


まず、写真選考で決まれば翌日のオーディションとなります。
プロダクションの社長からメールが入る。いつも、急。まったく、突然。
みずほ銀行のロト6のCM(11~5月までの2クール)。
その日の夜、写真選考に受かったので明日お願いします。詳細はFAXの通りです、とあった。
FAXを見て、思わず笑ってしまった。
僕の役柄が、40~60代の窓際っぽいキャラの男性。スーツ姿で来てください。つまりうだつの上がらなさそうな男性役。
早速、鏡の前に立った。
う~~む。オトコマエ!!(ん? 誰だ? 勘違いと言ったのは?)
……窓際っぽいかなあ? ヒゲをたくわえた窓際族かあ? そんなのいるかな?
どうみても、窓際には見えない。うちの相方に訊いた。「窓際っぽい?」少し、冴えない顔をして、それらしい真似をした。うーーん、と唸って「……見えない」
えーい、ぶっつけ本番だあ、とばかりに、今日行ってきた。

内容を聞かされた。
給料もダウンし、いつ首切られるかわからない窓際の男。一攫千金夢見て、ロト6の売り場に向かう。
必死の形相をしてフリーズ(身体は静止状態)。そして口だけ動かして歌を歌ってくれという設定だった。「♪鉛筆一本で世界を変えろ。お財布にもっともっと自由を。二億円が当たるチャンスだぞ。ロト6ロト6ロト6♪」
はい、本番。「カット、……スタート」「カット、……スタート」のど繰り返す。
アシスタントがCMディレクターに「どうしましょうか、もう一度……?」
うーん、と唸ったディレクター「え、もういい。次」と、投げやりな言い方。
「あ、ありがとうございました。よろしくお願いします」
――だめだ、こりゃ――と、内心諦め!!!!


どうしてもこの必死な形相ができてなかった。やっていて、できてないのが自分でも解る。




