有難う そして感謝 同窓会(2016.8.9日作)
昭和二十九年(1954)三月
千葉県匝瑳郡白浜村中学校卒業生
卒業写真に写る まだ
幼さを残す面影 総勢六十六名
あれから既に六十年余
ほぼ二年に一度の割合で行われた
同窓会が今 最終局面 終わりの時を
迎えようとしている 有り難う
今日まで幹事を務めてくれた
地元の皆さん 有り難う
良くぞ今日まで続いた同窓会
地元の皆さん 幹事の皆さん方の
努力と骨折りがあったればこその成果
「同窓会なんか一度も開かれた事がないよ」
そんな声も聴かれる中
昭和二十九年白浜村中学校卒業生は
二年に一度の顔合わせ 同窓会で あの
卒業写真に写る まだ 幼さを残す面影の
あの時代 あの頃に 何時でも還る事が出来た
幸せなひと時 しかし その時も今
終わりを迎えようとしている 過ぎ逝く時
移ろう時の 如何ともし難い現実 人は
若さを失い 老いを迎える
昭和二十九年白浜村中学校卒業生もまた 皆
老いた あの卒業写真に写る 幼い頃のみんなの
未来を見つめる眼 希望に輝く頬の色は もはや
見る事は出来ない 失われた未来
迫り来る 人生の終わりの時 その足音だけが
日々刻刻 高くなり 身近になる現実 今日この頃
さよなら さよなら
遠く旅立ち 還らぬ人となった あの人 この人
さよなら さよなら
耳に 眼に 届いて来るのは その声 現実
「また 来年」
「また 会いましょう」
次第にか細く 影を薄くしてゆく
明日への約束 未来への誓い
閉ざされた未来 現実が滅入る気持ち
絶望の暗鬱だけを運んで来る
さよなら さよなら
さよならだけが 残された人生
今一度の青春
昭和二十九年白浜村中学校卒業生 あの当時の
若さへの立ち返り 僅かに残る可能性
あと幾度かの同窓会に せめてもの
希望を託し 人生の終わりの時の今を生きる
慰めとしながら か細い命の糸に掴まり
今日という日を生きてゆこう
さよなら さよなら もう 再び 会う事は出来ない
必ず訪れるその時 その日を前に
あの時 この時 豊かだった同窓会の記憶
その時々の思い出を胸に 今
深い感謝の気持ちと共に 地元の皆さん
幹事を務めてくれた皆さんに 心よりの
御礼を申し上げます
長い間 有難う御座いました そして
御苦労様でした これから後(のち) ふたたび
顔を合わせる事 会う事は出来なくなっても どうか
皆さん お元気で 豊かな時 人生の終わりの日々を
悔いなく生きて下さい
地元の皆さん 幹事の皆さん そして
何時も元気な顔を見せてくれた 遠方からの出席者の皆さん
楽しい思い出 豊かな記憶の数々を 本当に
有難う御座いました では
永遠(とわ)のさよならを
今ここに
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いつか来た道 また行く道(13)
わたしは言葉もなかった。
確かに彼はわたしの生活を邪魔する心算は無いのかも知れなかった。純粋に金だけが欲しいのかも知れなかった。
しかし、こうしてしつこくわたしに纏わり付いて来る事自体が既に、わたしに取ってはわたしの生活の邪魔以外の何ものでもなかった。
わたしは彼の鈍感とも思える神経の鈍さに苛々した。
車は既に駒場を過ぎていた。
北沢に入って間もなくわたしは、苛立つ気持ちのままに路上の暗がりで車を停めた。
中沢は急にわたしが車を停めた事にふと、不可解そうな表情を見せてわたしを見た。
わたしは彼のその視線など無視して車内灯を点けるとハンドバッグを手に取り、中から財布を取り出した。
中沢は不可解気な表情のままわたしの手元を見ていた。
わたしは財布の中から五枚の一万円札を抜き取り彼の前に突き出した。
「取り敢えずこれをあげるから、今夜はこれで帰って頂戴」
中沢は一瞬、驚いた様子だったが黙ったまま手を出した。
わたしは言った。
「あなた、さっき、わたしと商売をしてるって言ったわね」
「ああ、言ったよ」
居直ったように中沢は答えた。
「それなら、相談があるんだけど、どう、乗ってみない ?」
腹を据えた心をそのまま声に滲ませてわたしは言った。
「どんな相談 ?」
中沢は幾分、警戒する様にわたしを見つめて言った。
「ちよっと、まとまった売掛金があるのよ。それを回収して貰いたいの。相手は何時でも都合のいい時に来てくれって言ってるんだけど、このところ、なんだかんだ忙しくて行ってられないのよ。どう ? 行ってくれない ?」
「まとまった金って、幾らぐらいなんだ ?」
中沢は興味を見せて言った。
「一千万近くあるわ。どう ? もしそのお金を回収してくれたら六十パーセント、あなたにあげてもいいわ。勿論、写真のネガとは交換だけど」
「相手は ?」
「普通の洋装店よ」
「まさか、暴力団の店なんかじゃないだろうな ?」
わたしの示した金額に興味を見せるのと同時に警戒感をも抱いているようで、中沢は言った。
「暴力団なんかじゃないわよ。なぜ、わたしが暴力団なんかと付き合わなければならないの ?」
強い怒りを滲ませてわたしは言った。
中沢は黙っていた。
「あなたって、悪のくせに案外、臆病なのね」
嘲笑する様にわたしは言った。
「冗談じゃない ! こっちは真面(まとも)に生きてんだ」
中沢はわたしの口調に侮辱でもされたかの様に強い口調で言い返した。
「まあ、よくもぬけぬけとそんな事が言えたわね。わたしをさんざん罠に嵌めて脅迫しておいて」
わたしは腹立たしさと共にさらに強い蔑みの色合いを込めて言い返した。
その言葉に返すように中沢は、
「あんたが悪いんだよ。人に隠れて、陰でいい思いをしようなんてすっからだよ。世の中、そんなに甘くはないよ」
と、嘲笑的に言った。
「大したものだわ。わたしにお説教が出来るなんて」
わたしも嘲笑的に言い返した。
「これでも俺は、いろんな苦労してるからね。あんたみたいに華やかな表通りを歩いているような人間とは訳が違うんだ」
中沢は言った。
「バカな事を言わないでよ。わたしが今みたいになるまでに、どんな苦労をして来たか、あんたみたいな遊び人なんかには分かりはしないわよ。わたしは真面目に一生懸命働いて、ようやくこれまでになったのよ。あんたみたいにふわふわしながら今のようになった訳じゃないわ。それをあんたみたいな薄汚い人間に引っ掻き回されたんじゃ、たまったものじゃあないわ」
「俺の事を薄汚いって言ったな !」
中沢は突然、激怒した。紅潮した顔で今にも襲い掛かって来かねない様子だった。
わたしはそれでも負けてはいなかった。
「そうよ、薄汚いわよ。ーーやれるものなら、やってみなさい。こんな所で暴れて警察に捕まれば、クスリの事もすぐバレちゃうわよ」
中沢は警察という言葉に敏感に反応した。体中を怒りで震わせながらもわたしに襲い掛かって来る事だけはしなかった。
「そんなに悔しかったら、わたしを殺してもいいわよ。どう ? 殺すなら殺してみなさい」
わたしは静かに言った。
中沢は怒りを滲ませたまま黙っていた。
わたしはそんな彼を見て静かに言った。
「どう ? わたしの相談に乗ってみる ?」
わたしは中沢の返事を待たずに言葉を続けた。
「もし、あなたが出来ないって言うんならそれまでよ。ただ、わたしにはもう、何百万だっていうお金を出す気はないから、その心算でいてよ。写真はバラ撒くんならバラ撒いてもいいわ。わたしはそれで世間に顔向けが出来なくなるけど、仕方がないわ。自分で撒いた種なんだから。でも、あなたに窮迫されているよりはずっといいわ。それに、もし、そうした時にはあなただって、無事でいられると思ったら大間違いよ。わたしは警察へクスリの事も含めて全部を正直に話すから。そうすれば結局は一蓮托生という事になるのだから」
中沢は怒りを堪えた不機嫌な表情のまま黙っていた。
「あなた、お金が欲しいんでしょう。借金があるんでしょう。もし、あなたにさっき言った話しを受ける気があるんなら、わたしの別荘へ来なさい。あなも知ってるあの別荘よ。わたしはあの近くでお仕事があって行ってるから。お金を取りに行くお店もちょっと離れているけど、あっちにあるのでちょうどいいわ」
「何時、別荘へ行けばいいんだ」
わたしの説得にようやく怒りを収めた中沢はぶすりと言った。
「いつ ?」
わたしは戸惑った。そこまでは考えていなかった。
「ちょっと待って。今、予定表を見てみるわ」
ハンドバッグから取り出した手帳には、びっしりと予定が詰まっていた。
わたしは比較的重要ではない、変更も可能な日を選んで中沢に言った。
「二十八日ではどう ?」
「この二十八日か ?」
「そうよ。今日は二十日だから。来月になると年末だし、忙しくなるから」
「二十八日に行けばいいのか ?」
「そうじゃないわよ。二十八日に相手の方へ行くんだから、二十七日にわたしの別荘へ来なさい。どう ?」
「行けるよ」
「一人で来るの、誰か、仲間と一緒にくるの ?」
「なんで ?」
「だって、食事の支度があるでしょう。別荘番のおばさんに頼んでおかなければ」
「俺一人で行くよ」
大方は予想していた事だったが、一人で来るという彼の言葉にわたしは安堵した。
邪魔者に来られてはまずい !
大方は予想していた事だったが、一人で来るという彼の言葉にわたしは安堵した。
邪魔者に来られてはまずい !
「じゃあ、今日はこれで帰ってちょうだい」
わたしは彼を車から降ろすと、
「二十七日には夜、七時過ぎに来てよ。あんまり早く来られても誰も居ないから」
と言い添えた。
中沢は全く見知らぬ場所で放り出されて途方に暮れているようだった。
彼がこれから何処へ行くのか分からなかったが、わたしの知った事ではなかった。
わたしは中沢を歩道に残したまま一気に車を発進させてその場所を後にした。
その夜、わたしは自宅へ帰ると極度の疲労感で居間のソファーにへたり込んだ。
自分の背負い込んだ荷物の重さを改めて実感した。
本当にそれを遣るのか ?
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桂蓮様
新作 拝見しました
AI は正確であっても感情がない
いろいろ読書をして知識を詰め込んだ知識人のようなものですね
でも わたくしは知識人というものをあまり信用していないのです
いざという時 実践の場に於いて大切なものは感覚です 経験です
身に付いた知識 感覚です 感覚の伴わない知識など結局は
絵空事にしか過ぎません
例えば農作業 知識でああだこうだと分かっていても
雨の量 風の吹く様子 日の照り具合い それぞれ幾百 幾千もの組み合わせがあります
それを理解出来るのは長年積み重ねて来た経験と勘です
単なる知識は中身のない人形にしか過ぎません
以前 当時も此処に書いたのですが 日本に於ける福島原発事故
あの事故も単なる理論や知識の積み重ねだけではなく
経験により積み重ねた知識を持つ人がいたら あの事故は防げたのではないか・・・・
あの当時も書いた事です
日本が世界に誇る新幹線 あの先頭 頭の部分のあのしなやかなフォルム
あれはいちいち作業員の方々が手の平でその感触を調べて造っているという事です
作業員の手の感覚があの見事なフォルムを生み出しているという事です
知識はあったに越した事はありません でも
知識だけでは実際の役に立たない事はままあります
AIも同じ事 AIは 考えない事 が出来ません
知識の詰め込みにしか過ぎません
コメント 有難う御座います
御夫婦間の日常 何時もながらにお羨ましい限りです
どうぞ一日も早く健康体を取り戻して またの日の溌溂としたバレーの練習風景を
お届け戴ける事を願っております
有難う御座いました
takeziisan様
有難う御座います
今回も美しい花の数々 堪能させて戴きました
どの花を見ても色鮮やか 心が洗われる思いです
それにしても数々の花々 よく見付けられます
感服です それだけに自然が身近にあるという事でしょうか
平岩弓枝さん 亡くなりましたね
新聞記事を眼にして咄嗟にtakeziisanブログが頭に浮かびました
わたくしはこの方の本を読んでいませんし ドラマなども見ていないので
もっぱらブログ記事が頼りでしたので咄嗟に頭に浮かんだという事です
全盛を過ぎていたとはいえ やはり一つの巨星が落ちたという感があります
南国の夜 並木の雨 共に懐かしく聴きました
あの当時の音楽は郷愁ばかりでは無く真実 良いですね
情緒があり 感情が豊かです 今の無意味な言葉を並べ立て
ガチャガチャ騒ぐような音楽はわたくしには雑音としか聞こえません
並木の雨には幼い頃 小学校の教室から雨の降るのを見ながら
友達がこの歌を小さな声で口ずさんでいた事などを思い出し
目頭が熱くなりました
南国の夜では 何故かふと 南かおるの名前が浮んで来ました
早くに亡くなったハワイアンの歌手ですね
今週もいろいろ楽しませて戴きました
わが家の屋上でもプランター菜園のキュウリとピーマンが収穫されました
勿論 ブログ上の立派なキュウリなどとは桁違いですが
それでもなんとなく嬉しいものです
わが家は金木犀です 年々木は大きくなるし 自身の体力は落ちて来るしで
手入れが大変になります
ナメクジとカタツムリ ナメクジには毎年 今の時期
悩まされます 何処から湧いて来るのか 至る所に居るので
不思議な気がします
今回も楽しいブログ 有難う御座いました でも
くれぐれも御無理をなさらぬ様に細く長く無事で
続けて下さい