遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(532) 小説 <青い館>の女(21) 他 視点

2025-01-26 11:49:08 | 小説
              視点(2024.12.26日作)


 

 人は自分の視点でしか 
 物を見る事が出来ない
 自分の見た物が 唯一 真実と思い込む
 この世界には 他者の視点も存在する
 他者の視点 自分の視点
 異なる
 人それぞれ 異なる視点 異なる世界
 その真実
 繋ぎ得るものは人の心 精神性
 地球上 様々な生き物 動物達の中
 人だけが持つ心 精神性
 心と精神性 互いに張り巡らし 結び合う時
 生まれるものは巨大な一つの輪 一つの世界
 その時 初めて 人は人として その正道
 真実の道を歩む事が出来る
 自己の視点 他者の視点
 他者の視点を想像し得ない人間 人間以下
 一般的動物と異なる事は無い




            ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




              <青い館>の女(21)




 
 今、此処でこうして居る自分は一体、どういう存在なのか ?
 自分の身に何があったのか ?
 身動き出来ない自分に対しての現実感が感じ取れなかった。
 あの社長室に居た自分と、今此処にこうして居る自分との間の深い溝。
 総てが空白の中にあった。
 自分が心臓発作で倒れ、病院に運び込まれたと理解したのは何日かが過ぎてからだった。
 あの激痛とそれに先立つ胸の締め付けられる様な圧迫感、受話器を握ったまま少しずつ増して来る痛痒感を頻りにワイシャツの上から擦っていた事が鮮明な記憶として甦る。
 現在に至る総てがそこから始まっていた。
 今でもふとした瞬間に襲って来る胸部の圧迫感と微かな痛みが瞬時にわたしを恐怖のどん底に落し入れる。
 気力を奪われ、暗然とした思いの中で屍としての自分をそこに見い出す。
 人生は終わった。
 呟きの中で恐怖との闘いのみが残された自分の人生の様に思えて来て絶望の淵に沈み込む。
 愚かな事だ !
 屍としての自分が一体何故、死の恐怖と闘わなければならないのだ 。
 死ぬ事がそんなに怖いのか ?
 何故、こんなにも死を恐れているのだろう ?
 この世の中に未練を残す何かが在るとでも言うのか ?
 何にも無い。 
 空虚が見えて来るだけだ。 
 それでいて、心の底から湧き上がって来る死への恐怖は一体、何処から来るのだろう ?
 何を意味しているのだろう ?
 既に明け方近かった。
 漁港の方からはなんの物音も聞こえて来なかった。
 まだ、漁船が出て行くには早い時刻なのだろうか ?
 それとも、総ての漁船が出てしまった後なのか ?
 わたしは深い眠りから醒めたばかりだった。
 加奈子は眼を醒ましていて目醒めたばかりのわたしと視線が合うと無邪気な笑顔を浮かべた。
 その表情が昨夜の加奈子を思い出させて愛しさを誘った。
 愛しさに誘われるままにわたしは加奈子の細い身体を抱き締める。
 加奈子はわたしの不可能な事は分かっていても、嫌がる素振りも見せずにわたしの為すがままに身を寄せて唇を合わせて来る。
 長い抱擁の後でわたしは加奈子の肉体を解き放す。
 加奈子は依然として嫌な表情一つ見せなかった。
 部屋を出る直前になって加奈子は二つ折りにしたバッグの中から小さな物を取り出してわたしの前で振って見せた。
「これ、要らなかった」 
 楽し気に笑いながら言った。
 わたしの知り尽くした"物"だった。
 わたしは笑顔で答えただけだった。
 港の遠い何処かで船のエンジンの弾ける音がしていた。
 それが幾つも響き合い、重なり合って長く続いた。
 ホテルを出るとまだ暗さを残した通りには頻りにトラックの行き交う姿が見られた。
 港の動き出した気配が伝わって来た。
 なかなか来ないタクシーを探しながら海岸ホテルの方角へ向かって二人で歩いた。
「これから、どうするの ?」
 加奈子に聞いた。
「家へ帰って寝ますよぉ」
 加奈子は当然の事の様に言った。
「家は近いの ?」
「近くはないけどぉ、そんなに遠いって言う事もないんですよぉ。歩いても行けるからぁ。この奥の方なんですけどぉ」
 左手の街並みの方角を指差して加奈子は言った。
 彼方に遠い山脈(やまなみ)が黒い影を作っているのが見えた。
「一人で住んでるの ?」
「そうですよぉ」
 加奈子は当然だ、という様に軽い非難を込めた口調で言った。
「誰か、友達と一緒に住んでるのかと思った」
 非難の口調に答える様にわたしは言った。
「でもぉ、一人の方がぁ気楽だしぃ」
 何となく沈み込んだ翳りのある口調で加奈子は言った。
 その沈み込んだ口調が何かしらの複雑な事情を想像させたが、それ以上に深く追求する気も起らなかった。
「今度また、こっちに来た時には会ってくれるかなあ」
 とだけわたしは言った。
「ええ、構わないですよぉ。今度みたいにまた電話をして貰えたらぁ、お店を休みますからぁ」
 加奈子は明るさを取り戻した口調で言った。
 その加奈子が手にしたバッグには先程わたしが渡した十万円が入っている。
 漸く一台のタクシーが遠くに姿を見せて来た。
 加奈子はそのタクシーを見ると、
「わたしは道が違うのでぇ、別の所で探しますからぁ」
 と言って足を止めた。
 昨夜、わたしが人目を警戒した事を覚えていたらしかった。
 わたしは加奈子を残して一人だけタクシーの来る方角へ向かって足を進めた。
 
 その日、ホテルへ帰ってから二時間程の睡眠を取った。
 その後、食事を済ませて帰路に着いた。
 東京へ帰ってからの日常には格別の変化も無かった。
 加奈子と会った事なども日常の雑務に追われる中で何時の間にか忘れられていた。
 季節は東京でも寒さに向かっていた。
 何時また変調を来すか分からない肉体が、依然として心を煩わせていた。




             ーーーーーーーーーーーーーーーー




               takeziisan様


                冬枯れの季節 散歩も楽ではない事だと想像出来ます  
               でも 身体は動かさなければ駄目 衰えるだけ
               昨日 ちょうどその様な文章を一篇纏めた所です
               近いうちにこの欄にも掲載する心算でいます
               何れにしても身体が動くうちが華 せいぜい頑張って下さい
                冬枯れ 頬白 懐かしい絵です 子供の頃が思わず蘇りました
               松林のまだ低い木々の間に「バッタン」を仕掛け
               捕ったものでした
                バッタン 竹と藁で編んだ縄を組み合わせて
               楕円形の小さな網を括り付け そこに鳥の好む餌を置き
               鳥が突くと網が倒れて鳥を捕獲する仕掛けです
                いろいろな鳥が居ましたが頬白は特に人気でした   
               寒さにも係わらずそうして冬枯れの野を歩き廻っていた事が思い出されます  
               懐かしい思い出です
                「じい散歩」ブログそのまま 面白い偶然ですね
               現代小説は読んでいませんので今どんな作家が居て 
               どんな作品が評判なのかも分かりません
               その意味でブログ内の小説案内は興味深く拝見しています
               何れにしても寒い季節 お身体にお気を付け下さい
                有難う御座いました

  



      


















































 
 
 
























          

遺す言葉(531) 小説 <青い館>の女(20) 他 忘れてならないもの

2025-01-19 12:15:43 | 小説
             忘れてならないもの(2024.12.16日作)



 
  命の終わり 死は
  常に身近 傍にある
  其処にも 此処にも
  一寸 一歩先は 誰にも分からない
  今 この時は 永遠ではない
  常に変わりゆく 今 この時
  人に出来る事は只今現在
  今を生きる 生きる事
  それでも人の命は日々 時々刻々
  失われて 逝く
  失われ逝く 人の命
  朝に生まれて 夕には沈む太陽
  沈む太陽 夕陽が今日も
  遠く彼方 山の端 海の向こう
  ビルの谷間に消えて行く
  沈む太陽 夕陽を見詰める
  日々の幸せ
  人が人としての命を全うする
  この尊さ 貴重さ 
  忘れてならないもの




            ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




              <青い館>の女(20)



 
 
 片側二車線を持つ大通りに行き交う車の影は無かった。
 漁港に関連した仕事を持つ家が多いのだろうか、通りに面してそれらしい看板を掲げた二階建て、三階建ての家々も悉く鎧戸を降ろして静まり返っていた。
 公園は漁港に隣接して海に臨んだ場所にあった。
 加奈子が立っている辺りには大きな樹木が歩道の上にまで枝を延ばしていて、黒々とした影を作っていた。
 公園を囲んで作られた石垣の上には歩道に沿って整然とした連なりの柵が見られた。
 石畳みの歩道に早くも散り敷いた落ち葉が見えるのは此処が北国の故にか ?
 タクシーは加奈子の立っている前を通過して、なお進んだ。
 加奈子の姿を確認していながらわたしは、その前で車を停めさせる事を躊躇した。
 運転手に悟られるのを怖れた為だった。
 この狭い街では何処から噂が広がるか分からない。
 加奈子は暗闇に立ったまま不審気な様子で自分の前を走り去るタクシーを見詰めていたが、中の乗客がわたしだと認識していたのだろうか。
 加奈子の姿が小さくなった辺りで車を止めさせた。
 二枚の千円札を渡して釣りは受け取らなかった。
 タクシーはそのまま走り去った。
 その影が小さくなると加奈子の居る方へ戻って歩き始めた。
 暗闇の中で不審気に走り去るタクシーを見詰めていた加奈子もそれでわたしだと気付いて歩み寄って来た。
「タクシーがそのまま行っちゃったんでぇ、分からなかったのかってぇ心配したんですよぉ」
 加奈子は何故かホッとした様な笑顔と共に親し気に言った。
「運転手に知られると拙いと思ったんだ」
 わたしは言った。
「ホテルの前から乗ったんですかぁ」
「そう」
 加奈子はわたしの返事を聞くとそのまま先に立って歩き始めた。
「これから何処へ行くの ?」
 加奈子の背中に聞いた。
「歩いてもぉ七、八分の所ですからぁ、すぐ近くですよぉ」
 加奈子はなんの翳りも見せない声で言った。
「ホテル ?」
「はい」
 公園を囲む作が切れて漁港の入り口に出た。
 幾つか並ぶ建物の間から暗い海が鈍い光りのうねりを見せているのが見えた。
 桟橋に繋がれた小型漁船の一群が微かな波に小さく揺れて黒い影を作っていた。
 加奈子はその漁港を背にして四車線の通りを青信号で渡った。
「寒くないですかぁ」
 海から吹いて来る風が路上の枯れ葉を転がして過ぎて行った。
「うん、東京から比べたらずっと寒い。コートが欲しいぐらいだ」
 思わずそう言ったが、その寒さが改めてわたしの体調不良を意識さた。
 寒さの訪れ時期は何時も胸の圧迫感に怯えるのだ。
 呼吸と共に吸い込む寒気が直接心臓に触れて、その筋肉を収縮させるかの様に息の詰まる感覚に捉われる。
 その不安を隠してわたしは、加奈子が腕を絡ませて来るのに任せたまま歩いて行く。
 通りはやがてゆっくりと右に曲がって夜の中にポツンと明かりを点した<ホテル みなと>の白い看板が見えて来た。
「あそこ ?」
 わたしは聞いた。
「はい」
 加奈子は言った。

 ラブホテルと言うよりは連れ込み宿と言った趣の建物だった。
 誰とも顔を合わせずに部屋へ入れた事に安堵した。
 畳の部屋には低いベッドが置かれていた。
 傍の障子を開けると大きな鏡があった。
 突然映し出された自分の姿に狼狽した。
 慌てて視線を反らした先には浮世絵風に男女の絡みを描いた絵が掛けてあった。
 テレビがあった。
 点ければAVビデオの映像が流れるだろう事は想像出来た。
 浴室とトイレが次の間に在るのは部屋へ入るのと同時に眼に入った。
「こういう所へはよく来るの ?」
 自分の部屋へ帰ったかの様に落ち着き払っている加奈子を見て聞いた。
「あんまりは来ないけどぉ、時々はお客さんと来る事がありますよぉ」
 加奈子は悪びれる様子もなく言った。
 極めて自然なその態度が彼女達にはこんな行為も当たり前なのだろうか、と思わせた。
 その夜、わたしと加奈子は朝までの時間を過ごした。
 加奈子は店に居る時そのままに、疲れては眠り、また目覚めては愛撫を交わして揺蕩(たゆた)う様に眠りに入っていった。
 自分が不可能でいながらもなお執拗なわたしに加奈子は嫌な顔一つ見せなかった。
 わたし自身は少しずつ高まる昂揚感の中でも依然として、実際の行為は不可能だった。
 昂揚感と共に増して来る、胸元の締め付けられる様な感覚が過去にわたしを襲った発作の記憶を蘇らせて、わたしの意志の総てを奪って行く。
 意識を失い、自分が自分でいられなくなる事の恐怖。
 わたしの脳裡には病院の医師や看護師の白い衣服に囲まれて目醒めた時の記憶が今でも鮮明に焼き付いている。
 何故、俺はこんな所に居るんだ ?
 記憶が途切れていた。
 人工呼吸の器具を付けられ、ベッドに横たわっている自分が自分である事の感覚が掴めなかった。
 ついさっきまで社長室で電話の受話器を握っていた自分の姿しか思い浮かんで来なかった。




             ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




               桂蓮様


                コメント 有難う御座います 
               このところ記事も余り拝見出来ませんでしたので
               やはり体調不良か と思っていました
               お元気な御様子 何よりです
               相変わらず仲睦まじいパートナーの方との日々
               拝見する方も心暖かくなります
                御文章 久し振りに拝見しました
               英語は不案内なのでよく分かりませんが 日本の学校で習う英語は
               全く役にたたないと言われます やはり現地で実際に体験する
               その貴重さが和文の中に良く表れています
               面白く拝見しました
               御自身もそうして少しずつアメリカ人としての色彩を纏ってゆくのでしょうね
               どうぞ これからもお幸せな日々をお二人で紡いでいって下さい
                お忙しい中 コメント 有難う御座いました



                  takeziisan様


                 今年は何か弱気な姿勢がほの見える気がして
                ちょっと寂しい気がします
                どうぞ 弱気にならずに頑張って下さい 
                人間 気力を失くしたら終わりだと思います      
                 疾患などを抱える身とか いろいろ拝見してやはり
                不安は拭えないだろうなとは御推察出来ます
                お互い 老齢の身 日々の生活にお気を付け 
                これからも楽しいブログ続けて下さい
                  -四℃ この辺りではちよっと想像出来ません            
                それだけこの地方は気候的に恵まれ 温暖なのかなあ などと思っています     
                 白菜の黄色くなった写真 農家の方々の苦労が偲ばれます
                やれやれ 実感出来ます
                それにしてもこの頃の野菜の高い事 家計的には大痛手です
                お写真を拝見して改めて羨ましく なんと贅沢なと思います
                 ウルフムーン 「碧空」 楽しませて戴きました
                若い時代の一時期流行ったタンゴ 懐かしく聴きました     
                 コピー つまらない文章ですが何かお役にた立てる事があるとすれば
                嬉しい限りです
                何時もわたくしの実感を素直に記しています
                これからも楽しく拝見させて戴きます
                忙しい日常を過ごす中での束の間の安らぎです
                 有難う御座いました        

















遺す言葉(530) 小説 <青い館>の女 (19) 他 人ではなく命

2025-01-12 12:11:04 | 小説
             人ではなく命(2024.12.12日作)


               ( スタッフの皆様へ
              今年もお手数をお掛けしますが
              宜しくお願い致します )



 
 人を 一人の人間として見るのではなく
 一つの命として見る
 人を 人間として見る事によって
 国々 地域 環境毎に 差別が生まれる
 あの国 この国 あの地域 この地域
 この環境 あの環境
 命に差別は無い
 どの命も一つの命
 一つの命は 一度失われれば
 再び 戻る事は無い
 どの国 どの地域 どの環境に於いても
 同じ事 誰の命も命は一つ 一つだけ
 一度断たれた命の再び戻る事は無い
 命に優劣 差別は無い




            ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




             <青い館>の女(19)



 
 約束は生きていた。
 安堵感と共にわたしは、
「何時(なんじ)ごろ、何処で会えるのかなあ」
 と聞いた。
 わたしが自ら会う場所を指定するには、余りにこの街に付いての知識が乏しかった。
「ホテルでいいですかぁ」
 加奈子は言った。
「ホテル ?  何処の ?」 
 思わずたじろいだ。
 咄嗟に自分が今居るホテルが頭を過ぎった。
 この漁港街の小ささが意識の内にあった。
「ラブホテルなんですけどぉ、駄目ですかぁ」
 わたしのたじろぐ気配に気付いたのか、加奈子は躊躇いがちに言った。
「いや・・・、構わないよ」
 一先ずは落ち着きを取り戻してわたしは言った。
「じゃあ、時間なんですけどぉ、何時ごろがいいですかぁ」
 早速、加奈子は本題に入って明快な口調で言った。
 その口調が、仕事の打ち合わせでもしているかの様に拘りがなくてわたしは思わず笑い出しそうになった。
 お買い上げ、有難う御座います。お届けの時間は何時ごろが宜しいでしょうか・・・・
 そんな光景を思い描きながらわたしは、
「君は何時ごろがいいの ?」
 と聞いた。
「わたしの方はァ、お店の始まる時間が過ぎしまえば、何時でもいいですよぉ」
 相変わらず屈託の無い声で加奈子は言った。
「じゃあ、九時ではどうだろう ?」
 わたしは言って、突然、自分が今している事に対しての激しい嫌悪感に捉われた。
 俺は一体、こんな所で何をやってるんだ !
 自分が暗闇でごそごそ人目を避けて秘かに欲望を満たそうとしている、陰気で暗い若者の様に思えて来て惨めな思いと共に、受話器を置いてしまいたい衝動に駆られた。
 だが、受話器を置く事はなかった。
 その前に聞こえた受話器の向こうの加奈子の声がその衝動を抑えていた。
「九時ですかぁ、いいですよぉ。何処でぇ待ち合わせしますかぁ」
 加奈子は言った。 
「何処がいいのか、わたしには分からないけど」
 沈み込んだ気分のままにわたしは曖昧に言った。
「今、何処に居るんですかぁ、海岸ホテルですかぁ」
 加奈子は言った。
「そう」
 わたしは言って、ふと、不安になった。
 加奈子はわたしが居るホテルをズバリと指摘して来た。
 その思いが頭を過ぎると共に、この狭い北の街の中では総ての行動が人々の眼にはお見通しになってしまうのではないか ?
 だが、今更どうにもならない事だった。
 加奈子は、
「じゃあ、わたしが海岸ホテルまで迎えに行ってもいいてすよぉ」
 と言った。 
「いや、別の場所で会った方がいい」
 わたしは慌てて言った。
 加奈子がわたしの部屋へ来ると言ったのか、単に、迎えに来ると言っただけなのか、判断は出来なかったが、兎に角、このホテルからは出来るだけ遠い方がいいという防御の思いが先に立った。
「ホテルに近い処がいいですかぁ」
 加奈子は何故か、ホテルに拘った。
 わたしはその言葉と共に、何時だったか眼にした港の近くの公園を思い出していた。
 あの公園なら、夜の九時ともなればこの小さな港町では訪れる人も少ないのではないか ?
 安心感に満ちた思いと共にわたしは言った。
「ほら、港の近くに公園があったね、あの公園の入口で待っていてくれないか」
「港の方ですかぁ。でも、ホテルからは随分、遠くなりますよぉ」
 加奈子は不審気に言った。
「うん、構わないよ。タクシーで行くから」
 新店舗の前を通らなければならなかったが、タクシーで行くのなら人目に付く事もないだろう。
 店の閉店時間が九時なので、店員達の帰りの時間とかち合う事もないはずだ。
 それまでは、ホテルの部屋に籠っていよう。
 店長や川本部長はわたしが東京へ帰ったものと思っているだろう。
「じゃあ、わたし、それまでに行っていますぅ」
 加奈子は言った。
「ホテルはすぐ取れるの ?」
 わたしは聞いた。
「ええ、大丈夫ですぅ」
 加奈子は馴れた事の様に言った。

 タクシーが公園の入口に近付くと、街灯の灯りの切れた闇の中で、透かし見る様にしてこちらを見ている加奈子の姿が見えて来た。




              ーーーーーーーーーーーーーーーー




                takeziisan様


                 コメント有難う御座いました
                今年 初めてのブログです
                昨年中はいろいろ楽しい記事 有難う御座いました
                今年も宜しくお願いします
                 冬枯れ 雪景色 何処も彼処も冬真っ最中
                我が家の近くの公園も冬枯れ景色 それはそれでまた
                異なった趣の美しさがあります
                 雪景色 心洗われる様な美しさですが
                雪国 地元の方々に取っては それどころではないよ と
                苦情の一言も言いたくなるのではないでしょうか
                地球温暖化と言われながらも今年は 雪が多い様で
                その御苦労が偲ばれます
                 百名山 有名ですが わたくしは今 テレビで放映されている
                百低山登頂番組を毎週楽しみにして観ています
                これぐらいの山なら登山経験なしの自分にも登れるかなぁ
                などと思ったりしています
                 水泳 公営プール 何よりです
                継続は力なり ブログもどうか お続け下さい
                何事も駄目だと思わったらそれで終わり
                八十代九十代 元気な方々はそれぞれ何か自分で遣る事を持っています
                一日を生きる それが大切だと思っています
                 川柳 今年も楽しみにしております
                 つもり違い十ヶ条初めて知りました
                いろいろ名言がありますが 短い言葉の中にすぱりと確信を突く
                下手な百行の文章より よほど心に響くものが有ります
                下手な鉄砲数撃ちゃ当たる 何事に於いても避けたいものです
                 今年もどうぞ 宜しくお願い致します