遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(355) 小説 優子の愛(7) 他 上野選手の言葉

2021-07-25 12:38:26 | つぶやき
          上野選手の言葉(2021.7.22日作)



 東京オリンピック 2021年七月
 女子ソフトボール日本代表
 第一試合に勝利した先発投手
 上野由岐子選手の言葉
 データー中心の投球を改めて
「感じるままに 勝負する所で 勝負する投球に戻した」
 ここに理論 理屈 知識を越えた
 本物 真の力を身に付けた人の
 言葉がある
 自身の感覚 体感の中に湧き出る力
 その力こそが 理論 理屈 知識を超えた
 真実 本物の力 この言葉
 総ての事 あらゆる事柄に於いて
 言い得る言葉 この世は
 理論 理屈 知識だけでは 計り得ない
 理論 理屈 知識を越えた
 その向こうに 真実は 存在する
 自身の体の内から湧き出る力 感覚的知識
 その力 知識こそが
 真実 真の 自分の力


 オリンピック組織委員会ーー度重なる不祥事
              日本人の知力 思考力の低下 劣化



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          優子の愛(7)



 テーブルを中に向かい合って腰を降ろすと、
「今日は本当に有難う御座いました。御迷惑じゃなかったかと心配していたんですけど、来て戴いてとても嬉しかったですわ」
 と、深い安堵感を滲ませた声で言った。
「きれいな花嫁さんでしたね。あなたにそっくりだった」
 沖津は真実、その思いを口にした。
「そうですか」
 優子は微かな笑みの中で言ったが、何かためらうようにそれ以上の言葉は口にしなかった。
「お嬢さんを出してしまって、これからは ?」
「一人暮らしです」
「お子さんは一人だったの ?」
「ええ、あの娘(こ)一人です」
 優子は迷いのない口調ではっきりと言った。
「じゃあ、淋しくなりますね」
 沖津は幾分かは昔のような親しみを込めた口調に戻って言った。
 優子は軽く微笑んだだけだった。
「御主人が亡くなって、大変だったでしょう」
「ええ、まあ」
 と優子は言ったが、その言葉にはそれ程の切実感はなかった。
「勿論、御主人が残した財産で、生活に困るなんて事はなかっただろうけど」
 優子の結婚の経緯(いきさつ)を知る沖津は軽い冗談のように言った。無論、 皮肉などではなかった。
 優子はだが、黙っていた。
 沖津の言葉をどのように受け取ったのかは、その表情からは分からなかった。
「今はあなたがビルなどの管理をしいるんですか」
 沖津はその気苦労を思い、多少の同情を込めた口調で言った。
「いいえ、会社は株式会社になっていて、経営者は違うんです。勿論、わたしも多少の株式は保有していますけど」
 優子はそう言ってから急に、何か強い力のこもった眼差しになって沖津を見詰めると、
「突然、あのような招待状を差し上げたりして、御迷惑ではなかったでしょうか ?」
 と言った。
 その、思い掛けない緊張感に満ちた優子の気配に沖津は、戸惑いと驚きを覚えたが、取り乱す程ではなかった。
「いや、迷惑などという事はなかったけど、ちっょと驚いた事は確かです」
 と言った。
「奥様はなんてお思いになりました ?」
「女房には会社のかつての部下だと言っておいたので、何も疑ってはいなかった」
「今は部長さんだという事で、おめでとう御座います、と言ってもいいのでしょうね」
「さあ、どういうものだか」
 沖津は苦笑いと共に言った。
「沖津さん、突然、こんな事を言ったからといって、お怒りにならないで」
 沖津を見詰める優子の眼差しが異様なほどの強い光りを帯ていた。
「なんです」
 沖津は言ったが、自ずと緊張感を強いられる思いで身構えた。
「実は、今日、結婚したあの娘、あなたの子供なんです」
 優子の眼差しが鋭く沖津に注がれていた。
 沖津は息を呑んだ。言葉を失った。
 頭の中一杯に、空白が広がった。何も考えが浮かばなかった。
 それから一瞬、過去の出来事が頭を過(よ)ぎった。
 あの時・・・・、優子との最後の別れとなる、優子が沖津に妊娠を告げた時の事だった。沖津はあの時、もしや、自分の・・・・、と考えた事を思い出した。だが、その思いはすぐに否定、打ち消された。既に何年も過ごしている優子の結婚生活を思い、月に一度会うか会わないかの自分との関係を優先する事に、不遜な思いを抱いた事実だった。そしてそれは沖津の気持ちの中の真実だった。そこに逃げの姿勢は微塵もなかった。それだけに沖津は、優子と別れた後の総てになんのこだわりもなく、自分の総てを注ぎ込む事が出来たのだった。道代と過ごす、もう何年にもなる結婚生活の中で沖津が道代に対して抱く、負の思いも全く感じずに過ごして来ていた。沖津に取っては、優子が今の言葉を口にする前の総てが沖津の総てであり、真実だった。だが、優子は沖津に取って真実、思い掛けない言葉を口にした。
「いったい、どういう事 ?」
 沖津はそう言うより仕方がなかった。
「沖津さんは信じてくれないかも知れませんけど、そして、信じたくなんかないかも知れませんけど、本当の事なんです」
 優子の姿勢には揺るぎのない確固としたものがあった。
 沖津は優子のその揺らぎのない姿勢にまた、言葉を失っていた。
「わたくし、夫との間では、子供が出来ないように工夫していたんです。ですから、出来るはずがないんです。夫は勿論、それを知りませんでした。ですから、妊娠したと告げた時、それは喜んでいました。でも、この事実を知っているのは、わたしだけなんです。沖津さんは、客観的にその事を証明出来るものが、何もないじゃないか、とおっしゃるかも知れません。でも、証明する事など、わたしに取ってはどうでもいい事なんです。これはわたしだけが知っている真実なんですから。あの娘の血液型はB型です。夫の血液型もB型でした。沖津さんの血液型が何型なのか知りませんけど、知らなくてもいいんです。これはわたしだけの事なのですから」
「ぼくもB型だ」
 沖津はやっと言った。
「今頃、こんな事を言い出したからといって、誤解なさらないで下さい」
 優子は沖津の眼を覗き込むようにして言った。
「わたくし、沖津さんに 御迷惑をお掛けしたくてこんな事を言っているのではありません。ただ、この真実を沖津さんにお伝えしたかっただけなのです。そして、あなたの娘の花嫁姿をあなたに見て戴きたかっただけなのです。それだけでよかったのです。今日、それを見て戴いてわたくしの心からの思いが叶えられたので、もう、思い残す事は何もありません。心が空っぽになってしまったみたいです。娘は今日、わたしの下から旅立ってゆきました。もう、わたしのものではありません。沖津さんにその姿を見て戴いて、わたくし、責任を果たせたような気がしているんです」
 優子の感情の乱れを全く見せない静かな話しぶりがかえって、一層の真実感を際立たせていた。
「あの娘には勿論、何も話していません。あの娘は沖津さんが父親だという事も知らないはずです。ですから、あの娘が沖津さんに御迷惑をお掛けするような事もないはずです。そして沖津さんも、わたくしの言った事を忘れて下さって結構なんです。何もなかった。沖津さんは沖津さんの御家庭だけを大切になさって下さい」
 沖津は重苦しく、押し潰されそうな胸の内を吐き出すように低い声で言った。
「それじゃあ、いったい、何故 ?」
「何故、沖津さんと結婚しなかったのかっておっしゃるの ?」
 優子は沖津の心の内を見透かしたかのように言った。
 沖津は黙っていた。
「あなたは、わたしがお金目当てで結婚したと思っていらっしゃるのでしょう ? 無論、その思いもなかったとは言いませんけど、わたしが本当に結婚したかったのは沖津さんなんです。あなたを愛していたんです。あなたが好きだったんです」
 沖津には他人事を聞くような思いがしていた。確かな感覚でその言葉が耳に入って来る事はなかった。





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         桂蓮様

         有難う御座います
          それにしても桂蓮様は大変な努力家のように 
         御推察致します 年齢を話題にするのはちっょと
         と思いますが 今もなお そうして努力しながら
         何かを突き詰めようとする たいしたものです
          人間 日々 より良く生きる事に努力していれば
         人生に退屈している暇はありません
          何時も 好意的なコメントをしている訳ではなく
         思った事を文章にしているだけです
          なんの変哲もない文章に好意的なコメントなど
         出来るはずもありません 好意的と受け止められるのは
         御自分の文章の力 と思って戴ければ         
         「脳と体の比率」 人間の体って不思議なものですね
         いろいろな芸術家や運動選手 あるいはサーカスの人達の   
         想像を絶する演技 人間の体に不可能はないような気持ち
         になって来ます
          禅と運動 動と静 それでも人間の根本に在るものは
         変わらないようです
          有難う御座いました 一層の御活躍を
          また、改めて英文と一緒にこの御文章を読ませて
         戴きます



         takeziisan様

         コメント 有難う御座います
         どうか わたくしのコメントなど
         お気にかけずに読み流して下さい
         毎週一位を確保するブログ お忙しい中
         どうぞ 余分な労力を浪費なさらないよう 
         お願い致します かえって わたくしの方が
         心苦しくなってしまいます
          今週も楽しませて戴きました
         モザイク 大分 進んだ授業をしていた
         という印象です わたくしの方にはそんなしゃれた 
         授業はありませんでした 但し 掃除当番だけは
         ありました
          霧が峰の写真 楽園ですね
         それにしても よく山々をお歩きです 今となっては
         良い思い出なのではないでしょうか わたくしも家族旅行
         などで行った様々な場所を今では懐かしく
         思い出しています わたくしはどちらかというと西より  
         東の方に惹かれます 東北地方は好きです むろん西にも
         日本海側にはいい所が多いですね
          カラスウリも夜咲くんですね わたくしの所では
         月下美人が今年も咲きました
          スイミング教室後の一杯 見事な月の写真と共に
         グラスを片手の作者の姿がそこはかとなく浮かんで来ます
         ほのぼのとした気分に誘われます
          川柳 近ごろ チンプンカンプンだらけの
         世の中 それにしても気軽に読める川柳は楽しく
         笑顔を誘います
          一年前の今日 なんで こうなるの そんな
         思いで一杯です 良くなるどころか悪くなる
         現在の日本の姿を象徴しているようです
          何時も駄文にお眼をお通し戴き 感謝しております
         有難う御座います
 
         
 

 

 
 

遺す言葉(354) 小説 優子の愛(6) 他 芸術作品

2021-07-18 11:26:19 | つぶやき
          芸術作品(2021.7.15日作)


 芸術とは
 人間を映す鏡だ
 優れた芸術作品は
 どんな種類の作品であれ
 観る者の心を 人間性を
 的確に映し出す 
 人の内面 心の奥底をえぐり出し
 光りを当てる
 それこそが真の芸術作品
 美醜だけの判断は 浅薄
 誤り易い


 芸術の名に於いてシュールな世界を描く時
 リアリズムの裏打ちがなければ
 ただの奇想になる


 戯画は現実感に裏打ちされたものがなければ
 ただの駄洒落だ
 現実の中に根を張った戯画だけが
 真の価値を持つ




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          優子の愛(6)

 

 沖津は妻の道代には、かつての部下の結婚式だと偽り通した。
 道代は何も疑わなかった。小まめに沖津の身の周りに気を配ってくれた。
「御祝儀は持ちました ね。ハンカチは大丈夫 ?」
 沖津には、道代を欺いているという思いはなかった。
 道代との間には二十数年にわたって培(つちか)って来たしっかりとした絆がある。今更にそれが、少々の事で揺らぐなどとは考えられもしなかった。
「お式は何時からなんですか ?」
「十一時半からだって言ってた」
「車でいらっしゃるんですか ?」
「いや、タクシーで行く」
「だって、タクシー代が大変でしょう」
「五千円とかからないだろう」
「わたしは嫌ですよ。自分のお小遣いから出して下さいよ」
 日曜日の朝で、都内の道路も空いているだろうとは思ったが、時間的には余裕を持って家を出た。
 沖津は何故かクラス会にでも出席する時のような、奇妙な心のときめきを覚えていた。
 会場のホテルには三十分を越える時間の余裕を持って到着した。
 回転ドアを押して中へ入ると、案内板に滝口家の控え室が二階、「竹の間」と書かれてあるのが眼に入った。
 沖津はすぐ二階へ行こうとしたが、時間にまだ余裕がある事を知ると、取り合えずロビーの椅子で一休みしてからにしょうと考え直した。
 しばらくはロビーの隅のソファーで煙草を吹かしながらぼんやりと、考えという考えもないままに過ごしていた。
 受付カウンタの上の時計が十一時を十分程過ぎているのに気付いて腰を上げた。
 この時になって沖津は何故か、優子と改めて顔を合わせる事に不思議な緊張感と心の落ち着かなさを覚えていた。
 滝口家の控え室の前へ来ると沖津は何人かの人の後で来賓名簿に署名して御祝儀を差し出した。
「どうぞ、中へお入りになって下さい。もう、花嫁さんも支度が出来ていますので」
 受付係りの女性が言った。
 沖津は様子を見るつもりで室内を覗いた。
 明るい窓を背にして正面に白無垢の衣装を付けた花嫁が椅子に掛け、幾分かうつむき加減でいるのが見えた。
 傍に寄り添うように立って細やかな心遣いの気配りを見せているのが優子だった。
 沖津は入って行って挨拶をしようかと思ったが、なぜかふと、ためらった。
 すると優子は沖津のそんな気配に気付いたかのように咄嗟に顔を上げた。
 優子はすぐに沖津を認めたらしかった。一瞬、緊張した表情を見せたが、すぐに花嫁の肩に掛けていた手を離すと一言、花嫁に何かを言い、沖津の方へ小走りに走り寄って来た。
「お忙しい中、お出で戴いて本当に有難う御座います」
 沖津の前へ来ると優子は改めて丁寧に頭を下げて言った。
「いえ、こちらこそ、お招き戴いて有難う御座います。本日はおめでとう御座います」
 沖津も釣られたように他人行儀の挨拶を返していた。
「どうぞ、中へお入りになって、娘を見てやって下さい」
 沖津は優子の眼に微かに涙が浮かんでいるのに気付いた。
 沖津は何か意外なものを見る気がしたが、すぐに
「有難う御座います」
 と言って、優子に導かれるままに室内に入っていった。
 花嫁の傍には七十歳を越えたと思われる老婦人が立っていて何かを話し掛けていた。
 優子は二人に近付くと老婦人を特別気に掛ける風もなくてすぐに、
「娘の美奈子です」
 と言って、見知らぬ男を案内して来た優子に少し驚いたような表情でいる花嫁を沖津に紹介した。それからすぐに優子は、
「学生時代のお友達の沖津さん」
 と言って、娘に沖津を紹介した。
 花嫁はこの突然の出来事に訳が呑み込めない、といった表情を見せたが、そのまま少し緊張した面持ちで静かに頭を下げて挨拶した。
「本日は御結婚、おめでとう御座います」
 沖津は落ち着いた口調で型どおりのお祝いの言葉を述べた。
「有難う御座います」
 花嫁は静かに言って、また微かに頭を下げた。
「式場のお支度が整いましたので花嫁さんと御家族、御親戚の方々はお入り下さいませ」
 会場係りの男性が告げに来て言った。
「ほら、いよいよ本番だよ」
 傍らにいた老婦人が花嫁を励ますように笑顔と共に言った。
 優子が椅子を引いて立ち上がった花嫁は、一メートル七十センチの沖津とさして変わらない背丈をしていた。白無垢の花嫁衣裳がよく似合った。細面の目もとが優子にそっくりな美貌をしていた。
「綺麗な花嫁さんねえ」
 まわりで囁き合う声が聞こえた。



             六



 新郎はT大医学部を出て、都内にある国立病院に勤める医師だった。
 披露宴の席で並んで座った二人は、思わず溜め息を誘うような似合いのカップルだった。披露宴が済んだあと、午後も遅い便でヨーロッパへの新婚旅行に発つという事だった。
 披露宴は盛大だった。新郎新婦の友人達のスピーチが長々と続いて沖津はうんざりした。優子がこのスピーチをどのような気持ちで聞いているのだろう、と思うと沖津はなんとなく気になってそっと、その表情を窺がってみた。
 優子は人々の笑いにも新郎の友人達が投げ付ける露骨な冗談にも表情一つ崩さなかった。何かを思い詰めたように独り、ポツネンといった感じの雰囲気で静かに眼の前の料理に箸を走らせていた。沖津はその優子に気付いた時、ふと、ああ、昔の優子がここに居る、という思いに捉われた。
 最後になって新郎の両親と並んで新婚の二人から感謝の花束を受け取る時になっても優子は、笑顔こそ見せたものの、涙一つ見せなかった。花婿の両親が共に眼を真っ赤にしているのとは対照的な構図だった。
 沖津は披露宴が終わって会場を出ると、優子に一言挨拶して帰りたいと思った。しかし、優子の姿が見えなくてうろうろしていた。そのうちに取り残されたように最後になってしまい、仕方なくエレベーターに乗ってロビーへ降りた。
 ロビーでは今しがた披露宴の会場から出て来た人達でごった返していた。沖津はその中にも優子の姿を探したが、やはり見当たらなかった。それで諦めて帰ろうとして玄関出口へ向かった時、突然、背後から呼び止められた。
「沖津さん」
 優子の声だった。
 振り返ると優子が人の姿も幾分まばらになったロビーを、花嫁の控え室で見せた時と同じような小走りで走って来る姿が眼に入った。
「ああ・・・・」
 沖津はなんとなくホッとする思いで、思わずそう言っていた。
 優子は沖津の傍へ来ると、
「すぐにお帰りですか」
 と聞いた。
「ええ、今、帰ろうと思って一言挨拶だけでもと考え、探していたんですよ」
 沖津は言った。
「あのう、もし、宜しかったら少し、お時間を戴けませんでしょうか」
 優子はためらいがちな声で、遠慮深げに言った。
「時間 ? ええ、別に構わないけど」
 沖津もまた、優子の突然の申し出に戸惑い、ためらいがちに言った。
「御免なさい。突然、変な事を言ったりして」
 優子は言った。
「いいえ、構いませんよ。まだ、時間も早い事だし」
「御免なさい」
 優子はまた言ってから、
「このホテルを出て右側すぐ近くに " 梢 "という喫茶店がありますので、そこでお待ちしていて戴けませんでしょうか。わたくし、向こうの御両親に御挨拶してからすぐに伺いますので」

 優子は十分程遅れて沖津が待つ喫茶店へ来た。





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          takeziisan様

          有難う御座います
           今回もまた暫しの時間
          ブログ 楽しませて戴きました
          相変わらず豊かな自然 羨望 止まずです
          あの石のモニュメント 傑作
           扇風機 昨年も拝見しましたが 今年
          わが家ではクーラーを入れました この猛暑
          長く生きた人間には厳し過ぎます
          わたくしは血圧が低く上百 下六十前後しかありません
          何処も悪い所はないのですが 低血圧には殊に
          夏など苦労します 立ち上がる時など ふらっとする
          事があります 年齢考慮 用心のためクーラー購入です
           病院六時間 なんともはや・・・・
          川柳 相変わらず思わず笑い 空の写真 相変わらず
          お見事 花の写真 知らない花が数々 へえ
          そうなんだ 
           白い渚のブルース 懐かしのメロディー 甦るあの頃
           わが家の屋上菜園 小さなトマト きゅうり 
          ピーマン 初収穫 取れ立て新鮮 味 香り
          一味違う でも 畑仕事 くれぐれもお気を付け
          下さい 最近の気候 まさに異常です
           何時もお眼をお通し戴き 御礼申し上げます
           
          


          桂蓮様

          何時も有難う御座います
          「修行と稽古」
          目標を時間を掛けて達成する
          大切な事です でも
          出来なかった 不可能だった
          何も自分を卑下し 責める事はありませんですね
          遣り切る その事が大切です
          人はどの道 死に逝く存在 栄光も屈辱も
          死の前では総て無力 今現在 精一杯生きる
          その生きる事の中に人の喜びがあるのでは
          ないでしょうか
          運に恵まれ 成功した人より 不運の中でそれでも
          たゆまず努力する そんな人の方が人間としては
          はるかに立派ですし 名声 名誉 総ては俗世の   
          あだ花にしか過ぎません   
           桂蓮様は禅に通じておいでのようですし 
          禅の世界でも 「ただ 今を生きる」 その事を
          大事にしていますよね
           英文との読み合わせ なかなか読み進めません
          再読文でも興味は尽きません 面白いです 
          有難う御座いました  

           
          

 
 
 
 

遺す言葉(353) 小説 優子の愛(5) 他 雑感 五題

2021-07-11 12:17:55 | つぶやき
         雑感四題(2021.6~7月作)


 1 人間にとって一番大切な事は
   日常があり 明日が期待出来る
   という事だ

 2 捉われるな 
   捉われれば 心は 動かない
   何事にも捉われない 空の 心
   その心はいつでも 自由に羽ばたく
   羽ばたく心は 自在に
   虚偽にも 真実にも 
   到達出来る

 3 理論や知識を通して 物を見ている限り
   物事の真実に到達する事は 出来ない
   物事の真実はいつも 理論や知識を越えた
   その向こう 奥にある

 4 真に深く物事を知る人は
   やたらに ぺらぺら喋らない
   喋れないのだ
   総て 物事の本質には
   一言では喋り尽くせない 真実が
   その奥深くに 隠されている
   物事の真実を知る それには
   その物 本体に触れ
   自身の身体 五感で感じ取る
   それ以外に 方法はない

 5 人が日々を生きる行為は
   人の命を繋ぐ という行為であり 
   それが どのような行為であっても
   人の命を生きる 人としての行為であれば
   そこに 価値の優劣は生まれない
   人の命を生きる 人としての行為の総ては
   それなりに貴重であり
   美しい



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           優子の愛(5)



 優子の夫は、仕事を兼ねて地方へ行く事や海外へ出向く事が多かった。
 その、夫の留守の間に優子は沖津との時間を重ねた。ふた月に一度、あるいは三月に二度などという事もあった。
 なぜかその時、沖津は優子の中に、単なる浮気心で自分に会っているとは思えない、深いものを感じ取っていた。優子の自分に寄せる愛の感情、といったようなもので、それが痛いほどに伝わって来て、沖津はしばしば混乱した。
 だが、そんな混乱の中でも沖津は、優子との愛を重ねれば重ねるほどにその時間が離し難い,貴重なものに思えて来て、深まる迷いの心のままに関係を続けていた。
 優子もまた、自分からは決して、夫と別れるという言葉は口にしなかった。沖津は優子との後ろ髪ひかれるような別れの時間の中で何度も、離婚をして自分と一緒になってくれ、と口にしようとしたが、その度ごとに優子の結婚の経緯(いきさつ)が心に浮かんで来て、その言葉を口にする事をためらわせた。事実、今現在、優子は恵まれた金銭的環境の中にいて、その点では何一つ不足はないようだった。
 沖津には優子との迷いの深い、この曖昧な関係が何処まで続いてゆくのか、何一つ、判断が出来なかった。ただ、漠然と続く二人の関係の中で沖津は、取り止めのない迷いと心の揺れを深めてゆくばかりだった
 そして、そんな二人の関係に突然、終止符を打ったのもまた、優子の方からだった。
「わたしのここを触ってみて」
 と優子は言って、ベッドの中で沖津の手を自分の下腹部に導いていった。
「なにか感じる ?」
 愛を交わしたあとの潤いに満ちた時間だった。
「別に ? どうして」
「赤ちゃんが出来たの。二ヶ月になるわ」
 優子は言った。
 沖津はただ虚を突かれ、呆然とした。
「もう、会えなくなるわ」
 優子は言った。
「産むの ?」
 沖津はそう言うり仕方がなかった。
「ええ」
 優子の言葉に揺れ動く思いは微塵も感じ取れなかった。
 おれの子供 ?
 沖津の頭の中には当然、その思いが走った。
 だが、その思いは沖津の頭の中ですぐに否定に転じていた。
 その子供が自分の子供だと思う事に沖津は、己惚れを思った。
 優子は人妻なのだ。優子が家庭で夫と過ごす時間は、ふた月に一度や三月に一、二度会うだけの自分との時間よりは、はるかに多く、長いのだ。優子との再会後、二人で過ごした時間は一年と少しの間に何度あったのか ?
 沖津には優子が身籠ったのが自分の子供だと考える事が不遜に思えた。
「そうーー。俺は、なんて言ったらいいんだろう。おめでとうって言ったらいいのかな ?」
 沖津は揺れ動き、混乱する思いの中でそれでも、冷静に言葉を選ぶ事が出来た。
「そう言ってくれると嬉しいわ」
 優子は言った。
「旦那さんは知っているの ?」
「ううん、まだ言ってない。出張中だし」
「子供が生まれると知ったら喜ぶんじゃない」
「そう思うわ。待っていたから」
「いい母親になれると思う ?」
「なれると思うわ」
「もう、会えなくなるのは淋しさいけど、でも、仕様がないね」
「怒らないの ?」
 優子は咎めるように聞いた。
「なぜ、怒らなければならないの ?」
「わたしが勝手だと思わないの ?」
「だって、仕様がないじゃないか」
 沖津は無力感の中で言った。
「そうね。仕様がないわね。何時でもあなたはそうなんだから」
「どういう事 ? 暴力をふるってでも、きみを俺のものにしろって言うの ?」
「そんな事、言わないわ」
「じゃあ、どうしろって言うんだい。いいかい、俺を振ったのはきみの方なんだぜ。そして、きみは今、金持ちの御主人と恵まれた毎日を送っている。それでいいじゃないか。きみの結婚が間違っていたなんて、俺に言えるはずがないだろう。俺には、きみが今している以上の生活をさせてやる事なんて出来ないんだから」
「わたしの結婚が間違っていたなんて思わないわ。わたしが進んでした結婚なんだし、今の生活を壊すつもりもないわ。結局、仕様がなかったのよ。それだけの事よ」
「なぜ、そんな言い方をするんだ。御主人を愛していないのかい」
「誰も愛してなんかいないわ」
 優子は投げ付けるように言うと身体を起こし、ベッドを降りた。
 そして、優子と再び会う事もなくなった。電話が掛かって来ないのも前回と同じだった。
 沖津は今回もまた、そんな優子をあえて追う事はしなかった。今更ながらに沖津は、優子に関しては今度の事でも自分の中には始めから、遠いものでも見詰めるような諦めにも似た気持ちの働いていた事を意識した。
 多分、優子は自分の身体の中に出来た自分の分身と共に、これからは落ち着いた家庭生活を送ってゆく事になるだろう。そして、沖津もまた初めて、自身の生活の安定を望むようになっていた。
 沖津が結婚したのは、それからほぼ一年後だった。その結婚と共に沖津の心からは、過去はほとんど消え去っていた。妻の道代がつくり出す家庭の温かさが沖津の心を和ませた。沖津は家庭の安定と共に、人が変わったように仕事への情熱を傾けるようになっていた。



           五


 招待のあった結婚式は十月の最終日曜日、都内のホテルで行われた。





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          桂蓮様

          コメント 有難う御座います
          新作 拝見させて戴きました
          感覚というのは大切ですね
          感覚は理論を越えます
          それにしても坐禅がエネルギーを
          造り出す 勿論 理解出来ます でも
          その面白さです じっと坐っているのに
          エネルギーが必要なのか そう考えるのは 
          とんでもない誤解ですね
          一点に集中する これは何事によらず
          膨大なエネルギーを要します
          内にこもるエネルギー 放出されるエネルギー 
          いずれにしても自身の中に生まれるエネルギー
          それを一番効率よく発散 発揮出来た時 人は
          大きな仕事が出来るのではないでしょうか

            御質問 有難う御座います
          魅力的な女性
           見た目ではないですね
           美人でもつまらない女性がいます
           見た目は今ひとつ という女性にも  
           思わず引き込まれるような人がいます
           そのの違いは何か ? 結局 人間性ではないで  
           しょうか 女性には男性には持ち得ない体内に
           命を育む事の出来る特権があります 命を育む
           という事は優しさ 繊細さ を必要とします その
           優しさ 繊細さ 思いやり その心に満ちた女性は
           男性に取っては魅力的ですね 男には持ち得ないもの
           を持っている 魅かれます
            男らしさ
           これは一も二もなく 強さでしょうね
           単なる頑強 屈強という意味ではなく 精神的強さ
           体内に命を宿す事の出来る女性を守り切るーー女性を
           単なる弱いものとして捉えるのではなく 一つの
           命を育む繊細な存在としての女性ーー
           その女性を守り切る精神的強さ 
           それを持った人こそが男らしい男と
           言えるのではないでしょうか 
           空威張りは男らしさではありません
            人間らしさ
           これは命の尊さを自覚する事の出来る知性を持つ
           その事に尽きるのではないでしょうか
           命の尊さを知らない人間 他者の苦悩を実感出来ない
           そんな人間は野生の動物と一緒です 
           他者を思い遣る心 それがあってこそ初めて
           人間だと言えるのではないでしょうか 人間は
           一人では生きられない 人の輪の中でしか
           生きられない その知性を持たない人間は
           人間の形をした動物にしか過ぎません
            上品な人 下品な人
           上品な人は他人の立場を思い遣る事の出来る人
           ではないでしょうか 自分をただ売り込む
           それだけの人間は上品とは言えません
           トランプ元大統領 あの人が良い例です
           どう見ても上品とは言えません ただ自分の
           我を通す 下卑た行動です 下品です
            人は六対四の立場で自分を保持する
           これが一番良いのではないでしょうか
           六を他者に四を自分に 人は控え目である方が
           美しく見えます かと言って 控え目であり過ぎる
           これもまた いけません 他者に無視される
           危険性もありますし また 見苦しく見えたり
           他者に不快な感情を抱かせる場合もあります
           何事も過ぎたるは及ばざるが如しで その兼ね合いを
           旨く捕らえ得る知性を持った人 そんな人が上品に
           見えるのではないでしょうか
            以上 勝手な思いを並べ立てましたが
           わたくしの認識はそのようなものです
            桂蓮様はどのようにお思いでしょうか 改めて
           良い勉強をさせて戴きました
            いつもつまらないブログにお目をお通し戴き
           感謝申し上げます 有難う御座いました



           takeziisan様

           有難う 御座います
           今週もまた 楽しませて戴きました
           相変わらずの美しい写真 クスッと笑える川柳 
           それにしても川柳 天使も歳を取るんですかね
            二年前とさして違わない世の中 人間の力 存在
           など 小さなものだと つくづく実感させられます
            遠野 何時見ても懐かしい風景です 遠野物語が
           自ずと浮かんで来ます
            雑草の山 それにしても・・・よく体力が続きます
           ドクダミ 八重 初めてです この白い花が好きで
           庭に咲くのを放置していますが 終わると即座に
           引き抜いてしまいます 蚊の群生場になりそうな
           気がして
            「月光価千金」わたくしに取ってはやはり
           エノケンです 「エノケン ロッパ」喜劇王
           エノケンは早くに亡くなりましたが ロッパは 
           日劇の前で出会った事があります 
           一口に喜劇俳優とは言えない知性が感じられて
           感じ入った事を覚えています
            それにしてもこうして拝見させて戴けるのも
           週に一度の短い時間なので あれもこれも と
           思っているうちについ 失念してしまうものが
           あります 先日も広沢虎造の浪曲を拝見して
           懐かしいな と思い 春日井梅鶯が千葉県房州の   
           出身であった事から ちよっと得意に思った事などを
           書きたいと考えたのですが、失念してしまいました
           梅鶯の「赤城の子守唄」三門博の「唄入り観音経」  
           綾太郎の「壷坂霊験記」など 昔の人達の芸には
           重みがありました 
            何時も懐かしい映像 楽しく
           拝見させて戴いております
            有難う御座いました
            
           
           
   
                    
           
           

        
           
           


 



  
   
   

遺す言葉(352) 小説 優子の愛(4) 他 時よ 止まれ 

2021-07-04 13:00:53 | つぶやき
          時よ 止まれ(2021.6.25日作)


 時よ 止まれ
 願わくば
 父や母の笑顔の輝いていた
 あの頃に戻してくれ
 わが青春の輝いていた
 あの日々に戻してくれ
 今はただ 失われただけのもの
 あの幾多の恋
 愛した人の数々
 記憶の底に堆積する
 あの事 この事
 喜び 悲しみ 怒りと嘆き
 すべては幻
 遠い日の還らぬ夢
 独りたたずむ時の流れの中で
 過ぎ去りし日々の記憶は
 ふたたび還り来ぬ道ゆえに
 いよいよ鮮やかに 美しく 切なく
 日ごと 迫り来る時の終わりは
 重たく心を覆う



           ----------------



           優子の愛(4)

 優子からの電話も来る事はなかった。
 それでも沖津には、なぜか優子の切羽詰ったような、尋常ではない表情が気に掛かっていた。あの時、強引にでも優子を引き止めるべきだっのか、と何度も考えたが、今となっては、それも虚しかった。相手が資産家だというその財力を考えると、自分がいかにも無力に思えた。優子は生活の安定を第一に考えたのだ、そう思って自分を慰めるより仕方がなかった。
 沖津は優子のいない日々の中で、心の底が抜けたような苦しみに耐えながら努めて、優子の事は忘れようとしてといた。

 あの夜、沖津は人々の視線から逃れるようにバーを出たあと、優子をホテルへ誘う気にもなれないままに、夜更けの街を歩き続けた。しばらく歩いて幾分かの落ち着きを取り戻して来た優子はようやく、何気ない言葉の遣り取りのうちに結婚を考えるようになった経緯(いきさつ)を話し出した。
 学生時代から身辺を語る事の少なかった優子にしてみれば異例の事だったが、状況を考えれば不自然ではなかった。
 その優子によれば、結婚の話しは伯父の口から出た事だった。だが、伯父は何がなんでもという訳ではなかった。伯父にしてみれば、軽い冗談の心算だったらしかった。
「どうだい優ちゃんも、こんな資産家と結婚したら一生、生活に困らなくて済むぞ」
 と言ったが、優子の思わぬ乗り気に伯父自身が一番驚いていた。
 伯父は優子の母の兄だった。母は優子が十一歳の時に亡くなっていた。過労が元の急性肺炎だった。父は優子が八歳の時に女をつくり、家に帰らなくなっていた。
 一人になった優子は伯父の下に引き取られ、何不自由なく大学時代までを過ごした。卒業と同時に自立の意味もあって、伯父の家を出る事になった。伯父も反対はしなかった。
 沖津は大学時代、優子が中野から通っていた事は知っていたが、そこまでの深い事情は知る由もなかった。学生時代、特別に深い関係にあった訳でもない沖津にしてみれば知らないのも当然だった。
 だが、優子はその夜、伯父さえも驚いたという突然の結婚に至るまでの自身の心の裡までは話さなかった。
 その半年後に優子は結婚した。沖津が後になって知った事だった。



          四



 優子から思い掛けない電話があったのは、優子が結婚してから一年半程が過ぎてからの事だった。その時、沖津は優子が結婚していたとは知らなかった。
「わたくし、優子です」
 そう言った声が堅く、明らかに緊張気味であるらしい気配が伝わって来た。
「ああ・・・・」
 沖津は言ったが、突然のその電話には嬉しさよりも、戸惑いの方が強かった。それからぼそぼそした声で仕方なくといったような調子で、
「しばらく・・・・」
 と続けた。それでも不思議にわだかまりはなかった。懐かしさにも似た感情さえがあった。
「突然、お電話などして、御迷惑ではなかったでしょうか」
 優子は丁寧な口調で言った。
「いや、構わないですよ。大丈夫」
 沖津は優子の気持ちをほぐすように打ち解けた口調になって言った。
「あのう、今日、お仕事が済んだあと、何か御予定はおありですか ?」
 優子は遠慮がちに言った。
「いや、別に・・・・ない・・けど」
 沖津は優子の思い掛けない言葉にさすがに戸惑いがちだった。
「宜しかったら、お会いして戴けません ?」
 優子は言った。
「ぼくの方は構わないけど・・・・」
 以前、結婚すると言っていた話しはどうなったのだろう、とその時、沖津は思った。何かその話しに関する相談なのだろうか ?
「御都合、宜しいですか ?」
「はい」
 優子は以前、よく待ち合わせたホテルのロビーを指定した。

 沖津は会社が退けたあと、中途半端な時間を持て余し気味で、それならという思いで優子が指定した午後六時の約束よりは大分早くホテルに来ていた。
 優子は六時五分ほど前に姿を見せた。玄関入り口の回転ドアを押して入って来る優子の姿を一眼見た時、沖津は優子が結婚している身である事を悟った。独身時代とは明らかに違った落ち着いた雰囲気が既にその身を覆っていた。
 沖津は奇妙な緊張感に捉われた。二人の間で親しかったあの打ち解けた雰囲気が無惨にも葬り去られてゆく思いを実感した。
 沖津が声を掛ける前に優子がソファーにいる沖津を見つけた。
 沖津は優子と眼が合うとソファーを立ち上がった。
「御免なさい。お待たせしてしまったりして」
 優子は沖津には懐かしい笑顔で言った。
「いや、ぼくも今、来たばっかりで、ちょっと煙草に火を付けたところなんです」
 と言った。
 優子の何処とない、以前にはなかった大人の雰囲気が沖津を他人行儀にさせていた。
 優子は一見シンプルなスーツ姿だったが、身に付けたアクセサリーには一眼で高価なものと判る雰囲気があった。それが否が応もなく二人の離れていた歳月を沖津に感じさせた。
 二人はほぼ向き合う形でそれぞれにソファーに腰を落ち着けた。
「突然、お呼び立てなどして、御迷惑ではありませんでしたか」
 優子はすっかり身に付いた感じの落ち着いた物腰で、それでも昔のままの少しはにかむような表情を浮かべて言った。
「いや、大丈夫。明日は休みだし」
 沖津は努めて何気なさを装い、昔のままのように言った。
「どなたかと、お約束などあっりしたんじゃないですか ?」
 優子は言った。
「いや、別に。仕事が終われば何時もの通り、相変わらずの寄り道ぐらい」
 優子は軽い笑顔を浮かべた。それから極自然な口調でためらうこともなく、
「わたくし、結婚したんです」
 と言った。
 沖津に取っては改めて驚く事ではなかった。既に察知していた事だった。
「やっぱり、話していた人と ?」
 静かに言った。
「ええ」
 優子も構えるところはなかった。
「どう、結婚生活は。幸せ ?」
「ええ」
 と、優子は同じように言ったが、それでも沖津はなぜかその時、その言葉の中に優子の微妙に揺れ動く心があるように感じ取っていた。学生時代、数々の男達を悩ませた、あの得体の知れない何時も遠くを見ているような眼差しの優子を沖津はふたたび、そこに見ていた。
 沖津はだが、その時、あえてそこには眼を向けない思いが強く働いた。それで今まで通りの何気なさで、
「今日は、どうして ? 何かついででもあっの ?」
 と聞いた。
「いいえ、そうじゃないの」
 優子は言ってから、
「主人が旅行で留守にしているものだから、久し振りでお会いしてみたくなったの」
 と言った。
「いけないね。 御主人のいない間の浮気なんて」
 沖津は冗談めかして言った。
「浮気じゃないの。本当なの。よく考えての事よ」
 優子はむきになったとも思えるような強い口調で言った。
 沖津にはだが、優子のその態度は理解出来なかった。
 何を言っているのか、沖津の理解を超えていた。それで沖津はただ冗談めかして、
「じゃあ、今日は久し振りに食事でもして、呑みに行こうか ?」
 と、昔に還ったような気分で言った。

 
 沖津には何故、優子が自分との時間を求めたのか理解出来なかった。 





          -------------------



          takeziisan様

          コメント 有難う御座います
          こうして書かせて戴いているのも
          わたくし自身 楽しませて戴いている
          事ゆえですので どうかお気に留めずに
          いて下さい 無論 いちいちのコメントなど
          御気をお使いなさらないよう お願い致します
           今回もブログ 楽しませて戴きました
          キョウヨウ 面白いです 初めから
          趣旨は理解出来ましたが なるほどいう
          思いです
           病院は何処も半日がかりですね どうぞ
          奥様共々 お体に気を付けて下さいませ 歳と共に
          少しの事でも身体に響いて来ます 若い頃には
          考えられなかった事ですね
           「雨に咲く花」関種子 懐かしいです
          わたくしは青江三奈の歌が好きです 確か
          アメリカ映画の挿入歌にも使われたはずです
           九重山 今朝(7月4日)NHK番組 「小さな旅」で
          見たばかりでした ミヤマキリシマ つつじが
          見事でした ブログにあるような風景が
          映し出されていました それにしてもよく
          お歩になって良い思い出も多いのではないでしょうか
          「坊がつる賛歌」知っていましたが こうして
          改めて聞いてみるといい歌ですね
           中学生日記 良い日記です これだけのものが
          書ける 感銘しました お見事です
           老年川柳 哀愁があって 俳句とも呼べる
          ものです いつも通り 野菜 花々共に
          楽しませて戴きました
            有難う御座いました
           
       


          桂蓮様

          いつも御丁寧なコメント
          有難う御座います
           北朝鮮との統一反対 いやな感じしか持てなかった
          気の毒なのは北の国民の皆さんなのでは
          ないでしょうか あえて反対を唱えれば
          罰せられる 国民の人達も苦しんでいるのかも
          知れません 人はそれぞれ自分を生きる権利を
          持っているはずですが 独裁国家はそれが  
          許されない 不幸な事だと思います
           ブログ 肌トラブルの自然治癒
          自分の身体の事は自分でしか解決出来ない
          その通りだと思います 以前 わたくしは
          花粉症があり 眼などが真っ赤に張れ上がったり 
          したのですが、指圧をして自分で治しました
          今は出ません 自分の身体の事は自分でしか
          直せない まったくその通りです ここ二三日
          天候不順でそのせいか喉を痛めたらしく 物を
          呑み込むのにも違和感があります 一生懸命に
          指圧をしているところです 薬は飲みません
          基本的に薬は害だと思っていますので
           何時も有難う御座います 英文との併読
          楽しませて戴いています