二つの形(2016.12.20日作)
夜の闇
夜更けの静寂(しじま)を揺らし
遠く
救急車の過ぎて行く音
この 都会の 夜の中
一つの命が
一つの室(へや)
病院の白い灯りの中へ と
運ばれて行く
夜の中に 逝く者たち
夜の中に 生まれて来る者たち
・・・・二つの命の形が造る
明日という 日
二つの形(2016.12.20日作)
夜の闇
夜更けの静寂(しじま)を揺らし
遠く
救急車の過ぎて行く音
この 都会の 夜の中
一つの命が
一つの室(へや)
病院の白い灯りの中へ と
運ばれて行く
夜の中に 逝く者たち
夜の中に 生まれて来る者たち
・・・・二つの命の形が造る
明日という 日
今夜もまた(2016.12.1日作)
今夜もまた
夜の闇 静寂(しじま)を引き裂いて
救急車の走り来て
走り去る音が聞こえる
何処の 誰に 何があったのか?
失われる命 救われる命
真夜中の静まり返った病棟
白い灯り 白い着衣の人
父はあの夜以来 再び
還らぬ人となった 深夜
午前一時過ぎ
頭を過(よ)ぎる光景
命の終わり 人の持つ宿命 死
いかに身もだえ いかに
焦燥感に 心を焦がしても
眼前に立ち塞がる
断崖 絶壁 臨むのは
人の命の終わり 終焉
再び戻り得ぬ 昨日への時 人を
絶望と悲嘆 奈落の底へ落とし込む
現実 人の命の終わり
都会の夜 静寂の中
今夜もまた 救急車の
走り来て 走り去る音が
闇を引き裂いて行く
後期高齢者(2015.11.30日作)
え? なんですって?
わたしが後期高齢者かって?
ええ そうですよ
え? なんですって?
後期高齢者という言葉を
どう 思うか ですって?
後期高齢者 ねえ
いい言葉じゃないですか?
侮辱的で
おまえはもう 死に際族だ
そう言われているような 気がしますねえ
そうですよ この言葉 なかなか
魅力的で 便利な 言葉なんですよ
今の世の中 この御時世 嫌な事ばかりが
多いじゃありませんか その上 いったい
何処から聞き出して来るのか
嫌な世の中 世間に背を向けるようにして
一人静かに
自分だけの世界に生きようとしている こんな
わたしの所にも 毎日毎日
愚にも付かない 下らない電話が
あちらからも こちらからも
掛かって来るんですよ ですから
わたしは その度に
言うんですよ なにしろ
わたしはもう 後期高齢者
なんでね って すると この言葉は
たちどころに 偉大な効力を発揮して
愚にも付かない電話を掛けて来た連中は
ああ そうか 死に際族の人間か と
思うらしくて 単簡に
引き下がってくれるんですよ
後期高齢者 まったく便利な
いい言葉なんですよ でも
気を付けなければ いけないのは
腐肉漁りの 狼みたいな連中が
仰山 居て 後期高齢者
死に際族の足元 覚束無い
足取りを見透かすようにして
狙いを定め あくどい詐欺を
仕掛けて来るんですよ 狼どもには
後期高齢者 死に際族も
有り難い 獲物に見えるんでしょう ね
ですから われわれ 後期高齢者 死に際族も
この言葉の響きの良さに浮かれて
うかうかしてばかりは
いられないんですよ
まったく 後期高齢者 死に際族も
忙しい世の中になったものです
ミミという女(2016.11.29日作)
ミミという名の女がひとり
夜のクラブで唄ってた
ブルーな心でいるんじゃないが
恋にやつれて泣かされて
今じゃ涙も涸れました
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惚れて振られて傷付きました
うぶな昔もありました
けれども今でははるかに遠い
おとぎ話の夢のよう
過ぎた縁(えにし)になりました
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ミミという名の女がひとり
夜のクラブで唄ってた
消えてく煙草の煙りのように
恋ははかない紫の
さだめ哀しい虹でした
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恋ははかない紫の
さだめ哀しい虹でした