夏に寄せて・・・蜃気楼 月下美人
蜃気楼 (2010.9.23日作)
おそらく 五歳か 六歳のわたしがいた
真夏の太陽は 一片の雲にさえぎられる事もなく 金色の光りで
青く透明な海を 砕ける波を 輝かせていた 白い入道雲 を
湧き立たせた沖合い 彼方から吹いて来る風が
皮膚に絡みつく潮の匂いを感じさせながら 八月の陽光に
焼かれた体の熱気を 心地よく拭ってくれていた 広く白い砂浜の
あちこちに作られた ヨシズ張りの小屋の中では 縞模様の日陰を楽しみながら
水着姿の人たちがラムネを飲み サイダーを飲み
串に刺した御手洗団子を口にしていた わたしを連れた母は
まだ 若かった 母と一緒の それぞれに子供たちを連れた
母の友だちも また 若かった すべてが穏やかで幸福感に満ちた
夏の一日 人びとの笑いさざめく笑顔が輝き 晴れやかだった
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あれから幾十年もが過ぎた わたしは年老い 母は逝った
父も逝った わたしが知る まだ若かった母の友だちの
消息を知る事は出来ない すべてが穏やかで 幸せに満ちていた
夏の日の一日
あれは真夏の蜃気楼 ?
月下美人(2018.7.10日作)
月下美人は艶な花
香りと姿で 魅惑する
だけど おまえは さびしい花
夜更けにひとり
そっと咲く
( この猛暑のせいか今年は八月に咲く下美人が
七月に咲いてしまいました )