遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉 22 バンザイ

2014-11-30 15:22:12 | 日記
          バンザイ(2014.11.29日作)


   かつて この言葉によって多くの人々が

   あの 過酷な戦場へ送り出されていった

   バンザイ

   かつて この言葉を叫びながら多くの人が
   
   あの 過酷な戦争で命を落としていった

   バンザイ

   今 わが国には

   かつての戦争 過酷さを彷彿させるものは

   僅かな数の記念碑 遺跡などを残すのみで

   日常の生活に

   あの戦争 過酷さが直截(ちょくせつ)に

   影を落として来る事はない

   人々は時折 顕在化する

   小さな困難にもがき 苦しみながらも

   あの過酷さの中で生き延び

   心や体に傷を負った人々が懸命に

   築き上げて来た

   あれから後の繁栄の中で

   平穏な日常を生きている

   -----

   バンザイ

   今 この言葉を口にするのは

   人が自己の目的を達成し得た時にのみ

   喜びの発露として叫ばれる

   バンザイ バンザイ バンザイ 

   かつての過酷さがそこに含まれ

   映し出される事はない

   -----

   バンザイ

   この言葉と同じく

   あの過酷さを一身に背負い込み

   過酷な戦場で 血の色に染められた日の丸 君が代が

   今もなお 人々の記憶に

   負の遺産として刻み込まれ

   毛嫌いされているのとは対照的に

   バンザイが人々に毛嫌いされ

   忌避される事はない

   誰もが喜びに溢れる場面では 臆面もなく

   この言葉を口にする

   バンザイ バンザイ バンザイ

   バンザイ バンザイ バンザイ

   -----

   哀しみの記憶を背負ったこの言葉

   バンザイ

   わが世の春を謳歌する人々が得意満面で

   この言葉を口にするのを見る時おぼえる

   違和感と心の痛み そして 怒り

   バンザイ

   この言葉と共に

   あの過酷な戦場へ多くの人々を送り出したのは

   いったい 誰なんだ!

   喜びの発露として口にされるこの言葉に

   哀しみの色を塗り込めたのは

   いったい 誰なんだ!

   今を生きる政治家諸氏よ

   せめて国を治めるあなた方だけは

   国が背負った過去から眼をそらす事なく

   この言葉に込められた哀しみの色を理解して

   公の場で 公に

   バンザイを口にするのは

   慎んで欲しいのです

   

   

   

      

   

遺す言葉 21 弔鐘

2014-11-23 15:14:47 | 日記
          弔鐘(2014.11.19日作)
            高倉健さんの訃報に接して



   今日もわたしの胸の中で

   遠くはるかに弔鐘が鳴り響く

   あの人が亡くなった

   昨日はあの人

   一昨日はあの人

   わたしの眼に耳に心に

   親しかった あの人この人

   過ぎ去った歳月

   もはや還り来ぬ日々の中で

   わたしの心を彩り 

   染め抜いていった人たち

   わたしの喜び

   わたしの哀しみ

   わたしの憧れ

   わたしの嘆き

   わたしの怒り

   わたしの希望

   幾重にも織り成した

   わたしの人生 わたしの心の中の

   絵模様

   それを織り成したあの人この人

   そんな人たちが今

   訪れる弔鐘の季節の中で日々

   黒い枠に染められた

   訃報を届けて来る

   さよなら わたしの青春

   さよなら 楽しかったあの頃

   さよなら 再び還り来ぬわたしの日々

   さよなら みんなみんな さよなら

   今は遠く去り逝くだけの日々

   薄れ 消えてゆく あの人この人の面影

   今日もわたしの胸の中で遠くはるかに

   哀しみの弔鐘(かね)が鳴り響く

   

   

   

   

   

     


  

遺す言葉 20 揺れろブランコ

2014-11-16 14:37:37 | 日記
          揺れろブランコ(2014.11.5日作)



   愛の月日は 夢のように

   時の彼方へ 消えていった

   あなたが好きだった 夏も終わり

   風の中に 秋は

   哀しみの歌を うたう

   揺れろブランコ ゆれろゆれろ

   揺れろブランコ 哀しみのせて

   揺れろブランコ ゆれろゆれろ

   揺れろブランコ 思い出のせて

   -----

   二度とあなたの 来ない道に

   秋の落ち葉が 風に舞う

   二人が好きだった 白い椅子の

   色も褪せて 汚れ

   今ここに誰もいない

   揺れろブランコ ゆれろゆれろ

   揺れろブランコ 涙の中で

   揺れろブランコ ゆれろゆれろ

   揺れろブランコ 孤独の中で

遺す言葉 19 人生の時ーー二人の歌手 そしてわたし

2014-11-09 13:47:46 | 日記
          人生の時ーー二人の歌手 そしてわたし(2011.2.17日作)

              (この文章は 島倉千代子さんの生前に書いたものです)


   この国が 第二次世界大戦に敗北し

   廃墟同然の国土を抱えて始まった戦後

   まだ 貧しかった頃 それでも人々は

   未来を見つめ 活力だけは失わなかった時代

   1950年代

   ようやく取り戻した自由な社会状況の下

   多くの芸能関係者が生まれる中に その

   女性流行歌歌手二人も生まれた

   島倉千代子と西田佐知子

   共に 1938年四月生まれのわたしと同年代の

   1938年三月生まれと1939年一月生まれ

   片や 戦前のこの国の風俗 その匂いを残す

   古風な情緒を代表するように歌う

   島倉千代子

   片や 戦後の荒廃したこの国に生きる人々の

   やるせなさ 未来への そこはかとない不安

   そんな心情を代表するように歌う

   西田佐知子

   それぞれが それぞれに多くの大衆

   人々の心を魅了して

   一つの時代を築いた

   -----

   あれから幾十年かの時が過ぎ

   わたしたち世代も年老いた2011年

   すでに残された人生の時は短く

   うず高く積み上げられた過去の時間が

   幾重もの光と影を交錯させながら

   おまえは その中でなにをして来たのか と

   自身の人生 歩んで来た道筋を問いただす

   -----

   人 それぞれが歩んだ人生

   それぞれが それぞれに持つ時間の中で

   追い求めた夢

   ある人は その夢にたどり着き

   ある人は 夢破れて 本意を外れた道をゆく

   叶えられた夢 叶えられなかった夢

   もはや たどり直す事の出来ない人生の時 過ぎた日々が

   幸福の甘い香りの中に浮かび上がる人もいれば

   苦い悔悟に塗り潰され 苦汁に染められて

   甦る人もいるだろう

   -----

   島倉千代子と西田佐知子

   時は二人の上にも同じように流れ

   しかし 歩んだ道は それぞれに異なって

   一度は結婚生活に身を投じながら ふたたび

   歌一筋の世界に舞い戻った島倉千代子

   片や 歌の世界にさらりと見切りを付けて ふたたび

   人々の前に立つ事のなかった西田佐知子

   それぞれが それぞれに歩んだ道

   そして今 人生の時も最終章を迎えて

   それぞれが それぞれの道を全うした 二人の心には

   どんな思いがあるのだろう

   これが わたしの人生 これで良かった

   あるいは心静かに 過ぎ去った日々

   あの時 この時を思い浮かべながら

   もう一つの別の人生 もう一つの自分の姿を

   それぞれに 心に描く事があるのだろうか

   -----

   今 二人とはまったく同じ時代 同じ世の中を

   二人とはまったく異なった道とはいえ

   一つの人生 日々 日常を生きた事には変わりのない

   そんなわたしの 心にあるのは 過ぎ去った日々

   あの時 この時の 喜び哀しみ 怒りと嘆き 

   悔悟と満足 得意と失意 幸不幸 すべてが入り交じった

   そして 再び帰り来ぬ日々への

   愛おしさ 懐かしさであり

   再びたどり直すことの出来ない人の生への 静かなー諦念

   すべて良し これがわたしの人生・・・今

   わたしの心は極めて静かだ

   やがて来る人生の終わり 死がすべてを包んで

   わたしを無の世界と運んでゆくだろう

   その時を前にして わたしは 

   わたしの心に言う

   すべて良し これがわたしの人生

     

   

   

   



   

遺す言葉 18 「焦るな 今はじっとしていろ」

2014-11-02 13:27:02 | 日記
          「焦るな 今はじっとしていろ」(2012.4.21日作)
            
               三宅島の漁師の言葉 (NHK放送番組より)

     友人宅で三宅島火山噴火に関するドキュメンタリー番組を観ていた時
     友人が呟くように言った
    「実際に現場体験を積み重ねた人の言葉には重みがあるよなあ」
     その時帰りの電車の中でメモしたのが次の文章です

   年老いた父親は息子に

  「会いたい」

   と言って来た

   家族は火山噴火のため

   離れ離れに暮らしていた

   -----

   島に一人残った息子は

   家族の生活を支えるための

   漁で忙しく

   父親に会いに行けなかった

   -----

   父親は一年後に亡くなった

   -----

   息子は父親がわざわざ

   自分に会いたいと言って来たのは

   なぜだったのか

   と考える

   -----

   すると昔

   父親がまだ若く

   自分と一緒に漁をしていた頃

   言った言葉が思い出された

   潮目が悪く 漁のない時

   父親はいつも 

   焦る息子を諭して言った

  「焦るな 今はじっとしていろ」

   -----

   火山噴火で家族が

   離れ離れに暮らしている現在 息子は

   その時の父親の言葉を思い出しながら 父は

   生活の苦しい今 この状況の中で苦闘する自分に

   最期の言葉として この言葉を

   伝えたかったのではなかったか・・・・

   ーーーーー

   忙しさにかまけ

   父親に会いに行かなかった事への深い後悔

   心の痛みと共に息子は 今

   考える・・・・

   -----

  「焦るな 今はじっとしていろ」



   ----------

   友人は既に亡く 手紙も綻びてしまいましたが今でもこの言葉だけは 
   気持ちの逸る時などには読み返して 心を落ち着かせています
   その時(機会)が来るまで待て やたらに動くな・・・・冷静に時を待て
   この言葉は今度の東日本大震災 原子力発電所事故に会われた方々にも
   さまざまな場面で一つの教えとなり得る言葉ではないでしょうか