく書く わたくしの  
          真実の言葉が お読み戴く桂蓮様のお心の安らぎに
          少しでもお役に立つものであるなら
          光栄に存じます これからも良い
          御文章をお書き下さいませ
           只管打坐と体の覚醒 意識と肉体のアンバランス
          それが一つになるという事 つまり 「悟った」 と
          言う事ですね 禅の世界では それで始めて
          本物として認められるという事で バレーに
          於いても 意識と肉体が一つになるという事は
          その本質を会得した という事に
          なるのではないでしょうか 何事も意識して
          ああする こうする と考えながら行動して時は
          本物とは言えません 無意識の裡に出る行為 行動
           その時初めて 総てが本物となる 
          禅の世界の根本ですね
           女の妊娠は男にとっての軍隊入隊
          言い得て妙です 女性にとってはキャリアを選ぶか
          家庭の幸福を選ぶか 大きな問題だと思います
          その意味でも現在言われている男女間の格差是正
          大事な事ですね 家庭とキャリア 両立が理想です
          早くそんな世界が来るといいですね
           いつも有難う御座います


         takeziisan様

         有難う御座います
         今回もまた 楽しくブログ拝見させて戴きました
         いや 懐かしさがこもっています
         赤ふんどし アイスボンボン 何処の地方でも
         変わらないようです 不便で 遠く離れているようでも
         所詮 日本 小さな国なんですね 総てに共感出来ます
          日本海を詠った詩 いいですね 日本海の   
         荒々しさが見事に表現されています
         それにしても字がお上手です 
         字の下手なわたくしとしては羨ましい限りで
         字の上手な人は利口に見られると言います
         それだけでも得です しかし 文字と歌
         この二つは持って生まれたもので下手な人間が
         幾ら頑張っても限界があり 天性の持った才能には
         及び付きません
          畑の写真 今回も楽しく拝見させて戴きました
         痛 痛 思わず笑い出しました 実感です
          それにしても自然が豊富です
         羨ましい限りです 花々 鳥 いずれも楽しく
         拝見させて戴きました
          川柳 引き続き頑張って下さいませ
         もち草 わたくしの方ではよく
         「蚊やぶし」蚊を燻すのに使いました
         草もちは今でも好きです あの香りがいいですね
          ロボット犬 以前にも拝見させて戴いた記憶が
         有りますが 今回も笑いました 
         実によくできているものです
          コロナ 仰るとおりで 個人個人が
         気を付けるより仕方がないようです
          いつも有難う御座います
         


遺す言葉(337) 小説 蜃気楼(4) 他 雑感七題

2021-03-21 13:21:44 | つぶやき
          雑感七題(2020~2021.2月作)

 1 技術というものは総て 
   人間存在に立脚したものでなければならない
   人間存在とは
   人は生まれて死ぬ という事だ
   その存在の中で 如何に人が充ち足りて
   豊かな時を過ごせるか 総ての技術は
   その点に向けて奉仕されなければならない
   人間に苦痛を与えるもの それは技術の名に値しない
   単なる遊具にしか過ぎない 悪魔の遊具 悪魔の道具
 
 2 この世の中で至上のものは命 総てのものは
   命のために奉仕されなければならない

 3 人間に於ける 或いは人生に於ける
   唯一絶対的なものは死だ
   人間は日々 そこから反射される影を生きている
   それだけの存在にしか過ぎない

 4 この世は総て仮想である 真実はたった一つ
   命は滅び行く という事だ
   人はその命を歌い 踊り 喜び 嘆き 悲しみ 怒り 死んでゆく

 5 時はまぼろし
   現在 自分がここに居る
   それのみが真実
   未来も過去も 漂う存在

 6 人が生きる究極の目的は
   幸福を享受する事にある
   自分が幸福であり 他人が幸福である事
   それが人の生きる唯一 絶対的目的
   そのために日々 人の努力が為されている
   しかし 現実は余りに辛苦が多すぎる

 7 人はただ 実行するしかない
   結果が無に帰したとしても
   嘆く事はない
   死が総てを運び去ってくれるだろう
   死後の毀誉褒貶は死んだ人間には分からない
   分からない事に気を病むのは愚かな事だ
   どのように納得して 今 現在を生きるか
   真に大切な事はそれのみ



          ---------------



          蜃気楼(4)
               (訂正 前回文章の中 終わりに近い部分
                  銀座も五丁目近くへ来ると・・・と
                  ありますのは 「三丁目」の入力ミス
                  でしたので訂正しました)


 朝六時に起きて食事や化粧をしてから、養成所で使う物の点検などをしているうちに一時間という時間は瞬く間に過ぎていった。
 その後、アパートを出て会社に着くまでにも一時間と少しを要した。
 始業時間は八時半だった。午後五時半に仕事は終わった。それでも、そのまますぐに帰れる訳ではなかった。様々な雑事の整理に終われているうちに確実に三十分程は経過していた。滝川裕子の作品発表会などがあるその準備期間にはさらに遅れて、一時間や二時間が過ぎる事も稀ではなかった。午後七時半から始まる授業に遅れる事もしばしばあった。
 柚木正信とはあれからも滝川事務所などで度々、顔を合わせた。無論、仕事上からの事だったが、柚木はそんな時でも、これまでと格別、変わった態度を見せる事もなくて、淡々と仕事をこなしていた。明子に対する時でも以前のままの穏やかな柚木正信だった。のみならず時には、柚木の方から話題の映画や音楽会、演劇などに明子を誘う事もあった。明子もまた、以前の何事もなかった頃の柚木との関係を保てている事で、これ以上、柚木の気分を害したくないという思いも働いて、予定のない限りは柚木の誘いに応じた。そして、そんな関係はいつか、明子の心の内にも微妙な変化をもたらしていた。明子自身は格別自覚する事もないままに、明子に取っては東京へ出て来て以来初めてとなる男性との付き合いに、ボーイフレンドにも似たような感覚を柚木に対して抱くようになっていた。
 初めて二人で夜を明かしたのは明子の部屋でだった。その時、明子は自分の方から柚木を誘っていた。
 その年の夏、明子は思い掛けなく取れた長い休暇の、十日間の夏休みを下関にある実家に戻って過ごした。格別に誇れる物もない、小さな漁村にある実家では久し振りに、昔の自分に戻って過ごす事が出来たがそんな満足感の裏にある、なんとはない物足りなさを明子はその時、自分の心の内に感じ取っていた。始めはそれがなんであるのかも分からないままに過ごしていたが、数日経つうちに次第にそれが、柚木に会えない事に対する物足りなさだ、と実感するようになっていた。
 明子自身、気付いていなかった事だった。東京を離れてみて初めて知る、自分の心の内に占める柚木正信の存在の大きさだった。
 明子は東京に帰ると、下関土産を口実に、自分の方から柚木に電話をして翌日、会った。
 二人で夜を過ごしたのは、その四日後だった。明子は人気映画の入場券が手に入ったので、と言って柚木を誘った。休日前の夜で、映画館を出た後、日比谷の映画館近くにあるバーに入ったその後、何故とはなしに生じて来る気持ちの昂ぶりと共に、投げ遣り的な気分のままに柚木を誘っていた。
 明子の気持ちはその夜を境に急速に柚木正信に傾いていった。柚木と過ごす時間が明子の気持ちの中では次第に大切な物としての大きな比重を占めるようになっていた。ーー半年と少しの間の明子に取っては幸福な期間だった。
 年を越した翌年四月、明子はデザイナー養成所の基礎学科を無事終わって、実技の学科へ進む事になった。些かの退屈感が無かったとは言えない基礎学科とは違って、実技の学科には今までにない創作する事の面白さが加わった。
 滝川裕子は教室に顔を見せる事はほとんどなかったが、仕事の場で顔を合わせると何時も、
「どう、養成所の方は飽きないで行っている ?」 
 と、気さくに声を掛けてくれた。
「はい、どうにか」
 明子はその度に答えていたが、滝川裕子は
「もう、実技の方に入ったんだって ?」
 と、誰に聞いたのか気遣ってくれた。
「はい、四月から」
 明子は答えた。
「そう。それは良かった。もし、何か分からない事があったら、言いなさいよ。相談に乗るから」
 滝川裕子は言った。その言葉には、明子をいとおしむような響きさえ込められていた。
 そんな明子が体調の変化に気付いたのは、五月に入ってからだった。月々のモノが無い事に気付いて、不安を覚えた。翌月に期待を掛けたが、事情はやはり変わらなかった。その時になって初めて、医師の診察を受けなければ、との思いに囚われていた。
 柚木正信に打ち明ける事は考えてもみなかった。明子には、ただ、この事が、自分一人だけで引き受けなければならない事のように思えて、相談する気にはなれなかった。
 柚木がなんと言うかは分からなかったが、それでも明子は、もし、この事を打ち明ければ、自分の人生が決定的に縛られてしまうという気がして、怯えた。デザイナー養成所で、ようやく物を創り出す事の面白さに目覚めた今となっては、まだ自由でいたい、という思いだけが心の中で強く意識された。
「妊娠ですね」
 明子の直感は当っていた。医師は言った。
 その日は妊婦が守らなければならない細かな注意だけを聞いて医院を後にした。



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          桂蓮様

          コメント 有難う御座いいます
          風邪を引いたとの事 この時期 
          どうぞお気を付け下さいませ
          わたくしへのお気遣い 心より感謝
          御礼申し上げます
         
          今回の「常に在るもの無いもの」
          良い御文章ですね 心に響いて来ます
          今の時代 純粋な気持ちで生きる事は
          なかなか困難な事です あらゆる物が
          満ち溢れた世界 心は揺れ動きます 欲望が        
          刺激されます それを納得した上で 少しでも
          人間として 綺麗な心で生きてゆく そう
          自分に言い聞かせる それで良いのではないでしょうか
          人間 所詮は汚点のない人間など 存在し得ません
          秋が来て やがて春が来る 季節が巡るように
          人間の心も自然に動いてゆく その動く心を受け入れ
          今を精一杯生きる 禅の世界では「有るけど無い 無    
          いけど有る」と言いますよね 
          何にもこだわらない「無」の心     
          総てを有るがままに受け入れ その心に従い 
          自分なりに自分の心を生きる 純粋な心で生きる事は
          なかなか出来なくても せめて人として人の世界に
          恥じない生き方が出来れば良いのではないでしょうか 
           読者数が減った 
          大した問題ではありません 御立派なものです
          去る者は追わず 百人の不完全な読者より
          真に自分の文章を理解してくれる十人の読者
          その方がはるかに貴重です ただ良い文章を書く
          それさえ心掛けていれば良いのではないでしょうか
          わたくしは何時も楽しく拝見させて戴いております
          ですから再読も可能なのです
           有難う御座いました



          takeziisan様

          有難う御座います
          今回もブログ 楽しく拝見させて戴きました
          五時間の農作業 お見事です
          畑の写真 拝見しているだけで楽しくなります
          実際にしている御本人には御苦労な事でしょうが
          花の写真 鳥の写真 今回も眼の保養に
          特にコジュケイ初めて見ました 
          名前だけは知っていたのですが 綺麗な鳥です 
          そうですね 雉を思わせますね
          難解書物睡眠薬 仰るとおり
          秋もいいですね 気分満載
          近寄り難い先生 わたくしの方にも居ました
          小柄で やはり眼鏡を掛けた
          安曇野 一時 ブームになった事がありますね
          わたくしは行った事が無いので
          お写真 興味深く拝見させて戴きました
          あの何もない自然がいいですね
          信州というとちょうど日本の真ん中という感じで
          ここを舞台に様々な芸術作品が生まれていますし
          わたくしの気持ちの中では憧れにも近いものが
          あります
            何時もお眼をお通し下さる事に感謝と
            御礼を申し上げます
          
          
          
  
 
 
 
 
   
      

遺す言葉(336) 小説 蜃気楼(3) 他 この大騒ぎ ワクチン

2021-03-14 12:41:50 | つぶやき
          この大騒ぎ ワクチン(2021.3.3日作)

 ワクチンが来ない 足りないと大騒ぎ
 輸入に頼る 頼りなさ
 科学技術立国を標榜する この国 現在
 日本の姿 いったい何故 ?
 製薬会社の能力 努力不足 ?
 科学者不在 ?
 科学(化学)分野の最高賞
 ノーベル賞 その受賞者を 近年
 数多く排出する この国 日本
 その国 日本で 人材不足 ?
 製薬会社の能力不足 ?
 考えられない
 コロナ発症 一年 その間
 この国 日本は 何をやって来た ?
 この国の政治 政治家は いったい
 何をやって来た ?
 他国で実現 製品化している ワクチン
 コロナワクチン それが何故
 この国 日本 科学技術立国を標榜する 
 この国 日本で出来なかったのか ?
 その気にならなかった ?
 或いは なれなかった ?
 その気になれない 何かがあったのか ?
 その気になれない 何かが この国 日本 の
 何処かに潜んでいるのか ?
 隠れているのか ?
 政治 政府 国会は いったい何故 その対策を
 実行せず 漫然と 見過して来たのか ?
 今 この国 日本
 日本国内に於いては 総てが
 衰退の 方向 方角へ と 傾斜している
 かつての 次の世紀は日本の世紀 と 言われた
 この国 日本 その面影はいったい 
 何処へ消えてしまったのか ?
 何処へ行ってしまったのか ?
 何処で道を間違え 
 踏み外してしまったのか ?
 政治の貧困 それが原因 ?
 多分 そうに違いない
 政治の世界 この国を一つの国家 一つの国として
 統治 統括する 政治 政府 国会 その関係者達
 その者達の 力の無さ 能力不足 力量不足 その現実が
 現在 この国 日本を覆っていて
 総ての機能を停滞 麻痺させる それが 真実 多分
 そうに違いない 政治の世界 只今現在
 その世界を見渡し 見詰めてみても 誰一人
 この国 日本を統治 統括する 最高責任者
 総理の器 総理に 相応しい と思われる力を持った 人物 人間は
 見当たらない 皆無の状態 この国 日本 日本の
 これから先 未来へ向けての理念
 理想を語れる人間 人物は 見当たらない この
 悲惨 悲しい現実 これが今現在 この国 日本の置かれた状況
 日本の姿 多分 恐らく この現実 この状況が
 コロナワクチン その 開発現場 製造現場 にも
 影を落としている に 違いない 外国製品 
 輸入に頼り 遅い 足りない 大騒ぎを
 している現実 そこに 繋がるに違いない
 科学技術立国 日本 この悲しい姿
 これが日本の真実 日本の姿



          ----------------



          蜃気楼(4)


 柚木はすぐに仲間の方へ戻っ行って会話に加わった。明子が返事をするいとまもなかった。

 明子は柚木の誘いが強引だったとは思わなかった。返事も聞かずに柚木は傍を離れていってしまったが、それも、あの場合、仕方がなかったのか、とも考えた。
 それでも、明子は迷った。柚木の言葉が何を意味するのか、おぼろげながらに胸の内には予感するものがあった。
 明子の心にはそれでもまだ、柚木に対しての特別な感情は芽生えていなかった。柚木が実際には何を考えているのかは分からない事ではあったが、出来るならこの場合、柚木の前から逃げたいという思いが強かった。滝川裕子デザイナー養成所での勉強も順調に進んでいて、ようやく、面白さも分かり掛けて来ている時でもあった。
 明子は本社へ帰ってからも柚木の言葉に対して悩み続けた。もし、このままあの言葉を無視して、柚木が待つ場所へ行かなかったら ?
 そう考えるとだが、心が揺れた。柚木とはこれから以降も滝川裕子の仕事を通して、幾度も幾度も顔を合わせなければならなかった。その度に気まずい思いをしなければならないのかと考えると気持ちが滅入った。自分の申し出を無視された柚木が、今まで通りに快く明子の仕事に手を貸してくれるとは思えなかった。
 明子はようやく決心すると兎に角、今回は、会うだけは会ってみようと考えた。
 会社を出たのは午後六時過ぎだった。約束の時間までにはまだ、暫く間があった。それまでの時間を近くにある、M書店へ行って過ごす事にした。そうする事で今回、柚木と会う事が自分に取っては特別な事ではなくて、日常生活の中の一環にしか過ぎない事なのだと納得させたい思いだった。
 日本橋を渡り、M書店へ行って二階に上がり、広い店内でファッション関係の書籍の並んだ前であれこれ、興味を引かれるままに手に取っては開いて様々なページに取り止めも無く視線を落としているうちに、時間は瞬く間に過ぎていた。気が付いた時には、十分程しか残っていなかった。
 明子は大急ぎで階段を降り、M書店を出ると日本橋へ向かった。
 既に薄闇の訪れていた街には華やかなネオンサインの光りがあった。
 明子が日本橋のたもとに辿り着いた時には約束の時間を少し過ぎていた。
「御免なさい、遅くなっちゃって。少し時間が早かったので、Mへ行っていたら、あっという間に時間が過ぎてしまって、急いで来たんですけど」
 柚木は橋の欄干に寄りかかって川面を見ながら煙草を吹かしていた。
「ううん、僕もほんの少し前に来たばかりで、五島さんの姿がみえなかったから、煙草を取り出して火を付けたところなんですよ」
 と、穏やかな声で言った。
 柚木は手にしていた煙草を橋の欄干に押し付けて火を消すと、
「滝川先生の所では御免なさい。驚いたでしょう、突然の事で」
 と、言った。
「ええ、ちょっと」
 明子も拘りなく言った。
「食事は済みました ?」
 柚木はその場で言った。
「いえ、まだ」
「じゃあ、その辺で何か食べましょう」
 柚木が言うと二人はそのまま銀座の方角に向かって歩き出していた。
「この辺は昼間は賑やかでも、退社時間が過ぎると途端に寂しくなっちゃうんですね」
 明子は言った。
 いつもの見馴れた光景だった。
「大きなビルばかりだから、働く人達が帰ってしまうと急に静かになっちゃって」
 と、柚木も言った。
 二人は先程、明子が時間を潰したM書店の前を過ぎ、向こう側のT百貨店の前も通り越して、銀座四丁目の方角へ歩いた。
 銀座も三丁目近くへ来ると街も次第に人々の姿で賑やかになって来た。
 二人は一軒の洋食のメニューの並んだレストランに入った。白いクロスの掛かったテーブルに向き合って腰を降ろすと柚木は上着のポケットの中を探り、煙草を取り出した。
 店員が注文を取りに来た。
 二人はそれぞれに自分の好みを頼んだ。
 店員が去ると柚木は煙草を唇に挟んで、ライターを取り出し、火を付けた。
 明子は改まってこうして二人で向き合うと、何時だったかの夜のようには寛いだ気持にはなれなかった。なんとなく堅苦しい気分が拭えなかった。
 柚木に取ってもそれは同じらしかった。店内の天井辺りに視線を向けると吸い込んだ煙草の煙りを大きく吐き出した。
 店内には小さな音量で音楽が流れていた。それが何なのかは明子には分からなかった。客の姿もそれなりに店内を満たしていたが、雰囲気は至って静かだった。その静かな中で柚木が何度か煙草を口に運んだ後でおもむろに言った。
「実は今日、お会いして貰ったのは、五島さんにお願いしたい事があっての事なんですよ」
 そう言った柚木の眼差しが何時にも増して、真剣さと緊張の色に彩られているのが明子にも分かった。
 その雰囲気を受けて明子もまた一層の緊張感に囚われて、なんと答えればいいのか分からなかった。 咄嗟の言葉が出なかった。
 明子が迷いの中にいるうちに柚木は言葉を重ねた。
「お願いしたいって言うのは、実は、五島さんに、僕との結婚を前提に付き合って貰えませんか、って言う事なんです。僕自身、よく考えての事なんだけど、僕もそろそろ家庭を考えてもいい年頃だと思っているので」
 明子は自分の予感に狂いはなかった、と思った。だが、明子に取ってはその話しは、素直にそのまま、「はい、そうですか」と、言えるものではなかった。明子には明子の立場も、考えもある。
「でも」
 明子はためらった後に言った。
「わたし、滝川先生の養成所へ入ったばかりで、まだちょっと、結婚までは考えられないので」
 柚木にもそれは分かっていたようだった。
「ええ、それは分かります。だから、すぐにっていう事ではなくて、ただ、それを前提に付き合って貰えませんか、という事なんです」
 柚木は落ち着いた声で言った。
 明子には返事の仕様がなかった。言葉に詰まっていた。
 柚木は続けて言った。
「五島さんが滝川先生の養成所に入ったと聞いた時、何故だか僕は、何か大切なものが自分の手の中からこぼれ落ちていってしまうような気がしたんです。何故だろうと思ったら、五島さんの存在が僕の中で大きな位置を占めていて、ああ、そういう事かって始めて納得したんです。それで、せめて、五島さんに僕の気持ちだけでも、と思った訳なんです」
 明子にはやはり、答える言葉が咄嗟には見つからなかった。
 明子が黙ったままでいるのを見て柚木は言った。
「五島さん、僕が嫌いですか ?」
「いえ、そんな事」
 明子は慌てて言った。
 それは事実だった。柚木が嫌いな訳ではなかった。いつも快活にてきぱきと仕事をこなす柚木を賞賛の眼差しで見ている事もあった。
「じゃあ、約束だけでもしてくれませんか。勿論、今すぐに結婚だなんていう事ではなくて」
 柚木が熱意を込めているのが分かった。
 だが、明子の気持ちはそれでもまだ、動かなかった。自分の心のままに凍り付いていた。それを意識すると明子は、途端に自分自身を取り戻して、総てをはっきりさせて置きたいと思った。
「柚木さんがそう、仰って下さるのは嬉しいんですけど、わたし今、本当にデザインの勉強をしてみたいって思っているので、とても結婚なんて約束は出来そうにもないんです」
 そう言うと明子は急に自分の気持ちの軽くなった事を感じ取っていた。これでよかったのだ、とその気持ちと共に思った。
「そうですか」
 柚木は言った。落ち着いた言い方だった。そこには恨みの色も批難の色も 含まれてはいなかった。
「分かりました。人にはそれぞれ進みたい道もあるし、希望もあるので、無理な事は言えませんから。でも、今日の事はなしにして、これからも今まで通りに会って貰えると嬉しいんですけど」
 柚木は言った。
「ええ、それは勿論。わたしの方からお願いしたいです」
 明子は言った。
 その夜、二人は食事の後、柚木の馴染みのバーへ行って少しの時間を過ごした後、別れた。

            二

 明子の毎日は時間に追われる毎日だった。



          ------------------



          takeziisan様

          コメント 有難う御座いました
          下手な作品・・・作品とも言えない代物を
          そう仰って戴きますと励みになります
          ただ、自分の頭の中 胸の裡にあるものを 
          少しでも形にして残せたらという思いで
          書いているだけの者です いつも有難う御座います
           今回もブログ 楽しく拝見させてい戴きました
          普段 忙しなく生きているものですから
          このひと時がとても楽しい時間に思えます
           美しい写真 近頃の川柳掲載 いいですね
          今回も思わず笑い出したりしています
           お母様からのお手紙 しみじみ拝見させて戴きました
          封筒の束 お母様のお写真 グレダーマンより
          感動的です 昔の田舎の母親そんな感じが
          よく出ています そしてそんなお姿がとても
          美しいものに見えます 上辺だけの美しさではない
          本当の美しさ そういうものはまだまだ
          地方には残っているのではないでしょうか
           方言 貴重です 是非 収集して置いて下さい
          「へっつい」はわたくしの方にもありました
          「にご」はないですね
         「朝はんまえ」この言葉も始めてです
         朝飯前は当然の事ですが
          畑の土 そんなに硬くなるものですか
         驚きました それにしてもお羨ましい生活です
         我々の年代になり それだけの仕事が出来る
         という事は恵まれた事ではないのでしょうか
         どうぞ お体を大切により良い毎日をお過ごし
         下さいますよう
          有難う御座いました
       


           
      
 

      
 

 
 
 
 



 
          
 
  

遺す言葉(335) 小説 蜃気楼(2) 他 ミャンマー愚者達 この愚行 ほか2篇

2021-03-07 12:00:22 | つぶやき
          ミャンマー愚者達 この愚行(2021.3.2日作)
 
 国民に銃を向ける
 この愚かさ
 自分達 自分が総て と
 考える 者達 この者達の 愚行 
 軍も 国家も 国民 在ってのもの
 国民無くして 存在し得ない
 それに気付かぬ 愚か者
 愚者達の 思慮の無さ 浅薄さは 嘲笑され
 批難 糾弾されて 然るべき 当然
 言い訳 講釈など 
 通用するものではない
 人の命を奪う どんな言い訳
 どんな理屈も 空念仏 

         ---------

 人の心を引き付けるには
 力より 心
 心の方が はるかに
 大きな効果を 持ち得る
 力に頼る権力者は 愚人 いつかは
 陽炎のように消えてゆく
 心は 眼に見えずとも
 人の身体に浸み込み 
 残る

         ーーーーーーーーーー

 言葉は心
 物事に対する 真の感情
 真実の思いを持ち得ない人の言葉は
 文法的にどんなに整い 美しく見えても
 人の心の真底 真実に 触れる力は
 持ち得ない
 言葉は心
 言葉は人 人を表す  



          ---------------



          蜃気楼(2)

「先生、わたしもデザインを勉強してみたいんですけど、出来ますかしら ?」
 仕事の合間の雑談の中で、明子は冗談めかして聞いてみた。
「ええ、出来るわよ。あなた、少し勉強してみたらどう ? なかなかいいセンスをしてるから。わたしの養成所に通ってやってみなさいよ」
 滝川裕子の口振りには、まんざらお世辞ばかりとは言えない力の入った響きがこもっていた。
「でも、わたしなんか、ホームドレス程度の物しか創れないんじゃないかしら」
 事実、明子には自信がなかった。
「そんな事はないわよ。やってみなさいよ。分からない事があったら、力になってあげるから」
 滝川裕子はなおも熱のこもった口調で言った。
「来年、四月に新学期が始まるので、やってみなさいよ」
 度重なる滝川裕子の勧めに明子もいつか、曖昧だった気持ちが動いていた。
 柚木正信とは、滝川裕子の新作発表会のMデパートの会場で久し振りに顔を合わせた。明子が食事をした夜の礼を言うと柚木は、
「こちらこそ、引き止めちゃったりして御免なさい」
 と言った。
 思わせ振りのまったくない、好感の持てる言い方だった。
 四月、新学期を迎えると明子は滝川裕子デザイナー養成所の夜間部に入学した。下関の実家で漁師をしている年老いた両親や、既に嫁いでいる二人の姉達に負担を掛ける訳にはゆかなくて、昼間は今まで通りに働きながらの入学だった。
 養成所の授業は二年の基礎学科と、更に二年の専科があった。専科に進むかどうかは自身の判断に任されていた。明子は取り敢えず、基礎学科をとの思いだった。専科へ進むかどうかはその後に考える積りでいた。
 滝川裕子の下での仕事は今まで通りに続いていた。柚木正信ともその場でしばしば顔を合わせた。別段、今までと変わった事はなかったが、柚木は誰に聞いたのか、
「滝川先生の養成所に入ったんだって ?」
 と言った。
「ええ、四月から」
 明子は単純に答えた。
「デザイナーになるの ?」
「ううん、そこまでは考えていないけど、滝川先生のお仕事を見ていて、なんとなく面白そうだったので」
 明子の本心だった。
 柚木は面白そうに笑顔を浮かべたが、
「そんな事をしているより、早く結婚して、幸せな家庭をつくった方がいいんじゃないの」
 と、冗談めかして言った。
 そのくだけた口調と共に明子はその言葉を、柚木の単なる軽い冗談だと受け止めていた。
 その翌日だった。その日、明子はMデパートの会場へ出向いた滝川裕子のお供をする事もなく、滝川事務所にこもったまま、こまごまとした仕事に追われていた。必然的に柚木と顔を合わせる機会もなくて、昨日の柚木の言葉を思い出す事もなかった。だが、仕事が終わって本社へ帰った時、柚木からの電話が掛かって来た。
「今日、会場で会えるかと思ってたんだけど、五島さんが見えなかったんで」
 と、柚木は言った。
「ええ、滝川事務所にここもりっきりだったもので」
 明子は言った。
「今夜、ちよっと会って貰えませんか ?」
 柚木は言った。その口調には、何処となく改まったようにも思える雰囲気があった。そして明子は何故かその時、敏感にその雰囲気を感じ取っていた。昨日の柚木の言葉が咄嗟に思い出された。 " 早く結婚して、幸せな家庭を作った方がいいんじゃないの "  
 明子は速まる胸の鼓動と共に、ためらい、悩みながら、煮え切らない気持ちのままに、
「でも、今日、これからお友達の誕生パーティーに行かなければならないので」
 と、咄嗟に思い付きの言葉を言った。
「誕生パーティー?」
 と柚木は言った。
「ええ」
「ああ、そうーーー」
 柚木は言った。明らかに気落ちした様子が感じられた。
「御免なさい」
 と明子は言った。
「いえ、構わないけど、明日は・・・・どうですか ?」
 柚木は未練が残るようだった。
「でも、養成所の授業もあるしーー」
 明子も気持ちの迷いを表すように言った。
「ああ、そうか。じゃあ、また、今度お会いした時に」
 と、柚木はようやく気持ちに区切りを付けたように言った。
 その声が終わるのと共に明子は受話器を置いた。
 胸の鼓動はなお、収まらなかった。柚木の口調から、柚木の口にする事が何か、自分の身に係わる大きな事のように思えてならなかった。そして気持ちの中には、自ずとそれを拒否したい思いが動いていた。

 Mデパートでの新作発表会に向けての最終的な打ち合わせが、柚木からの電話があった一週間後に行われた。
 その席は三塚レーヨン、Mデパート、滝川裕子側の三者揃っての会議の場だった。
 明子も上司と共に、滝川事務所に出向いた。
 Mデパートからも主任の柚木正信を始め、三名が出席した。
 明子は一度、資料を取りに本社へタクシーで戻った。
 柚木正信はその席では、個人的な事への素振りは一切、面に出さなかった。冷静に何時もどおりに仕事を進めた。その態度は誰の眼にも信頼に値する落ち着きと共に好感を持って迎えられた。和やかな雰囲気がその場に漲った。
 滝川裕子のアシスタント的役柄の明子は、そんな柚木とは自ずと距離を置く立場に自身の身を処していて、距離的にも接近しないように心掛けていた。心の中ではやはり、電話での柚木の言葉に拘るものがあって、すっきりと払拭されない気持ちと共に柚木に近付くのが怖いようにも思えた。
 会議は午後七時近くになって終わった。明子と上司は、Mデパート側の三人と一緒に滝川事務所を後にした。
 事務所を出て、エレベーターまでの廊下を歩いている時、発表会のあれこれに付いてしきりに言葉を交わしている上司とMデパートの二人に、ふと、距離を置くようにして柚木が後ろを歩いていた明子に近付いて来た。
「八時に、日本橋のたもとで待っているので来て下さい」
 と言った。それだけだった。
 



        -----------------

        桂蓮様

        いつも有難う御座います
        バレーのお話し 楽しく読ませて戴きました
        その様に余裕を持って御自分を観察出来るーー
        貴重な事ですね ともすれば誰もが
        自身には冷静に向き合う事の出来ないものですが
        自分を笑い飛ばす 心に余裕のある証拠です
         デザインも御勉強なさっていらっしゃったのですか
        多彩な才能に敬服するばかりです
         わたくしの書いた物の中の明子の話し
        多分 明子も初対面だったり、余り
        付き合いの無い人でしたら食事に誘われても
        行かなかったのでは と思います ですが 柚木とは
        仕事の関係で何度も顔を合わせていますし その日も
        ほんの少し前までは一緒に仕事をしていた関係で
        格別の違和感もなかったのではないでしょうか
        いずれにしても 気心の知れた仕事仲間という感覚で
        男と女という関係はなかったような気がします
         自閉症の話し 再読させて戴きました
        人との付き合い 心の問題 難しいですね でも
        誰もが どんな人もがみな それぞれに個性を持った
        一人の人間と認識して尊重しあえば この世の中も 
        もっと住みよくなるのかも知れません
        実際 今の世の中 嫌な事ばかりが多すぎます
        差別 貧困 暴力 心ある人は大方
        自分の殻の中に閉じこもってしまいたく
        なるのではないでしょうか 自分だけの世界を
        大切にしてゆきたいという思いに駆られるのも
        無理のない事かも知れません それにしても
        今の桂蓮様は御幸福そうに拝見出来 お羨ましい
        限りです 
         有難う御座いました 


        takeziisan様

        有難う御座います
        今回も美しいお写真の数々 楽しませて戴きました
        それにしても此方から比べると だいぶ自然が
        豊かなような気がします 野鳥の種類も多いようです
        カワセミは昔 わたくしの居た田舎でも
        滅多に見る事が出来なくて 土手の一隅にカワセミの
        巣があるという噂がたって みんながその巣を
        ほじくりまわし 駄目にしてしまった事があります
        当時もカワセミは見ていません 美しい鳥で
        憧れの鳥だったのですが
        「ビルマの竪琴」やはり安井章二です それにしても
        山村の小さな村と御謙遜ですが わたくしなどの居た  
        所よりはるかに開けていたのではないですか
        わたくしなど1里もある町の映画館でたった一度だけ
        日本が講和条約を結んだ時代にその記録映画が上映され
        担任の先生に連れられて観に行った それだけです
        あとは村の小学校の校庭などで時々 来る映画を観た
        だけでした 
         方言 是非 書き留めておいて下さい
        一時は 方言 方言とバカにしたように言ったものですが
        方言の美しさ それが失われてしまう事は非常に
        勿体無い話しです 方言は是非 守って戴きたいものです
        方言は美しい言葉です
         川柳 お見事です 是非 これからも掲載 お願い
        致します
        皮肉を言うには川柳が一番 是非 辛らつな作品を
        お願い致します
         最も 世の中にはその皮肉に気付かない「鈍」も
        数多くいますが
         いつも愚作にお眼をお通し戴き 有難う御座います