遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(402) 小説 面影の人 他 雑感六題

2022-06-26 12:12:23 | つぶやき
          雑感六題(2022.6月作)


 Ⅰ 人が人である限り 
   総て 自分の行為は
   自分に還って来る
   人助け と 思ってした事も
   結局は 自分の為の行為
   その事によって得られる
   満足感 充足感 
   結果 自身が得た心の喜び
   もたらされる 幸せな思い
   それは 自身の行為の結果による
   自分に与えられた恵み に
   他ならない
 
 2 流れ星 今年も知己の 多く逝き
 
 3 野仏の 四季ごと変わる 胸飾り

 4 人は自身の為に生きなければ
   この世を生きてはゆけない 必ず
   破綻が来る
   自身を生きるには
   他人を必要とする
   他人を蔑(ないがし)ろにして
   自分は生きられない

 5 むくつけき 青年 一枝の
   ムラサキシキブ
   持ちて来る

 6 わが想い 泉のように
   湧き出でて
   君への愛の この深き海





         ーーーーーーーーーーーーーーーー




         面影の人(1)


          一

 三上英一は小学校入学から中学校卒業までの九年間を、九十九里浜に近い農村の叔父の家で過ごした。三上の父は昭和十九年に比島の戦場で亡くなっていた。母も、叔父の家に疎開した翌年、多くの気苦労が重なった事が原因で体を悪くし、呆気なく亡くなっていた。三上に兄妹はいなかった。
 叔父の家での生活は決して、不幸なものではなかった。叔父夫婦の子供達、一人の姉と二人の弟達の姉弟三人と仲良く育てられて、両親のいない孤独を噛みしめる事もなかった。中学を卒業すると高校にも進学せず、東京に出たのは、ひとえに東京への憧れからだった。叔父は地元の高校への進学を勧めてくれた。優しい叔父だった。
 その叔父が亡くなって十三回忌を迎えた。三上が東京へ出る時、そこから汽車に乗った田舎町の小さな駅に降り立ったのは、二十何年振りかの事であった。叔父の葬儀や七回忌の時にも叔父の家には来ていたが、もっぱら車に頼るだけで、この小さな田舎駅を利用する事はまったくなかった。
 その日、法事も終わって、今では実家を継いでいる叔父の長男の義夫に車で送られ、駅に着いたのは午後三時過ぎだった。 三上が東京へ出た時とほとんど佇まいの変わらない小さな駅には、昔どおりに広場の片隅に大きな銀杏の樹があって、しきりに黄色い葉を落としていた。
 義夫の車が帰り、待合室に入って列車の時刻表を見ると、上り列車の到着時間までには、まだ、二十分程の間があった。三上は所在無いままに待合室を出ると、駅周辺の昔の記憶そのままに残る町の景色を眺めたりしていた。時間も過ぎて、列車の到着時刻まで五分ぐらいになると駅へ戻った。
 先程は人の気配もなかった待合室には、四人の人影があった。改札口は開いていた。何人かがホームに出ていた。三上自身も切符を求め、改札口へ足を向けてそこを通り抜けようとして、思わず足を止めた。不意に三上の心を捉えて来るものがあった。三上は無意識のうちにそのものに視線を向けて、瞬間、自分の眼を疑った。小さな待合室の片隅に菜穂子が立っていた・・・。
 不思議な事だった。菜穂子の記憶は " あの時 "から三上がこれまで生きて来た三十数年の時間の中に埋(うず)もれ、現在の日常の中からは失われているものだった。その菜穂子の面影が一瞬のうちに、鮮やかに一人の女性の上に甦っていた。
 女性は不安気に何かを待っていた。制服を着た、高校生も上の学年かと思われた。
 三上は意識しないままに、ひたすら女性を見詰めていた。
 何かを不安気に待っている女性は三上の視線には気付かなかった。
 やがて、待つものが見えたのか、女性の顔に安堵の色が浮んだ。
 その視線に誘われて三上も女性の視線の先に眼を向けると、急かれるように待合室に向かって来る、中年過ぎの女性の姿が駅前広場に見えた。
 若い女性は急いで待合室を出て行った。
 二人は出会った場所で何かを遣り取りしながら言葉を交わしていた。母娘と見えた。
 若い女性は急かれる様子で腕時計を見ると、そのまま小走りに改札口へ向かった。
 母親らしい女性も後に従った。
 下りのディーゼルカーが向こうの下りホームに入って来た。
 若い女性は走って高架橋を渡って行った。
 後に残された母親らしい女性は改札口の駅員に言葉を掛けてホームへ出た。
 ディーゼルカーが走り出すと、既にそれに乗っていた若い女性が窓ガラスに顔を押し付け、ホームに立っている母親らしい女性に笑顔で手を振った。 
 ーー三上は忘我の状態で、そんな一部始終を見ていた。
 その時、三上が乗る列車がこちら側のホームに入って来た。三上の意識はだが、ホームに残された若い女性の母親と思われる女性にだけ向けられていて、列車は関心の外(ほか)だった。
 その女性が菜穂子だという思いが、動かし難く三上の心に植え付けられていた。
 かつての菜穂子の面影はその女性には見られなかったが、先程の若い女性に見た菜穂子の面影がそのまま、眼の前に立っている女性の上に重なっていた。    
 すると見知らぬ女性に見えた女性の表情から、自ずと昔の菜穂子の面影が浮び上がって来た。
 三上の気持ちは揺れた。
 懐かしさが三上の心に沸き起こった。
 同時に、今更、という思いも生まれた。
 既に三十数年前に終わった事だった。現在の三上の日常の意識からも失われていた事だった。このまま、何事も無かったようにホームに出て、ディーゼルカーに乗ってしまえば、時間はまた、何事もなかったかのように過ぎて行くだろう・・・。
 女性もまた、それぞれに過ごした歳月の中で、過去の三上の面影を現在の三上の上に見る事はないかのように、駅員に会釈して礼を言うと改札口を抜け、三上の前を通り過ぎようとした。
 三上の気持ちの中ではだが、その時、とたんに溢れて来る懐かしさと共に、そのまま、その人をやり過ごしてしまう事への未練が急速に立ち昇っていた。その気持ちに押されたように三上は声を掛けていた。
「失礼ですけど、巻島菜穂子さんじゃないですか ?」
 突然、旧姓で声を掛けられた女性は、明らかな驚きの表情で立ち竦んだよう足を止め、眼の前の男を見た。眼差しが疑わしさを込め、刺すように強くなっていた。





          ーーーーーーーーーーーーーーー

          



           takeziisan様


           有難う御座います
            引き金
            一人の自分の人生を失った人間の苦悩を見詰めてみたいと思いました
            事件は何も起こらない 確かに表面上 何も起こっていません ですが
            主人公の意識の中では大きな変化が起こっています
            もやもやとした気持ちを抱いたままの日常 自身の人生を肉体上の欠陥 病気のため
            生きられない
             そんな人生を生きている日々の中でふと 見た夢が「引き金」となって
            咄嗟的に 自死への道を進んでしまう
            この文章の中では猟銃の「引き金」を引く場面は直接 描写はしていませんが 
            毛布でくるめば音を消す事が出来るだろう と書いた場面で
            自死への道を進んで行く主人公を暗示しています
             アメリカの文豪 ヘミングウェイは 自分は
            氷河の理論で小説を書くと言っています
            氷河は七分が水の中に沈んでいて 三分だけが表面に出ている
            その理論で書くのだ と言う事です
            つまり 暗示の多い文章という事です 総てを書いてしまうと
            物語が平板になってしまうので 暗示の部分が大切なのだという事です
             大きな事を言うようですが わたくしもこの言葉には共感して
            それを目指していますので わたくしの力不足と共に
            どうしても訳の分からない物語になってしまうようです
            以上は下手な文章に対する言い訳にしか過ぎませんが 
            実社会では ふとした何かの折りに気持ちが折れて
            自死を選ぶ人は結構いると思うのです 最近でも
            芸能界の方が二人ですか 相次いで亡くなりました
            他人には見えなくても 自身の裡に抱えた苦悩に耐えられなくなり
            自ら死を選ぶ人も多いと思いましたので「引き金」を書いてみました

             今回も様々な記事 楽しませて戴きました
            それにしても この雑草 畑仕事もつくづく 大変な事だと実感します
            どうぞ 御無理をなさらないようにして下さい
            その代わり 得られる収穫 この喜びも想像出来ます
            この喜びがあればこその苦しい農作業 でも 健康にも気力にも良いのかも知れません
             ジャガイモ百キロ 驚きです 農家さん並み
             出荷をしてはどうですか
              アジサイ 何種類もお持ちなんですね
             雨に濡れたアジサイ この趣が大好きです
              アジサイの 雨に濡れいて 母の逝く
             こんな句も作っています
              スチールギター 太陽の彼方 昔を思い出しました 
             懐かしく 耳に残っています
              砂利の海 深い 九十九里とは対照的です
             わたくしは九十九里の遠浅の海が大好きでした
             無論 外海 波が荒くて その波に馴れてしまうと
             少しぐらいの荒波にも動じません 若い頃
             逗子の浜に海水浴に行き 台風の接近で遊泳禁止が出た時
             えっ これで遊泳禁止 ? そう思った事があります
             その波の高さは九十九里では当たり前 へーえと
             思いました 当時の砂浜の美しさも見事でした
             懐かしい想い出です
              扇風機四台 懐かしい記事ですが わたくしは昨年
             クーラーを入れました 居れて良かったと思っています
             年齢による体力衰えの実感と共に この気違いじみた暑さでは
             体が持ち堪えられなかったのではないかと 昨年 つくづく実感しました
             今年も既にこの暑さ どうなります事やら
              どうぞ 日頃 御無理をなさらぬようにして下さい
              年々歳々 体力低下が実感されます それでもわたくしは
              軽い腰の痛み程度で悪い所はありません 明日
              年一度の市の健康診断で結果を聞きに行きます
              毎年診て貰っていた医師が体を悪くして閉院してしまい
              大腸がんの検査を受けた医師に今年は診てもらいました
               どうぞ 奥様共々 お体にお気を付け下さいませ
               何時も楽しい記事を有難う御座います
               コメント 御礼申し上げます
               
              
          

 
 
 
 
 
 
 
  
   
 
   




遺す言葉(401) 小説 引き金(完) 他 政治は信念ほか

2022-06-19 11:44:44 | つぶやき
         政治は信念(2022.6.8日)


 政治は信念だ
 信念とは心だ
 心とは言葉だ
 心を持つ政治家は
 紙に書いた文章 文字など
 必要としない
 自分の心 言葉で語る
 紙に書いた文字 
 文章を読むだけの政治家は
 政治家とは 言えない
 官吏にしか過ぎない


       心(2022.6.6日作)

 形式に捉われ 心を忘れるな
 心とは 人間を形成する主体
 人と人とを繋ぐ糸
 人間存在の根本 根源
 心のない人間は
 人間の形をした木偶
 形式は人間が創り出したもの 付属品
 それが人の心を超える事はない
 心は形式を超越する
 心の前で形式は 無 無





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          引き金(完)



 三杉を迎えたのは全く見覚えのない、三杉と同じ年配の男だった。
「西川幸三さんは、いらっしゃいませんか ?」
 三杉の問い掛けに男は訝しげな顔で答えた。
「幸三 ? 幸三っつうのは俺ら家(おらえ)の祖父様(じっつあま)だあ。だけっど、祖父様なら、はあ、五十年近ぐも前(めえ)に死んでるど」
「死んでる  ? 幸三が死んでる ?」
 三杉は思わずそう言った。それから、
「そんなバカな !」
 と、抗議をするような口調で言っていた。
「バガなって言ったって、死んでる者(もん)は死んでるだあ。どう仕様もあんめえ」
 男は言った。
「じゃあ・・・・、源さんや直治さんは ?」
「源さんや直治さん ? 知んねえなあ、そんな人・・・・。ああ、そう言えば新田(しんでん)の祖父様が源さんつう名前(なめえ)だったなあ。聞いだ事(こど)があるよ」
「その人は居るんですか ?」
「居るがって ? バガげだ事ば言うもんでねえ。源さんなら、俺ら家の祖父様よりも、もっとずっと前(めえ)に死んでるよ」
「ちよっと、あなた、おかしいんじゃないの ? いいですか、わたしは昨日、源さんと直治さんと幸三の四人で、猟の為に山に入ったんですよ。それでわたしは山の中で迷ってしまって一夜を明かし、今朝、ようやくこうして戻って来たところなんです。それなのにあなたは、まるで訳の分からない事を言っている。いったい、どういう事なんですか ?」
 話しの辻褄の合わなさに三杉は苛々しながら、思わず男を責めるように荒い口調になっていた。
「どういう事なんだって言ったって、おめえ・・・・」
 男は三杉の剣幕に困惑した様子と共に、どこかしら、尋常ではない人間を相手にする時のような、蔑みと憐みの混じった表情を浮かべて言って言葉を濁した。
 三杉は男の表情の中に蔑みの色を感じ取ると、一歩、後に引いた。それから改めて旅館の名前を確認した。
 「旅館 西川」は表向き、何も変わっていなかった。しかし、何かが変わっていた。その何かがなんであるのかは分からなかった。ただ、人の存在の異なる事だけは確かな事実だった。
 いったい、何が変わってしまってるんだろう ?
 三杉にはその時、自分自身の存在にさえ、不安な思いを抱かずにはいられない気持ちが湧き上がって来ていた。
 その不安から逃れるように三杉はじりじりと、男の前から後退していた。
 一刻も早く、この場を逃れたい。
 そして、次に三杉が気が付いた時には、西川旅館は眼の前から消えていた。
 三杉は再び、荒涼とした芒の原に一人、佇んでいた。
 これから、どの道を辿って行けば、西川達が居る「旅館 西川」に行き着けるのか ?
 既に太陽は高かった。
 仕方がない、もう一度、先程辿って来た道を戻ってみよう。それで今はもう、漁から戻っているかも知れない女に、改めて、確かな道筋を聞いてから再び、帰路に着く事を考えよう・・・・。
 
 いったい、あの夢にはどんな意味があったのだろう ?
 理解不能、不可解な夢は、三杉には、現在、今を生きる自分自身の姿そのものに思えた。生きる事の意味を見失い、日々、虚脱の中に時は過ぎて逝く。何も無い人生。何かをしたいのに何も出来ない人生。心に抱く夢は限りなく大きく膨らむのに、その麓に辿り着く事は永遠に出来ない。自身の肉体が抱く不安が、ことごとくその夢を消し去り、吹き払って行く。死の影が眼の前に立ち塞がり、怯える時間だけが過ぎて逝く日々。本来の三杉の居る場所は今いる場所とは別の所にあった。しかし、その場所に戻る事はもう出来ない。
 ベッドに仰臥したまま三杉は、あの不可解な夢に触発されたように自分の人生への、失望の思いだけを深くせずにはいられなかった。ーー何かが狂ってしまっていた。何処かで狂ってしまっていた。
 その狂ってしまった人生を再びやり直し、元に戻す事は永遠に出来ないのだ。束縛された肉体がその夢を奪っているーー。
 
 夢の中の三杉は再び、芒の原から杉林の中へ入って行った。
 だが、その三杉はもう、女に会う事は出来なかった。のみならず、あの眼を見張るような湖水の透明感と極彩色の色どりの樹々に囲まれた湖に出る事もまた、出来なかった。三杉が歩いて行く先には、杉の巨木の薄暗い闇が広がるばかりで、行けども行けども、湖がその姿を見せて来る事はなかった。
 あの、女の小さな家は兎も角として、湖が探せ出せないはずはない。
 三杉は何度もそう呟いた。
 しかし、依然として、湖も、女の居た小屋も、再び、見い出す事は出来なかった。
 三杉は総てを諦めかけていた。あとは、成る様になるしか仕方がない、と思った時、偶然にも杉の巨木の間を通して、巨大な空間が開けているのが見えて来た。瞬間、三杉は湖かと胸を躍らせた。急かれる気持ちと共に立ち塞がる芒の繁みを掻き分けながら、疲労も忘れて突き進んだ。だが、その期待も結局は虚しく終わった。
 杉の巨木の林をやっと抜け出たと思った時、三杉の眼の前に現れたのは、あの湖の美しさとは比べくもない空間、空虚な空の広がりだけであった。
 ーー夢はそこで終わっていた。
 夢の中の自分がその後、どうしたのか、無論、三杉には知り得なかった。
 俺はあれから、いったい、どうしたんだろう ?
 三杉はふと、思いを巡らせた。
 何も答えは得られなかった。
 枕元では置時計が正確な時を刻んでいた。
 その時計に眼をやった。
 午前二時を少し過ぎていた。
 四時までには、まだ間がある、と三杉は思った。
 何故か、眠れそうになかった。
 夜明けと共に出発する予定の西川達との狩猟を思った。
 それでも気持ちは晴れなかった。暗く沈んでいた。
 何時もは、期待感にワクワクしながら眠れない時間を過ごすのだったが、今夜に限って楽しめなかった。
 夢のせいかと思った。
 孤独感だけが何故か、胸を深く浸して来た。
 自分一人だけがこの世界に取り残されて、こんな深夜に目を覚ましている、そんな気がした。
 ベッドの横の壁には革ケースに収められた猟銃がひっそりと立て掛けられてあった。

 心は静かだった。
 仕事の事も、家庭の事も気にならなかった。
 妻の多美代も、娘の奈緒子も、西川や源さん、直治さんも皆、遠かった。
 光枝だけが僅かに身近に感じられたのは、夢の中で見た女性が、何処か、光枝を連想させたからに違いなかった。
 だが、それも、どうでもいい事であった。
 恐怖心はなかった。
 自分の人生への夢も希望も失った人間には、あとは真性の死が待つばかりだ、と思った。
 少しでも音を消す為には銃身を毛布で包めばいい、と考えた。



              完



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           takeziisan

            何人もの作家の作品に 眼をお通しのtakeziisan様に
            そう おっしゃって戴けると嬉しい限りです
            張り合いになります
            ただ わたくしは自身の人間観 世界観とでも言いますか そのようなものを
            最初の取り留めもない文章と共に 一応 小説と名乗った形式で 書き残して置きたいと思った事から
            始めた事ですので 何分 独り善がりの傾向の多い文章になってしまいますが
            それでも 出来るかぎり人様にお読み戴いても   
            それに耐えられるように書きたいとは思っているところです
            コメントの御言葉を嬉しいお褒めの言葉として頂戴致し
            これからも続けていけたらと考えています
             今回も様々な記事 楽しく拝見させて戴きました
            重い腰を上げて・・・
            結局 この行動が無意識のうちに健康維持に働いているのでは
            ないでしょうか
            億劫だと言って 身体を動かさないでいれば たちまち
            錆びついてしまいそうな気がします
             猫体操はわたくしも毎朝目覚めるとしています
            その後 一時四十分ほどの様々な組み合わせの自己流体操をしています
            その御蔭か 今のところ 少しの腰の痛みを除いて
            不具合を覚える事もありません 猫体操をするようになってからは
            腰も軽くなったような感覚を覚えています それだけに
            無意識裡に猫体操にも力が入ります
             東京のバスガール 懐かしい光景です
            あの当時のわたくし達の年代の人間には馴染の光景で
            わたくし自身も上京をした折りに 秋葉原から山手線(やまて線ーやまのて線ではなかった)に乗り代え
            池袋に向かう途中で全く同じような体験をしています
            当時を思い出させてくれる 良い御文章でした
            時代の証言としても大切なものです
             ナス一本 今年の天候不順 野菜不足 価格の高騰 
            象徴しているようです
             アナベル  この花 見てはいましたが名前は初めて
            いろいろ 今回も楽しませて戴きました
             コメント共々 有難う御座いました

            


          
           桂蓮様


            有難う御座います
           新作 拝見してびっくり 仰天とは正にこの事
           どうぞ ごゆっくりお休みになって 身体を治して下さい
           御作を拝見出来なくなるのは寂しいですが御体を大切に 
           治りました後を楽しみにしております
            それにしても桂蓮様 頑張り屋の御様子 何事も
           突き詰めなければ気が済まないお方のようにお見受けします
           これは持って生まれた性格的なもので なかなか直らないものですが
           人間 息を抜くのも大切と御自分に言い聞かせ くれぐれも
           御無理をなさらないようにして下さい せっかくのバレーの楽しみも
           身体の自由が利かなくなったら失われてしまいます
           神経痛は完治が難しいものですが 痛みと付き合いながら 
           長く御趣味の楽しみを活かして下さい
           せっかくここまで来たのに出来なくなってしまった では
           悔しいですもの
           戴いたコメントではバレーはお続けの御様子 一安心です
           どうぞ気長に頑張り過ぎずお楽しみ下さい
            ポワント 筋肉 了解 素人にも分かります
            バレリーナ―を見て一番 驚く事です
            桂蓮様のこの姿 拝見したいものです
           何時も有難う御座います
            どうか1日も早く 御体を御治し下さい
            陰ながらお祈り致しております
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 

 



遺す言葉(400) 小説 引き金(9) 他 波は返る 

2022-06-12 13:03:09 | つぶやき
         波は返る(2022.6.7日作)


 この年 2022年 前半
 国内では 北海道の観光遊覧船が沈没し 
 二十数名の犠牲者を出している
 国外では ロシアがウクライナに侵攻し
 戦闘員 市民など 只今現在 日々
 数多くの死傷者を出している
 いずれも一人の指揮官 指導的立場の人間の
 世界 世間 世の中の 掟 決まりを無視した 愚かな行為
 自己の欲望 欲求に走った末の 参事 出来事
 一人の人間の愚かな強欲 野望 浅薄な思考の結果が
 自己 自身の周辺 狭い場所に限らず 社会 世の中
 世界を巻き込む 大惨事へと繫がる 只今 今日現在
 この世界に生きる人間 一人一人は 他者との繫がり
 他者との連携なくして 生きる事は出来ない 不可能
 個 個人 他者との繫がり 連携を欠いた人の存在など
 只今 今日現在 この世界 世の中では成立し得ない
 成り立たない 人は人の中でのみ 生きられる
 そんな人の 他者への配慮を欠いた愚かな行為は 結局 結果
 自身の身へと 跳ね返って来る 跳ね返り 自身を苦しめる
 自身の手が押し出した水 この地球という限られた空間
 狭いプールの中では その水はプールの壁に突き当たって跳ね返り 
 やがて 自身の身を浸す 大きな波となって戻って来るだろう 






          ーーーーーーーーーーーーーーーー


  
          
          引き金(9)


 そう言われてみると土間には確かに、薪などの陰に隠れて筌(うけ)や網などが積まれてあるのが眼に入った。
「御両親はいらっしゃらないんですか ?」
 三杉は先程から気になっていた事を改めて口にした。
 その言葉を受けて女は、「はい」と言ってから
「五年前に父が亡くなると、後を追うようにして母も、一年も経たないうちに亡くなりました」
 と、言葉を継いだ。表情には微塵の翳りもなく、淡々としていて、何処かに悟ったような赴きさえが感じられた。
 それから後の事は思い出せなかった。傷がもたらす体への負担と、一日中、山の中を歩き廻っていた事の疲れから何時の間にか、眠ってしまっていたようだった。気が付いた時には、小屋の中に女の姿はなかった。
 囲炉裏の中で燃える火が細くなっていた。
 明け方の寒さが身に応えて三杉は体を起こすと、横になった体に掛けてあったジャンパーを改めて背中から掛け直して、細くなった火の方へ体を寄せた。
 火の上に下がっていた自在鉤には昨夜食事をした、煤で黒くなった鍋が掛かっていた。その蓋の上に一枚の紙切れがあるのを眼にすると三杉は手に取った。
 紙切れには走り書きがしてあった。

 " ゆうべの残り物ですけど、鍋の中のものを温めてお食べになって下さい
  村へ帰るのには、林に射し込む太陽の光りに向かって行って下さい
  わたしは漁がありますので、湖へゆきます "

 三杉は手にしたその小さな紙片を囲炉裏の火にかざして燃やした。
 小屋の入口を見ると閉ざされていた。
 女が漁の道具を手に出てゆく様子が彷彿として思い浮かんだ。
 ジャンパーの腕を通す前に改めて、昨夜負った傷口が気になって視線を向けた。 
 包帯が巻かれたままになっていた。
 薄っすらと滲んでいる血の跡が見えた。
 包帯を解くと傷口には一枚の白い布が押し当てられてあった。
 その布も血に汚れていた。
 はがしてみると鋭くえぐられて白い脂肪肉を見せている傷跡が見られた。
 その傷の深さに三杉は改めて驚いたが、血は完全に止まっていた。痛みも不思議な程になかった。昨夜、女が塗ってくれた薬のせいに違いないと三杉は思った。
 改めて、傷口を保護するために薬の跡の残る布を当て、包帯を巻き直すと肩に掛けていたジャンパーに腕を通した。 
 猟銃は昨夜、そこに置いたままになっていた。
 弾薬の付いたベルトも傍にあった。何一つ、変わったものはなかった。
 傷付いた腕の破れたジャンパーもそのままだった。
 女は勧めていてくれたが、三杉は食事をする積りはなかった。ただ、一言、突然に飛び込んで来た得体の知れない人間にも係わらず、迷惑気な素振り一つ見せる事もなく、親切に応対してくれて、痛みに疼く傷の手当てまでしてくれた女に礼を言いたいとだけ思った。
 湖がどの方角にあるのかは分からなかったが、多分、女の通る道筋があるに違いないと考えた。 
 そこを辿って行けばいい。
 三杉は改めて身支度を整えると囲炉裏の中で燻り続ける火を、灰を掛けて消した。
 猟銃を肩に掛けると、朝のかすかな明るさが忍び込んで来る戸口に向かった。
 粗末な板戸を押し開けてまず驚いたのが、小屋の戸口、すぐ傍にまで迫って来ている芒の深い茂みだった。三杉の身の丈程もある芒が一部の隙もなく小屋を覆っていた。
 いったい、俺は昨夜、こんな中を歩いていたのだろうか ?
 仰天の思いだった。
 だが、いずれにしても今は、この芒の茂みの中を歩いて行かなければならないのだ。
 三杉は小屋の板戸を閉めると、自分の進むべき方角を探った。
 小屋に隣接したようにして繁る芒の茂みの左側に微かに、女が通ったのでは、と思われるような跡の残っているのを見付けた。
 その跡は茂みの中の方まで続いていた。
 女が通ったと思われる跡に違いなかった。
 三杉は跡を辿り続けた。
 太陽はまだ、顔を出した気配はなかった。
 それでも杉の巨木が林立する深い林の中にも、仄かな明るさは差し込んでいた。その明るさを頼りに歩いた。
 どれ程歩いたのかは、深い繁みの中では感覚的にも掴むのは難しかった。ただ、時間的には、十五分、ないしは二十分程かと思われた。ふと、足元から視線を上げた三杉の眼に、林立する杉の巨木の間に覗ける白い朝の気配が映って来た。咄嗟に三杉は、湖に違いない、と判断した。
 湖は、三杉の想像の思いも及ばなかった程の広さを見せていた。その広さと共に、澄んだ水の蒼さがまず、三杉の度肝を抜いた。かつて眼にした事のない蒼さだった。その蒼さの中に、水草の一本一本までもが明確に判断出る程の透明感は、水自体が無いかのようにさえ見えた。だが、水が実際に存在する事は、それが映す湖岸の木々の眼を射るように鮮やかな紅葉、黄葉が証明していた。紅葉、黄葉が水の中にも湖底を目差して延びているかのようでさえあった。ただ、われを忘れ、その美に魅せられて三杉は視線だけを奪われていた。
 どれ程かの時の過ぎていた。三杉は我に返った。
 女の存在に改めて思いを馳せた。
 広い湖上に女の姿を求めた。
 何処にも女の姿はなかった。
 岸辺に視線を移して、そこにも女の姿を探した。
 丈高い芒の繁茂する岸辺にも女の姿を見る事は出来なかった。
 湖の右手彼方に、湾曲し、湖上に突き出た岸辺がその向こう側の景色を隠していた。
 或いは、あの向こう側に女は居るのかも知れない。
 そう思ったが、そこまで行くにはまた、相当の時間と労力を要すに違いないと考えると、自分が一夜、帰らなかった事で宿のみんなが心配しているに違いないという思いが先に立って決心を鈍らせた。
 三杉は女への思いを諦めると、今来た道を辿って帰路に就いた。
 太陽の射し込む方角に向かって歩いて行けと女は言っていた。
 その時、ようやく朝の太陽が樹々の上に顔を見せて辺り一面をその輝かしい光りで彩り始めた。
 三杉はその太陽に向かって再び、丈高い芒の中へと入って行った。

 三杉は今、独り、目覚めた夜の静寂の中で、奇妙な夢の中の世界を反芻していた。杉林の中の景色も、広い草原の景色も、かつての狩猟経験では出会った事のない景色であったが、似たような状況には何度か出会っていた。それだけに、物珍しい杉林の中での出来事も、湖の風景との出会いも、夢の中の出来事と納得する事が出来たが、それ以上に奇妙なのは、それから後の事であった。
 三杉が湖を後にして芒の深い杉林を抜け、宿へ帰った時には既に、西川も源さんも直治さんもこの世にいなかった。





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          桂蓮様

           今回のブログ 良かったですね
          実際に行動した人間でなければ分からない
          実感がこもっています 最上級です
          楽しく読ませて戴きました
          それにしてもなんと弱気な・・・・
          そんなに卑下する事はないですよ 自分の中の思いと
          他人の見る眼は違います より高い所を目差す人間は
          得てして自分を卑下しがちですが 他人の眼から見る時
          それは相当の高みに達しているのです 人間 常に
          こうありたいものですね それにしても世の中には桂蓮様のようにはしないで
          理屈ばかり言いたがる人間が多いものです ですからわたくしは
          どんなに小さな事でも実際に自分の手で実行している人間を高く評価します
          事の大小ではなく いかにそれを誠実に実行しているか
          人間に取って大切なものは行動です その点で今回
          桂蓮様も御自分で行ってみて真実を掴む事が出来た
          その出来が良くても悪くても素晴らしい事ではないですか
          自分の事は自分にしか分からない ーーでも人間
          自分の眼には見えない部分もあるものです 他人はそこも
          冷徹 冷静に見ているものです 
          自分の思いだけに拘るのも怖い事です 他人の言葉も受け入れ
          それを的確に判断する その力が大切なのではないでしょうか
          お写真二枚とも拝見しました バレリーナです
          御主人とのお写真もいいですね 優しそうなお方でお幸せです
          それにしても 珍しく御主人様に感謝 嬉しくなります
           今回のブログ 今までになく 楽しく拝見させて戴きました
          バレーこれからもお続けになって また 改めての御成果を御報告して下さい 
          今後に期待 楽しい時間を有難う御座いました




          takeziisan様


          御指摘 有難う御座いました
          早速 直しておきました
          たびたび 皆様から御指摘戴き 老加現象の始まりか
          なとども思ってしまいます
          題名を入れた時 前の文字が浮き出て来て それをそのまま
          ナンバーを入れ替えただけで使ってしまったようです
          これがこの器具の便利な所でもあり 恐い所でもあると
          しみじみ実感します
           今回も様々な記事 楽しく拝見させて戴きました
          きゅうり一本だけ いいですね 専門家ではない
          素人っぼさとでも言ったらよいのでしょうか そんな実感に溢れています
           よっこらしょ 口癖です
          この言葉を口にするたび よっこらしょ かと自分でも可笑しくなって笑ってしまいます
           頂上から下向へ どうにも避けられぬ現象 生きる事の哀しみの一つですね
           知らぬ存ぜぬ 何処かの政治家の口癖 専用句 
          腹立たしい限りです
           川柳 今回も楽しませて戴きました 次回 期待です
          人間味がそのまま盛り込まれ 溢れ出るところがいいですね
          楽しくなります
           栗の花 田舎の家にあった風景を思い出します あの
          むせる様な匂い 懐かしいです
           美しい花々 今回も 初めて がいっぱいありました
          それにしても野に咲く小さな花 つくづく美しいと実感します
           グミの実 郷愁を誘われます
           名作 名曲 禁じられた遊び
          ラストシーン 涙なしでは見られません
          驚くのはあの子供達の演技力 この映画に限らず
          スクリーン上で見せる子供達の自然な演技には何時も
          感じ入ってしまいます 的確にその場面を演じられる
          演技力 何処から来るのでしょうか 映画界には子役に食われる
          という言葉があるようですが驚くばかりです
           何時も御声援戴き 有難う御座います
          楽しい記事を拝見させて戴く喜びと共に
          御礼申し上げます
          
           
 
  
          
  




          
 

 
 
 
 

 
 
 
 
 
 



 
 




遺す言葉(399) 小説 引き金(8) 他 英国女王の美しさ

2022-06-05 13:11:01 | つぶやき
          英国女王の美しさ(2022.6.3日作)
             女王就任七十周年祝賀行事
              テレビ放送を観て


 人間 人には それぞれ
 その時 その年代に合った 美しさ がある
 幼い時には 幼いなりに
 少年 青年期には 少年 青年期の
 年老いれば 年老いたで
 その時 その年代が持つ
 美しさが ある
 その美しさを忘れ 背伸びをしたり 
 幼さ 若さを敢えて強調したり
 刻み込まれた年代 その年代を隠し 不自然な
 施術をしたり 自然を忘れた行為は
 愚かで 無駄な行為 虚しい行為
 醜く 滑稽になるだけだ
 人が持つ美しさ 真の美しさは その人が持つ
 その人独自の美しさ それが
 存分 充分に発揮され得た時にのみ 輝く
 英国 エリザベス女王 九十六歳 年老いてなお
 輝き 美しさを 失わない 繕った美しさ 偽善の美 の 皆無
 真実の美しさ ただ その一点にのみ集約される
 繕った美しさ 偽善の美しさ 欠らもない
 繕った美しさ 偽善の美しさ そこには
 人 人間が持つ 真の美が醸し出す 輝きの色はない
 死んだ美しさ 心のない美しさ 虚しい美しさ
 人の心の底から湧き上がる 
 その人独自が持つ 美 その輝きがない
 人の心の底から湧き上がる美しさ
 ただ それのみが 人の心を捉え 魅了する
 唯一 絶対 独自の宝





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          引き金(8)




 三杉は何度も眼を瞬(しばた)きながら闇の中を見つめたが、その闇に浮かんだ明かりは揺れる気配もなかった。不審を抱いたまま三杉はゆっくりと近付いて行った。
 それが家屋から漏れる灯りだと分かるまでには暫くの時間を要した。そして、そう判断出来た時には、おぼろげながらにも漆黒の闇に浮かび上がる家屋全体の様子も見えて来た。
 三杉は傷付いた腕の絶え間なく襲って来る痛みを堪えながら、その家の中に人の存在を思って、なんとはない安堵感に捉われていた。

 三杉が入口の戸を叩いた粗末な造りの小屋には、年若い女性が一人で住んでいた。
 夢の中では認識していなかったが、その夢から目覚めた今、思い返してみると、女性はなんとはなく光枝に似た面立ちをしていたように思われた。光枝そのものではなかったが、年頃も光枝と同じぐらいに思われた。
 女は膝下辺りまでしか丈のない絣の古びた着物を着ていた。
 背中で一つに束ねた髪が肩の下まで垂れていた。透き通るように白い肌をしていて、その肌の白さと髪の黒さが鮮やかな対比を見せて三杉の眼に染みた。
 三杉はその女に導かれるままに、家の中に入り、それが小さな小屋の中では唯一の明かりとなっている、木の切り株の燃える囲炉裏に向かって座を占めた。
 女は猟銃を持った三杉を怖れる気配も見せなかった。のみならず、目敏く三杉が負った腕の傷を見付けると、
「どうなさったのですか、血が・・・」
 と言って、驚きの表情で三杉を見つめた。
 三杉は女のその言葉で改めて傷口に視線を移してみると、革製のジャンパーの腕が無残にも引き裂かれ、血まみれになった腕の肉が大きく抉られている様子が眼に映った。三杉は自身、顔をしかめながら、
「向こうの芒の原で雉を撃って、その雉を追っているうちに、この林の中に紛れ込んでしまっていたんです。その間にいつのまにか夜になっていて、一寸先も見えない闇の中をさ迷っているうちに、何かの蔓に足を取られたと思った時にはもう体が投げ出されていて、その時に、木の枝か何かで突き刺してしまったらしいんです」
 と事情を説明した。
「そんなに血が・・・」
 と、女は改めて驚いたように言って、
「すぐに傷口を洗って、薬を付けた方がいいですよ。ちょうど、傷に良い薬がありますから、それを塗った方がいいですよ」
 と言って、六畳程の部屋の隅へゆき、何かの包みを木箱の中から取り出し、手にして来るとそのまま土間へ降り、反対側の隅へ行って小さな手桶に水を汲んで来た。
 女はすぐに三杉の傍に膝を折ると、白い布を水に浸し、その濡れた布で大きく破れた革ジャンパーの下から露出している腕の傷口を洗い始めた。
 総ての行動が淀みのない、慣れた仕草の行動だった。
 幸い、傷口の血は止まっていた。白い皮下脂肪が血を拭き取った後に、なお、僅かずつながらにも血を滲ませているのが見て取れた。
 女は拭き取った血に汚れた布を水の中に浸すと今度は、小さな土器に、先程、手にして来た袋の中に入っていた粉末を入れて水で捏ね始めた。更にそれを囲炉裏の火で温め、湯気が立ち始めると三杉の方に向き直って、
「この薬を塗って置きましょう。そうすれば、明日の朝までには、傷口も乾いていると思いますから」
 と言った。
「御迷惑をお掛けして申し訳御座いません」
 三杉は素直に詫びた。
「いいえ、こんな林の中ですので、わたしなどもしょっちゅう怪我をしていますので」
 と、事も無げに女は言った。 
 女は暗い囲炉裏の火の明かりの下で、三杉の腕に顔を寄せるようにして小さな土器の中の薬を、添えられていた木の箆のようなもので傷口に塗り始めた。
「沁みますか ?」
 と聞いた。
「いえ、薬が温かくて気持ちがいいです」
 三杉は言った。
「この薬を塗って、あとは包帯をして置けば、明日の朝には傷口も乾いていると思います」
 女は言った。
 傷口への薬の塗付が終わったあと、その上に白い布を当て、包帯をした。
 手当てが済むと女は血に汚れた布の入った手桶を手にして土間へ降りた。
 土間には小さな竃がった。
 上には大きな鍋が掛かっていた。
 火は消えていた。
 女は手桶を土間の隅に置いてから、鍋の蓋を取って中を見た。
 鍋からは白い湯気が立った。
「夕飯は済みましたか ?」
 女は鍋の中を覗き込んだままで三杉に聞いた。
「いえ、何しろ、夕方までには宿へ帰る心算でいたものですから、何も持って来なくて」
 三杉は事情を説明した。
「宜しかったら、粗末なもので何もありませんが、お食べになりますか 。わたしもちょうど、食べようと思っていたところですので」
 三杉を見返って女は言った。

 " 静かな時間だった "
 ベッドに横たわったまま三杉は、夢の中の静寂を思い出しながら呟いた。
 そしてまた、奇妙に懐かしい世界でもあった。
 その懐かしさが何処から来るのか、三杉には分からなかった。
 慌ただしさも喧騒もない世界だった。そして、三杉自身、今、ベッドに一人、横たわっている。ーーあの夢の中に似た時間が三杉を包んでいた。
 東京近郊とはいえ、古くからの住宅街の夜は静かだった。車の通る音も聞こえない。その静寂を意識すると三杉はふと、現実に引き戻された。
 多美代はもう、帰ったのだろうか ? と思った。そう思うとたちまち、多美代への鬱屈した思いが沸き起こって来て、三杉の心を苦しめた。
 三杉はその苦しみから逃れるように、再び眼を閉じて夢の中の世界に思いを馳せた。夜明けと共に訪れる現実の世界の朝を思うと嫌悪感だけが体の中を走り抜けた。
 
 夢の中で見た女は、近くにある湖で漁をして暮らしている、と言った。





          ーーーーーーーーーーーーーーーー





          桂連様


          コメント 有難う御座います
          良いコメントでした 本番を前に ワクワク ソワソワ
          充実した日常の感覚が御文章を通してこちらにも明確に伝わって来ます
          読んでいる方もなんとなく浮き立つような気分を覚えます
           それにしても何時もの事ですが 御主人様をけなし過ぎですよ
            それだけ 仲睦まじいお二人の姿が浮び上がって来るのですが
           良い御主人に巡り合えてお幸せです
            旧作 加齢に伴う病 醜さ
           偶然 今回 年齢相応 美しさを文章にしました
           旧作が眼に入りましたので 読ませて戴きました
           以前にも読んだ記憶があります
           年齢と共に衰える 仕方のない事ですが その時 その時 出来得る限りの事を
           精一杯に生きる
           それで良いのではないでしょうか
            真摯に精一杯生きている人はそれだけで美しいものです
           人間見かけだけが美しくてもそれは死んだ美です
           心の美こそが人に取っては最も美しいものではないのでしょうか
           身体 肉体の衰えは生物である以上 避ける事の出来ないものですが
           その時々を美しく生きる この事は自身の心がけ次第で幾つになっても出来ると思います
            バレー本番の御様子 ブログ上にお載せ頂けたらと思います
            なんだかこちらも浮き立つ気分で 御感想をお聞きするのが心待ちに思われます
            御成功をお祈りいたしております
            併せて御主人様のビデオの御成功もお祈りします
            桂連様をギャフンと言わせるように



            takeziisan様

            5月29日 11周記念日
            塵も積もれば山となる 
            変わらない事が貴重ではないでしょうか
            あっちへ行ったり こっちへ行ったり
            ちょろちょろ変わる人間は信用出来ません
            こいつは一体 何を考えてるんだ
            自分が見えていないというより他 ありません
            川柳 頑張れ 頑張らなければ
            そんな思いです
            エリザベス女王は七十周年ーー
             それにしても こうして簡単に文章を書き込める
            という事は有難い事です ここを運営する皆様に
            改めてお礼を言いたいです
            ただ 唯一の不安が 何かの間違いで瞬時に 総てが消えてしまう という
            この事です ですから 将来的には これ等の文章も
            紙の上に移して置く事が出来ればとも考えています
            それにはまた 手間 暇がかかりますが 生きる事の
            張り合いになるかも知れません
            「遺す言葉」も自分が生きた証としての言葉を書いて置きたいという事から付けました
             茱萸 野菜の話し 支柱のたつあの風景
            わたくしの田舎の風景とそっくりです 垣根の上からのぞく家の屋根 
            懐かしい風景です
             茱萸は友達と大きな木に登って手当たり次第取っては
            頬張っていた記憶が蘇ります
             タマネギは高い ! 安いものとばかり思っていましたから
            一層 高値を実感します
             夕日に赤い帆 懐かしいですね
            わたくしはビリー ヴオーンが好きです
             いのしし被害 以前に書きました
           「晴れときどきファーム」でもサルか何かの被害に合ったと言っていました
            自然の中に生きる事のこれが現実 悔しくもまた
            興味深く 面白い事です
             樹木の剪定 年々 億劫に 気が重くなって来ます
            様々な美しい花 初めて知るものも何点かありました
            何時も有難う御座います