遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉296 小説 報復(4) 他 心に沁みる言葉

2020-05-31 14:12:46 | つぶやき
          心に沁みる言葉(2020.5.20日作)

   Ⅰ 天空の月は波濤千里の大海原でも
    路地の小さな水溜まりでも 常に
    変わらぬ姿を映す
    (物事に上下大小の差を付けない 人格の大きな人は
     人を差別しない)

   2 山門の仁王像も崩れればただの泥である
     (どんなに地位が高くても著名であっても
      愚行ゆえに失脚すればただの泥と同じ存在になる)
   
   3 冬草も 見えぬ雪野の白鷺は おのが姿に身を隠しけり
     (良くも悪くも周囲の色に溶け込めば自身の姿は見えなくなる)

   4 分け入る麓の道は多かれど 同じ高嶺の月を見る
     (物事の頂点に至るには人さまざま それぞれのやり方がある)

   5 栄光を築くのには何年もかかるが崩れるのは一瞬の間だ

   6 両の耳は聞こえないように 両の眼は見えないように
     (愚にもつかない噂など 聞く必要はない 下らない事など 
      見て見ぬふりするをするのがよい)

   7 耳に見て 眼に聞くならば疑わじ おのずからなる軒の玉水
     (聞いた事は見た様に 見た事は聞いた様に 想像力を働かす
      結果 軒を伝う雨水が雨垂れとなるように物事が結実する)

   8 石橋(しゃっきょう)は驢も通せば馬も通す
     (堅固な石の橋はロバでも馬でも分け隔てなく通す
       人の世に於いても同じ事 器量の大きな人物は人を分け隔てしない)

   9 太平洋に蓋は出来ない 大地はいくら踏んでも怒らない
     (世の中の大きな流れに逆らえない 心の広い人間は
      少しぐらいの事では腹を立てない)

   10 エビ踊れとも升を出(い)でず
     (小さなエビはいくら暴れても升の中から出る事は出来ない
      人も いくら威張ってみても自分の器量以上のものは出せない)
                       
   11 卵の上で跳ねるな 
     卵を割らなければオムレツは出来ない
     (卵の上で跳ねればすぐ割れる 危険な真似はするな
      オムレツは卵を割って初めて可能になる 先ずは実行する事)

   12 他人の気持ちを知るには 他人の靴を履いて歩き廻れ
     (アメリカ映画の中のセリフ・・・・他人の立場に立って見る)

   13 遣り切れない=諦めの気持ち
     槍(遣り)は切るものではなく 突き
     通すものだ=遣り(槍)通す
     (遣っていられないと諦め切るより 遣り通してみろという事)    

   14 外のものに向かって礼拝してはならない
     神仏はあなたの心そのものである
     (神仏はあなたの心で育むもの 
     心の外の何処かにあるものではない)

   15 本当の宗教とは 神 阿弥陀(仏)があるから信じる のではなく
     信じるからある 
     自分が信じるから 神 阿弥陀は存在するという事

   16 知識は経験ではない 経験のない知識は
     ただの物知りにしか過ぎない
     悟りのない知識は偽物==夜郎の本箱

   17 鳴らぬ先の鐘を聞く
     (想像力を働かせるという事)



          -------------------



          報復(4)

 義人は二日間の休日を予定表に書き込んだ。
「銀座の画廊を廻って、二、三点、絵でも買って来よう」
 顔を上げると何気ない口調で律子を見て言った。
「絵 ?」 
 律子は思わぬ夫の提案に戸惑ったが、それでも意外感はなかった。
 義人の書斎には北海道の雄大な自然を描いた何点かの絵が飾られていた。
 絵画や彫刻作品に義人が興味を示す事は知っていた。と同時に律子は、そんな義人の寛いだ口調の言葉に自ずと、自身の胸の内のなんとはないわだかまりも自然にほぐれて行くような気がして、久し振りの東京も悪くはないのでは、という思いを抱いていた。
 子供達に関しては、義人も言ったように、それ程、心配はしなかった。八歳と七歳の子供達の普段の生活に就いては、六十歳を過ぎて独り暮らしになったお手伝いさんの野間さんの方が、日頃、忙しく出歩く律子よりはるかに詳しかった。それに義母もいる。
 律子は一週間に四日は外出しなければならない多忙な日々が続いた中で、それっきり、東京行きの事は忘れていた。九月が終わり、カレンダーをめくって、十月の第三土曜日にAデパートの祝賀行事への出席が記入されている事に気付いて、初めて思い出した。そして、それに気付くと律子はまた、なんとはない、気持ちの負担を覚えた。市の教育委員、婦人会の副会長、環境保全委員、ボランティア、などと、出歩く事には慣れている身でありながら、何故か、東京へ行くとなると気が重くなった。自分の家の庭から外へ出て行く様な気分だった。義人と約束した時に覚えた淡い期待感もすっかり消えていた。東京で出版社に勤務していた頃には、取材の為に沖縄の離島に行く事も苦にしなかったのに、と思うと思わず苦笑が漏れた。
 そんな日々の中で律子はまたテレビの画面で、水野益臣が若い女性タレント相手に、相変わらずの軽薄なジョークを連発しているのを眼にした。一瞬律子は、その軽薄さに苛立ってテレビを消そうとしたが、ふと、胸の奥に閃くものを覚えて指を止めた。
 律子は改めて眼の前にある画面の中の水野益臣の姿に視線を凝らしながら、瞬間的に湧き起こった自分の意識の中の微かな閃きに思いを巡らした。
 そうだ、と律子は思った。
 そう思うと律子は、その思いがこの上ない名案のように思えて来て、胸の躍るようなときめきを覚えていた。
 そうだ、この東京行きは、その絶好の機会だ !
 律子は北海道へ戻ってから此の方、ただ、水野益臣との間で傷付いた自分の心の傷を癒す、その事の為にのみ、自分の総てをつぎ込んで来たような思いを抱いていた。そして、それと共に育んだ、この地に根を張って生きるという覚悟の中で、ようやく忘れ得たと思えるまでになっていた水野益臣の影に、律子は改めて立ち向かっている自分を見い出した。この北海道の地での心地良い日常の中で忘れていた、水野益臣への憎悪の影を再び甦らせている自分を律子は自覚した。
 東京行きが十日後に迫った夜、律子は義人と出席するAデパートの祝賀行事を話題にした後、何気ない風を装って言った。
「テレビに出ている水野さんにお会い出来ないかしら。東京へ行く序に会ってみたいわ」
「水野にか ?」
 義人は思い掛けない事を聞く、という風に言った。
「ええ」
「会ってどうするの ?」
「どうって言う事もないけど、お友達だっていうから、会ってみたいわ」
 義人は律子の言葉に屈託のない含み笑いをすると、
「サインでも貰うのか」
 と言った。
「ううん。そうね、いいわね」
 律子も笑いに紛らして言った。
「でも、暫く会っていないから、上手く時間を割いてくれるかどうか分からないよ。兎に角、連絡だけはしてみるけど」
 律子はその後、義人が水野に会う為に連絡を取ってくれたのかどうか、あえて訊ねなかった。水野の事は話題にもしたくなかった上に、水野には会いたくて会うのではなかった。会っても会わなくてもどうでもいい事であったが、ただ、あのテレビの画面上に見る、得意満面顔の水野の鼻を明かしてやりたいという思いだけに捉われていた。


          二


 律子が妊娠した事を告げると、水野益臣は機嫌の良かった顔を途端に引きつらせた。新宿にあるパブのカウンターに肩を並べていた土曜日の夜の事だった。
「ここ一週間程、ずっと胃の具合が変だったの。それでお医者へ行ったら、妊娠しているから専門の先生に診て貰うようにって言われて、紹介状を持って一昨日、そのお医者さんへ行ったら、妊娠の極、初期だって言われたの」
 妊娠という言葉を聞いた途端に、頑なに黙り込んでしまった水野に不安を募らせながら律子は仔細を口にした。
 水野が妊娠という言葉にどのような反応を見せるのか、律子には全く分かっていなかった。ただ、日頃の水野の言動から推測して、そんなに彼が酷な態度に出る事はないだろう、とだけは考えていた。たとえ、妊娠という事実を闇に葬るにしても、もう少し親身で、優しい姿を見せてくれるものという期待感はあった。
 だが、律子が今、眼の前に見る水野益臣は、律子に取っては、そんな水野益臣ではなかった。何処か遠い、限りなく遠い場所にいる、律子の知らない水野益臣のように思えて来て仕方がなかった。今、眼の前にいる水野益臣は律子の知らない水野益臣だった。律子は二人の間に横たわる距離が限りなく遠いもののように思えて、今にも叫び出したくなるような絶望感を必死に堪えていた。
「バーテンさん、ウイスキーをくれる ?」
 水野は頑なに黙りこくったままの不機嫌な口調でバーテンダーに言って、空になたグラスをカウンターの上に滑らせた。
 バーテンダーはすぐに新しいグラスに氷を入れ、ウイスキーを注いだ。
 律子はバーテンダーが離れてゆくのを待って、不安に耐えられないままに言った。
「どうしたらいいと思う ? 産んでもいい ?」
 律子自身、本当に産みたいのかどうか、分かってはいなかった。ただ、何も分からず、不安の中に自分の気持ちを放置して置くことには耐えられない気がした。
「産んでもいいかって、そんな事を言われても困るよ」
 水野はあからさまに迷惑気な表情を浮かべて、律子を非難するように言った。
「どうして ? 二人の問題でしょう ?」
 律子は問い詰めるように言った。
「二人の問題って、どうして俺に関係があるんだよ。俺は子供が欲しいなんて、一度も言った事はないよ」
 水野は怒りを含んだ口調で言い返した。
「ひどい事を言わないでよ。男と女が愛し合えば、子供が出来るのは当たり前じゃない」
 律子の声は甲走っていた。
「愛し合うなんて、ただ、一緒に寝ただけじゃないか。それが愛だなんて思われちゃ、かなかわないよ」
「じゃあ、ただの遊びだったって言う訳 ?」
「遊びだったって言うつもりはないけど、第一、結婚もしてないのに子供を産んでどうするの ?」
「結婚なんて、届け出をすれば、それで済む事じゃない。何時だって出来るわよ」
「そんなに簡単なものじゃないさ。それに子供が生まれたって、家庭を支えてゆくだけの収入もないじゃないか」
「収入なら、わたしも働けばなんとかなるわよ」
 水野はその時、フリーのカメラマンだった。二年前に、助手を務めていたMと言う著名カメラマンの下を離れ、独立したばかりだった。



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          hasunohana1966様

          有難う御座います
          何時もお心遣い戴き御礼申し上げます
          深い御文章 感銘と共に拝読させて
          戴いております
          坐禅 日常に取り入れていらっしゃる御様子
          いいですね
          私は坐禅こそしませんが 日常 禅の心で
          生活する事を念頭に置いております
          何事にも囚われない心 空 無 の心
          人の心はともすれば 自身の欲望に囚われてしまう
          ものです 無 の 心で生きられたら
          どんなに楽な事か 否 こんな事を考える事自体
          囚われの心かも知れません
          ----------------
          takaziisan様

          相変わらずお美しい写真 感銘を受けます
          富士山の写真 取り分け お見事です
          河口湖へ行った時に見た富士山を思い出しました
          ブログ考 良かったですね 共感 しきりです
          何時ものお心遣い 感謝申し上げます
          励みになります 
          有難う御座います
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          asu_naro_007様

          ブログお読み戴き 有難う御座います
          感謝と共に 御礼申し上げます
          有難う御座います
          陸上 ようやく再開との事 昔 少しだけ
          いろいろのスポーツに係わった身としては
          お喜びが想像出来ます
          ストレッチ解説 参考になります
          最近 年毎の体力の衰えを実感する身としては
          せめて室内で出来る運動だけでもと思って
          動かない体に鞭打っているのが実状です
          
          
       
          
  

         
 
 
 
 



 
       
     



   
   

   

       

遺す言葉295 小説 報復(3) 他 この国の姿

2020-05-24 13:37:49 | つぶやき
          この国の姿(2020.5.24日作)

   法務大臣が賄賂を贈った
   検事長が賭けマージャンをしていた
   総理大臣が告発状を出された
   この愚行 この愚行の対象者達は
   自分が係わる仕事の意味が
   分かっているのだろうか ? おそらく
   分かっていないのだろう
   分かっていないから こそ こんな愚かな
   出来事が 起こるのだろう
   彼等の出自 学歴 経歴
   どういうものなのか ?
   多分 今現在 この国日本
   我が国に於いては 立派な 学歴 経歴 を経て
   現在の地位 に 辿り着いたに違いない そしてそれを
   彼等は誇りに思っているに 違いない
   何故なら 彼等の頭の中には 多分
   身分 地位 権力 知名度 それへの欲望のみが渦巻いていて
   他の事 他者への関心など 皆無に違いないのだ
   自身の地位 握る権力 虚名の保持 彼等にとっては
   それのみが 最重要事項 他の事など どうでもいい
   他者の事など関係ない 無関心 その部署 その部門
   その場所に於ける 最高地位 最高身分 そこから受ける虚名の誇り
   それさえ手に出来れば それで満足 万々歳 ホッと一息安堵の思い
      あれも出来る これも出来る 自身の指示の下 組織を繰り
   部下を従え 満面えびす顔 緩んだ顔面筋肉 気の緩みなど
   元に戻らない 結果 度外れ
   言語道断 の 愚劣な行為 愚劣な行為の繰り返し
   そんな気分が只今現在 この国 日本を覆っている 第二次世界大戦
   その 敗戦直後 今日 明日を生きるにも 困窮を極めた時代 
   そんな世の中 社会の中で
   貧しさ 苦境に陥る人々 そんな人々
   弱い立場の人間 その人達の為に働き 奔走し 尽くして 結果
   自身が餓死した 検事だったか 裁判官だったか
   そんな人がいた 自身の命を賭して職務を全うした そんな高潔
   高貴な人がいた かつてのこの国 日本 だが 只今現在
   この国日本を覆う空気 雰囲気は 腐敗の空気 不潔な気分
   そんな気分が充満するのみ --
   いや 待てよ 果たしてそうなのか ?
   只今現在 この国日本に 高貴な心 高い 志を持った人間
   そんな人達を望むのは 無理なのか ? 叶わぬ夢なのか ?
   いやいや 違う そんな事はない この国の庶民
   一般市民 国民 その中には 人の眼には見えない場所 隠れた場所
   そんな所で 日ごと夜ごと 他者の為 他人の命 幸せ その為に
   懸命 必死に働く人がいる 尽くす 人がいる・・・・それもまた 事実
   コロナに携わる 医療従事者 そんな人々 人達を始め 地方の
   隠れた場所で 日ごと夜ごと コツコツ 人の為 他者の為
   人の心に寄り添い 働く 人がいる 人達がいる それもまた 事実
   それが 普段 日常 我々の眼には見えないだけ なぜなら
   そんな人達 人々は 自身の名誉 地位 身分 には 眼を向けない
   ひたすら 他者の為 人の心の安らぎ それだけ を 求めて
   懸命 必死に働き 生きている・・・・・そんな人達 だから だ
   そんな人達 人々が 時折り 報道され 人々 我々の 眼
   関心をひく事がある・・・・・それが 何よりもの証拠
   自身の名誉 地位 権力 虚名 それだけが目的の 
   愚かな者達 そんな欲望に満ちた者達 が 生きる世界とは
   雲泥 の 差 天と地 泥と宝石 そんな違った世界の人達
   そんな違った世界のある国 日本 その日本の中で
   泥の世界 その 泥の世界に君臨する 人間 者達
   そんな者達が支配する只今現在の この国 日本 その不幸
   それがこの国 日本の姿 真の姿 醜い姿
   醜い姿をしたこの国 日本 そんな国など 先進国
   一流国 などとは 呼び得ない 二流も下って 三流国 それが
   只今現在 この国日本 日本の姿 真の姿
   愚かな人間 そんな者達の繰る世界
   それが日本の真実
   日本の姿


          ------------------


          報復(3)


 川辺義人は恵まれた家庭の一人息子らしく、細かい事にはこだわらなかった。物事を常に、大きな視点で捉える事の出来る人間だった。仕事熱心の余り、ともすれば家庭を忘れがちになるのが、欠点と言えば言えたが、律子は、その事はそれ程苦にしなかった。むしろ、新しい仕事に次々と挑戦してゆく姿勢に、頼もしさをさえも感じていた。水野益臣の無責任な、何処か女々しさを感じさせる性格とは正反対とも言えた。-- 一家は、義父、太吉の死去を契機に札幌へ移った。
 一年、二年は夢中のうちに過ぎていた。創業者の死去に伴う「川辺」の後継者問題、死者への供養等、次から次へと行事が重なった。義母が健在でいてくれる事に律子は救われる思いがした。
 過去を思い出す事はほとんどなかった。様々な行事の終わった後も、律子の慌ただしさは続いた。義人の「川辺」社長就任と共に、間もなくして、律子の身辺も急速に環境を変えていた。地元の様々な事柄の要職や役職に推薦される事が多くなっていた。一概に断る事も出来ない事情が重なった。 
 そんな中、最早、思い出す事もなかった水野益臣の消息に接したのは、二年程前だった。テレビのクイズ番組に水野益臣が出ていた。律子は始め、それが水野だとは気付かなかった。何処かで見たような記憶があるな、と思いながら、別段の不審も抱かずに見、流していた。名前が出て、初めて分かった。
 水野益臣は十年近い歳月を経て、すっかり変わっていた。かつての水野には何処か、野卑を感じさせるようなものがあって、それがまた、精悍さに繋がっているようにも思えて、好ましくさえ感じられたものだったが、十年に近い歳月を経て眼にした水野には、代わって、一見、好ましく思える中年の落ち着きのようなものが備わっていた。現在の境遇に満足している者の自信に溢れた表情さえが窺がえて、それを知った時、律子は、一瞬、自分が抱いた思いの完全に裏切られたような気がして、苦い気分を味わった。
 水野益臣はテレビの画面で若い女性タレントと組んで、早口で言葉を連発する軽薄な感じの司会者としきりに冗談を言い合いながら、得意気な表情を浮かべてクイズの問いに答えていた。
 律子は、何か厭なものを眼にした思いで慌ててテレビを消した。律子の心の中では、水野益臣が世の中から忘れられ、沈んでいってくれる事を願う気持が無意識のうちに働いていた。律子が苦しんだ分だけ、水野には苦しんで欲しかったのだ。
 テレビの画面で水野の姿を眼にした不快感は二、三日、消える事がなかった。テレビに駆り出される程に、水野が名を売っているのかと思うと、不快感はさらに増幅した。義人に、水野がテレビに出ていたと告げる気にもなれなかった。
 律子は、それ以降、水野益臣がしきりにテレビに出ている事や、しばしば、様々な噂で週刊誌を賑わしている事も知った。硬派の社会派写真家になるのが夢だと言っていた、かつての水野益臣が今では、男性週刊誌に品の悪い女性ヌードの写真を載せていた。律子が知るようになってからも、何度か、派手な女性関係を週刊誌に書きたてられもした。
 そんな水野の消息を、律子が夫の義人に話せるようになったのは、様々な噂から、水野の堕落した生活が想像出来るようになってからだった。
「お友達の水野さんって言う方、この頃、よくテレビに出ているわよ」
 休日の夕食の席で律子が言った言葉に、義人は
「あいつが ?」
 と、言って、一瞬、面白そうな顔をしたが、大して興味も湧かないようだった。
 多忙な生活の中で義人には、政治、経済、社会の動向、自分の会社の業績など以外に、余計な事への関心を払っている暇はなかった。一日の終わりをテレビを観てくつろぐなどあり得なかった。当然の事ながら、三面記事の水野益臣のスキャンダルや女性ヌード写真など、縁遠い世界のものだった。律子の口から、
「女性関係も結構、派手みたいよ」
 と聞くと、
「へえー」
 と言って、苦笑いを浮かべただけだった。
「東京へ行った時など、会ったりしないの ?」
 律子が聞くと、
「そんな暇なんかないよ」
 にべもなく言った。
 義人は高校時代の友情を懐かしみ、回想している程に暇人ではなかった。
 そんな義人に感化されたのか、律子はいつか、水野の存在が気にならなくなっていた。何よりも律子には、現在の恵まれた生活があった。日々、結構、慌ただしく過ごす律子には、いい加減さっと無責任さを引き摺りながら、虚名の世界を適当に泳いでいる水野の世界が、次第に、遠いものに思えるようになっていた。


 律子は、水野への気持ちに見切りを付け、傷付いた心を抱いて北海道へ戻って来てからは、一度も東京へは行っていなかった。夫の義人が商用でしばしば東京へ出向いても、一緒に行ってみたいとも思わなかった。初めの頃は、傷付いた心がそんな気持ちにさせなかった事もあったが、それが癒えてからも、この地、北海道に安住した思いの安らぎと共に、なんとなく、遠い東京へ出向く事が億劫にもなり始めていた。一男一女の母にもなって、浮ついた心もなくなっていた。今更、東京でもない、という思いが強かった。Aデパートの祝賀行事の出席を決めたのも、出来れば二人で出席した方がいい、と言う、夫の希望を入れての事だった。



          ------------------



          asu-naro_007様

          有難う御座いました
          始めて ブログ拝見しました
          陸上競技に御関係とか
          食事の件 痛感しています
          今年の冬 膝の裏の筋が
          枯れ木のようになってしまい
          いろいろ考えた末 ヒマワリ油を採りました
          成分を考慮しての事ですが
          見事に改善しました 食事の大切さを
          痛感します 有難う御座いました

          takeziisan様

          何時も御支援下さいまして
          有難う御座います
          感謝 申し上げます
          ブログ 今回も楽しく拝見させて戴きました
          イノシシの被害 ブログを読む方としては
          申し訳ありませんが 楽しく拝見させて戴きました
          相変わらずの見事な花々のお写真 満喫しました
          豆類 御相伴に与かりたいものです


 
 
   
   
   
    
   
   
    
   
   
   
   
    



  
   
   

遺す言葉294 小説 報復( 2) 他 コロナと坐禅

2020-05-17 12:25:25 | つぶやき
          コロナと坐禅(2020.5.10日作)


   コロナウィルスの蔓延している
   五月十日現在 しきりに
   「禅」が話題に上る
   NHKBSでは坐禅についての
   番組を放送していた
   パソコン上でも 坐禅を勧めるかのような 
   僧の姿を眼にする
   コロナと坐禅
   どんな関係があるのか ?
   坐禅をして 瞑想して
   コロナに打ち勝つ ?
   それが出来るのなら 越した事はない
   だが しかし 坐禅
   禅の心は そんなもの 単純なものではない
   一時間 二時間 形を造って 眼を閉じて それで
   何かを会得 心を安める それが出来れば
   苦労はない 昔の
   禅僧は言う
   「生きている間は坐って横にならない
    死んでゆけば 横になって坐る事がない
    悪臭を放つ一組の骸骨
    下らない事に心を労してなんの役に立つ」
   「坐禅をやって解脱を求める
    坐禅をやって心を空にする事を専一にして
    他に何もしない人は愚者である
    こういう者は論ずるに足りない」
   「ただ結跏趺坐(坐る)するだけなら
    瓦の欠片(かけら)を鏡にしようとして磨くようなものだ」
   「坐禅とは意識の凝視状態 静観主義
    無に滞って進む事を知らない これは
    エクスタシーとかトランス(恍惚)のようなもの
    禅には転回がなくてはならない
    平静な状態に停滞するのは禅ではない」
   禅家の誰もが言う
   禅とは 日常である
   昔 ある僧が修行のため
   師について修行を始めた しかし
   師は何日 何か月が過ぎても
   禅についての何も教えてくれなかった
   修行僧は頼んだ
   「もう長くここに居るので 何かを教えて下さい
   禅の本義について教えて下さい」
   師は言った
   「おまえは教えてくれないと言うが
   わたしは毎日こうして お前が挨拶をすれば
   挨拶を返す 食事の支度をしてくれれば
   有り難く戴いているではないか」
   修行僧はこの言葉で 
   禅の本義を会得した
   この意味 分かりますか ?
   師の言葉の何処に 禅の本義が
   隠されていたのか 分かりますか ?
   禅とは そういうもの
   日常の中にあるもの 特別に膝を組んで
   坐ったからといって その本義に
   辿り着けるものではない 一時間 二時間
   坐っただけで何かを 会得出来る・・・・・
   甘い考え 愚かな考え
   達磨(だるま)は面壁(壁に向かって坐る)九年
   日常 日々 一日一日 の 行ない
   どんな時でも 人は
   人として 人の 本務を生きる
   一日 一日 慌てず 騒がず
   静かに 静かに
   囚われのない 心 で
   人間を 生きる
   日々 囚われのない心で
   生きる その事の中にのみ
   禅はある
   「目覚めた意識での努力がなければ
   いくら坐禅をしても 
   老いぼれ狸が穴の中で
   居眠りをしているようなものだ」
              白隠



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          報復(2)


 見違えるはずがなかった。唇の右下にあるホクロは律子が親しかった水野益臣のホクロと全く同じだった。女性のそれを思わせるような、きれいな眉の形も違ってはいなかった。
 写真の中の三人の若者たちは、雪焼けした顔に白い歯を見せ、満面の笑みと共に健康感に溢れた表情で写っていた。
 律子は冷静さを失っていた。東京での律子は雑誌記者として、著名人へのインタビューなど数多くの場面を経験して来ていて、多少の事には動じないだけの心構えは出来ていたはずだった。が、その日の律子は違っていた。川辺義人へのインタビューは支離滅裂なものになっていた。忘れてしまいたい過去の厭な出来事が脳裡に浮かんで来て、律子の心を乱していた。ほぼ一年ぶりかで眼にする水野益臣にも、懐かしさなどの感情は全く湧いて来なかった。ただ、嫌悪の感情だけが強かった。 
 東京での、律子の妊娠、流産、そして入院。水野はその間、始終冷淡だった。律子が睡眠薬を口にしたのも、そんな水野への仕返しという思いからのみだった。そして、入院のあと律子は傷付いた心身を癒すのと共に、厭な思い出を振り払いたい気持ちから、函館の実家へ戻って来た。
 川辺義人へのインタビューから帰ったあと、律子は思わぬ体調の変化に見舞われた。朝、起きる事が出来なくなっていた。これからも定期的取材の為、川辺義人の下を訪ねなければならないと思うと心が塞がった。川辺義人の背後に唾棄してしまいたい思いの、あの水野益臣の姿が浮かんで来た。改めて律子は、自分が水野益臣から受けた心の傷がまだ、完全には癒えていない事を実感するのみだった。ーーそんな律子が苦しみ、悩み抜いた末に辿り着いた解決方法、それが自ら積極的に川辺義人に接近してゆく、という事だった。川辺義人が独身なのは何度かの取材で分かって来ていた。その川辺義人と結婚して、水野を見返してやる !
 水野と川辺義人が高校時代の友人である以上、これからも二人が顔を合わせる機会は、恐らく多分にあるだろう・・・・律子は考えた。そして、義人の下を訪れた水野益臣が自分の姿を見て驚く姿を脳裡に描いた。
 律子は胸の疼な快感と興奮を覚えた。なんと言っても、川辺義人は北海道では名の知れた「川辺」の後継者なのだ。駆け出しのフリーカメラマンでしかない水野とでは、その立ち位置に於いて、雲泥の差がある事は誰の眼にも明らかな事だった。
 そして律子は、川辺義人と、結婚するのだ、なんとしても結婚するのだ、と強い思いで自分に言い聞かせた。
 それからの律子は極めて意識的に川辺義人に接近していった。東京で一流と言われる出版社に勤務していた経験とセンスがその時、大いに役立った。
 大学時代の友人で、著名な評論家の三村明代との関係も積極的に利用して、北海道にいては得難い情報や、経済界の裏話しなども義人に売り込んだ。
 川辺義人との間に親密な関係が生まれるまでには、それ程の期間を必要とはしなかった。
 律子は二人の結婚式の日取りが決まると、水野益臣も義人の友人として招待されるものと、秘かに期待した。心に描いた自分の夢が実現する事への喜びに胸の高鳴る思いだった。
 しかし、水野益臣は期待に反して、二人の結婚式には出席しなかった。
 律子は式の後、祝電などを整理しながら、それとなく水野益臣の消息を探ってみた。
「高校時代のスキーのお友達の、もう一人の方は出席していなかったみたいね」
「ああ、水野ね。奴はカメラマンで一年がかりの仕事があるとかで、アフリカへ行っているらしいんだ」
 義人はなんの疑念も抱かずに言った。
 律子は水野がどんな社の依頼で、どんな人とアフリカへ行っているのだろう、と思ったが、それ以上の関心は持たなかった。今では彼がどんな仕事をしていようが、彼への憎悪と共にどうでもいいという気がした。ただ、自分が秘かに描いたシナリオの実現しなかった事へは少しの口おしさを覚えた。
 義人との結婚生活は幸福そのものだった。川辺家の豊かさが律子を玉の輿に乗った気分にさせた。律子の望みは、ほぼ、希望通りに叶えられた。
 結婚後、一年が過ぎて長男の勝人が生まれた。
 翌年には長女の美津子が生まれた。
 生活の場のマンションの家賃には、律子が得ていた給料の二か月分が消えていった。
 水野益臣の記憶は、そんな律子の心の中では日に日に遠いものになっていった。



          ---------------


          桂蓮様

          コメント 有難う御座いました
          大変 嬉しく拝見致しました
          アクセスを気にする事にお疲れとの事
          気にする程の事ではないのではないですか
          何時も御立派な位置におられて
          お見事です
          あるがままを受け入れる
          それが正しく桂蓮様のテーマ「禅」の
          心ではないでしょうか
          今回の御文章も御立派なものです
          今の世の中 軽薄なものばかりが目立ち
          本当にしっかりしたものはなかなか受け入れられない 
          ものです どうぞ 今のまま お迷いなく
          良い御文章をお寄せ下さいませ
          わたくしも余り時間が取れないものですから
          なかなかゆっくり拝見する事が出来ません
          少しずつ 過去の御文章なども拝見させて
          戴いております

          飲む・・・・これですね
          総てを自分のものとして飲み込み
          自分のものとして生きる
          これに尽きると思います
          禅の心ですね
          「大地はどんなに踏まれても怒らない」
          こういう言葉もあります
          有難う御座いました

          takeziisan様

          何時もお励まし戴きまして
          有難う御座います
          今回も美しい花の見事なお写真
          興味深く 一輪一輪なめるように
          拝見しました 何時も何か
          ホットするような思いを心の奥に感じて
          自ずと微笑みが生まれます
          ウーピー ゴールドバーグ
          このアフリカ系の俳優は好きな俳優の一人です が
          この作品 わたくしの記憶にはなかった作品です
          洋画は邦画にも増して好んでいますが 或いは
          失念しているのかも知れません


  

          

 

 
 
 
 
 
 

   

   

   
   

遺す言葉293 小説 報復 他 雑感七題

2020-05-10 11:28:43 | つぶやき
          雑感7題(2020.4.21日作)
           (この中には既に掲載済みの文章も
            二 三 あるかも知れません)


 Ⅰ 美しきかな 人生 自分の持ち場 持ち場で
  真摯に生きる人の姿こそが この世で
  最も 美しい
  名声 地位に関係ない

 2 命 美(うるわ)し
  人 それぞれの人生

 3 政治は人間社会に於ける
  理想を根底に据えた
  現実主義 リアリズムでなければならない
  現実主義の上に立った現実主義 
  理想を見失ったリアリズムは
  腐敗を招き易い

 4 愚にも付かない 幾多の
  長ったらしい小説を読むより
  たった 二行か三行の優れた
  一つの文章を読む事の方が
  どんなにか 心を豊かにする事か
  人の存在の真実に触れる言葉こそが
  人に取っての最も 大切な宝になる

 5 運命ほど残酷なものはない
  運命はある日突然 なんの前ぶれもなく
  人を不幸のどん底に突き落とす

 6 今の時を一生懸命に生きる
  それより他 人の出来る事はない
  今と言う時は 再び戻らない

 7 人生とは
  空裡に建つ楼閣 
  砂漠の蜃気楼



          ----------------


         
          報復(1)
 

 東京に本店のあるAデパートの創業七十五周年と、創業者の生誕百年の祝賀を兼ねた記念行事が行われる事になった。
 北海道、札幌にいる律子の夫でチェンストア「川辺」の社長を務める、川辺義人の許にも案内状が届いた。
 六月半ばを過ぎた火曜日、珍しく定休日を自宅で過ごしていた義人が思い出したように言った。
「そうだ、忘れていた。Aデパートの案内状に返事をしなければいけないんだ。秘書が、どうしますか、と言うのを、あんたの都合を聞いてからと思って、自宅(うち)へ持ち帰ったままになっていた」
 義人は慌てて書斎へ行き、金の縁取りのある豪華な四角い封筒を持って戻って来た。
 封筒の中の案内状には「是非、御令閨様御同伴で御出席を賜りたい」という趣旨の文面が記されていた。
「どう ? 久し振りに東京へ行ってみないか ?」
 文面を読み終えて顔を上げた律子に義人は言った。 
「何時(いつ)なのかしら ?」
「十月の第三土曜日じゃなかったかな ?」
「ああ、そうね」
 律子は改めて案内状に眼を落として答えた。
「十月の第三土曜日、午後五時からだわ。と言う事は、もし、行くとなると一泊と言う事になるのかしら」
「そうだろうな。土曜日の午前中にこっちを発ったにしても、一泊はしなければならない」
「子供達は大丈夫かしら ?」
「大丈夫だよ。おふくろもいるし、野間さんだっているもの」
「そうね。普段から、わたしより、お手伝いさんの手にかかりっきりなんだから」
「もし、あんたが行くなら、三日ばかり休んで、あちこち歩いてみても構わないんだ。久し振りに東京へ出る事だし、歩いてみたい所もあるだろうから」
 夫の義人は優しく言ってくれたが、その時律子はなぜか、一瞬、躊躇いにも似た気持ちを覚えていた。なぜ、そんな気持ちになったのか、自分でもよく分からなかった。
 律子が東京から実家のある北海道へ帰って来てから、既に十一年が過ぎていた。あるいは、もう、この北の国に根を生やしてしまって、東京へ出るのが億劫になってしまった、とでも言う事なのだろうか ?
 いやいや、そんな、単純な事ではない。かつての、東京での厭な出来事の記憶が無意識のうちに、律子を縛っていた・・・・・。あるいは、そういう事なのか ?
 現在、律子はこの札幌の地で、何一つ不足のない日々を過ごしていた。今年、三十九歳になって、心身共に充実していた。幾つもの会の役員や会長などを務めながら、毎日を慌ただしく生きていて、東京に思いを馳せる事もなく、東京での生活を懐かしむ事もなかった。
「その記念行事には、どうしても出席しなければならないのかしら ?」
 律子はなんとなく重い気持ちのまま言った。
「いや、あんたが厭だって言うんなら、俺一人でもかまわないけど、兎に角、顔だけは一応出しておかなければ悪いから。出来れば二人揃っての方がいいんだが」
 川辺とAデパートとは提携関係にあった。
 チェーンストア「川辺」は北海道全域にわたって店舗網を張り巡らしていた。日用雑貨からブランド物まで、その品揃えには定評があった。札幌を基盤にしての北海道での知名度は、東京に本社を持つどんな有名店をも凌駕していた。北海道に支店のなかったAデパートは六年前に「川辺」の知名度に着目し、提携を持ち掛けて来た。「川辺」の創業者、太吉が亡くなって一年と少しが過ぎてからの事だった。
 義人は現在、四十三歳、地元では経済団体の要職に就いていて、若さに似合わず、創業者の太吉をも上回る切れ者だという評判を得ていた。律子が様々な団体の役員などを兼ねるのも、そんな義人の御蔭だと言えない事もなかったが、律子はそれを否定しようとは思わなかったし、その為に自分を卑下する事もまた、なかった
 律子が義人と結婚したのは九年前だった。当時、義人は函館支店の支店長だった。その二年前に律子は東京での生活に傷付き、函館の実家に戻って来ていた。それから一年程は傷付いた心身を癒しながら何もしないで過ごしていが、若い身空で何もしないまま、親元に身を寄せている事にも次第に苦痛を覚えるようになって来て、市内の経済関係の雑誌社に記者として入社した。
 義人との出会いは「川辺」の函館支店取材の為に訪れた事が切っ掛けだった。その時、律子は支店長室の壁に掛けられた一枚の額に納められた写真を眼にして、思わず息を呑んでいた。
 義人はその様子を目敏く捉えて聞いて来た。
「何をそんなに驚いているんです ?」
 微笑みを浮かべて言った。
 律子は胸の苦しくなるような思いを懸命に堪えて、
「ここにいる二人の方は、支店長さんのお友達なんですか」
 と聞いた。
「そうです。僕の高校時代の友人です」
 写真の中の三人の高校生はスキーウェアーに身を包み、片腕にスキーを抱えて得意気な表情の笑顔を見せていた。
「その時、僕らは北海道スキー大会で、一位から三位までを独占したんですよ。誰か知っているんですか ?」
 川辺義人は聞いた。
「いえ、そうじゃないんですけど。余りお若いんで」
 律子はようやくそれだけを言って、その場を取り繕った。右側にいるこの人は、水野益臣という人ではないですかーー、喉元まで出かかるそんな言葉を漸くの思いで飲み込んだ。


          -----------------


          takeziisan様

          有難う御座います
          愚にもつかない文章を 
          お読み戴く事はさぞ御苦痛の事と存じます
          毎回、お眼をお通し戴いている御様子に
          心より感謝 御礼申し上げます

          今回拝見したブログ
          相変わらずの見事な花の写真
          心底 心が和みます 殊に
          わたくしの知らない花々が多く
          大変楽しく 興味深く 拝見させて戴いております
          今後とも 宜しくお願い致します 但し
          くれぐれも御無理をなさいませぬように
  






 


  
  
  
   
   

遺す言葉(292) 小説 日常の中の恐怖(完) 他 不可抗力

2020-05-03 12:10:02 | つぶやき
          不可抗力(2020.4.2日作)

   人生には
   人間の意志ではどうにも出来ない
   力が働く
   肉体に於ける
   眼には見えない 変化
   細胞の劣化 社会的には
   どうにもならない 外部からの圧力
   災害 災厄 事故
   人には 日々 謙虚に
   今という時間は 仮のもの 借り物
   という 意識下 
   誠心 誠意 誠実 真摯に
   今を生きる それより他に
   出来る事はない
   人は 流れ逝く時の中で
   無力な存在
   漂う小舟



          ------------------


          日常の中の恐怖(完)


 島田はバス通りから入った小道を右へ折れ、わが家へ向かうその角に、頭から大量の血を流して倒れていた。
「あなた ! あなた !」
 夏子は、蛍光灯の灯りの中でどす黒く見える血に染まった顔で眼を見開いたまま、瞼を動かす事もない島田の胸に手を置いて激しく揺すった。
「俺、すぐ110番をして、救急車にも来て貰うように電話をして来ます」
 五十歳がらみの男性配達員は、冷静さを失っていなかった。 
「お願いします」
 配達員も携帯電話は持ってはいなかったようだった。
 夏子は配達員が自転車で走り去ったあと、再び夫の胸に手を掛けると、
「あなた !  あなた ! 大丈夫。しっかりしてよ」
 と必死の思いで、最悪の事態を脳裡に描きながら、見開いたままの夫の眼を覗き込み、揺さぶって声を掛けた。
 大地に長々と横たわったままの島田は、顔も服も白いワイシャツも血で染めたまま、喉の奥から絞り出すような夏子の声にも、何一つ、答える事はなかった。
 夏子の不安は極度に高まった。一瞬、凍り付いたように何をすべきかも分からないままに茫然としていたが、ふと、思い付いて夫の口元に手の平をかざして見た。
 呼吸はあるのだろうか ?
 手の平に当たる生暖かいはずの呼吸の気配は感じ取れなかった。
 今度は耳を口元に運び、その呼吸音を聞き取ろうとしたが、それも徒労に終わった。
 夏子は早鐘を打つような心臓の鼓動と共に、胸の締め付けられるような息苦しさで気を失いそうになった。
 夫はもう、死んでしまっているのだろうか ? 手遅れなのだろうか ?
 今にも気を失いそうな意識の中で夏子は、懸命に自分を支えていた。
 何一つ反応のない夫の状態が、夏子を絶望の淵に突き落とそうとしているかのようだった。
 血に染まったワイシャツの胸の下にある心臓には、極限にまで達した不安の中で怯えたまま、触れ、確かめてみる勇気が持てなかった。
 電話連絡をしてくれた新聞配達員が戻って来た。
 間もなく、救急車がサイレンの音を響かせながら近付いて来た。
 配達員は救急車を迎える為にバス通りへ出て行った。
 救急車が到着するとすぐ後に、パトロールカーのサイレンの音が近付いて来た。
 近所の人達がその騒ぎに眠りを破られたのか、いつの間にか集まって来ていた。
 島田にはまだ、微かな脈があった。
 夏子は救急車に同乗した。
「子供たちの事を宜しくお願いします」
 新聞配達員に頼んだ。

 島田は病院に到着した時には、微かに感じ取れた脈も止まっていた。
 島田の死亡が確認された。
 島田の後頭部は激しく殴打され、頭蓋骨骨折、脳髄破損の状態だった。
 犯人は二日後に判明した。
 二十一歳の精神障害を持った男の犯行だった。
 五十六歳の母親に伴われて最寄りの警察署へ出頭して来た。
 母親が手に持っていた金属製野球バッドには、乾いた血が顔を背けたくなる程にこびり付いていた。二十一歳の犯人は島田の背後からそのバッドで襲い掛かったのだという。
「でも、何故、家(うち)の人が・・・・?」
 泣きながら事情を聞いていた夏子は、説明する警官に問い掛けずにはいられなかった。
「詳しい事情はまだ、はっきりとはしていませんので何とも言えないんですが、仕返しをしたのだと言っていました」
 警官は言った。
「仕返し ?」
 夏子は思わず顔を上げて聞いた。
「はい」
 警官は夏子を見つめた顔ではっきりと答えた。
「仕返しって、家の人がその人に何をしたって言うのでしょう。その人の恨みを買うような事をしていたのでしょうか ?」
「御主人の帰宅はいつも深夜でしたね」
 五十代半ばと思われる年恰好の警官は穏やかに、同情的な口調で言った。
「はい」
「そこに問題があったのです。犯人の男性には放浪癖があって、夜中でもなんでも構わず出歩いていたのです。それで深夜に帰宅する御主人と何度か顔を合わせているうちに、いつか、自分が御主人に尾行されていると感じ取るようになっていたのです」
「尾行 ?」
「はい」
「尾行と言えば、家の人も誰かに尾行されているっていうような事を言っていたんですけど」
「そうなんです。自分が尾行されていると思った犯人は、今度は、物陰に隠れて反対に御主人の動向を探るようになっていたのです」
「じゃあ、昨年のあの、いろんな事も・・・・・」
「そうです。無言電話も、お嬢さんを刺そうとした事も、みな同じ犯人の仕業だったのです」
「いったい、何故なんですか。何故、こんな事にならなければならなかったのですか」
 夏子は感情を抑え切れずに泣きながら、警官に非でもあるかのように強い口調で言った。
「犯人には、いわゆる被害妄想って言うのですか、そんな病気もあったようなんです」
「被害妄想 ? 被害妄想なんて、なぜ、そん病気を持った人を放っておいたりしたんですか ?」
「病院へは入って治療はしていたようなんです。でも、その時はたまたま、病状が快方に向かっていて、なんの障害もないように思えたらしいんです。以前にも、何度がそんな事があって、入退院を繰り返していたようなんですが」
 警官は夏子の激した様子にも取り乱す事なく、穏やかな口調で説明した。
「半年程の間、何事もなく、穏やかな事もあったんですけど・・・・」
「それは入院していた期間なんです。お宅へしきりに無言電話を掛けていた時期は、極度に何かに怯えている風で、両親は様子がおかしいというので病院に相談したらしいんです。それで入院をしたため、電話を掛ける事も出歩く事も出来なくなっていたのです」 
「電話が無言だったという事は、どういう事なんですか ? しかも、毎回、違った場所から掛けて来るなんて。どうして、家の電話番号を知ったんですか」
 夏子は激した感情の抑えられないままに、なお、強い口調になっていた。
「島田さんに尾行されていると思い始めた犯人は、自分の身を護るという事の為に、お宅に係わる事の一切を周到に調べていました。お宅の住所や電話番号、家族構成にいたるまで。なぜ、そんな事が必要だったのかと聞くと、自分の身を護る為だった、と言いました。島田さん御本人は無論の事、島田家の存在そのものが犯人には、恐怖になっていたようなんです。お嬢さんを刺そうとしたのも、そうすれば自分の恐怖の種が少しでも少なくなると考えたようなんです。しきりに無言電話を掛けて来たのも、脅迫の為というより、そうする事によって、お宅の様子を探ろうとしていたらしいんです。相手の姿が見えている時には安心出来るが、見えていない時には恐怖心が増す、あれと同じ心理だったんです。あちこち、異なる場所から掛けて来たというのも、自分の所在を知られたくない、という思いからのみのようでした」
「それにしても、そんなに怯えているような人が、なぜ、家の人を襲う事が出来たのですか」
「半年ほど治療で病院生活を終えた犯人は、しばら家に居て、おとなしかったらしいんですが、また、何かの切っ掛けで島田さんの事を思い出したようなんです。あの、真夜中に俺の跡を付けて来る男がいる。それが気になって、落ち着けなくなり、ある夜、島田さんの家の様子を探りに行ったらしいんです」
「そう言えば、今度の事が起こる何日か前、門の間から家の中を覗いていた男がいた、と言っていました」
「そうなんです。犯人はその時、帰宅した島田さんの姿を遠目に見て、島田さんが近付いて来るのと共に、自分が島田さんに追いかけられている、と思ってしまったようなんです。それで危機感を募らせた犯人が、自分がやられる前にやってしまおうと思って、金属バッドを用意して、機会が来るのを待っていたんです」
「それにしても、その家の人達はどういう人達なんですか。そんな病気を持った人間を平気で放任しておくなんて !」
 夏子は怒りと共に投付けるような口調で言った。
「父親と母親、それに当の本人の三人暮らしでした。他に兄、姉が一人ずつ居て既に一家を構えているのですが、兄も姉も優秀な成績で大学を卒業していて、今は職場でもかなりの地位にいるようです。母親は専業主婦ですが、父親はあの有名企業の重役です」
「そんな事、家には関係ありません」
「病院でも、入院治療をした後、退院させているぐらいですから、外見上はなかなか、判断が付き兼ねたようなんです。何かの切っ掛けで今まで何でもなかったものが、突然、崩れてしまったみたいなんです。それが何故なのか、何故、犯人がそうなってしまったのか、その辺りの事情は精神科医でないので、よく分かり兼ねますが」
「でも、いったい、何故、家だったんですか。家がこんな不幸に合わなければならなかったんですか。家がいったい、何をしたと言うんでしょう。今まで何事もなく、みんなが仲良く穏やかに、幸福な毎日を過ごして来たというのに、その幸福が何故、こんな形で突然に壊れてしまわなければならなかったんですか。家が何か悪い事でもしたとでも言うんでしょうか」
「奥さんの所には、何も悪い所はありません。ただ、偶然、こうなってしまった、と言う事なんです」
「偶然でもなんでも、なぜ、選りに選って家なんですか。平穏で幸福だった毎日がこんな風に壊されてしまうなんて」
 夏子は怒りと共に込み上げて来る哀しみで、あとの言葉が言えなかった。

 
            
                       完



          -----------------


          hasunohana1966様

          いつも御覧戴き
          有難う御座います 御礼申し上げます
          坐禅とバレイ 面白く拝見させて戴きました
          突然 中心が定まった
          禅で言うところの 悟った と言う事ですね
          悟り を 得た
          わたくしもバレーは好きで もっぱら 
          テレビ鑑賞ですが見ています

          意識している自分と その自分を観察している自分
          所謂 禅に於ける 無分別の分別 という事ですね
          大変 面白くこの御文章を拝見致しました


          takeziisan様

          腰痛をお持ちとの事
          わたくしも腰痛持ちで この冬は
          悩まされました その上 膝裏の筋が
          枯れ木のようになってしまい、歩くのにも痛くて
          困りました いろいろ考えた末
          ヒマワリ油を摂りましたら筋の痛みは一気に    
          解消されました 腰痛も大分改善されましたが
          まだ 少々 残っています これは
          一生ものだと諦めています

          畑の写真 いいですね 
          お羨ましい限りです
          収穫の成果のご報告 お待ちしております
          
          いつもいろいろ お励まし戴きまして
          有難う御座います 御礼 申し上げます