近くのスイミングスクールが40年という歴史に幕を閉じた。マイクロバスも何台もあった大きなスクールで大盛況に見えていたが。コロナの犠牲か……。
先日1100円の散髪屋に行った。
「マスクつけたままでもいいですか?」
「髪の毛がマスクにつきますけど」一瞬迷った。店員は続けた。「それで良ければつけたままでいいですけど」どこかそれは止めて欲しそうな言い方だった。
束の間考え「わかりました」結局つけずにやってもらうことにした。三つの台があってそこに座っている他の客は確かに誰一人付けていなかった。
少しすると、隣に座っていた若者がペラペラ口角泡を飛ばす勢いで店員と話をし始めた。店員は相槌を適当に打っているが会話はご法度の注意書きが店内に貼ってある。
よっぽど会話に飢えていたのかこの男。だがこっちは堪らない。
かつて口に出したこともない言葉を心の中で叫んだ。「小僧黙れ!」するとほぼ同時だった。「小僧黙れ!」の声が聞こえた。えっ!…………。
それは若者の向こう隣の男だった。心の中で拍手喝采だ。これで唾が飛び散らないだろう。マスクなしのノーガードの僕にとってはありがたかった。
しかしそれにしても僕が心の中で叫んでいた言葉を、そっくり言われるとは。
男は大人しくなって静寂の外にジョキジョキという音だけが聞こえた。
そして一人が終わり続いてその若者も終わって二人は出て行った。
僕も間もなくだ。
すると外で「おい。ちょっと待てよこのやろう」という声が伝わってきた。
ドキッ。
髪の毛が付いてもいいからやはりコロナ禍の散髪はマスクつきに限る。念のため!