店の注文カウンターに行くと笑顔を浮かべた女の子が待っていた。心が温まる笑みだ。しばし考えアールグレイといった。傍のガラスケースにあったバームクーヘンが目につき一緒に注文した。スマホ画面からauPAYを出しそれで決済。最近は財布を取りださなくてもいいから実にコンビニエンス。
トレイにそれぞれを載せ席についた。アールグレイの良い香りが鼻孔をくすぐる。
毎回不思議に思うのだが、ティーバッグの紐がカップの持ち手のことろに絡まっている。時に複雑に絡まってる時があって過去に難儀したことがある。出す側も飲む側も1工程省けるからやめたらどうだろう。ま、大したことではないけど^^
ひと口アールグレイを飲んでからバームクーヘンの入ったビニール袋を手にとった。
さてと、……。ん? 袋の切れ目を探した。それがない。仕方ないからギザギザ部分を引き裂くしかない。ところが簡単に裂けなかった。ここまで頑丈にする理由がどこにある。
ギザギザ部分に爪を立てるのだが、どうしても破けない……。
あまり必死にやっていると、何やってるのあのオヤジと思われるのも格好悪い。周りの目も気になり始める。
でも努力の甲斐があってかなり裂けてきた。ここで一息つく。しかしまあ、なんでこんな頑丈な袋に入れて売るんだ? バームクーヘンひとつ食べるのにここまで時間と労力がかかるとは……ま、思っても見なかった。
あと1ミリというところまで来た。最後に渾身の力を込めた。その瞬間破けた! ノーサイドと思ったが、次に声なき声をあげていた。
脱輪した車のタイヤのごとくコロコロとバームクーヘンが転がっていくではないか。そしてそれはやがて後ろに座っていた女性のイスの下まで転がってそこで見えなくなった。
背筋に冷たいものが走った。