視点(2024.12.26日作)
人は自分の視点でしか
物を見る事が出来ない
自分の見た物が 唯一 真実と思い込む
この世界には 他者の視点も存在する
他者の視点 自分の視点
異なる
人それぞれ 異なる視点 異なる世界
その真実
繋ぎ得るものは人の心 精神性
地球上 様々な生き物 動物達の中
人だけが持つ心 精神性
心と精神性 互いに張り巡らし 結び合う時
生まれるものは巨大な一つの輪 一つの世界
その時 初めて 人は人として その正道
真実の道を歩む事が出来る
自己の視点 他者の視点
他者の視点を想像し得ない人間 人間以下
一般的動物と異なる事は無い
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<青い館>の女(21)
今、此処でこうして居る自分は一体、どういう存在なのか ?
自分の身に何があったのか ?
身動き出来ない自分に対しての現実感が感じ取れなかった。
あの社長室に居た自分と、今此処にこうして居る自分との間の深い溝。
総てが空白の中にあった。
自分が心臓発作で倒れ、病院に運び込まれたと理解したのは何日かが過ぎてからだった。
あの激痛とそれに先立つ胸の締め付けられる様な圧迫感、受話器を握ったまま少しずつ増して来る痛痒感を頻りにワイシャツの上から擦っていた事が鮮明な記憶として甦る。
現在に至る総てがそこから始まっていた。
今でもふとした瞬間に襲って来る胸部の圧迫感と微かな痛みが瞬時にわたしを恐怖のどん底に落し入れる。
気力を奪われ、暗然とした思いの中で屍としての自分をそこに見い出す。
人生は終わった。
呟きの中で恐怖との闘いのみが残された自分の人生の様に思えて来て絶望の淵に沈み込む。
愚かな事だ !
屍としての自分が一体何故、死の恐怖と闘わなければならないのだ 。
死ぬ事がそんなに怖いのか ?
何故、こんなにも死を恐れているのだろう ?
この世の中に未練を残す何かが在るとでも言うのか ?
何にも無い。
空虚が見えて来るだけだ。
それでいて、心の底から湧き上がって来る死への恐怖は一体、何処から来るのだろう ?
何を意味しているのだろう ?
既に明け方近かった。
漁港の方からはなんの物音も聞こえて来なかった。
まだ、漁船が出て行くには早い時刻なのだろうか ?
それとも、総ての漁船が出てしまった後なのか ?
わたしは深い眠りから醒めたばかりだった。
加奈子は眼を醒ましていて目醒めたばかりのわたしと視線が合うと無邪気な笑顔を浮かべた。
その表情が昨夜の加奈子を思い出させて愛しさを誘った。
愛しさに誘われるままにわたしは加奈子の細い身体を抱き締める。
加奈子はわたしの不可能な事は分かっていても、嫌がる素振りも見せずにわたしの為すがままに身を寄せて唇を合わせて来る。
長い抱擁の後でわたしは加奈子の肉体を解き放す。
加奈子は依然として嫌な表情一つ見せなかった。
部屋を出る直前になって加奈子は二つ折りにしたバッグの中から小さな物を取り出してわたしの前で振って見せた。
「これ、要らなかった」
楽し気に笑いながら言った。
わたしの知り尽くした"物"だった。
わたしは笑顔で答えただけだった。
港の遠い何処かで船のエンジンの弾ける音がしていた。
それが幾つも響き合い、重なり合って長く続いた。
ホテルを出るとまだ暗さを残した通りには頻りにトラックの行き交う姿が見られた。
港の動き出した気配が伝わって来た。
なかなか来ないタクシーを探しながら海岸ホテルの方角へ向かって二人で歩いた。
「これから、どうするの ?」
加奈子に聞いた。
「家へ帰って寝ますよぉ」
加奈子は当然の事の様に言った。
「家は近いの ?」
「近くはないけどぉ、そんなに遠いって言う事もないんですよぉ。歩いても行けるからぁ。この奥の方なんですけどぉ」
左手の街並みの方角を指差して加奈子は言った。
彼方に遠い山脈(やまなみ)が黒い影を作っているのが見えた。
「一人で住んでるの ?」
「そうですよぉ」
加奈子は当然だ、という様に軽い非難を込めた口調で言った。
「誰か、友達と一緒に住んでるのかと思った」
非難の口調に答える様にわたしは言った。
「でもぉ、一人の方がぁ気楽だしぃ」
何となく沈み込んだ翳りのある口調で加奈子は言った。
その沈み込んだ口調が何かしらの複雑な事情を想像させたが、それ以上に深く追求する気も起らなかった。
「今度また、こっちに来た時には会ってくれるかなあ」
とだけわたしは言った。
「ええ、構わないですよぉ。今度みたいにまた電話をして貰えたらぁ、お店を休みますからぁ」
加奈子は明るさを取り戻した口調で言った。
その加奈子が手にしたバッグには先程わたしが渡した十万円が入っている。
漸く一台のタクシーが遠くに姿を見せて来た。
加奈子はそのタクシーを見ると、
「わたしは道が違うのでぇ、別の所で探しますからぁ」
と言って足を止めた。
昨夜、わたしが人目を警戒した事を覚えていたらしかった。
わたしは加奈子を残して一人だけタクシーの来る方角へ向かって足を進めた。
その日、ホテルへ帰ってから二時間程の睡眠を取った。
その後、食事を済ませて帰路に着いた。
東京へ帰ってからの日常には格別の変化も無かった。
加奈子と会った事なども日常の雑務に追われる中で何時の間にか忘れられていた。
季節は東京でも寒さに向かっていた。
何時また変調を来すか分からない肉体が、依然として心を煩わせていた。
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takeziisan様
冬枯れの季節 散歩も楽ではない事だと想像出来ます
でも 身体は動かさなければ駄目 衰えるだけ
昨日 ちょうどその様な文章を一篇纏めた所です
近いうちにこの欄にも掲載する心算でいます
何れにしても身体が動くうちが華 せいぜい頑張って下さい
冬枯れ 頬白 懐かしい絵です 子供の頃が思わず蘇りました
松林のまだ低い木々の間に「バッタン」を仕掛け
捕ったものでした
バッタン 竹と藁で編んだ縄を組み合わせて
楕円形の小さな網を括り付け そこに鳥の好む餌を置き
鳥が突くと網が倒れて鳥を捕獲する仕掛けです
いろいろな鳥が居ましたが頬白は特に人気でした
寒さにも係わらずそうして冬枯れの野を歩き廻っていた事が思い出されます
懐かしい思い出です
「じい散歩」ブログそのまま 面白い偶然ですね
現代小説は読んでいませんので今どんな作家が居て
どんな作品が評判なのかも分かりません
その意味でブログ内の小説案内は興味深く拝見しています
何れにしても寒い季節 お身体にお気を付け下さい
有難う御座いました